暗闇の中に、独りポツンと佇んでいた。

 いつからそうしていたのかは、思い出せない。

 何も見えないが、周囲の闇は漆黒ではない。夜空のような濃藍の空間が見渡す限り続いている。

 だが、星も月も見えない。空も地面も判別ができない。そしてそれが遥か彼方まで広がっているかどうかも判らない。すぐ

そこに壁があったとしても、床があったとしても、天井があったとしても、遠近感もはっきりしないので判らない。

 暑さも寒さも感じないが、適温なのかどうかもよく判らない。思考も、感覚も、ひどくぼんやりしていた。

 何もかも判らない。どれだけそうしていたのかも判らない。

 だがその変化は不意に、唐突に、出し抜けに訪れた。

 ほんの数歩先…初めて距離感を認識できたソコで、濃藍の空間の中からのっそりと、人影が歩み出る。

 ペタン…、と足音が鳴る。反響を伴わない、広大な空間に拡散して急速に消えゆくその音を鳴らしたのは、擦り傷だらけで

酷く底が擦り減り、踵も潰されてペシャンコになったスニーカー。

 そこから上に繋がるのは、座り皺の癖があちこちにつき、すっかり退色したグレーのスラックスに覆われた太い脚。

 ライトブラウンのフリースのトレーナーは首元にある二つのボタンを両方外しており、元は純白だったのだろう丸首の肌着

がくすんだ色を覗かせる。

 どっしり骨太な腰に締めているはずのベルトは見えない。トレーナーの生地は豊満な腹部に押されてせり出し、前をあけて

羽織った白衣を左右に広げている。

 袖は無造作に肘上まで捲り上げられ、女性の太腿ほどもありそうな黒い前腕が曝け出されていた。太い手首には革のベルト

がいっぱいに伸ばされて腕時計が嵌められているが、相当使い続けているのか、ベルトも文字盤を覆うガラスも褪色や傷が目

立つ。

 暗がりから灯りの元へ歩み出たように、急にその姿がはっきり見えるようになったのは、肥満体の、ジャイアントパンダの

獣人だった。

 壮年とでもいうべき歳だろうか、あまり若くはないが相当な大男で、比べられる物が少ない濃藍の空間だが、腕時計やボタ

ン類がやけに小さく見えるのでそう感じられる。
身なりは、とにかくだらしない印象がある。白衣もスラックスも皺だらけで、

フリースのトレーナーは毛玉だらけ。

 双眸をそれぞれ囲む黒い斑紋の中で、気怠そうな、面倒くさそうな、不機嫌そうな、そして疲れてもいるような、瞼が半分

降りた目が左右に動く。やがてその視線をこちらへ向けて、やさぐれた雰囲気のあるジャイアントパンダが口を開いた。

「こんな所にしたのか?」

 太い声は眼差し同様に気怠げで、反響する事なく拡散し、遠ざかる。

「殺風景…なんて物じゃあないな。また随分と何も無い。感心するほどだ」

 呟いたジャイアントパンダは「どっこらしょ…」と腰を下ろすと、左脚を胡坐の形で曲げ、右膝を立てて腕を置き、左腕を

背中側につき、くつろいだ格好になった。不思議な物で、その男が腰を下ろした事で空間と地面…あるいは床、足場とでも呼

ぶべき境界がはっきり感じられるようになった。

 座ったジャイアントパンダは、しかし姿勢とは裏腹に、鋭いものが潜む視線を観察するように向けて来る。

「面と向かって会うのが初めてな以上、改めて「はじめまして」と言うべきか?私がミーミル・ヴェカティーニだ」

 おもむろに名乗ったジャイアントパンダは、軽く肩を竦め、「…ま、今まで通りミーミルと呼んでくれ」と付け加えた。

「さて、話をはじめるぞ。ん?勿論、これから私達がしなければいけない事についてだ」

 ミーミルと名乗ったジャイアントパンダは、よれよれの白衣の中に手を突っ込んでボリボリ胸を掻くと、その手でひしゃげ

た煙草の箱を取り出し、底を叩いて一本飛び出させる。

