惜しまれつつも、先日最終回を迎えたテレビアニメ『ゆるキャン△』。
原作からのファンだった身としては、あfろ先生の唯一無二の世界観をアニメで表現できるのか……? と心配していたのですが、そんな不安を吹き飛ばす最高の作品でした。『ポプテピピック』がいなければ、間違いなく冬アニメの話題を独占していたことでしょう。おのれ竹書房。
今回は、アニメが終わってしまって喪失感に襲われている「キャンプ難民」の方のために、原作者のあfろ先生に関するトリビアや、2期に向けた展望などをご紹介いたします。
この記事を読んだあと、もう一度アニメを観直せば、『ゆるキャン△』という作品をより楽しめるはずです。
※アイキャッチ画像
引用元:ゆるキャン△(4)、あfろ、芳文社、第1刷、p146
■目次
あfろ―謎に包まれたその作家性に迫る
昨今では珍しく、あfろ先生は個人ブログやSNSアカウントを公開されていません。黙々とマンガを描き続けるその姿勢に職人魂を感じますが、ファンとしては作者がどんな人なのかを知りたいですよね。
そこでこの項目では、過去作品などからうかがい知れる、あfろ先生の作風や嗜好を解き明かしてみたいと思います。
「へやキャン△」のノリこそ、あfろ先生の本来の作風?
引用元:ゆるキャン△(5)、あfろ、芳文社、第1刷、p154
ニコニコ静画の「きららベース」に掲載されている、『ゆるキャン△』の番外編「へやキャン△」。アニメでは、主にCパートで映像化されました(最終回のみアバンタイトル)。
ギャグ要素が強かったり、ホラーやSF風味のネタもあったりするなど、本編とのギャップに驚かれた方もいるのではないでしょうか?
しかし、この「へやキャン△」こそが、あfろ先生の本来の作風ではないかと思っています。作者の初単行本作品『月曜日の空飛ぶオレンジ。』では、スイカの自動販売機が置いてあったり、朝起きたら頭が箱になっていたり、植木鉢で信号機を育てていたりと、とにかくカオスな日常が繰り広げられていました。
そのため、初めて『ゆるキャン△』を読んだときは、「あfろ先生が普通のマンガを描いてる……」と驚いたものです。
引用元:月曜日の空飛ぶオレンジ。(1)、あfろ、芳文社、第1刷、p39
一方で、メインキャラのひとり・ヨシノと、そのお兄さんとの時を越えた関係など、心が洗われるエピソードも収録されていたり。カオスの一言では片付けられない多面性が、『月曜日の空飛ぶオレンジ。』にはありました。
そうした尊さを抽出して生まれたのが、『ゆるキャン△』なのではないかと。特にアニメ5話の、リンとなでしこが夜景の写真を送り合うシーン。ヨシノとお兄さんの話に通じる気がするんですよね。
つまり、『ゆるキャン△』も間違いなくあfろ先生にしか描けない作品なのですが、『ゆるキャン△』だけであfろ先生を理解した気になるのは非常にもったいないということ。
偉そうに書いている自分自身も、おそらくあfろ作品の本質を10%も分かっていません。結論としては、『月曜日の空飛ぶオレンジ。』を読んでくださいという、ただそれだけです。
あfろ先生は、太眉キャラがお気に入り?
引用元:ゆるキャン△(1)、あfろ、芳文社、第1刷、p164
「野クル」こと野外活動サークルに所属する、犬山あおい。おっとり関西弁、巨乳など萌え要素が満載の女の子ですが、一番のチャームポイントはなんといっても「太眉」でしょう。髪の毛だけでなく、帽子すら貫通しているという斬新な描写も話題になりました。
昔からあfろ先生のファンだった方は、あおいのキャラデザを見てニヤリとしたかもしれません。というのも、あfろ先生の作品には、必ずと言っていいほど太眉キャラが登場するからです。
引用元:シロクマと不明局(1)、あfろ、芳文社、第1刷、p55
せっかくなので、あfろ先生の作品にどれくらい太眉キャラが出てくるのか、調べてみました。
太眉キャラの家族も太眉なのはお約束ですが、作者の2作品目『シロクマと不明局』と、現在「まんがタイムきららキャラット」で連載中の『mono』では、家族以外のキャラクターの太眉率も高いですね。
太眉以外にも、あfろ先生は「属性被り」の手法を作品にあえて取り入れている印象があります。『ゆるキャン△』でも、なでしことあおいの誕生日が同じだったり(3月4日)、メガネキャラが複数いたり(千明、なでしこの姉の桜、鳥羽先生)。
確かに、現実には友達と誕生日が同じ可能性だってあるだろうし、メガネをかけている人は会社や学校に何人もいるはず。
こうした細かな設定が、あfろ先生の作品のキャラクターたちにリアリティを感じる、「本当にいそう」と思ってしまう理由なのかもしれません。とはいえ、太眉は単にあfろ先生が好きなだけでしょうか……?
