品川シーサイドにオープンした「Amazon Fashion 東京撮影スタジオ」は、総面積7500㎡。ここで年間100万本を超える商品画像や動画が撮影され、アマゾンのファッションサイト「Amazon Fashion」によって配信される。このスタジオの完成は、アマゾンが日本のファッション市場に本格的な進出を果たしたことを意味している。
彼らは日本のファッション市場にどのような攻勢をかけて来るのか。それはアマゾンがいま何を考えているのかを知ることから見えてくる。
筆者は今年1月に米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES2018」に参加した。まずはそこから現在のアマゾンの思考回路を読み取って行こう。
1月11日、日本経済新聞はラスベガスからのレポートをトップ記事に掲載した。その見出しは「『AI産業革命』始動」。日本でも話題になっているスマートスピーカーで競合するアマゾンとグーグルのIT2強の戦いが報告された。
このとき私もラスベガスに滞在し、広大なCESの展示場を右に左にと駆けずり回っていたが、注目していたスマートスピーカーを巡る攻防を、アマゾンとグーグルの両陣営の担当者が登壇するという贅沢なパネルディスカッションで目撃することができた。
スマートスピーカーとは昨年から頻繁にテレビで流されている「OKグーグル!」の、あのCMの商品のことである。「OKグーグル。音楽をかけて」「OKグーグル、月までの距離をおしえて」と話しかけるだけで、要求をかなえてくれる。
アマゾンエコーも同様の商品で、このスピーカーは、グーグルは「アシスタント」、アマゾンは「アレクサ」というクラウド上にある音声認識AIに接続されている。
私も昨年12月からアマゾンエコーを自宅で使っている。「アレクサ!」と話しかけては懐メロを聞いたり、天気予報を尋ねたり、時にはNHKニュースを読み上げてもらって、最新のニュースをチェックしている。
「アレクサ、今井美樹の曲をかけて」と言うとアマゾンミュージックから選曲したナンバーをかけてくれるし、「アレクサ、洗剤を注文して」と言うと、商品が推奨され、「購入しますか?」と聞いてくる。「はい!」と答えればアマゾンから洗剤が届く。とにかく便利である。やがてこれが浸透すれば、スマホ同様に手放せないアイテムになるだろう。
CESのセッションでは、「アメリカではすでにスマートスピーカーは『家族の一部』になっている」という驚愕のデータが示された。調査したのはEdison Researchというリサーチ会社。
「スマートスピーカーを購入してから本当に使っているか」という問いには「購入した月と同様に使っている」「購入した月よりもさらに使っている」という回答は84%に上り、65%の人が「スマートスピーカーなしの生活に戻りたくない」と回答した。
その機能で重宝されているのが「音楽をかける」ことで60%。「質問してそれに答えてもらう」機能も30%のユーザーが「よく利用する」と答えている。
話しかけるだけで疑問が解消するのだ。パソコンやスマホで検索をして、音楽を流したり、疑問を解消したりする手間はほとんど皆無になる。検索はたかだが数十秒の作業だがスマートスピーカーを使えば、これが数秒に短縮され、しかもフリーハンド。米国の利用者はその便利さに感動しているのである。
また筆者が注目したのは50%以上が「複数の誰かとスマートスピーカーを利用している」と回答したこと。そして18%の人がよく利用する機能として「ジョークの掛け合い」と答えていることだ。
家族といっしょに使いジョークを言い合っていることなどがアマゾンやグーグルの担当者が「家族の一部になっている」と強調した点だが、スマートスピーカーは便利さを超えて、感情のやり取りができる「家族」や「友達」へと進化を遂げようとしている。