 それを咥えてプラスチックの安っぽいターボライターで火をつけ、紫煙を吐き出し…。

「あん?何を言っているのか判らない?」

 まじまじとこちらを見つめ、胡乱げな顔になり、それから不機嫌そうな顔になり、最後に面倒くさそうな顔になり、「…そ

うか。判らなくなったのか…」と、ガリガリ頭を掻いた。

「…位相の突破が…、いや、制限がかかったのか…?こいつはなかなか面倒だ…。想定していた中でも最悪に近い可能性が現

実になったか…。しかし、こうしてここに居る以上、本当の最悪は回避できたと言うべきだな。少々厄介ではあるが…」

 ミーミルはブツブツとひとりごちていたが、ふと視線を上げると、「ああ気にするな。これはお前が悪い訳じゃあない」と

声を掛けてきた。言葉と裏腹に不機嫌そうな表情だが、だいたいこんな顔のままらしい。

「さて、何処から話せばいいか…。ん?「ここは何処?」だと?ま、此処が何処なのかは気にするな。何処だろうとさしたる

問題は無いし、知った所で意味も無い。私とお前の拠点となる場所とだけ理解できればそれで充分だ」

 投げやりに言ったジャイアントパンダは、「とにかく」と軽く頭を振った。

「悪いが、お前が憶えていようがいまいが契約には従って貰うぞ。そもそも、事が済まない限り戻らない以上、お前にも選択

肢は無い。ん?何だ?」

 ミーミルは黒い耳を傾けて聞き、口の端を少しだけ上げる。

「ほう。「自分は誰か」か…。いい質問だ」

 ミーミルが黒い左腕を横に伸ばし、ゆっくり上げると、暗藍色の地面を水面のように微かに波打たせ、何かがヌゥッと生え

て来る。

 金色のゆるいウェーブが縁取る、美しい大鏡…どんな大男でもその全身を映せるだろう大きな姿見が、座したジャイアント

パンダの横に聳え立った。

「見えるか?お前自身の姿が?何に見える?人間か?獣人か?男か?女か?それとも…」

 半眼を鋭く細めて問いかけたミーミルは…、

「…そうか。見えたか、自分の姿が」

 少し満足したような声音で左手を軽く振り、その動作に呼応するように鏡が地面へ沈み込む。

「さて、そろそろ時間も無くなってきた。早速行って来て貰おう。手始めに軽い調査から…、説明はおいおい行なおう」

 億劫そうに「どっこらしょ…」と腰を上げたミーミルは、トレーナーの下から手を突っ込んで布袋腹をボリボリ掻きながら

横まで歩いてくると、隣に並んで真っ直ぐ背後を指差した。

 振り向けばそこにドアがあった。金色のドアノブを備えた木目が美しい一枚のドアが、濃藍の空間にポツンと一枚、支えも

無く立っている。

「では頼んだぞ。障害はあるが…、ま、微々たる物だ。なに心配するな。「その体」は並の危険生物程度に遅れは取らない。

それと、これらを持って行け」

 ジャイアントパンダはむんずと手を掴むと、白衣のポケットから取り出したスライド式のゴツい携帯を握らせてきた。

「今回の調査で必要になる「調停者」用の専用端末だ。偽造品だがな。ん?心配するな。機能から存在その物までまるっきり

「その物」だ。何せこの私が作った物だから間違いは無い」

 自信があるというよりも、それが当たり前という口ぶりで述べたミーミルは、次いでドックタグのような物がついたチェー

ンを取り出し、「かけてやるから首を出せ」と顎をしゃくって促す。

「こっちは「認識票」…調停者としての身分証明だが…死体になった時に「上」が身元確認し易いようにと気を利かせた物で

もある。これも偽造品だが認識ナンバーも問題ない。もっとも、ランクとしては初級の物しか準備できなかったが。…これか

らも調査に必要な物はその都度用意する。ああそれと、変人と思われて牢屋か病院にでもブチこまれたら困る。外で会う連中

