女王アリを中心とするアリの集団(コロニー)で、働きアリが産んだ卵を他のアリが破壊する行動について、アリ数が少ない若いコロニーほど厳しく「取り締まり」が行われていることを琉球大学農学部の辻和希教授らの研究グループが明らかにした。「働き手」のアリの産卵が「労働力の低下」や「次世代の繁殖総数の減少」につながるためとみられ、研究チームは「昆虫社会の進化の理解を深める」と指摘している。

産卵を試みる個体(中央)を2匹の個体が抑え込む様子(辻和希教授提供)

 アリ科の多くは、女王アリがメスのみの働きアリを産み、働きアリの一部は交尾を必要としない単為生殖でオスを産むことがある。

 辻教授らは2009年、互いに産卵を監視する行動が「コロニーの成熟度」に影響すると予測理論を立てた。県内に生息するトゲオオハリアリのコロニーを観測し、働きアリが産卵した後の卵の破壊割合を記録していった。

 その結果、働きアリの数が150匹以内だと、卵の8割以上が破壊されたが、200匹のコロニーでは2割程度に激減した。研究グループはコロニーが未成熟のときに産卵に至れば、次世代のアリの繁殖総数が減り、集団に不利益になると分析。初期段階での「取り締まり」が強化されると結論付けた。研究成果は28日付で、国際的な科学ジャーナル「英国王立協会紀要」に掲載された。

 辻教授は「生物の個体が成熟後に出産するように、アリも集団ながら成熟・産卵に至ることが分かった。働きアリは自分のコロニーの生息数を正確に理解しているとみられ、今後は把握方法の解明を目指したい」と語った。