ミルトン・フリードマン、暴露さる……軽量経済学者によって
ジョゼフ・サレルノ
https://mises.org/blog/milton-friedman-debunked-%E2%80%94-econometricians
https://lewrockwell.com/2017/05/joseph-salerno/milton-friedman-debunked/
オーストリア派は経験的現実、わけても生の統計データが、ユニークであると気づいている。そのデータを揉み解して、平均して、季節性を取り除いて、などとさせてみよう。そしたらそのデータは必ず現実を反証する。―Murray Rothbard, Making Economic Sense[1]
[1] https://fee.org/articles/austrian-inflation-austrian-money-and-federal-reserve-policy/p. 246
長年にわたり、わたし――たちオーストリア派――はマリー・ロスバードが一九二〇年代をインフレ期間と描写するためにその間の貨幣成長率増加のデータをはぐらかしているというマネタリストの攻撃に耐えなければならなかった。わたしが著名なマネタリスト歴史家リチャード・ティンバーレイクとのやり取り[2]に際して(ここ[3]で)論じたとおり、これらの申し立ては事実無根である。なので、ミルトン・フリードマンとアンナ・シュワルツ(FS)の経験的主張を徹底的に解体する三人の軽量経済学者の一触即発の記事に君の注意[4]を向けるのはおいしい皮肉である。いわく、アメリカ合衆国の貨幣速度は一九七五年に至るまで一世紀以上にわたり長期的安定性を呈していたのである。
[2] https://fee.org/articles/money-in-the-1920s-and-1930s/; https://fee.org/articles/austrian-inflation-austrian-money-and-federal-reserve-policy/; https://fee.org/articles/austrian-inflation-austrian-money-and-federal-reserve-policy/
[3] https://fee.org/articles/money-and-gold-in-the-1920s-and-1930s-an-austrian-view/; https://fee.org/articles/inflation-and-money-a-reply-to-timberlake/
[4] http://voxeu.org/article/milton-friedman-and-data-adjustment
ニール・エリクソンとデイヴィッド・ヘンドリー、ステッドマン・フードはFS〔フリードマン・シュワルツ〕の経験的モデルの如何わしい「データ調整」が「貨幣流通速度の明白な運動を減少させ、……推定上の貨幣需要モデルの恒常性と一致に対し逆に影響した」と論じた。言い換えれば、貨幣需要(速度の逆数)が定数であるという、FSが一九六三年から一九八二年までに出版した統計学的鈍器で骨折って推敲しマネタリズムの要にした経験的主張は、統計的詐術であると暴露されてきたのである。
FSは生のデータを次の二点の説明用に調整した。第一に、アメリカ経済のイギリス経済に比しての金融商品と金融制度の急成長の突発。第二に、景気循環に関連する速度の短期的変動だ。エリクソンらが指摘するには、FSは「金融洗練の変化」に調整する際、一九〇三年に先立つ貨幣供給観察に2.5%の線形動向を加えたが、その年以降のデータにはまったく動向調整を行わなかった。この過程で、彼らは一八六七年の貨幣ストックをその生の未調整な価値12.8億ドルから31.5億ドルに「調整」した。この観察された貨幣ストックからの246%の幻の増加! この動向調整の結果は、研究された全期間(1867-1975)の可変性のうち、一八七〇年代前半から一九〇三年までの観察速度の50%以上の急降下効果を実質的に隠蔽することであった。かくて、その調整は研究された期間のたった30%にしか適用されず、それは速度の全分散のほぼ75%を説明するものである。(以下のグラフを見よ。)
エリクソンたちはFSの調整手続きの理論根拠に関して彼らが無視する一連の恥ずかしい疑問を投げかける。なぜアメリカの金融洗練の欠如が他でもなくイギリスのそれと比べて判断されるんだ? なぜ2.5%の恒常的年間上昇率が適切とみなされるのか? 一九〇〇年台を通じてドルの国際的役割がスターリングに対して向上し続けていたにせよ、アメリカがイギリスに追いついたのがまさに一九〇三年であったということに何の証拠がある? そして最後に、金融洗練により潜在的に影響された他の経済変数、たとえば利子率と所得などは、なぜ調整されなかったのやら。
また、FSは景気循環の諸相(インフレも後退も)にわたる年間データすべてを平均あるいは「滑らかにした」。この手続きは主として一八七〇年代以降半‐一八八〇年代前半と大恐慌及び第二次世界大戦期の速度の短期変動を有意に減少させた。こういうわけでFSは、年間未調整データを推定するランダムウォーク・モデルに比べて、彼らの貨幣需要の「相平均」モデルが計量経済学的に速度の年間変動をもっと多く予言あるいは「説明」する、と論じられたのである。エリクソンたちが反論するに、FSは、そのモデルによっては説明されない速度変化、つまり「残余標準誤差」を計算するとき生データの相平均化を説明するという基本的な誤りを犯した。FSの相平均モデルの標準誤差はそれぞれのモデル及び未調整データで推定されたモデルと比較できるように調整あるいは「リスケール」されなければならない。エリクソンたちが示すとおり、ひとたびこの矯正がなされるや、未調整年間データのランダムウォーク・モデルは残余標準誤差を低減し、「FSモデルが説明しないところの30%以上」を説明する。この結果はFSの「アメリカ合衆国の速度が無理なく一定であるという主張」を却下する。これは、FSの調整された速度でさえ一八七〇年代から一九四〇年代までに50%も低下するという事実により補強される。(以下のグラフを見よ。)
著者たちはFSの経験モデルの更なる技術的批判を提出し、結論に取り掛かる。いわく、
金融ソフィスティケーションに託けたフリードマンの米国マネーストック観察の調整は速度の事実上明白な非一定性を減少させたが、その結果計測された速度は、速度が無理なく一定であるというフリードマンの主張とは対照的にも、まだ高度に非一定である。……調整されない相平均速度は3.9の倍率で変動するし、調整された速度でさえ2.2倍で変動する。ゆえに、速度を定数とする仮定に基づけく政策分析は経験的に見当違いであろう。
そんな風にして、データを恣意的に調整し、平均し、滑らかにしても、つまり、データをはぐらかしても、フリードマンはノーベル賞委員会に引用された[5]「貨幣需要は実は非常に安定している」というライフワークの中心的主張の一つを支持できないのであった。
[5] http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/economic-sciences/laureates/1976/press.html