に余計な事は話さないようにしろ。なに、念話可能範囲に居る限りは私がサポートできる」

 反論も質問も許さず一方的に言うだけ言って、ミーミルは金色のドアノブを掴んで回し、ドアを押し開ける。

「ああ、それと言い忘れる所だったが…」

 強引に背中を押し、ドアの外へ追い出しながら、ミーミルは耳元へ囁いてきた。

「必ず帰って来い。お前がここへ帰ってこられなくなったら…、その時点で詰みだ。ドアはお前を回収し易い位置に「出す」

が、私は迎えに出られない。お前が自力で戻らなければいけないという事を決して忘れるな」

 よろめき出た背後で、バタンとドアが閉まる。

 見回せばそこは、コンクリートの壁が聳える寂れた路地裏。空っ風にコンビニの袋が舞い、カサカサとアスファルトの上を

転げてゆく。

 傷んだビルに区切られた隙間の空には、爪のように細い月が浮かんでいた。

 振り返れば、そこにはビルの非常口。長らく使われていない様子で、ドアノブを止めるネジは茶色く変じ、触れただけでパ

ラパラと錆が落ちそうな有様。

 ひょっとして夢だったのだろうか?幻でも見ていたのだろうか?おそるおそる手を伸ばし、土埃が薄く付着したノブを掴む。

 予想に反して鍵はかかっておらず、簡単に開いたドアの向こうには…。

「おい」

 咥え煙草のジャイアントパンダが、ブスッとした顔で濃藍色の空間に立っていた。

「空気を読め。退路を確認する気の利かせ方は結構だが、こんな時は速攻でベースキャンプなり何なりを覗きに帰って来たり

はしない物だぞ。確かに必ず帰れとは言ったが、まだ何もしていないだろうが?今は帰ってくるな」

 バタンとドアを閉じるミーミル。取り残されて途方に暮れると、先ほど受け取った携帯端末が振動し始めた。

 外部の小モニターには「種島監査官」と表示されている。

『済まない!第二封鎖域を突破された!』

 通話に応じた途端、緊迫した男の声が耳を打った。

『内訳はアリ3体!後続の展開が遅れている!その路地を突破されたら住宅地まで入り込まれる!何とかそこを保たせてくれ!』

 手に振動を感じるほどの大声は焦りを隠しきれていない。困惑と緊張が半々のまま、おそらくはここの事なのだろう「その

路地」の奥を見れば、ソコに、黒光りする等身大の何かが居た。

―アントタイプ…安価なインセクトフォームだ―

 出し抜けに、ミーミルの声が頭の中に響いた。

―一般的なアントソルジャーだな。…しかしかなり雑な造りだ。生産者の嘆かわしいほどの技術力のなさが窺えるな、スペッ

クは標準以下と見える。ま、お前なら遅れは取らないだろう。ん?何を驚いている?言ったはずだ、私がサポートすると。そ

れより、監査官がまだ話しているぞ?―

『…え!?…あ、いや、ちょっと待ってくれ!…………ああ、朗報だ!そちらに「アークエネミー」が急行している!』

 その声を聞いている間にも、直立した等身大の蟻のような生き物は、六本の足で地べたに這い、様子を窺いながらじりじり

と接近してくる。

―気付いているか?「何か」来るぞ―

 ミーミルの声が注意を促す。その直後、眼前にズドンと、巨大な何かが落下してきた。

 背を丸め、跪き、ビルの屋上から跳び降りてきた衝撃を殺したソレは、夜目にも鮮やかなブルーのベストと白いカーゴパン

ツを纏っている。
ゆっくりと身を起こす2メートルほどの巨躯。黄金を溶かし込んだような色合いの豊かな被毛が、ビルの隙

間風に揺れていた。

「…まったく…。アリス寝かしつけたばっかりだっていうのに…」

 背筋を伸ばして立ったのは、小山のように大きな金色の熊獣人。熊が威嚇するようにウルルッ…と喉を低く慣らすと、蟻達

はまるで気圧されたように、一斉に動きを止める。

