2018年04月01日

NBK10年のまとめ


 ※この記事は”エープリルフール・フリー”(つまりウソとかではない)です。

 この年度末(2018年3月末)をもって、現職に就いて丸10年が経ちましたことを、ご報告致します。
 あ、転職記事とかではないので、4月からは11年目を迎えることになります。

 30代半ばから40代半ばという時期にひとところに腰も腹も据えてみると、何ができるものなんだろう、と考えながらふりかえると、できたこと、できなかったこと、やっておきたかったこと、まだやれそうなこと、やるつもりでtodoリストに入れてたけどいつのまにかふわっと消えてて、まあやんなくてもいいか的なことなど、いろいろ思いは巡るわけなんですけど、とりあえず、どんだけのことできたかなという記録を残す感じで。

・システムリプレイス1回目 (2009-2010年)
 前任者がお膳立てした仕様書その他を引き受けて、入札~導入を担当したもの。内容的にかつ手続き的にわけがわからんことばっかりなうえに、そもそも他人から引き継いだものというわけわからなさのディスアドバンテージもあり、という種類の苦労をしたものの、その道に強い同僚がいてくれてたおかげと、全体的に大した変更もない感じだったのとで、幸いにして辛さはなかったという感じ。

・外書館(第2資料館)完成 (2010-2011年)
 新しい建物が一つ建って、面積が1.5倍に増えたという事件。フロアプラン作成とその所内調整、施設設備プランとその所内調整、これも施設担当者ほか各方面からの教えとご協力でなんとかかたちになったもの。これに加えて、蔵書26万冊(当時の全蔵書の過半数)の再配置&大移動をプラン&指揮するという”大物パズル”に取り組む日々でしたが、なんていうか、たぶんこの手の”パズル”が好きな気質なんだと思います、じゃなきゃできてない。

・温度湿度計測 (2011年頃から)
 外書館完成を機に、館内各フロア・各室の温度湿度環境の計測・監視と管理をちゃんとしないとヤバいだろう(実際ヤバいことがあった)、という感じになって、それまで対処療法的にしかやってなかった温度湿度計測を、2011年頃から全館対象&定期的に、2012年頃からは毎日やるようになった、というやつ。
 さほど大きくないトピックながらなぜ取り上げたかというと、これ毎日やるの結構手間は手間なんですけど、やってみると各フロア・各室の実態を職員各自が身をもって理解できるようになり、何かと敏感になって対策行動をとるようになったりして、窓やカーテンのケア、除湿器・空調のケアをこまめにするだけでなく、紫外線対策や害虫調査の開始にもつながったりする。さらには、保存環境と資料への影響を気にするようになると、劣化フィルムの媒体変換や配置場所の変更なんかにも及ぶようになる、という感じで、いろいろいい方向に転がる起点になってたんじゃないかと、いまにしてみれば。
 「継続は力なり」って”蓄積”よりも”展開”のほうで力なりだったりするかもしれないですね。

・転籍 (2011年)
 仕事としてやったことではないですが、ここに挙げたほぼすべてのプロジェクトに影響するファクターのひとつとして。

・『本棚の中のニッポン』執筆・刊行 (2011-2012年)
 これも仕事としてやったことではないですが、この職場とこの職において、自分の力の及ぶ範囲でできたことがあるとするなら、これもその大きなひとつなので。
 これがあったからこそ、仕事をする上で何かと話が通りやすく協力が得られやすく、仕事がやりやすくもなり、仕事をどうしていくかの指針にもなり、仕事が増えることにもなり、という感じでした。という意味で、ありがとう>自著。

・資料館3階改装・貴重書庫増設 (2012-2013年)
 1フロアをまるごと改装して、空調入りの基調書庫や古典籍室等を増設したもの。温度湿度計測をはじめとする環境管理への取り組みと考え方が、地味に役に立ったひとつかと。何より、置けない本が置けるようになるというのは、とても心がすがすがしくなるもので、ちょっとやそっとの寄贈ではうろたえなくなりました。このときの蔵書移動は1.6万冊。

・大英博物館へ春画運び(2013-2014年)
 専門ではない分野・種類の資料を、専門ではない業界の方法にのっとって、接したことのない業者や個人の人々と接しながら、事故なく預かって事故なく外国へ運ぶという、最初から最後まで何ひとつ”やったことのない”ことばかりをやってたという、ミッション:インポッシブル過ぎるやつ。春画の先生や、ロンドンの学芸員や、ヤマト運輸の専門家や、古美術商の人たちに助けられつつ、わからないことは一から調べ、勉強し、聞いてまわって、なんとかする、という”リアルMLA連携”でした。(参照:http://egamiday3.seesaa.net/article/376964225.html

・映像音響館(第3資料館)完成 (2014-2015年)
 ウソでしょと思いましたけど、新しい建物がもう一つ建って、面積が当初に比べて2倍に増えたという事件。これもさらに、フロアプラン作成とその所内調整、施設設備プランとその所内調整。前回の外書館(第2資料館)がほぼ全フロア書架&図書を置けるだけ置く、というプランだったのに対し、今回の映像音響館(第3資料館)は視聴覚室・グループ閲覧室等の”機能を持たせる”使い方をすることになった関係上、機器・家具・什器の類の検討と調整に悩まされたという感じでした。このときの蔵書再配置&大移動は24万冊、これも大物パズル。
 ただ、実を言うと外書館(第2資料館)ができただけではまだ本の置き場所が不足していて、本のずらしや別置移動といった作業が日常茶飯事で非常にしんどかったのですが、えらくしたもんで映像音響館(第3資料館)ができるとさすがに日常的な図書移動はせずに済むようになり、これまたちょっとやそっとの大規模寄贈ではうろたえなくなりました。

