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推定分野について  


概要

京都大学大学院情報学研究科 梅野健 教授、新谷健 同修士課程学生(現・フォルシア株式会社 社員)は、株価や為替変動といった金融市場の価格変動分布、地震が起こる間隔などの確率統計分布、そしてインターネットのトラフィック等の世界中の様々なビッグデータにあらわれる「べき則」の普遍性を説明する、新しい統計法則を発見しました。この統計法則は、統計学の基本法則である中心極限定理を一般化した一般化中心極限定理を更に拡張したもので、「超一般化中心極限定理」と呼ぶことのできる画期的なものです。データ上に普遍的にあらわれる本法則によって、世界の様々な現象の統計モデルが構築できると期待されます。


本研究成果は、日本物理学会の国際学術誌「Journal of the Physical Society of Japan」の速報版に、2018年 4 月2日にオンライン公開されました。


1.背景

世界はべき則で溢れています。金融市場の株価変動や為替変動といった価格変動分布、地震が起こる間隔などの確率統計分布、そしてインターネットのトラフィックなど世界中の様々なビッグデータが、べき則であらわされることがデータ解析により解ってきました。ただ、何故、べき則が、異なる現象に普遍的に現れるのかといった基本的問題が、未解決なまま残されていました。最近では金融取引の自動化が進み、株価や為替変動の高頻度化に伴ってデータ量がますます多くなり、データ上にべき則があらわれるというこの傾向が、よりはっきりとしてきました。従来、統計学で用いられるデータ解析では、データの数 N を無限にとった時に現れる基本的な統計則として、Laplace(ラプラス)、Chebyshev(チェビシェフ)、Gauss(ガウス)等による中心極限定理や Gnedenko(ネデンコ)、Kolmogorov(コルモゴルフ)といった先駆者による一般化中心極限定理が用いられてきました。しかし、現代のビッグデータでは、個々に異なるべき則分布の和においても、ある基本形のべき則(レビの安定分布)になるという現象が見られます。これは従来の極限定理では捉えきれないものですが、そうした現象があらわれる理由は解明されていませんでした。


2.研究手法・成果

本研究では、現実のデータを反映した、従来の統計則である極限定理では捉えることができない、異なるべき分布を個々に持つ独立な確率変数の和という統計モデルを定式化しました。その上で、データの数 N を無限にする極限において、レビの安定分布というべき則の基本形(基本べき則)に収束するという極限定理を導出しました。


この極限定理は、統計学の基本法則である中心極限定理をべき則に一般化した一般化中心極限定理を、さらに異なるべき則の和の極限に拡張したもので、「超一般化中心極限定理」と呼ぶことができます。より一般化された状況でも成立する極限定理としての統計学的な意義があるとともに、現実世界の至るところにあらわれるべき則の普遍性を示すビッグデータの特徴を正確に記述する基本統計則としての意義も持つと考えられます。



3.波及効果、今後の予定

今回得られた「超一般化中心極限定理」を、金融市場の株価変動や為替変動、地震の間隔といった実データに基づくデータ解析に適用し、その極限定理のもつべき則の基本形であるレビ安定分布のパラメータ(α(べき指数)、β(歪度))によって、世界の様々な現象の統計モデル化を行っていきます。さらに、金融市場の安定性とこれらのパラメータがどのように関わっているか等を検証していきます。


<用語解説>

べき則

確率分布が、正規分布(ガウス分布)の様に、変動幅に対して指数関数的にゼロに減衰するのではなく、変動幅に対してべき的にゆっくりゼロに減衰すること。確率密度関数を数式で表現すると、以下の様になります。ここでαが、べき指数となります。



レビの安定分布

ベき指数α(0<α≦2)と歪度β(-1≦β≦1)の2つの基本パラメータを持つ確率分布であり、独立な確率変数の和は適当な一次変換によって元の分布になるという特徴を持ちます。α=2の時が歪度βがゼロの完全対称な正規分布に一致し, 中心極限定理において、確率変数(データ)の数を無限大にした時の極限で収束する極限分布に相当しますが、今回得られた「超一般化中心極限定理」や一般化中心極限定理において、確率変数(データ)の数を無限大にした時の極限で収束する分布は、べき指数α(0<α<2)、歪度β(-1≦β≦1)を持つ、べき則となります。


<論文タイトルと著者>

タイトル:Super Generalized Central Limit Theorem

-Limit Distributions for Sums of Non-identical Random Variables with Power Laws -

著者:Masaru Shintani and Ken Umeno

掲載誌:Journal of the Physical Society of Japan Vol. 87 (2018)

Doi:https://doi.org/10.7566/JPSJ.87.043003


<イメージ図>