―聞いたか?気付いたか?先の通信、「アークエネミー」という呼称を用いていたな?それに今の、その調停者の発言…「ア

リス」だと?…いや、お前が知っている事か、知っていた事か、知らない事か、忘れた事かはとりあえず二の次だ。ここには

既に「可能性の乱立」が確認できる―

 頭の中に響くミーミルの声は、何か考え込んでいるようでもあった。

 広い背中の金色の熊は、蟻達を一瞥すると肩越しに振り返り、青い瞳を人懐っこく細めて声をかけてくる。

「やあ!お疲れ様、ギリギリ間に合ったみたいだね!ここの持ち場はひとりだけ?んふ!貧乏くじだねぇ~」

 金色の熊はキーの高い澄んだ声で、場にそぐわないほどのんびりと言い、首を傾げる。

「あれ?見ない顔だね?最近こっちに来たひと?」

 訝しげな金色の熊に、どう答えた物か迷っていると…。

「とりあえず話は後にしようか。…あ、イッコだけ」

 金色の熊は前に向き直り、再び蟻達を見遣ると、腰を低くして半身に構えつつ、思い出したように問う。

「頭数割り切れないから、討伐報酬、山分けでいい?」

 戦闘態勢に入った熊の両手が、淡く、燐光を帯びた。

 それに誘われるように、蟻達はギィギィと警戒の声を上げ始める。

―どうやら上手く「状況に組み込めた」ようだ。さて初陣だ、しっかりやれよ?私達が何処でしくじっても…―

 ミーミルの声が頭の中に響く。

―「世界の消滅」は、止められなくなる―





Vigilante
The voice of a beast
crying in
The wilderness





 VigilanteTTはテーブルトークRPGじみたソーシャルゲームじみたトレーディングカードゲームじみたノベルゲームじみた
恋愛ゲームじみた何かです。プレイヤーは自身がおかれた状況を把握できないまま、謎の男「ミーミル」に促され、様々な事
件に介入してゆきます。「本来そうあるべき道筋」から外れ始めている世界を巡り、歪みの進行を、世界の消滅を食い止める
ために。

 

~荒野に呼ばわる獣~ ミーミル・ヴェカティーニ

 あなたのナビゲーターとオペレーターとアドバイザーとその他諸々を務める壮年のジャイアントパンダです。
 肥満体の大男で、身なりにだらしなく、口癖は「面倒だ」。時に辛辣で、シニカルな物言いも多い毒舌家ですが、洞察力に
長けており、核心を突く発言も少なくありません。基本的に合理的な人物で、その合理性が極まって「身なりを整える意味が
あまりない」という悟りに至ったようです。

 あなたに対しては「目的のための協力者」という態度で接し、言動はややつっけんどんでそっけない物ですが、それも幾多
の冒険を乗り越えてゆく内に次第に変わってゆくでしょう。また、口では面倒だと言いながらも面倒見は良いようで、頼まれ
ると文句を言いながらもなんだかんだで引き受けてくれます。

 「ただの研究者で技術者で医者」と自称していますが、レリックを単独で解析及び調律し、素材さえあれば擬似レリックを
製作でき、ブーステッドマンも含めてどんな体でも治療でき、エインフェリアの自壊軽減薬を作るなど、技術も知識も一介の
それらの範疇を大きく超越しています。また、
多数の不思議なレリックを所持しており、様々な機関や組織の内情、所属する
人物にも精通しているなど謎の多い人物ですが、自分の事はあまり多く語りません。

 愛煙家で、主な食事はファストフード。「面倒無く栄養を摂取でき空腹を紛らわせる合理的な食事」との事。壊れた機械を
見ると直したくなる性分のようで、暇潰しにガラクタを弄っている姿が見られますが、長年働き続けた末に動けなくなったそ
れらに向ける目は、労いと慈愛に満ちています。

 

