「おおさかシネマフェスティバル2018」大盛況!
「おおさかシネマフェスティバル2018」が3月4日(日)、大阪北区のホテル エルセラーン大阪、エルセラーンホールで行われ、
ハイライトの表彰式では主演男優賞をW受賞した菅田将暉さん、桐谷健太さん、主演女優賞・蒼井優さんら豪華ゲストの顔ぶれの登場に満席の客席からは歓声とため息、
そして大爆笑が巻き起こった。
■W主演男優賞の菅田将暉、桐谷健太と、司会・浜村淳のトークに大爆笑。
午後の表彰式では、映画の伝道師、総合司会の浜村淳が、おおさかシネマフェスティバル名物の「ちっちゃい」トロフィーを贈呈しながら受賞者と爆笑トークを繰り広げた。
助演女優賞田中麗奈が登壇した時は、華やかな裾の長いロングドレス姿に会場からも思わずため息が漏れ、助演男優賞のユースケ・サンタマリアは走って登壇、
壇上の受賞者に握手を交わしながら、花束贈呈のスペシャルサポーターと抱き合って喜びを表現。
肝心の受賞作の話にいくまで散々他の話題をした挙句、『あゝ、荒野』の後篇はまだ観ていないという浜村にツッコミを入れまくる一幕も。
当映画まつり初となる2年連続主演女優賞を受賞した蒼井優は昨年スケジュールの都合で欠席となったが、
「こんなにお客様が泣き笑いする映画まつりなら、無理をしてでも来れば良かった」と思わず感想がこぼれた。
当映画まつり初となる主演男優賞W受賞となった大阪出身の桐谷健太と菅田将暉。
先に登壇した桐谷健太はガッツポーズで登壇。この日一番の歓声で迎えられた菅田将暉と肩を組み、二人で凱旋受賞を称え合った。
浜村からの「ちょっと漫才やれますか?」というムチャぶりに、菅田と桐谷二人で「僕らは(劇中で)コンビじゃないんですよ」と切り返し。
「ちゃんと観てくださいよ!」「『あゝ、荒野』後篇も、観てくださいよ!大体観てへん」と二人で畳みかけ、受賞作『火花』を地でいくようなトリオ漫才ぶりに、会場は大爆笑。
蒼井優も最後に「今年は菅田さんと色々な会場(映画賞授賞式)をまわることが多かったが、こんな会場はなかなかない」と観客と一体となった表彰式に感心しきりだった。
<受賞者コメント>
【主演男優賞】菅田将暉『火花』『帝一の國』『あゝ、荒野』
(浜村淳が「観ていないのは『あゝ、荒野』後篇だけ」と言ったのを受けて)
「だから日本アカデミー賞も前篇での受賞なんだなと(笑)。
漫才シーンの撮影は、本当にお客さんはネタを知らないので、ウケたらウケたシーン、すべったらすべったシーンとリアルなものだった。
最初のシーンの印象が強いのか、大体みんなから、観たよ『花火』と言われる」
【主演男優賞】桐谷健太『火花』『ビジランテ』
「(2011年に助演男優賞受賞時は「次は必ずビッグになる」と言っていたが)当時はしょっちゅう言っていた。
漫才師にしっかり見えることが大事なので、元々芸人をやっていた相方役の三浦君と代々木公園やカラオケで練習したり、
劇場でいきなりやらしてもらっていた。
受けたり、ウケたり滑ったりを経験しながら本番に臨んだ」
【主演女優賞】蒼井優『彼女がその名を知らない鳥たち』
「本当に不快な人しか出てこないので、よく企画が通ったなと。
こんなに賭けに出る企画で、キャストが集まったのは、白石監督と仕事がしたかったから。
白石監督はすごいなと思う。
現場のスタッフに十和子が嫌われるようでは、お客さんにもっと嫌われるので、そこのバランスは注意して演じた。
こんなに泣き笑いしているお客様もいるような映画祭なら昨年、無理してでも参加すれば良かった。
菅田さんと色々な会場をまわることができたが、こんな会場はなかなかないので、
これから色々な俳優仲間がここに参加できると思うとワクワクするし、またここに戻って来ることができるように頑張りたい」
【助演男優賞】ユースケ・サンタマリア『あゝ、荒野』
