「わろてんか」一週間[終] 第26週「みんなでわろてんか」[字] 2018.04.02
・「出かける時の忘れ物」・「ひょいとつかむハンカチのように」・「心の中にすべり込む」・「いちばんちいさな魔法」・「泣いたり笑ったり」・「今日も歩き出す」
(つばき)この辺りはのどかですね。
てんたちは疎開先にやって来ました
(りん)姉さん!皆さん!
(てん)りん!遠いとこようお越し下さいました。
こちらうちの人のいとこ新平さんです。
今回は大人数でごやっかいになります。
うちも薬草農家代々藤岡屋さんにはお世話になってますさかい。
でここの主の…。
あれ来てへんがな。
どこ行った?お父ちゃん!お父ちゃん!
(治平)あんたとこの会社なこの非常時にまだ漫才みたいなもんやってはんねんてな?笑いなんてくだらん!すんませんな堅物な親父で。
いえ。
(ミツ)ほなごゆっくり。
大阪は大空襲に見舞われました
(イチ)専務!
(風太)おい逃げて!はよ!もうあきまへん!逃げまひょ!死んでまいまっせ!くそったれ…。
何が何でも守ったるからな。
(リリコ)怖いわ!
(アサリ)どこや!?キース!
(せきこみ)姉さん!ああ…どないしたんや?大阪が空襲で焼け野原になったて…。
え…!?
(トキ)おてん様飛鳥の事頼んます。
待って!落ち着き。
けどうちの人が!行くんやったら私が行きます!2人とも行ったらアカン!あんたらが行ったら子ぉが心配するやろ。
天満の風鳥亭に電報打ってもう1週間もたつのに…。
風太に言われたやろ。
「俺には笑いの神さんがついてるから大丈夫や」て。
どんな時でもわろて暮らせばまた会える。
・
(笑い声)
(飛鳥)口は…そうだな。
(笑い声)うちがこんな暗い顔してたらアカンわ。
福笑いみんなでやらへんか?
(飛鳥藤一郎)うん!ほなうちからやらしてもらいまひょ。
飛鳥ちゃん渡し。
何からやまず。
目!目。
目…この辺か?
(笑い声)ん?あとは?これがもう片方の目。
大阪がどないな事になったか知ってるやろ!はい。
そやからこうやって福が来るように…。
ええ加減にせえ!
(りん)治平さんも昔はよう笑うお人やったんやけど。
孫の洋平さんを兵隊さんに取られてしもてから全く笑わはらへんようになって…。
うちの息子も戦争に行ってるんです。
ホンマは毎日泣きたいくらいです。
けど泣いてあの子が喜ぶとは思えまへん。
昔病で亡うなったうちの兄が言うてたんです。
「人生いうんはつらい事だらけや。
そやからこそ人間には笑いが必要になったんや」て。
笑えばきっと幸せになれるてそう言いたかったんや思います。
「笑う門には福来る」か。
へえ。
何やえ?何何?もう。
(笑い声)面白い。
お父ちゃん…。
アカン…何か食わしてくれ。
あんた!お父ちゃん!お前らの笑顔見るまで死んだらアカンて思たら助かった…。
(風太)大阪も東京も空襲で北村の寄席は全滅や。
持ってこれたんはこれだけや。
この看板は俺ら北村の社員と芸人全員の夢の証しや。
うちは風太が無事やっただけで十分や。
残った皆さん…?あちこち捜し回ったんやけど見つからんかった。
(ラジオから玉音放送)
8月終戦を迎え…
うちは大阪に戻ろう思てます。
大阪はまだ危ないえ。
もうしばらくはここにおった方がええで。
ありがとうございます。
けどみんなが風鳥亭に帰ってきた時にうちがいてへんかったら寄席も始められまへん。
こないなって…。
てんシャキッとせえ。
てんが笑わんでどうする?うん。
てんと風太はみんなが帰ってくるのを待ち続けました
すいとんいかがですか?1つくれ。
へえおおきに。
5円です。
生地足らへんな。
作ってくるわ。
おおきに。
ねえさん俺にも1つ頼むわ。
へえ。
わしももらうわ。
あっ!何やのもう!返して!離せ!このアマ!イテテテテテッ!コノヤロー!大丈夫ですか?伊能さん…。
(風太)大丈夫か?伊能さんや〜!お帰りやす!
(栞)ただいま。
実はマーチン・ショウのつてで向こうの映画会社にいたんだ。
そこで信じられる仲間ができた。
日本との開戦直前に中立国にある映画会社の支店に僕を送り出してくれたんだ。
そうでしたか。
僕に何かできる事はないか?僕は北村の人間だ。
再建のために働かせてほしい。
みんなまだまだ食べるんで精いっぱいです。
芸人さんも一人もいたはらへんし。
そんな時に寄席を再建するやなんてうちらにはできまへん。
てんは何もできひん自分を責めてんねや。
何より隼也が帰ってきぃひん。
このままやったらてんは歩きだせへん。
(風太)おいお前ら全然進んでへんやないか!
