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2018年04月01日 09時32分

東京五輪ボランティア、自己負担多く「やりがい搾取」と批判、「保険加入なし」は本当?

東京五輪ボランティア、自己負担多く「やりがい搾取」と批判、「保険加入なし」は本当?
2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向けて建設が進む新国立競技場。大会は11万人のボランティアが支えるというが…

2020年に開催される東京五輪・パラリンピックのボランティアがTwitterなどで批判を受けている。その背景には、負担の多さにある。大会組織委員会が3月28日、ボランティアの募集要項案を発表したが、「10日以上活動できる人」という条件や、地方や海外から参加する場合の交通費や宿泊費が支給されないことなどから、「やりがい搾取のブラック企業?」という声が上がった。

さらに懸念されているのが、万が一ボランティア活動を行なっている間に事故や事件に巻き込まれた場合の「保険」だ。通常のボランティア活動は労災認定が難しいことから、任意で「ボランティア活動保険」に加入することになる。では、五輪ボランティアの保険も自己負担なのか、参加が予定されている中高生ボランティアは加入できるのかなど、Twitterでは疑問が相次いだ。

五輪ボランティアはネットで言われているように、本当に「保険加入なしで自己責任」なのか。大会組織委員会に聞いてみた。

●参加に厳しい条件? 五輪ボランティアが批判される理由

大会組織委員会が3月28日に公表したボランティアの募集要項案によると、合計11万人のボランティアを募るとされている。これまで五輪の運営はボランティアに支えられてきたといっても過言ではないが、東京大会では過去最大規模となる。

11万人の詳しい内訳は、競技大会や選手村で活動する「大会ボランティア」8万人(組織委員会が運営主体)と、空港や観光地、駅などで活動する「都市ボランティア」3万人(東京都が運営主体)。このうち、特に批判されているのが大会ボランティアだ。

大会ボランティアには、ユニフォームや活動中の飲食は提供される。しかし、大会前は研修への参加、大会中は1日8時間程度、合計10日以上の活動などが必要な上、東京および競技会場のある都市への交通費や宿泊費は自己負担・自己手配となる。

これら厳しい条件に対し、「やりがい搾取のブラック企業?」「奴隷?か何か?」とTwitterでは批判が相次いだ。

●大会ボランティアと都市ボランティアには保険を提供

中でも懸念されているのが、ボランティアに参加中に事故や事件に遭った場合の補償だ。特に暑さの厳しい時期の開催であるため、冷房のない野外などで活動するボランティアは、熱中症で命の危険も指摘される。当初、保険などの補償が明らかでなかったため、自己責任になるのではという不安の声も多かった。

通常、ボランティア活動には労災が適応が難しく、「ボランティア活動保険」の加入が推奨される。熱中症や食中毒への補償もあるものだ。弁護士ドットコムニュース編集部が大会組織委員会や東京都に取材したところ、大会ボランティアと都市ボランティアについて、いずれもボランティア活動保険の提供があるという。自己負担で加入する必要はないようだ。

また大会組織委員会では、中高生を対象にしたボランティアの募集枠を設ける方針。そこで、中高生が安全にボランティアに参加できる方法を現在、大会組織員会では検討しているという。

東京都でも、教員引率のもと、都市ボランティアの活動を体験できる仕組みについて検討中だ。その場合の補償については、「校長了解のもと、教員が引率して行う活動は、独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施し、義務教育諸学校や高等学校等が加入する災害共済給付制度の対象となり、生徒が負傷等をした場合に、医療費等が支給される」とのことだ。

●ロンドン五輪では成功、平昌五輪では2000人以上が離脱する騒動も

実は、東京五輪のボランティアは、近年、開催された五輪の大会ボランティアの参加条件とあまり変わらない。例えば、2012年に開催されたロンドン五輪でも宿泊費や渡航費は自己負担だった。それでも、大会ボランティア7万人の募集に対し、20万人を超える応募があったという。現在、ロンドン五輪の成功はボランティアによるものとも言われている。

一方、今年2月に開催された平昌五輪では、9万人を超える応募者の中から選ばれた2万2000人がボランティアとして参加したが、現地での環境が劣悪だったことから開会式直前に2000人以上が離脱する騒動が発生した。ボランティアといえども、選手同様にリスペクトを持って待遇しなければ、せっかくのやる気も失われるだろう。過去の五輪からの教訓を生かしたいところだ。

国立競技場建設問題やエンブレム問題、膨らむ予算問題など、これまで厳しい目が注がれてきた東京五輪。果たして、11万人のボランティアは無事に集まるのだろうか。募集は今年秋にスタートする予定だ。

(弁護士ドットコムニュース)

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