 さあ、白衣の男と旅に出ましょう。この「奇妙な世界」へと…。





「何も判らない、か…。私の事も憶えていない、と…」

 濃藍の地面に胡坐をかき、ジャイアントパンダは考え込む様子で目を細める。

「お前が外に出ている間、私の方でもいろいろと考察してみたが、憶えていない理由も原因も、勿論解決方法も不明だ。心当

たりとも呼べない推論はいくつかあるが、実証する手立てもない。…こうなると、「伝える」のも少々酷な気がしてきたな…」

 仏頂面に見えるパンダの目に、いささか気の毒そうな色が浮かぶ。

「まあいい。こうなってはもう出自など知らない方が良いのかもしれない。これからの事だけ考えれば、な」

 同情しているかのような眼差しに不安を覚える。自分の身に何が起こったのか、思い出せず、判らないが、何やら不穏な物

は感じられる。

「ま…、何だ…」

 ミーミルは面倒くさそうな顔のまま、ポンと、頭に手を置いてきた。

「じきに慣れる。というよりも、慣れなければいけない。お前も私も成すべき事があり、成せなければ消える。この世界諸共

にな。…そうか、そこから話さなければいけないんだったな…」

 声に少し寂しげな物が混じったような気がしたが、パンダは手を引っ込めて胸元に手を入れると、煙草を取り出して咥えた。

「シンプルに説明すると、「世界の消滅」を回避するのが私達の目的だ。そのために私達は「世界」と契約した。そしてお前

はそれに同意していた。憶えているかどうかは問題ではない。こうしてお前がここに在るというこの事実が契約に同意してい

た証拠だからな。なにせこの契約は、お前の同意なしには成立しない」

 別に騙そうとしている訳ではないぞ、と付け加えたジャイアントパンダは、トレーナーの下から手を突っ込んで、臍を出し

ながらボリボリ腹を掻き、「実に面倒な話だがな」と顔を顰める。

「有り得ない事が起きている。そのせいでこの世界は歪み始めている。歪みがこのまま拡大すれば世界は消滅する。既存の世

界も、やがて訪れるだろう世界も、ひとりひとりのささやかな世界も、平等にな…」

 ビニールパックの携帯灰皿に煙草の灰を落としたミーミルは、しばし考えた後に「お前が外で遭遇した事件もそうだ」と続

ける。

「可能性の乱立…。本来は因果関係にある物が過程抜きに結果だけ実現していたり、取捨選択でどちらかだけが現実となるは

ずの事が同時に発生したりしている。お前が会ったあの金色の熊の二つ名…「アークエネミー」と、扶養されていたあの少女

は、本来は同時期に両立はしていなかった」

 ずいっと身を乗り出し、ミーミルはじっと視線を注ぎながら述べる。

「私達に味方は居ない。歪みを加速させるような真似はできないので、介入先で協力してくれる者にも本当の事は言えない。

多少の事であれば私の方で何とかできるが、あくまでも存在や状況を多少誤魔化して辻褄を合わせる程度の事しかできない。

言うなれば私達は「イレギュラーに対応するためのイレギュラー」なのだからな。私達は誰の助けも求められないが、それで

も世界に蔓延するおかしな部分を調査し、拡大を防ぎながら歪みの原因を探らなければいけない。原因を突き止め、然るべき

解決方法を導き出せなければ…。いずれ世界は消滅する」

 ふぅ、と息をついたミーミルは、後ろ手をついて上を向く。

「全てが終わらない限り、お前にも私にも真の意味での自由はない。ま、運命共同体という訳だ。気に食わなかろうが何だろ

うが、よろしく頼むぞ」

 

1.プレイヤーキャラクター

 世界に介入するプレイヤーの姿、それが「プレイヤーキャラクター」です。ここからは、メイキングを通して出来上がるプ
レイヤーキャラクターのステータスなどについて、ミーミルがざっくり解説してくれます。

名前
 名だ。本名だったり渾名だったり偽名だったりジョン・ドウだったりする。

種族
 人間、獣人、レリックヒューマン、エインフェリアなどの身体タイプだ。種族によって使用できないアイテムもある。それ
と、人間型でしか入店できない店もある。…うん?良く判らない?面倒だが、軽く説明して行こう。

・人間
 最も制限が少ない種だ。人類の約9割が該当し、様々な施設が利用できるのが強みだな。数が多いのは力だ。なに、多数決
に限った話ではない。ありふれているが故に目立たないという意味でな。

・獣人
 人類の一割程度が該当する種だ。強靭な体や、高い運動能力など、身体性能面は人間を上回る。フィジカル寄りのステータ
スに補正が入るが、レリック適性などは低めだ。

・レリックヒューマン
 古代種に近付けられたデザイン生物だ。見た目は人間に準拠するが、肉体的な強靭さは生粋の獣人と遜色ない。しかし消耗
すると強制休眠状態になる。

