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権利侵害品の削除に関して協業する企業・団体数
(出所:メルカリ)
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現金出品騒動がきっかけに

 メルカリが不正対策の強化を急ぐのはこの1年ほどで利用規約や法令に違反する売買や関連するトラブルが目立ち始めたからだ。なかでも「我々の想定を超えていた」(小泉社長)のが2017年4月の現金出品騒動。出品された現金をクレジットカードで購入し、現金書留で送られてきた出品物、すなわち現金を手にする、事実上の金銭やり取り狙いとみられる出品が相次いだ。同9月には万引きした商品を出品して現金に換えた利用者が逮捕される事態が発生。その後も盗品の出品は続いた。

 ただ、現状の対策でも十分とは言い切れない。例えば未成年者の年齢確認作業はあくまで自己申告で、入力する年齢を偽って酒などを購入できてしまう。

 メルカリの山田執行役員は未成年の年齢確認について「現時点で完璧とは思っていないので引き続き対策していきたい」と話す。利用者の行動監視技術を応用して、酒類を何度も購入する利用者には本人確認書類の郵送やネット経由での提出を求めるといった対策があり得るという。

 転売目的で購入した商品を大量に出品する業者まがいの利用者が、他のサイトでメルカリの新しいアカウントを購入する行為も防ぐのが難しい。メルカリは転売業者を排除するためアカウントを1人1つに限っている。他のフリマサイトなどに出品されたメルカリのアカウントを購入することで、この制限をくぐり抜けようというわけだ。「他のサイトと連携してアカウント売買の状況を確認し、削除要求を出すなどの取り組みを進めていく」(小泉社長)。

「成長より不正対策」、バランスに苦慮

 小泉社長が「社会が求める要求やスピードに十分応え切れていなかった」と認めるように、メルカリの不正防止対策が後手に回ってきた感は否めない。本人確認を厳格にするなら会員の利用登録時や初回の出品時に本人確認書類の提出を義務付ける手もある。ただメルカリは今のところ消極的だ。「メルカリは簡単、手軽に使ってもらうことを魅力として成長してきた。(利用登録時などに)本人を確認する作業はストレスになる」(小泉社長)との考えからだ。

 「成長と不正対策のバランスは、同等か不正対策が少し上」。手軽さと利便性を追求して事業の成長を図るか、利用手順を多少煩雑にしても不正対策と利用者保護を図るか。両者のバランスを問われた小泉社長はこう答えた。創業から5年あまり、アプリのダウンロード数が世界で1億件を超えるまでに成長したベンチャー企業は早くも岐路に立たされている。