AppleのエンジニアがTeslaの自動運転車で通勤中、コンクリート壁に衝突して亡くなる事故が起きました。亡くなったエンジニアは、自動運転のソフトウェアに問題があるのではないか、と指摘していました。
自動運転中のTeslaで死亡事故
現地時間3月23日の朝9時半頃、Teslaの2017年式Model Xが、米カリフォルニア州マウンテンビューのハイウェイ101号線でコンクリート壁に衝突、炎上し、運転していたAppleのエンジニア、ウォルター・ホワン氏(38歳)が亡くなる事故が起きました。
Teslaは現地時間3月30日、事故車両から回収したログを解析した結果を発表しました。
発表によると、事故当時、自動運転機能Autopilotが動作しており、クルーズコントロールの先行車との距離は最小に設定されていました。
Autopilotは、ドライバーの手がハンドルから離れると視覚と聴覚で警告しますが、事故発生前の6秒間、ハンドルはドライバーの手を検知していませんでした。また、事故前の5秒間、約150m進む間、ドライバーはむき出しのコンクリート壁を見ていたはずですが、何も操作が行われていませんでした。
Tesla「自動運転は人間の運転より安全」
Teslaは、現在のAutopilotが事故を完璧に防ぐことができないことを認める一方で、自動運転は人間による運転よりもはるかに安全であると主張しています。
誰も、発生しなかった事故のことは知りません。発生した事故のことだけを知るのです。もし、Autopilotが安全でないものだという間違った思い込みで、人々がAutopilotを使わなくなったら、事態は非常に深刻な事態を招くでしょう。
現在、世界で年間約125万人が自動車事故で亡くなっています。現在のTeslaの安全レベルであれば、そのうち90万人は救われるでしょう。自動運転車の安全レベルは、通常の自動車の10倍に当たると考えています。
「Autopilotがいつも同じ分離帯に近づいていく」と不満
地元メディアABC7Newsがホワン氏の家族の証言として、「ホワン氏は、Autopilotがいつも同じ分離帯に近づいていくと不満を語り、ソフトウェア上の問題を指摘していた」、と報じています。
ホワン氏は、Autopilotの挙動についてディーラーに話したものの、問題を再現することができなかったそうです。
Teslaは、「事故現場と全く同じ場所は、2015年のAutopilot導入から現在まで通算85,000回、現在は1日に200回、Autopilotを使った車両が通行している」と、Autopilotによる問題ではない、と主張しています。
事故現場の衝撃吸収壁が取り除かれ、大事故に
Teslaは、事故の衝撃が非常に大きいものになった原因として、事故車両が衝突した現場に本来は存在していたはずの衝撃吸収壁が、他の事故のために取り除かれていたことを、Googleストリートビューの写真と、ホワン氏の事故前日に撮影された写真を並べて指摘しています。
米アリゾナ州で、Uberの自動運転車が歩行者をはねて死亡させた事故から1週間も経たないうちにホワン氏の事故が発生したことで、自動運転車の安全性について疑問の声が挙がっています。
自動運転の開発に取り組むApple、従業員を自動運転で失う
Appleは、自動運転用のソフトウェア開発のため、公道での試験走行に取り組んでいます。
しかし、自社の従業員が通勤中に自動運転による事故で亡くなるという、複雑な状況となってしまいました。
2人の幼い子供の父であるホワン氏のことを友人たちは、子供が怖い夢を見たと言うと添い寝してあげる優しい父親であり、友人思いの優しい男だった、と振り返っています。
本稿執筆時点では、Appleから今回の事故に関連した声明は出されていません。