2018.04.01 Sun posted at 18:14 JST
(CNN) しばらくの間じっと立っていると、自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。耳鳴りの音が耳をつんざく。動けば骨がきしむ音を立てる。やがて平衡感覚がなくなる。反響音の一切ない環境が、空間認識力を破壊するためだ。
この部屋は、米ワシントン州レドモンドのマイクロソフト本社内にある。外部の音は完全に遮断され、室内で発生する一切の物音を抑える。ここが「無響室」と呼ばれるのは、一切の反響を生じさせないことによる。拍手をしても、不気味なほど音が響かない。
背景音を極端に抑えた環境は、数学上の理論として存在する完全な無音に近い。もう1つ下の段階は、音が伝わらない真空。
ここは世界一静かな場所だ。
無響室を設計したマイクロソフトの研究員ハンドラジ・ゴパル氏は言う。「入室した瞬間から、形容しがたい、奇妙な、独特の感覚を覚える」「ほとんどの人は、無音状態に耳をつんざかれるように感じ、耳が詰まったように感じたり、耳鳴りが聞こえたりする。背景音が極めて小さいため、ほんのかすかな音でもはっきり聞こえる。首を動かせばその動作音が聞こえ、自分の呼吸音が大きく聞こえる」
同氏によると、実世界では耳が継続的に何らかの音にさらされていて、鼓膜には常にある程度の圧力がかかり続ける。しかし無響室に入ると、壁からの音の反射がないために、鼓膜に圧力がかからなくなる。
究極の静寂を実現するため、この部屋は6層のコンクリートと鉄鋼を使ったタマネギのような構造で、周りの部屋や外の世界から切り離されている。
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