牛肉の塊の山。キッチンに置かれたコレを見たら、ステーキやローストビーフになると思うかもしれない。否。この肉塊が辿る運命はなんと、コンビーフなのだ。
手作りコンビーフを味わえる店
改めまして、名古屋在住Webデザイナー兼ライター兼会社員のCatNoseです。
さて、あなたがコンビーフと聞いて想像するのは、缶詰のアレではないだろうか。しかし、名古屋では極上の手作りコンビーフを味わえるお店がある。
そのお店は「Cafe&Kitchen Doolittle」(発音はドリトル)。広めの店内には、ゆったりと間隔をあけてテーブルと椅子が並んでいる。椅子のデザインも様々で「お好きな席へどうぞ」と言われると、どの椅子に座ろうかと選ぶのも楽しい。
本棚にはセンスのいい雑誌が多数置かれ、開放的な雰囲気で、居心地がいい。ついつい長居してしまうタイプのお店だ。
ここであのワイルドな肉塊が調理されるというのだから面白い。
手作りコンビーフができるまで
コンビーフとは、簡単に言えば「塩漬けの牛肉を加熱してほぐしたもの」。ドリトルでコンビーフを作る手順は、超ざっくりと言うと
- 肉を調味液に漬け込む
- 塩抜きする
- 肉を煮込む
- 肉をほぐす
の4ステップだ。簡単そうに見えるが、合計5日以上もかかる。取材許可をいただいたので、数日掛かりの大仕事の全貌を包み隠さず紹介する(この記事で後ほど、オーナーさんに教えてもらった手作りコンビーフのコツを紹介しているのでそちらも要チェック)。
1. 肉を調味液に漬け込む
まずは、調味液を作る。鍋にクローブを始めとする数種類のスパイスを入れ、砂糖、それに大量の塩を加える。「塩漬け肉」というだけあって、塩の量がハンパない。
これに水を加えて、沸騰させ、吹きこぼれに気をつけながら数分間煮込む。粉類が溶け、スパイスから成分が染み出したら、火から下ろして氷水につけ、冷ましておく。
調味液が冷めてきたら、いよいよ肉の塊を調理していく。
こちらは調理される前の牛肉。適度な脂肪がありつつも、赤身が大部分だ。まだ「牛」感が残っている。普通に生活していたら目にすることはまずない、かなりのビッグサイズ牛肉だ(写真のまな板は、普通のまな板の3倍はある)。なお、一度に調理する量は、13〜15kgほどになるらしい。
これを大きなまな板の上で、ガシガシと豪快に切り分けていく。厚さは10cmほどだろうか。もうこのままステーキにして食べたい。
表面のドリップ(赤い液体。血ではない)を洗い流しながら、作業を進めていく。
肉の塊が巨大な肉の山になった。壮大なスペクタクルだ。エアーズロックを彷彿させる堂々感。これで半分くらいの量らしい。
切り分けた肉は、キッチンポットに詰めておく。肉肉しさがハンパない。みっちみちになっている。30cmくらいある、大きいキッチンポットなのに。
これに冷めた調味液をかけ、牛肉を浸す。小鍋に残ったスパイスの実も、残すことなくすべて加える。そうしたら落し蓋とラップをして、蓋をして完了だ。
これを冷蔵庫に入れて、5日程度放置。肉に調味液が染み込むのを待つ。しかし、まだ作業は中盤。現時点では「1.肉を調味液に漬け込む」が終わっただけだ。
2. 塩抜きする
5日後の肉塊の姿だ。これを塩抜きしていく。
「塩抜き」は、牛肉を煮込む前の重要な下準備だ。これを怠ると、完成したコンビーフを食べたときに、あまりのしょっぱさに顔をしかめることになるだろう。
まずは流水で表面の調味液を洗い流す。調味液を吸った分、くたっと柔らかくなったようだ。肉肉しさは相変わらずだが、生命力?みたいなのがちょっと和らいで「もう食肉になりました感」が出た(“さっきまで生きてた肉です”感が消えた)。
洗い流したら、キッチンポットに戻して氷水に漬け込み、塩抜きする。普通の水よりも氷水の方が、しっかりと塩抜きできるそうだ。このまま30分以上放置。
なお、漬け込んだ日数に合わせて塩抜き時間も調整する。1週間漬け込んだ場合はさらに長時間塩抜きする必要があるし、逆に3日程度なら短時間の塩抜きでよい。もし家庭で手作りコンビーフに挑戦するならば、ご参考まで。
3. 肉を煮込む
さて、塩抜きが完了したら、次はいよいよ煮込む(待ち遠しかった)。
山盛り牛肉を煮込むのに使うのは、体育座りしたら小柄な人なら収まるのでは、という大きさの大鍋。
皮をむいた人参とたまねぎを丸ごと放り込み、さらにまたまたスパイスを加える。そこに肉を入れていく。
肉を敷き詰めたら、赤ワインを加えて、最後に肉がひたひたになるくらい水も投入。
