「子どもの安全」プロがアドバイス ピカピカの一年生、事故防止と防犯に必要なこと
もうすぐ小学校の入学式。新一年生の保護者は、入学に向けた準備に忙しい時期かもしれません。保育園や幼稚園の頃と違い、子どもの行動範囲も広くなるため、注意しなければならないのが通学路などで発生する事故や犯罪です。
統計によると、2013年から2017年にかけて小学生が巻き込まれた交通事故で最も死傷者数が多かったのが小学一年生で、六年生の3倍を超えていました。また、子どもが犯罪に巻き込まれるケースは年々減少傾向にあるとはいえ、スマホの自撮りによる児童ポルノなど新しい形の犯罪が増加、心配のタネは尽きません。
子どもたちを安心・安全に育てるには、どのような準備や心構えが必要なのでしょうか。2006年から「子どもの安全ブログ」で日々、事故防止や防犯についての情報を発信しているセコムIS研究所の舟生岳夫・主務研究員に聞いてみました。
●事故防止のポイントは?「建物寄りを一列に歩く」「スマホやゲームを見ながらは危険」
【不安その1】
初めての通学路で事故や犯罪に巻き込まれないか不安です。どのようなことに気をつけたらよいですか?
【アドバイス】
・まず、入学前に親子で一緒に通学路を歩いて、子どもと一緒に危ないところや、困ったときに助けてくれるお店などを確認しておきましょう。
・歩道のある道路では歩道を歩くのはもちろんですが、歩道がない通りでは道路の端(建物寄り)を一列で歩くことが大切です。
・友達とふざけながら広がって歩いたり、スマホやゲーム、本などを見ながら歩いていたりして周囲の状況に気が付かないことは大変危険です。
・道を渡るときは横断歩道を渡りましょう。特に信号がない横断歩道では、近づいてくる車がないか確認してから渡りましょう。
・信号が青でも、いったん立ち止まって確認することが大切です。自転車等との衝突事故の危険もありますので、飛び出さないようにしましょう。
●防犯のポイントは? 「交番や大人がいるお店など、助けてくれる場所を確認しておく」
・できるだけ一人で歩かないようにしましょう。特に人通りの少ない通りを歩くのは避けましょう。
・交番や子ども110番の家、コンビニやファミレスなどの明るくて夜でも大人の人がいるお店など、いざという時に助けてくれる場所を確認しておきましょう。
・スマホやゲーム、本などを見ながら歩いていたりして、近づいてくる人や車など周囲の状況に気が付かないことは大変危険です。しっかりと顔を上げて、きびきびと歩くようにしましょう。
・道を尋ねられるなど声をかけられたときには、距離をとってその場で答え、相手に近づかないようにしましょう。
・誘いかけるような言葉をかけられたときは、しっかりと断りましょう。
・車から声をかけられたときは、車に近づかないようにしましょう。
・断ってもしつこくされたり、体に触ろうとしてきたりして怖いと感じたら、大きな声で「たすけて―!」と叫ぶか、防犯ブザーを鳴らしましょう。
●防犯ブザーを付ける場所は? 「ランドセルやリュックの利き手逆側の肩ベルトに」
【不安その2】
防犯ブザーを持たせようと思うのですが、選ぶポイントやつける場所がわかりません。
【アドバイス】
・防犯ブザーには様々な種類があります。音の大きさ(一般には85db以上を推奨)や鳴り方、防水性能などにも違いがあるので、表示をよく確認しましょう。
・付ける位置については、実際に装着してみて子どもが素早く手を伸ばして鳴らせる位置を確認しましょう。ランドセルであれば利き手の逆側の肩ベルトが使いやすいと思われます。側面のフックに取り付けるといざという時に手が届かない場合があるので注意が必要です。
・電池切れや故障などによって、音が鳴らなかったり小さくなっていたりすることがあるので、定期的に鳴らして確認しましょう。
●「知らない人」についていかないよう教えればいい? 「知人でも勝手についていくのはダメ」
【不安その3】
保護者の見えないところで、子どもがお友達と遊ぶために通学路を外れたり、知らない人に声をかけられたりしないようにするには、どうしたらよいですか?
