周回遅れの諸々

90年代にオタクとしての青春を過ごした人のブログです

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「アレがアニメ化とか今何年だっけ?」って聞かれたら「うるせえ俺が生きてる間は90年代だ」って答えたい

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ある一定の年代以上に特に有名な漫画やラノベの(再)アニメ化・リメイクが相次いで発表されています。既に「たくさん発表されすぎて食傷気味になってきた」という人もいるくらい。……でも、「懐かしい」「今何年だっけ」と言いたいがためだけに一切合切同じ箱に入れるのはちょっと……と思う毎日です。

作品ごとの現在に至る経緯はそれぞれに違う

今も続いているシリーズ


近年の再アニメ化ブームの発端かと言われる荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」(1987-)は、各部によって主人公も舞台も年代も違う漫画です。連載開始から、途中何回か期間を置きつつ、掲載誌を変え、現在まで続いています。


主人公が一貫して同じ時雨沢恵一キノの旅」(2000-)や上遠野浩平ブギーポップ」(1998-)も現在進行中のシリーズです。浅井ラボの「されど罪人は竜と踊る」(2003-)は、最初の版元である角川スニーカー文庫との間にトラブルが起こったため袂を分かち、2008年からは小学館ガガガ文庫から刊行されています。

完結以降特に原作に動きがないシリーズ


田中芳樹スペースオペラ銀河英雄伝説」(1982-1989)は約30年前に完結しました。とはいえ既にオタクの基礎教養みたいなポジションになっていてその地位が揺らぐことはなく、徳間書店のノベルス版に始まって、徳間文庫版、愛蔵版、徳間デュアル文庫版、創元SF文庫、らいとすたっふ*1の電子版、そして今回のマッグガーデンノベルスなど多数のバーションが刊行されています。


藤崎竜封神演義」(1996-2000)や藤田和日郎うしおととら」(1990-1996)、「からくりサーカス」(1997-2006)も、完結済みの作品です。一度きりの読み切りなどを挟みつつも、基本的に原作は長いこと供給されませんでした。

近年*2続編がスタートしたシリーズ


CLAMPの「カードキャプターさくら」(1996-2000)は、2016年から続編の連載が開始。今回のアニメもこの続編の方の映像化となっています。衛藤ヒロユキ魔法陣グルグル」(1992-2003)は、2008-2012年にかけて「魔法陣グルグル外伝 舞勇伝キタキタ」が連載され、その最終回で原作の正式な続編連載が発表、現在も続いています。2017年版のアニメは原作をイチから映像化しつつ、1994年版の旧アニメに対する目配せも利かせるというニクい作りでありました。

続編がスタートしたけどそれも無事完結したシリーズ


秋田禎信魔術士オーフェン」(1994-2003)みたいに、一度完結したけど2008年*3から新シリーズがスタートして2015年にそれも既に完結してる、というパターンも。新シリーズは版元が富士見書房からTOブックスに変わっていて、だから今回のアニメ化も基本的には富士見は関係ないはず。


オーフェン」は旧シリーズが刊行されてた期間より、新シリーズが開始してから今に至るまでのほうが既に長かったりします。その中で、版元が何度か「重大発表あります!」と煽って「これはアニメ化か!?」とファンが期待するも別の企画だった……ということが繰り返されてきたこともあり、今も追ってる人的には今回の発表は既定路線とまではいかないまでも、「ようやくか」といった感はありました。

原作者以外の続編が始まって終わったシリーズ


続編が必ず原作者の手によるものとは限りません。賀東招二フルメタル・パニック!」(1998-2011)は、原作完結と同時に、続編であり外伝でもある「フルメタル・パニック!アナザー」が開始。原作者が原案・監修に回り執筆は新人の大黒尚人に任せたこのシリーズも、2016年には完結しています。「フルメタ」は、今春から始まるアニメがリメイクや再アニメ化の類ではなく、2002年の最初のやつから今回の四作目「Invisible Victory」まで原作を映像化するという意味ではずーっと一貫してる続き物なのがすごいなーって思います。

再開したかと思ったら……なシリーズ


まあこれは再アニメ化とか関係ないんですけど。星野亮の「ザ・サード」とか、倉田英之の「R・O・D」とかもそうですね。

見ての通り

これらの作品は初出年も再アニメ化に至るまでの経緯もそれぞれ大きく違います。私も上記のように分類してるものの、長年追っかけてきたファンの中には「いやこれは違うでしょ」っていう人もいるかもしれません。っていうかタイトルに90年代って入ってるのに80年代スタートの作品入ってるし。それを、今この時代にアニメ化したからっていうだけであれもこれも同じ文脈に上げるっていうのはちょっと乱暴すぎやしないでしょうか。