キッチンペーパーで落し蓋をしたら、いよいよ点火。弱火でじっくりコトコト、ではなく、割と強めの火でグラグラ煮込む。その時間、なんと半日。「ガス代」という言葉が脳裏をよぎったのは言うまでもない。しかし、手間暇とガス代をかけてこそ、激ウマなコンビーフが作れるのである。
4. 肉をほぐす
半日煮込んだ肉は、トングで掴むと崩れそうなほど柔らかくなった。これをザバっと引き上げて、ボウルに上げて少し置き、粗熱をとる。ジューシーな香りが鼻孔をくすぐる。この時点でそのまま食べたい衝動に駆られる。
冷めたらいよいよ、ほぐす作業だ。手袋をして、丁寧に細かく、余分な脂身を取り除きながら割いていく。
5日漬け込み半日煮込んだ肉は、大した力を入れなくても簡単にほろほろとほぐれた。柔らかい塊肉をぱかっと開く度、ふわっとジューシーな香りが立つ。そのまま食べたい衝動に以下略。
割いた牛肉がどんどんコンビーフになっていく。全て割くと、特大サイズのボウルに山盛りである。最初の生肉の山からは様変わり。立ち上るウマそうすぎる匂いがたまらない。そろそろ食べさせてくれ。
完成したコンビーフは1食分ずつラップで小分けにし、冷蔵庫で保管する。食べるときにはフライパンで軽く塩胡椒しながら加熱するようだ。このコンビーフがどのような料理になるのかは、どうぞ以下をご覧ください。
手作りコンビーフがボリューミーなサンドウィッチに
手作りコンビーフの最終形態その1は、サンドウィッチを売りにするドリトルの看板メニュー、「ホームメイドコンビーフサンドウィッチ」。
まず驚くべきはそのボリュームだ。厚みがすごい。4〜5cmはあるだろうか。トーストした食パンに、レタス、トマト、コールスローサラダ、そしてコンビーフがぎっしぎしに挟まっている。
トーストされたパンはカリッと、そしてバターが香る。新鮮なレタスがシャキッとした食感を与え、さらに瑞々しいトマト、かろやかな酸味のあるコールスローでさっぱり感。そして旨味が詰まりに詰まったコンビーフ。これはウマすぎる。
待ちに待ったコンビーフをようやく口にできたが、期待通り、いや期待以上のウマさだ。しっかりした味のコンビーフだけだと物足りないというか飽きが来そうだが、野菜やコールスローがさっぱり感や別の食感を加え、とてもいい仕事をしてくれている。
付け合わせはマッシュポテトとサラダ。マッシュポテトは温められていて、ほくほく滑らかな食感がいい。サラダは新鮮で、玉ねぎベースの特製ドレッシングがよく合う。このドレッシングが単体販売されていないことが惜しい。そのくらいドレッシングが美味。
その圧倒的ボリュームで「軽食」のイメージを覆すサンドウィッチ。がっつり満腹になれる。しかし、ドリトルはカフェなのでデザートの種類も豊富。デザートも心ゆくまで楽しみたいなら、一緒に行く人とシェアして食べるのもいいかもしれない。
濃厚トマトソース×米との相性も抜群
手作りコンビーフの最終形態その2は、「ホームメイドコンビーフのトマトソースごはん」。付け合わせはサンドウィッチ同様、サラダとマッシュポテト。真ん中にご飯、その上に手作りコンビーフ、さらには自家製トマトソースがたっぷりとかかっている。
まず、このトマトソースが極上だ。トマトやその他野菜の旨味と甘味が凝縮された、濃厚なトマトソース。そこに、手作りコンビーフの味が混ざっていく。旨味ぎっしりのコンビーフは、濃厚なトマトソースに負けることはなく、喧嘩することもなく、見事に調和する。
濃厚トマトソースが手作りコンビーフのウマさを引き出しまくったこの一品、実は最初は貸切パーティ時にのみ提供されたメニューだったらしい。好評を受けて、グランドメニュー入りを果たした。看板メニューのサンドウィィッチに負けず劣らずオススメだ。
おいしいコンビーフを作るには
コンビーフを手作りしたくなった人のために、オーナーさんに「家で作るときのコツ」を聞いてみた。
じっくり漬け込むこと
まず、肉を漬け込むときにはじっくりしっかり漬け込むこと。はやる気持ちを抑え、(肉のサイズにもよるが)しっかり長時間漬け込もう。
しっかり塩抜きすること
次に塩抜きだ。記事中でも書いたが、塩抜き時間が短いと、塩分が肉に残りすぎ、食べるときにしょっぱくなってしまう。じっくり漬けた分、しっかりと塩抜きを行い、余分な塩気を除くべし。
がっつり煮込むこと
もう一つのコツは、がっつり煮込むことだ。煮込み時間が短いと、肉がほろほろ崩れるほど柔らかくならず、うまくほぐすことができない。高額なガス代をかえりみず、がっつり長時間煮込むことが大事だ。なお、圧力鍋を使うのもオススメ。