(一同)すんまへん!すんまへんてお前はよせえ!風太!伊能さん!あちこち当たってみたがどこも資材不足で難しいな。
手に入ったもんでコツコツやるしかないな。
うちはまだ…。
ライバルが立ち止まっていたら引っ張ってでも歩かせる。
横に並んでこそのライバルだ。
さあ手伝って。
久しぶりに体動かして汗かいたら何やすっきりしました。
やっと日本にも自由な文化が花開く時がやって来た。
今度こそ自分の作りたいものを作れる。
だから君ももう一度歩き始めるんだ。
夢はまだ終わっちゃいないだろ。
(アコーディオン)・「赤いリンゴに」すいませんごめんなさい。
・「口びるよせて」・「だまってみている青い空」リリコさん四郎さん…。
戦争が終わってすぐ命からがらここに寄ったんやけど誰もおらんかったんや。
風太が命がけで守ってくれた看板や。
この看板があるとこが笑いの1丁目1番地や。
うちらの風鳥亭を再開して新生北村笑店を旗揚げしましょ。
あんた張り切り過ぎたら腰痛めんで。
(四郎)ああ。
あっあっあっ!何してんねんお前!あっあうっう〜。
・こら待たんかい!
(キース)おお〜うわ〜!逃げんなコノヤロー!そやからちゃうて!詐欺とちゃう!ほなそれ何や!見せてみい!「カナダより直送」。
このご時世にカナダから輸入なんかできる訳ないやろ!釣り上げたんは和歌山やけど広〜い太平洋で言うたらまあどっちかいうたらカナダ寄りいうてな!ハハハハハハ!ハハハハハハハハ!お前らええ加減にせえや!キースさん!アサリさん!社長!みんな!助けて。
(警官)逮捕や。
アサリの実家にやっかいになってたんや。
居心地がようてなぁ。
そしたら風鳥亭再開するさかい芸人捜してるて風の便りに聞いてな。
キース・アサリがおらんと始まらんやろ?ありがとうございます。
・ごめんやす。
おおっ!亀さん!?万丈目はん歌子はん…。
(万丈目)社長…。
(歌子)夢やないんやろな…。
北村笑店の家族が次々と帰ってきました。
そして…
(子どもたちの声)
(隼也)舞台や…。
舞台やで!誰?隼也…。
お母ちゃん…。
隼也!ただいま。
よう戻ってきた。
お願いがあります。
僕にもこの寄席手伝わせて下さい。
戦場で笑いがどんだけ大事か身にしみて分かった。
明日の命がどうなるか分からへん時でも戦友とくだらん話してわろてるだけで今生きてる明日も生きようって思えたんや。
やっぱり僕笑いが好きや。
お願いします。
分かった。
今日からあんたは北村笑店の一員や。
おおきにありがとうございます。
お気張りやす。
風鳥亭を再建し新生北村笑店が本格的に動き始めました
うちは新しい笑いに挑戦したいんや。
新しい笑い?漫才みたいに誰もがおなか抱えて笑えるようなそやけど落語の人情噺みたいにしみじみ人の情を感じるような笑いや。
それやったらショウみたいなのはどやろ?芸人さんらみんないっぺんに出演してもろて一つの舞台作るみたいな。
せやけど台本はどないすんの?それがあるんです。
万丈目はんが疎開中に書かはったんや。
「北村笑店物語」ですわ。
おお!社史作ってる時にわてらがたどってきた歴史をも一回よう見直してみたんやけどオモロイな思てなぁ。
万丈目はんこれこけら落としまでに仕上げられるか?へえ。
せやけど演じる芸人の役が全然足りまへんけどな。
それやったら裏方みんなも総出でやったらええ。
(一同)え?この焼け野原に北村笑店がよみがえった事笑いの灯ぃがともった事一刻もはよう大阪中に伝えたいんです。
今回は北村の熱意を見てもらうための特別興行や。
お代はただでお客さんに腹いっぱいわろてもらお。
面白なってきたわ!藤吉役は誰がやるんや?何であんたやねん!え?ええのがいてますわ。
え?え?お〜い!もともと旅芸人で芸はまだまだですけど笑いが好きやいう気持ちは先代そっくりや。
いや無理無理無理!俺には無理です!怖がってたらあきまへん!笑いが好きなんですやろ?それやったら堂々とやったらよろし。
けど…。
ほなうちも出ます!