再始動が望まれる理由とは


人気作品の続編・リメイク・その他諸々が望まれるというのは今に始まったことではありません。


大ヒットした「おそ松さん」なんかも、「おそ松くん」含めれば三度目のTVアニメなわけです。原作本編の続編*4が始まって、第二部のアニメ化が望まれてる「スレイヤーズ」は、1997年の第三期から十年飛んで2008年に第四期が制作されています*5。人気作の原作者の元には、実現に至らずとも何度もその手の企画・要望が持ち込まれてる、原作者は過去は振り返らないと決めてるので少々ウンザリしてる、なんてのはよく聞く話です。



ある特定の年代に受けた作品の企画が実現しやすくなったとして、その理由は。制作サイドに当時のファンが増えたから。これはあるかもしれません。ないかもしれません。単にジョジョおそ松さんが受けたから。二匹目のドジョウ狙いですね。大人になって可処分所得が増えたオタクがガンガン金を使えるようになったからってのは、結婚してお子さんがいる同年代のオタクの人を見てると、必ずしもそうとは限らないよなあとも思ったり……。今どきの作品が不甲斐ないからだ、なんてのが一顧だにしなくていい意見のは言うまでもないでしょう。


再アニメ化するに当たってタイミングというか旬っていうのはある、のでしょう。秋田禎信は新しいコミカライズの際にも今回の再アニメ化でも「なんで今オーフェン?」って感じのコメントしています。原作者に誰よりも早くこういうことを言われてしまったがために、ファンが同じことを言う意味が失われた……と自分は感じてたんだけど、発表に対する反応を見る限りそうでもないみたい*6


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いくら原作がまだ続いてようが、今現在売れてるのか、売れる見込みはあるのか。重要なのはそこだと言われたら返す言葉もありません。だからといって原作がつい最近まで刊行してた/してる作品に対して、太古の昔から蘇ってきたゾンビみたいな扱いをしていいかっていうと、それはまた別の話です。上遠野浩平はデビュー2冊目の「VSイマジネーターPart1」のあとがきで、ポップカルチャーは「ついこないだまで大御所だったものが、あっというまに陳腐でつまんないものということになって、とっくの昔に時代遅れとされていたものが「新鮮だ!」「これを忘れた昔の奴はバカだ」とか言われて甦ったりする」ようないい加減さが最も良いところだ、とかゆってたけれど……*7

他者を想像しろ


twitterでは、昔好きだったという人が情報をアップデートしないまま「懐かしい~」とゆっては「今も続いてるんですが……」と今も追ってる人にツッコまれる、という光景を頻繁に見かけます。完結するのを待たず、あるいは一度完結してから「卒業」することは、まあ人それぞれの事情があるので他人がどうこう言えることではないでしょう。つまらなくなったからとか以外にも、その人の生活ってものもありますし。で、卒業してしまえば情報収集することもなくなるのも当たり前のこと。学校と同じようなものですね。毎日通ってても、卒業してしまえば足を運ぶことは滅多になくなる。



たとえ現在進行形の作品であっても、彼らにとっては既に「懐かしい」ものとなっている。それを否定することは誰にもできません。そういう人の耳目を再び集める、あわよくば帰ってきてもらうための再アニ化メなりリメイクなりだったりもします。あと当時から原作読んでなくてアニメだけって人もいますしね。私自身、そういう作品には覚えがあります。


とはいえ、既に追うのをやめた人がそれを自覚/表明しないまま古参ヅラして適当ぶっこいて業界論世代論俗流若者論に絡めて語ったり、最近の流行への殴り棒にしたり、何かっていうと「原作愛」を振りかざして新しいアニメに文句垂れたり。っていうのは、今も追っかけてる人間にとってはいい気持ちはしません。一つの作品に長くしつこく執着し続ける粘着気質なので、「にわか」よりもこういう人のほうがよほど嫌い。ましてや「まだ書いてたんだ」「作者生きてたんだ」とか言おうものなら、もう戦争ですよ。よく見ますけどね、自分の視聴範囲である声優を見かけなくなった途端に「仕事がなくなった」みたいなこと言う人。


どんなに古いと思うような作品でも、続いてる以上それを書いてる作者がいて、読んでる読者がいます。完結してもなおファン活動を続ける人だって珍しくありません。長い時間を経てリメイク・続編刊行・再アニメ化されるようなタイトルならなおさらのこと。そして、作者は誰かの観測範囲から見えなくなっても、別の作品を書いたり別の仕事したりなんだりで、大抵の場合しばらくは生きてるものです。

*1:田中のマネジメントをしている会社

*2:近年とはゆってない

*3:本格的に再始動したのは2011年

*4:第三部と言っていいのかどうか

*5:本編完結は2000年。その後も外伝はしばらく続いていた

*6:なお秋田っていうのは「いつか読めなくなるというのもこういうもののあり方」ってゆって新装版を出すのを最初躊躇するような人です

*7:なお私は「ブギーポップ」を一応最新刊までリアルタイムで追っかけてるのですが、新刊を読む頃には前の巻の記憶の7割位は飛んでて、勘違いをその都度ガチ勢の人たちに修正してもらっています