ニュース記事の引用
「1人2体まで」の人形すべて購入、転売目的か : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
京都高島屋によると、午前10時の開店前に約200人の行列ができ、1人2体分の整理券を先頭から50人に配布。この50人が複数のブースに分かれて購入手続きを進めたが、男性1人が各ブースを訪れ、すべての人の代金をまとめて支払うことを繰り返したという。計1200万円を超えるとみられ、引き渡しは5月末の予定。
人形は今後製作されるが、同店は「転売目的かどうかを判断するのは難しい」とし、予定通り引き渡すという。
全体像
明らかに不自然です。
買い占めによる価格つり上げで転売益を稼ぐ意図が想像されます。
はてなブックマークにおけるコメントの傾向
はてなブックマーク - 「1人2体まで」の人形すべて購入、転売目的か : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
ひとつひとつのコメント引用は控えますが、全体的に「明らかに転売目的であり、高島屋はこの売買契約を拒否すべきであった。高島屋の対応に問題がある。」という趣旨の意見が目立ちます。
自分としての見解
高島屋サイドを責める気持ちにはなれません。
そもそもこんなトリッキーな手法がこれまでに観測されたことはあったのでしょうか。少なくとも僕は知りませんし、この話題がこれほど盛り上がっている光景を見ると、おそらくこれまでには無かったであろうセンセーショナルな出来事であったことが推測されます。
そのような例外的な問題に対して、たとえ高島屋のような大御所であったとしても、適切な判断を行い実施することは可能だったでしょうか?そもそも適切な判断とは何でしょうか?
少なくとも200人の人間には整理券が配布済みで、行列に並ぶ時間的体力的コストを払わせてしまっています。この時点で売買契約は確定ではないにしろ進行が始まってしまっているのは明白です。
この進行が既に始まってしまっている手続きを反故にすることは果たして正しい対応と言えるでしょうか。僕にはそのような対応はできません。全裁量を任されていたとしてもできません。
転売目的がとんでもなく濃厚な光景であったとしても、推定無罪を原則とすれば本契約は確定せざるを得ず、高島屋サイドとしては「負けた」と判断するのが無難かと思います。「当日の対応を誤った」のではなく「想定が至らずに不本意な契約を確約せざるを得なくなった」という言い方が正しいのではないでしょうか。
で、その想定を今回の問題が起こる以前から考えることができたかというと、あまりにも手法がトリッキーすぎて、それを求めるのはさすがに酷な話でしょう。
高島屋の評価は、もう少し先に同じような問題が発生した場合(※)の「今後の」対応を見てから行うのが適切かと思います。
※今回の手法が広く知れ渡ってしまった以上、転売屋はさらに別の手法を講じてくる気はします。これはシステム業界におけるブラックハッカーとホワイトハッカーのイタチごっこに似ています。防衛側はブラック側の手法をより詳細に研究する必要があるでしょう。
数量限定販売の是非について
b.hatena.ne.jp今回の問題とは別軸で考えていただきたいのですが、「数量限定販売」についてのひとつの見解の記事が小田急グッズショップの方の記事として挙げられており、自分は大変感銘を受けました。
商品の販売を含めすべての社会現象には様々な立場の方々の思惑が絡まるところであり、判断の選択にはトレードオフが常に付きまといます。
おわりに
諸問題、特に社会における諸問題については「何が正解か」を定めることは極めて難しいです。
できる限り、「正解の断言」を言及することには慎重になっていただきたいです。あまりにも短絡的なコメント群を見せつけられると少し気が滅入ります。
とても有名な本ですが、選択のトレードオフの例が分かりやすくまとめられている(そしてそこに正解は書かれていないが判断のヒントは適切に述べられている)本を以下に紹介しておきます。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
- 作者: マイケル・サンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/05/22
- メディア: 単行本
- 購入: 483人 クリック: 15,840回
- この商品を含むブログ (582件) を見る
このリンクはアフィリエイトになっていますが、僕の収益関係なく、とにかく図書館でもなんでもいいので機会があれば読んでみてください。価値観が書き換わることがあれば、たぶんそれは良い事象です。