(走って登場、壇上の受賞者に握手をし、花束贈呈のスペシャルサポーターとハグもして喜びを表現)
「浜村さん、お会いしたかった。(トロフィー)お守りにします!(イッセー尾形さんに似ていると言われ)うれしい。ライブにも行ったことがあるし、憧れている。
(後を)行けるものなら行きたい。(芸名の由来を聞かれ)ラテンバンド結成時に、名前も顔も地味すぎるからと派手な衣装を着せられ、
ラテン系で一番多い名前3つ、ゴンザレス、チト、サンタマリアの中から選んだのがサンタマリア。
バンドは解散したけれど、名前を変えるタイミングがなかった。
(浜村から『あゝ、荒野』後篇は観ていないと言われ)ぜひ観て下さい!自分が出ているからかもしれないが、 5時間一気に初めて観ることができた。
ミットでパンチを受けるのは、パンチの力を殺さなければいけない。
菅田君はかなり前からトレーニングをしていたが、僕は1ヶ月ぐらい。
(菅田将暉と共にボクサー役を演じたヤン・イクチュンは)菅田君より僕の方が年は近いのに、菅田君と同じぐらい練習して、クライマックスは2人の死闘シーン。尊敬しかない」
【助演女優賞】田中麗奈『幼な子われらに生まれ』
「映画の世界で自分自身が生きていられるのは本当に幸せ。(『幼な子われらに生まれ』の奈苗役は)複雑な関係。
(再婚相手の)旦那も子どもがいて、元妻に嫉妬する気持ちが渦巻いて「会わないで」と言う一方、お母さんなので子どもたちには明るく接していく。
(現場では)浅野さんが、役が抱えている悩みを発散できず、沸々している様子を横で見ていた。
浅野さんが耐え忍んで真ん中に立ってくださったおかげで、今回この主婦役を観てもらえた。本当に感謝している」
【新人男優賞】北村匠海『君の膵臓をたべたい』
「映画の中のキャラクターが自分の過去と重なった。
一人でふさぎこんでいた時期もあったので、ごく自然にやれそうだなと思った。小学3年生から役者で、映画の主演は初めて。
月川監督は中1の時にお仕事をしているのでスムーズに進み、難しさよりも楽しかった。
自分が涙をするシーンは台本にも書かれていたが、現場の空気感でやろうと事前に台本は見ないようにした。
今年一年はさらに色んな役を演じてがんばっていきたい」
【新人女優賞】石橋静河『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
「(映画の世界に入る時、両親からは)頑張ってねという感じ。
台本を読むところから未知の世界。
全部難しかった。やってみて違うと言われもし、試行錯誤もしながら、なんとかついていった。
今後は自分の性格と真逆の人や、役の中にドボンと入り込んで、演じていきたい。」
【監督賞】白石和彌『彼女がその名を知らない鳥たち』
「(挑戦的な)十和子役は原作にあるものをそのまま置き換え、蒼井さんも役を膨らませてくれた。
今回もキャストが熱演してくれた。基本、出てくる人たちは共感できない。
でも、少しだけ共感してしまう。こうなってはいけないけれど、そうなってしまうというところを狙っていったのが上手くいった。
おととしの10月に大阪で必死になって撮った映画。大阪で栄えある作品賞に選ばれて光栄」
【脚本賞】石井裕也『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
「(撮っていて)いつも楽しいし、難しい。(石橋さんへの演出については)本人に聞いてみてください」
【撮影賞】大塚亮『幼な子われらに生まれ』
「楽しんで撮影しました。毎回作品が違うので、何がいいのか探しながらやるのが楽しい」
【音楽賞】渡辺シュンスケ『ハローグッバイ』
「音楽が大事なお話。映画の仕事は初めてだったが、監督からは初恋の気持ちを思い出してほしいと言われた。
映画がなかったら作れなかった音楽、自分でも素敵な音楽が出来たと思う」