(一同)えっ!?そやさかいあんたも一緒に出るんや。
いよいよ青空喜劇開演の日
うちらには笑いの神さんがついてますえ!
(一同)へえ!そろそろ始めまひょか。
(藤吉の声)待て待てどこ行くんや。
(楓)「北村笑店物語」始まり始まり〜!
(柝の音)
(拍手と歓声)「藤吉はん!」。
「お…おてんちゃん!」。
(笑い声)「ホンマに来てくれたんか」。
「誰に言うてますのん?うちここですえ」。
(笑い声)「ここの小屋どうどす?」。
「え…ええな。
こんだけガタがきてたら安いやろしな」。
「ホンマボロボロですね」。
「あんたええ加減にしいや」。
(笑い声)「あんたらみたいな素人に売る訳にはいきまへんな」。
「せや素人の出る幕やない!」。
(観客)おっ四郎や!
(鈴の音)「この人は寺ギンさんいうてな借金で芸人縛りつけて好き放題にこき使てんねや」。
(四郎)「大阪の芸人はみんなわしのもんや。
ハハハハハ」。
(藤吉)「芸人は物やない!熱い血の通た笑いもすれば涙も流す人間や!」。
(観客)おお〜!藤吉はん?「気に入った!あんたらに小屋売ろう!」。
えぇ〜っ!
(2人)「ホンマですか!?」。
あんたらみたいな人になうちの小屋使て…」。
おっわしまだしゃべっとるがな!
(拍手と笑い声)ウケてる。
わし天才かも。
あ〜はいはい。
藤吉はん?社長すんまへん!田口君どいてどいて。
ああすんまへん。
こっちやこっち。
(楓)てんと藤吉は寄席の数を順調に増やしていきましたが…。
どんどんお客さん集まってきはるな。
そやな。
「あんな寺ギンが北村笑店潰すていきまいてるらしいで」。
「北村が芸人抱えて雇うたら寺ギンなんか怖ないんやけどなぁ」。
(鈴の音)「邪魔すんで!」。
邪魔すんねやったら帰って。
「邪魔したな」。
何でやねん!「150人の芸人全員がここ北村笑店に来たい言うたんや」。
あれ?同じや。
何の話してんの。
「こいつらの借金面倒見てくれるんやろうな」。
「待ちたまえ。
その借金僕が支払わせてもらおう」。
(四郎)「誰やねん?」。
「北村笑店の相談役伊能です」。
昨日は金曜日や。
(笑い声)「きのう」やのうて「いのう」や。
伊能?「あの…きのうさん!」。
「伊能です!」。
「大丈夫です。
爪に火ぃともしてためたへそくりどうぞ持ってっとくれやす!」。
はい。
どこ持ってくねん!カメ違いや!「亀持っていけ」て。
違う!何をやってんねん!待て待て待て!
(笑い声)こりゃいけるで。
(鈴の音)社長なんとかできたみたいでありがとうございました!
(拍手)「笑う門には福来る」。
今がどんなにつろうても笑うからこそ幸せになれる。
そう信じてます。
もししょんぼりしてはる人がいたはったらどうぞ手ぇ取って言うたげとくれやす。
「わろてんか」て。
ほな皆さんご一緒に。
(一同)わろてんか!
(拍手)こっからがまた始まりや。
今日からまた百年先目指して気張ります。
てんやったら大丈夫や。
藤吉はん。
ん?これからもわろてんか。
よろしゅう頼んます。
やってまった…。
2018/04/02(月) 01:05〜01:25
NHK総合1・神戸
「わろてんか」一週間[終] 第26週「みんなでわろてんか」[字]
てん(葵わかな)はおトキ(徳永えり)たちを連れ、滋賀に疎開した。大阪には風太(濱田岳)が残り、細々と寄席を続けていたが、昭和20年1月の空襲で焼失してしまう。
詳細情報
番組内容
てん(葵わかな)はおトキ(徳永えり)やつばき(水上京香)たちを連れ、妹りん(堀田真由)のつてを頼って滋賀に疎開した。大阪には風太(濱田岳)が残り、細々と寄席を続けていたが、昭和20年1月の空襲で焼失してしまった。終戦後すぐに、てんと風太は風鳥亭の焼け跡に戻って、芸人たちが戻るのを待つことにする。てんはなかなか復員しない隼也(成田陵)を心配し落ち込むが、風太(濱田岳)と北村笑店再建に向けて動き出す。
出演者
【出演】葵わかな,松坂桃李,高橋一生,濱田岳,広瀬アリス,徳永えり,大野拓朗,前野朋哉,岡本玲,成田凌,水上京香,枝元萌,松尾諭,藤井隆,内場勝則
原作・脚本
【作】吉田智子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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