・エインフェリア
 …獣人の死体を元に製造する兵器だ。獣人をやや上回る肉体的ポテンシャルを持つが、個体によっては自壊…つまり短寿命
のリスクを抱えている。自壊症状が発生すれば治療しない限り徐々に弱っていく。治療方法は限られているが、幸い私には手
段がある。無理せず戻って来い。

・ブーステッドマン(人)
 人為的な肉体改造を施された人間だ。レリック適性にマイナス補正が入るが、そのマイナス値を任意のステータスに割り振
れる。また、ブーステッドマン専用のスキルも存在する。

・ブーステッドマン(獣)
 人為的な肉体改造を施された獣人だ。レリック適性にかなり酷いマイナス補正が入るが、その大きなマイナス値分だけ任意
のステータスに割り振れる。こちらもブーステッドマン専用スキルが習得できる。

体格
 華奢だったり大柄だったりする体格の事だ。大柄だと手が届く所や、小柄なら潜り込める穴…、ま、一長一短だな。…私?
訊いてどうする。

 

HP
 どの程度痛い目にあっても割と元気でいられるかの目安だ。

SP
 振り絞る根気めいた物だ。

攻撃力
 有り体に言えば殺傷力だ。

防御力
 いわゆるタフさ具合だな。

思念波
 一部のスキルや装備の性能を左右する…ま、だいたい魔力っぽい何かだと思え。

抵抗性
 魔力っぽい何かへの抵抗力だ。残念だが風邪やインフルエンザなどへの抵抗力とは無関係だ。

命中率
 当たらなければどうにもならない。

回避率
 当たらなければどうという事はない。

 

筋力
 力の強さを現わす数値だ。攻撃力や所持枠の数に影響する。

耐久力
 体の頑丈さだ。HPや防御力、所持枠の数などに影響する。

技術力
 手先の器用さや柔軟性だ。命中率、回避率に影響する。

敏捷性
 素早さや身のこなしの数値だ。回避率などに影響する。

集中力
 仕事や勉強よりも趣味に対してより発揮されがちなアレだ。思念波に影響する。

精神力
 豆腐メンタルか図太いかの目安だ。思念波と抵抗性に影響する。

 

成果ポイント
 ミッションクリアなどで加算されるポイントだ。主にガチャや武装強化に使う。他にもログインボーナスや、助っ人共闘者
を使う事でも貯まる。特にフレンドの共闘者を助っ人に使用した場合はお互いに加算され、使用頻度に応じてボーナスが加算
されてゆくのでお得になる。

熟練度
 ミッションクリアなどで加算される、ステータス強化や、後述するスキルの習得に使用するポイントだ。訓練向きのフリー
クエストや、特定のアイテムを使用する事で多く入手できる。

所持枠
 装備品含めてアイテムをセットできるスロットだ。重かったりデカかったりする品…例えばバカでかい重火器などは複数枠
を占有する。ここだけの話、どさくさ紛れに取引品を横領したりピンハネしたりする時は多い方が有利だ。

スキル
 キャラクターが保持する技術や能力を一纏めに投げやりに表現した文言がスキルだ。戦闘用の物から調査を有利に進められ
る物、アイテム作製用の物、交渉用の物などが存在している。どれほど習得しても、一度にセットしておけるのは十種類まで
なので、よく吟味するように。…何?これもよく判らない?…面倒だが簡単に説明するか…。

・能力者【タイプ毎のデフォルト名、もしくは任意の能力名】
 超常的な現象を引き起こす特殊能力を持っているかどうかだ。基本的に先天性の物なのだが…、お前は能力を宿すか否かを
含めてこれから決められる。スキルの中にはこの設定が無いと習得できない「能力由来のスキル」もある。例えば、「発火の
視線」は「能力者【ファイアスターター】」を所持していなければ習得できない、という具合だな。能力は一種類しか選べず、
後から変更する事もできない。選択は慎重にな。

~能力タイプ例~

「エナジーコート」
 生命力を変換し力場を作り肉体を保護する能力者だ。熟達者は力場を攻撃にも転用する。防御手段の「エナジーシールド」、
遠距離攻撃ができる「エナジーバレット」など、バリエーションも豊かだ。