【新人監督賞】菊地健雄『ハローグッバイ』
「長編2本目の映画。主演(久保田紗友、萩原みのり)二人のその時期にしかない若い魅力を引き出したい。
そしてもたいまさこさん、渡辺真起子さんと絡むことで二人の芝居を引き出してもらいたかった。
坂道を探していたが見つからず、階段をいいタイミングで見つけてくれ、学校でも特徴的な階段があったので、階段がモチーフになればと思った。
二人とも初主演映画。8日間の撮影、暑い最中、よくがんばってくれた」
【日本映画作品賞】『彼女がその名を知らない鳥たち』(深瀬和美プロデューサー:クロックワークス株式会社)
「原作はとても面白かったし、あの『凶悪』の白石監督がラブストーリーを撮ると思うとワクワクして、何の迷いもなかった。
蒼井優の起用も最初から頭にあったが、チャレンジングな役なので受けてもらえるかなと監督と話していた」
【外国映画作品賞】『ラ・ラ・ランド』(下高原啓人氏:GAGA株式会社関西支社)
「今日も『ムーンライト』と言われるかと思った。
(アカデミー賞で『ラ・ラ・ランド』と読み上げられ)祝杯でシャンパンをつぎ回っていたのに、(『ムーンライト』と訂正されて)こっそり下げた」
【ワイルドバンチ賞】作品:『月夜釜合戦』(佐藤零郎監督)
「あべのハルカスに近い場所(釜ヶ崎)が再開発され、日雇い労働者たちの場所が奪われることに対する抵抗として、
釜を奪い合う泥棒は誰なのかを(比喩的に)描いた映画。
10年ぐらい活動しているので日雇いのおじさんも友達。撮影に苦労はなかった」
■新人監督賞、音楽賞受賞記念『ハローグッバイ』トークショー
~かつての角川映画、相米慎二監督『セーラー服と機関銃』のように、その時期にしか撮れない女優映画を目指した~
76年「おおさか映画祭」としてスタートしてから42年目となる今回は、午前に新人監督賞、音楽賞受賞記念『ハローグッバイ』を上映。
上映後には、菊地健雄監督、渡辺シュンスケさん、内田わかさん(企画・プロデュース)、平林勉さん(プロデューサー)、高橋聰実行委員長、
薮下哲司特別委員によるトークショーが行われた。
10代後半のこの時期にしかない主演二人(久保田紗友、萩原みのり)の魅力を残したいという内田プロデューサーの思いを受けた菊地監督は
「彼女たちのドキュメントとしてこの映画を作れないか。僕も音楽がすごく好きなので渡辺シュンスケさんの音楽の力も含めて作品の中に封じ込めたかった」と作品の狙いを語った。
デビュー作『ディア―ディア―』は同世代の成熟した大人が迷う話だったという菊地監督。女子高校生が主人公の話を撮るにあたり、
「かつての角川映画、相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』のように、その時期にしか撮れない女優さんの映画を目指した」という。
映画の中で重要な役割を果たす音楽を担当し、出演もしている渡辺シュンスケさんは
「挑戦であり、やりがいだった。監督からは、初恋の気持ちを思い出して、鼻歌で歌えるメロディーをと言われ、一週間鼻歌を歌って過ごした」
と初めて映画音楽にチャレンジした当時を振り返った。
平林プロデューサーが「一番小さな枠組みの映画だが、二人の紹介だけでなく、意味のあるものにしたかった」と語ったように、
撮影期間はわずか8日間だったが、事前に若いキャストと時間をかけて準備し、その中で菊地監督も役柄に合わせて主演二人に対する演出を変えていたことで、
若い二人の瑞々しい演技を引き出したという。また「あの場所で(渡辺シュンスケさんに)弾いてもらったものをその場で録音したので、説得力が違う。
それに引き出されて、もたいまさこさんの素晴らしいお芝居ができた」と音楽の力がベテラン女優の名演技も引きだしたエピソードを披露。
最後は観客から大きな拍手が送られた。