・システムリプレイス2回目 (2014-2015年)
 なんと、よく考えたら、映像音響館完成対応と業務システムリプレイスとが同じタイミングで進行してたんですね。しんどかったはずだ。
 しかもこの時のリプレイスは、OPACが次世代っぽいやつに大幅にかわるやつで、わりと検討・調整がかかった気がする。

・EAJRSでブース出展を開始 (2015年)
 それまでEAJRSへの参加は毎年継続できていたものの、教員による発表がメイン、事務方はそのサポート的な位置づけでした。それが、2014年ルーヴァン大会に参加したときに、出版社・ベンダーによるブース出展とワークショップがおこなわれるようになっている。そしてそこに公的機関であるアジア歴史資料センターさんも参加している。だったらうちとこも、これに乗らない手はないですよね、事務方主体で具体性・実効性のある広報活動ができるんだし、というんで、諸調整して翌2015年のライデン大会から実現させたもの。いまでは「リソースプロバイダーワークショップ」というかたちで、歴博さんや国文研さんなどの国内のたくさんの公的機関も参加くださってます。

・中断していたCEAL/NCC参加を再開 (2016年)
 北米でおこなわれているCEAL/NCCへの日文研からの参加は、2008年まで毎年おこなわれていたはずなのですが、不運にも途中でお取り潰しされ中断の時期がありました。その再開のため、水面下/表面上で数年かけてくりかえし提案・調整して、時間はかかりましたがなんとか2016年トロント大会から再び参加できるようになった、というもの。これがのちのOCLCにもつながった、のかな。

・OCLC WorldCatに目録登録&WorldShareILL参加開始 (2017-2018年)
 かねてより、海外ILL受付の実績が少なく、受付方法もふわふわしてて確固たるものがなく、海外機関や海外司書に懸命に広報してみてもいまいち手応えが得られず、ということが長年続いていたのを、もうハーバードから帰ってきて10年経とうとしてるのにまだILLひとつ解決できてないっていうのをある意味”キレ”たかたちになって、いいよわかったよ要は早稲田さんみたいにOCLCに直で入れってことでしょうよ、っていう勢いで紀伊國屋さんや各種関係者に教えと協力を請うたところ、諸々のタイミングと各方面のご理解が重なって、かなりスムーズに実現したので、ありがとうございます、あとはほんまに実務レベルでのILL受付対応をこなすフェーズです、ていう感じ。

 もちろん、大項目として挙げたこれらだけでなく、中小規模のあれこれ--土曜開館、デジカメ・スキャナ対応、NDL研修・JAL研修・同志社実習の受入、ガイダンスや蔵書点検のルーチン化、NDL送信サービス、展示室・機器室・企画室等の各室整備、機関資料の確保、各種各地での登壇・会議出席--は枚挙に暇なく、その度ごとに教えと協力を請い、調整してるという感じ。また、外書館・映像音響館レベルではないにせよ、数万・数千冊単位の図書移動も、集密/固定書架の館内随所での増設も、ほぼ毎年のように発生しており、その度ごとに中小規模のパズルに頭をひねってるという感じです。

 何事によらず、ご理解・ご協力くださった/くださっている各方面のみなさまに、あらためて御礼申し上げます。

 2008年4月、最初来たときは当然ながら、まさか10年(以上)勤めることになるとは思ってもいなかったわけですが、リアルに同じ部屋の同じ机につきながら、諸々の業務・事業に取り組み、諸々の資料・人・国・機関に触れ、タスクをtodoリストに入れたり出したり右から左へ受け流したりしているうちに、10年になりました。

 ふりかえって思うこととしては、できることはやったらいいし、できないことや難しそうなこと、コストパフォーマンスの悪いことは、無理にがんばってやることもない。ただ、がんばる必要もないけど、あきらめる必要もない。
 やりたいんだったら、とりあえずやってみる、ダメならどうすればできるかを考える。うん、やっぱりがんばる必要もないし、あきらめる必要もないですね。
 正直、実際にやるかやらないかはあんまり重要じゃないし、何が何でもやらなきゃって、やること自体を目的化(特に短期的に)してしまうと、あんましろくなことにはならないんじゃないかなと思いますね。そもそもそんなカリカリしてやったことが良い方に転ぶか悪い方に転ぶかは、結果出るだいぶ先までわかんないわけだし。
 それよりは、やりたいか(意思・志向)、やるべきか(意義・需要)、どうすればできるか(算段・問題解決)のほうがむしろ重要で、そこが醸成できてればあとは調整とタイミングの問題だから時間がかかってもよければそのうちやれることもあるんじゃないかな、ていう。
 そんなこんなしてるうちにそれなりのタイミングで、出せる結果が出せればいいな、というのが、これまででもありこれからでもあります。

 そんな感じです。

posted by egamiday3 at 20:39| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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