「すぐにでも食べたくなるうまそうな肉肉しさ」に打ち勝つ忍耐力が必要となってくるが、自分で作ったコンビーフはきっと一層美味しいに違いない。興味があれば、クローブやローリエなどのスパイス、そして牛肉の塊を購入して、オリジナルコンビーフをぜひ作ってみてほしい。
コンビーフ以外のメニューも絶品
看板メニューのサンドウィッチは「グリルチキンとアボカドのサンドウィッチ」や、「チリビーンズとチェダーチーズのサンドウィッチ」など種類豊富。
また、ご飯ものも充実している。手作りコンビーフ最終形態その3の「ホームメイドコンビーフカレー」や、「てりマヨチキンごはん目玉焼きのせ」など多岐にわたる。
上の写真は「アボカドタルタルバーガー」。表面はサクッと、中はもっちりしたパンに、レタスとトマト、スパイスの効いたジューシーなパティ、滑らかなアボカド。そして最高なのがこのタルタルソース。ツナが入っていて、刻んだ玉ねぎやピクルスの酸味と甘味が絶妙なのだ。
カフェらしいスイーツメニューも
ドリトルのフードメニューはいい意味でカフェらしからぬ大胆さがある。もちろんカフェらしいスイーツやドリンクメニューも充実している。ブレンドコーヒーやいろんな種類の紅茶やハーブティー、さらにはシーズンズドリンクとしてタピオカ系のミルク系、ソーダ系のドリンクなど。
こちらは珍しい、「よもぎ茶」。体がいいかんじに温まり、よもぎの風味の余韻がいい。
スイーツはワッフルやチーズケーキ、パンケーキやパフェなど。こちらも迷うほどにいろいろとある。
こちらは「ローストバナナ&キャラメルチョコパンケーキ」。甘味を引き立てるほんのりした塩気が美味しい薄めのパンケーキに、チョコソースとキャラメルソース。ローストされたバナナは甘味が5倍くらいに増したように感じられる。たっぷりの生クリームとバニラアイスと一緒に食べれば最高。
さらに、ドリトルおすすめの激ウマスイーツといえば、パフェ。こちらは「モンブランパフェ」で、秋冬限定メニュー。
濃厚なマロンクリームにバニラアイスとさっぱりした紅茶アイス、生クリーム。なにより最高なのは、パフェ下部のクッキークランブルだ。コーンフレークだと溶けたアイスでふにゃふにゃになりがちだが、コロコロしたクッキークランブルなら最後までザクザク感が健在。ナッツ系の風味がたまらない、そのまま焼き菓子として食べたいクランブルだ。これがまた生クリームやマロンクリームと合う。
他にも季節ごとにいろんなパフェをやっているので、リピートしたくなる。イチオシのパフェは夏の「まるごとピーチパフェ」。桃がまるまる一個分のっている。これにハマった常連客も多いとのこと。ワンシーズンに20回も食べに来た猛者もいるらしい。
アクセス
フードからスイーツまで、胃袋をがっちり掴んでくるドリトル。立地は少々駅から離れているが、土日は混雑している。事前に予約を入れておくのがオススメだ。
最寄駅は地下鉄東山線の覚王山駅。名古屋駅から地下鉄で15分ほど。覚王山駅の4番出口から1km歩けばつく。なお、地下鉄名城線・東山線本山駅や鶴舞線川名駅からも似たような距離。駐車場が9台分と充実しているので車で行くのも良い。
ちなみに、ドリトルが入っているおしゃれな建物は、実は「ica associates inc.」という建築設計事務所の持ち物。その1階がドリトルだ。2階はレンタルスペースとなっていて、イベントやミーティングだけでなく、キッチンもあるのでパーティなどもできる。なお、Fit Vitaというパーソナルトレーニングスタジオもあり、ドリトルで食事をした際にはちらっと覗いてみると楽しいかもしれない。
店舗情報
- ジャンル:カフェ
- 住所: 〒464-0827 愛知県名古屋市千種区田代本通5-3 nuビル1F
- エリア: 覚王山・東山公園
- このお店を含むブログを見る | 覚王山・東山公園のカフェをぐるなびで見る
営業時間:11:00〜22:30(ラストオーダー22:00)
定休日:水曜、木曜
TEL:052-762-0809
公式HP:http://www.cafe-doolittle.com/
※この記事の内容は、2018年3月時点の情報です。
書いた人
CatNoseです。名古屋在住Webデザイナー兼ライター兼会社員。
「LITERALLY」というブログと「サルワカ」というWebメディアを運営中。飼っているのは犬。