鈴木大介さんの現代ビジネスでの好評連載をまとめた『されど愛しきお妻様』が刊行に。記念して『旦那(アキラ)さんはアスペルガー、奥(ツナ)さんはカサンドラ』(株式会社コスミック出版)の著者、野波ツナさんとの対談が行われました。
野波さんが漫画に描くのはアスペルガーである旦那さま、アキラさんとの暮らしに起こる問題の数々。中でも、アスペルガーの特徴である「共感性の欠如」に日常的に接する辛さと、それを他人に理解してもらえない苦しみで心身を病む「カサンドラ」については、アスペルガーをパートナーに持つ多くの人の苦しみが社会に知られるキッカケとなりました。
一体なぜ「カサンドラ」は引き起こされるのか――話はジェンダーや社会の問題にまで及びます。
野波: 鈴木さんが凄い体験をたくさんされているので、私なんか呼んでいただいても対等に話せるのかしらって、今日はちょっと心配だったんです。
鈴木: とんでもない! とりあえず、(この対談をまとめる)ライターさんと僕は今日「泣かない様に我慢しよう」と話してたんですよ。
野波: 泣かないように?
−−事前に今日のテーマについて打ち合わせしたんですけれど、テーマが「カサンドラ」だと、どうしてもみんな自分を責めるじゃないですか? だから、「じゃあ泣かない様に頑張ろう」って(笑)
鈴木: なのに早くも、昨日ツナさんの著書『旦那(アキラ)さんはアスペルガー』を妻と一緒に改めて読み返しただけで、妻はご飯が食べれなくなり、僕は声が出なくなり……。
野波: ごめんなさいね。これは結構重めに描いてしまっていて。
鈴木: 実はこの本は、僕が脳梗塞を起こして半年後ぐらいに妻が買ってきたんです。「ここにあなたが描いてある」って言って。アスペルガーにはADDの症状が被るとよく言われますが、高次脳機能障害は注意障害も遂行機能障害も含まれていて、特に病識がないケースはアスペルガーに近いように周囲が感じることがあるんです。
野波: そうだったんですね。私は鈴木さんの『されど愛しきお妻様』を読んで、「仲良しね」と、おばちゃん的な感想をまず抱きました。鈴木さんは器が大きいな、救済者的なところが元々お有りなのかなーって。奥様にも救われてらっしゃるし、奥様のことも救ってらっしゃって、「羨ましいなー」と思いました。
ただ、やっぱり当事者にとったらそう単純にはいかないことを経験上知ってるので、複雑な気持ちで読みましたよ。ご夫婦の間では、お互い理解できないことがたくさんあって苦しまれたんですよね?
鈴木: そうですね。実は僕も妻も、ツナさんとアキラさんの両方に共感すると言っていて。お互いに自分の言っていることが伝わらないという苦しさはずっと抱えてきました。妻はもう、僕に何を言ってもしょうがないから、もう僕に期待するのはやめようとずっと思っていたらしいんです。何を言っても口では敵わないし、問い詰められれば言葉が出ない。逆ギレして暴れないように我慢をするのに精一杯で、その場から立ち去るしかないと。
野波: あらまあ、そうですか!
鈴木: ただ僕がツナさんの本を読んで何よりつらかったのは、ツナさんは、色々な人に「困ってるんだ」とアキラさんとの話をしても、「そうは言っても男の人ってそんなもんよ」って言われてしまって、理解してもらえないのが凄く辛かったと書かれていたじゃないですか。それはどれほどの苦しさなんだろうって……。アキラさんがお仕事を辞めたあとも……。