【アドバイス】
・友達と遊ぶ時も、決められた通学路を歩いていったん家に帰り、「どこで」「誰と」「何をして」「何時に帰る」かを親にちゃんと話してからでかけることを約束しましょう。
・通学路で工事が始まったり、空き家ができて状況が変わったりすることもあるので、親がきちんと子どもの通学路を確認することが大切です。問題があるようなら学校と相談しましょう。
・声をかけられないようにするには、しっかりと顔を上げてきびきびと歩きましょう。だらだら、ふらふらと歩いていると目を付けられやすくなります。
【不安その4】
「知らない人についていかないように」と教えていますが、「パパの会社の人」や「近所に住んでいるおじさん」など、子どもが顔を知っていればついていってしまいそうです。顔見知りの大人について、どのように伝えたらよいのでしょうか?
【アドバイス】
・「知らない人」の定義は親と子どもで違う場合があります。「近所の公園でよく見かけるおじさん」や、「いつも犬を連れているおばさん」などは、子どもにとっては「知ってる人」である可能性があります。
・「知らない人についていかない」ではなく、知っている人でも「勝手についていかない」ことを徹底することが大切です。
●連れ去りを防ぐには? 「親と一緒でない場合は服装に気をつけて、目をつけられないように」
【不安その5】
子どもが被害者性犯罪や連れ去りなどの事件のニュースを見ると心配でたまりません。どうやったら防ぐことができますか?
【アドバイス】
・性犯罪目的の連れ去りの被害者は小学校から高校生の女の子が多いですが、男の子なら大丈夫とか、まだ幼いからなどと安心することはできません。
・あまり派手な服装や、夏場に露出の多い服装などをしていると目を付けられやすくなりますので、特に親と一緒でない場合はあまり可愛らしい服装にしない方がいいでしょう。
・逆にあまりだらしない恰好(シャツが出ている、スカートがめくれている)なども目を付けられやすい原因となります。
・子どもの可愛い写真などを不用意にネットで公開することにも注意が必要です。友達限定にしていても、誰がその写真を目にするかわかりません。個人が特定できるような情報もできるだけ書かないようにしましょう。
●子どもの危険回避能力を育てるためには? 「事件や事故のニュースを親子で話し合ってみる」
【不安その6】
子どもが新一年生にあたり、心配事がつきません。何か他に気を付けるべきことはありますか?
【アドバイス】
大切な子どもを守るために一番大切なことは、まずは親が子どもの様子をしっかり見て、子どものことをよく知ることです。
・どんな友達がいて、最近はどのようなことに興味があり、主に何をして遊んでいるのか?
・どんなテレビ番組やゲーム、本などが好きで、何にはまっているのか?
・困っていること、なやんでいることはないか?
そのために、いっぱいコミュニケーションをとりましょう。
テレビで事件や事故のニュースを見たら、そのことについて親子で話し合ってみましょう。どうしたら防げたのか、もし自分が同じ状況になったらどうするのかなどを子ども考えさせることで、子どもの危険回避能力が育ちます。
子どもと話をするときには、子どもの好きなアニメを一緒に見たり、ゲームの仕方を子どもに教わって一緒にやってみたりすることも有効です。
子どもが話をしてきたら手を止めて、しっかり話を聞いてあげましょう。ここで忙しいからと言って相手にしなかったり、後回しにしたりすると、次に何か大変なことがあっても話をしてくれなくなります。
本当に危険なことをしていたら、きちんと叱ることも大切です。その時には、あなたのことを本当に心配しているから怒るんだという気持ちをしっかり伝えましょう。その上で私は何があってもあなたの味方なんだと伝えてあげることが大切です。
【取材協力】舟生 岳夫(ふにゅう たけお)・セコム株式会社 IS研究所主務研究員
キッズデザイン協議会理事・研究開発部会長。昨今の悪化する治安状況を背景に、各方面に対して積極的にセキュリティコンサルティングを実施。各種防犯セミナーの講師をはじめ、学校のセキュリティポリシー策定コンサルティングなどの実績を持つ。子どもを狙う犯罪が多発する社会状況の中で、自らも2児の父として、子どもを守るための調査・研究に日々取り組んでいる。2006年2月にオープンした「子どもの安全ブログ」(https://www.secom.co.jp/kodomo/)のモデレーターとして、子どもたちが安心して、健やかに育っていくための情報を発信し続けている。著書に『子どもの防犯マニュアル』(日経BP社)など。
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