あfろ先生へのインタビューに成功した人物がいる?
アニメの放送にあわせて、製作スタッフや声優の方々へのインタビュー記事がいくつかの雑誌やサイトで公開されました。しかし、あfろ先生へのインタビュー記事は今のところ見当たりません。
SNSをしていないことも含め、意図的にメディアへの露出を控えているのではないかと考えられます。性別も謎のままです(男性のような気はしますが)。
しかし、過去に一度だけ、あfろ先生へのインタビューに成功した人物がいました。2018年の春アニメ『こみっくがーるず』の主人公、かおす先生です。……お前は何を言っているんだ? と思わないでください。
引用元:かおす先生のアトリエ探訪(まんがタイムきららMAX2017年12月号)、はんざわかおり、芳文社、p25
詳しく説明すると、「まんがタイムきららMAX」に不定期で掲載されている「かおす先生のアトリエ探訪」で、あfろ先生が取り上げられたことがあったのです。
『こみっくがーるず』のかおすがきらら作家にインタビューするという形式の半エッセイマンガなので、フィクション要素もあるものの、あfろ先生の人物像を知ることができる貴重な資料になっています。
そのマンガによると、あfろ先生は元々ツーリングが好きで、旅先で安く泊まる手段を探すうちにキャンプにたどりついたとのこと。また、作中に登場する場所には、プライベートを含めて2・3回は足を運ばれているそうです。
アニメスタッフの方々も、アニメを製作するにあたって10回以上ロケハンを行なったとインタビューで語られていました。こうした徹底的な取材が、『ゆるキャン△』のクオリティの高さにつながっているのでしょう。
あfろ先生の別作品で、『ゆるキャン△』の聖地巡礼が行われた?
引用元:ゆるキャン△(6)、あfろ、芳文社、第2刷、p165
『ゆるキャン△』のアニメを観て、自分もキャンプがしたい、聖地巡礼をしたいと思った方も多いはず。その心理を見透かすように、ARアプリ「舞台めぐり」とのコラボイベントや、ゆるくないスタンプラリーが開催される予定になっています。
4月21日から始まるこれらのイベントに先だって、『ゆるキャン△』の聖地巡礼を敢行した人たちがいます。前述の、あfろさんの別作品『mono』のキャラクターたちです。……これまた何を言っているんだと思われそうなので、補足させてください。
引用元:mono(まんがタイムきららキャラット2018年3月号)、あfろ、芳文社、p31
「シネフォト(シネマ・フォト)研究部」の女子高生たちの日常を描く『mono』。登場人物のひとり・漫画家の春乃は、「来春アニメ化する」「山梨が舞台のキャンプ漫画」のレポート漫画を描くため、シネフォト研究部の部員たちと聖地巡礼の旅に出かけます。
「キャンプ漫画」とは、もちろん『ゆるキャン△』のこと。というより、これらのエピソードは堂々と「ゆるキャン△聖地巡礼(コラボ)編」と銘打たれています。
自分で自分の作品のレポート漫画を描いてしまうマッチポンプさも画期的ですが、さらに驚くべきは、『mono』の作中にもリンやなでしこがモブキャラとして出演していること。
つまり、『mono』と『ゆるキャン△』は同じ世界観なので、『ゆるキャン△』の世界でも『ゆるキャン△』の漫画が連載されていることになる……という、合わせ鏡のような現象が起きているわけです。あfろ先生の頭の中はどうなっているのでしょうか。
アニメ2期に向けた展望(雑談)
2期が製作される確率は?
あ、ましろさん。
『ゆるキャン△』特集を書かれているんですね。Twitterでも良い評判が多いので、見逃してしまった事を後悔しています。時すでに遅し…高木さんめ…
いえ、今からでも追いつけますよ。
なにせ3月28日にBlu-ray/DVDの第1巻が発売されたばかりですからね。Blu-rayの価格は税抜き14,000円と少し高めですが、そのぶん本編の1話~4話が収録されていて、一般的なアニメの円盤よりもボリュームがある内容になっています。
なんだかやけに具体的な説明ですね。
それはそうと、これだけ話題になったのであれば、アニメ2期が製作される可能性も高いのではないでしょうか?
はい。
個人的には、確率はほぼ100%だと思っています。
オリコンのBlu-rayデイリーランキングでは、アニメ作品の中で1位でしたね。
因みに、100%と言い切るからには何か具体的な根拠があるのでしょうか?
いえ、私が観たいだけです!
なるほど(笑)
放送時期は、2019年1月?
2期が作られるかはまだ分からないとして、今回のアニメが話題になったことは間違いありませんよね。
ヒットの要因は何だと思いますか?
