[特別支援学校] 「新設」は大きな前進だ
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 児童生徒や保護者らにとって明るい光が見えてきたといえよう。
 鹿児島県の三反園訓知事が、鹿児島市南部地区に高等部を備えた特別支援学校を新設する意向を明らかにした。候補予定地には同市上福元町の県農業試験場跡地を挙げた。早ければ6月議会に基本構想などを提案する。
 南部地区には桜丘養護学校がある。だが高等部がない上、児童生徒数の増加で施設が手狭なため、保護者らから整備を求める声が高まっていた。
 県が要望を受け入れ、新設を表明したことは大きな前進だ。
 ただ、新設を要望する活動は2012年ごろからあった。これまでに自宅から高等部までの距離が離れていることを理由に通学を断念したケースがあることを考えると、新設の決断は遅いぐらいだ。
 知事の表明を機に早急に整備を進めてほしい。
 桜丘養護学校には小中学部しかないため、卒業生の大半は高等部がある鹿児島養護学校(鹿児島市吉野1丁目)か武岡台養護学校(同市小野町)への通学を余儀なくされてきた。
 地区外への通学は時間がかかり、てんかん発作やたん吸引の必要性など症状によっては、生徒や保護者にかかる負担や不安が大きい。環境の変化にストレスを感じる児童生徒もいるようだ。
 このため卒業生の中には通学をあきらめ、教員が自宅などに出向く訪問教育に切り替えるケースも少なくないという。
 通学しやすい地区内への高等部新設を保護者らが要望してきたのは当然だ。さらに、桜丘養護学校の通学者は南部地区の人口増加に伴い増加傾向にある。
 10年度は37人だったが、17年度は最大受け入れ人数に迫る88人で、18年度は約100人が見込まれる。教室不足を補うため、今月からは図書室や技術準備室を教室に転用する予定だ。
 県内の児童生徒数が減少する一方で、計16ある特別支援学校に在籍する幼児児童生徒数は10年度の1841人が17年度には2172人と年々増えている。
 特別支援教育へのニーズの高まりを表している。
 特別支援学校を巡っては、住民の要望を踏まえ今月、喜界島と屋久島に高等部支援教室が設置されるなど充実が図られつつある。ほかにも新設を求める動きがある。
 障害の有無にかかわらず、児童生徒には教育を受ける権利がある。県は今後も、児童生徒や保護者らのニーズや声に耳を傾け、必要に応じて教育環境を整えてもらいたい。