一番の理由はもちろん、原作の魅力があますところなく映像化されていたからだと思いますが、作中の季節と現実の季節がリンクしていたことも大きいのではないでしょうか。
確かに、同じ内容でも真夏に放送されていたら印象が違っていたかもしれませんね。
厳密には、アニメで描かれたのは11月~12月の話なので少しずれますが、寒さに震えながらキャンプをするリンたちに共感する意味では冬アニメでよかったと思います。
特に今年の1月は、大雪も降って寒かったですしね…
雑誌の連載でも冬の話が続いているので、もし2期が放送されるなら、今回と同じく1月~3月になるような気がします。
そうすると、早くて2年後の2020年1月って感じでしょうか。
いえ、2年後では今の『ゆるキャン△』熱が冷めてしまうかもしれません!
商機を逃さないためにも、来年、2019年1月の放送に間に合わせるのではないでしょうか。
それにも何かエビデンスが?
私が観たいだけです!
(笑)
原作のストックは足りる?
あ、今回のアニメでは、原作のどのあたりまで映像化されたんでしたっけ?
4巻の終わりまでですね。
5巻からは年が明けて、お正月や山中湖での冬キャンの話になっていきます。
その計算で考えると1クールのアニメを作るのに原作4冊ぶんのエピソードが必要ということですよね。
最新刊の6巻が3月に出たばかりだから、来年2期をするには原作のストックが足りないって事はないですか?
普通に考えればそうなんですけど……。
よたいちさん、『NEW GAME!』ってご存知ですか?
はい。
といっても、「今日も一日がんばるぞい!」の元ネタになった作品というくらいの知識ですが……。
『NEW GAME!』のアニメも、1期のちょうど1年後に2期が放送されたのですが、1期の終了時点では原作のストックが足りていない状態でした。
それを、原作者の得能正太郎先生が単行本6巻までのプロットを先に作っておくことで、2期に間に合わせたそうです。
なるほど。
『ゆるキャン△』も同じように、8巻までのプロットさえ先にできていれば2期が作れるというわけですね。
はい。
ただ……、自分から言っておいて何ですけど、あfろ先生にそこまでの余裕があるのか?という気はしています。念入りに現地取材を行なうからこその『ゆるキャン△』ですし、『mono』の連載もありますし。
そもそも、1年後に放送といっても、今からだと実質9ヶ月後ですもんね。
あfろ先生なら、「あ、それくらい描きますよー」くらいの軽いノリで、取材先のキャンプ場からタブレットPCでプロットをささっと描いてしまいそうではあるのですが……。
うーん……。
『mono』との2本立てという可能性は?
話を聞く限り、やっぱり2019年1月に2期は難しそうですね。
素直に2年後まで待った方がいいのでは?
諦めちゃいけません!原作のストックが足りないなら、アニメの放送時間を半分にすればいいんです!!
(びっくりした)
放送時間を半分というと、『ゆるキャン△』と同じ冬アニメの『だがしかし2』『たくのみ。』のような感じでしょうか?
はい。
それなら5巻と6巻+αくらいのストックでも充分だと思います。
その場合、同時に放送される作品は、やはり「まんがタイムきらら」シリーズが原作のアニメになるんですかね。
『ご注文はうさぎですか?』3期などは、2期の円盤の売り上げや、原作のストック的にもありえそうですね。
ただ、個人的には『mono』との2本立てを期待したいです。
『ゆるキャン△』とは別に、あfろ先生が連載されている作品ですよね。
作者が同じなら、続けて放送されていても違和感がないかもしれません。
どちらも山梨県が舞台の作品なので、オムニバス形式のアニメとしても楽しめると思います。
前述の「ゆるキャン△聖地巡礼(コラボ)編」がアニメ化されたら、色々な意味で伝説になりそうです。
なるほど。そう聞くと、2019年1月に2期という可能性もゼロじゃない気がしてきました。
何だかんだしっかりと考えているんですね。
まあ、私が『mono』のアニメも観たいだけなんですけど。
敷島桜子っていうキャラの見た目がすごい好みなんですよね……。
結局そこですか(笑)
まとめ
『ゆるキャン△』特集というより、あfろ先生特集になってしまいました……。まあ、『ゆるキャン△』自体の魅力は、すでにいくつものメディアで取り上げられているので、こんな記事がひとつくらいあってもいいのではないでしょうか。
アニメをきっかけに、『ゆるキャン△』の原作を買った方も多いと思います。そこからさらに一歩踏み込んで、ぜひあfろ先生の他の作品にも手を伸ばしてみてください。読んでいる暇がない? 大丈夫、2期が始まるまでにはまだ時間があります。
記事では紹介できませんでしたが、「魔法少女まどか☆マギカ」のスピンオフ4コマ『魔法少女ほむら☆たむら ~平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。~』も、あfろワールド全開でおすすめですよ。
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