「ファイアスターター」
 発火の力を持つ者だ。燃焼という物は比較的単純なシークエンスで、労力に対しての効果が大きい傾向がある。「発火の視
線」など消耗が控えめなスキルを多く習得できるのが強みだ。

「ボルトトリガー」
 電気を操る能力者だ。放電の他、運動性向上や刺激による細胞活性化など効果は多岐に渡る。…制御し辛いがな。感電によ
り、状態異常「スタン」を引き起こすスキルも多い。

「ライズパルサー」
 振動や衝撃波を扱う者だ。衝撃波による攻撃や、ソナー効果による探知や消音など、技術次第で幅が広がる。

「術師」
 レリックの一種「グリモア」の使用により、他の能力者が引き起こす現象を制限付きで模倣使用できる者だ。オリジナルと
比べて消費は大きいが、柔軟性はある。

「イリュージョニスト、幻術師」
 思念波コネクトによる高度な幻術を操れる能力者だ。噂によれば、極めた者は幻の刀でひとを斬り殺せるそうだが…。

・能力未覚醒
 何らかの能力者ではあるが、まだ覚醒していないレアな状態だ。スキル枠を一つ埋め続けるペナルティを代償に、しばらく
勉強してから能力を選びたいという場合に選択すればいい。ちなみに未覚醒自体を無かった事にはできないから注意しろ。

・剣術Lv○、格闘Lv○、銃撃Lv○、投擲Lv○、弓術Lv○、など戦闘技術
 武器の扱いに関する物だ。槍やら斧やら武器に対応したスキルを習得していれば、当たり易いしダメージも大きい。何?私
は何が得意なのかって?…デスクワークオンリーだとでも思ったのか?格闘術と銃火器取り扱いは若い頃に習得している。遺
憾ながら教官資格まであるぞ。

・調理Lv○、薬品Lv○、飼育Lv○、工作Lv○、など生産系技術
 料理や薬品調合、危険生物飼育による素材入手、小物作りなどに影響する技術だ。調理はレーション類を自作して調査中に
体力を維持でき、薬品は戦闘をサポートするアイテムを作製できる。たまには私もファストフード以外の物を食いた…いや、
何でもない…。

・採取Lv○、狩猟Lv○、など収集系技術
 素材の獲得や、補給が見込めない状況での食糧確保に役立つ。暖をとる薪や、工作と併用したブービートラップ造りなど、
地味に見えて活用できる局面は多い。なお、スキルのレベルは最大10で、4になればプロ級と考えていい。

・ハイパーローディング
 人間、レリックヒューマン、ブーステッドマン(人)が使えるレリックの過剰解放だ。クールダウン中はレリックが使えな
くなるがな。例外的に獣型でも使用できる者が居るようだが…。

・メモリーフィードバック
 人間、レリックヒューマン、ブーステッドマン(人)が使える。武器型のレリックから歴代使用者の記録を肉体でトレース
し、高度な戦闘動作を再現できる。例外的に獣型でも使用できる者が居るようだが…。

・リミッターカット、禁圧解除
 獣人、エインフェリア、ブーステッドマン(獣)が習得できる自己強化能力だ。消耗と反動は甘く見るなよ?耐えられる肉
体がなければ習得自体が不可能だ。稀に人間型でも使用できる者が居るようだが…

・オーバードライブ、神卸し
 獣人、エインフェリア、ブーステッドマン(獣)が習得できる短時間の限界突破だ。習得自体が極めて困難だが。

・リバースドライブ、獣卸し
 獣人、エインフェリア、ブーステッドマン(獣)が習得できるオーバードライブの禁術版だ。制御失敗による暴走を逆に利
用する物らしいが…私も詳しくは知らない。

 スキルの習得にはいくつかのステップがある。スキルの開放条件を満たし、要求されるステータスの条件があればそれを満
たし、必要な熟練度を支払ってようやく習得できる。

 開放条件として一般的な物は、対象となるスキルを持つ者と共闘、あるいは戦闘する事で、スキルの習得条件が開放される
「体感学習型」。

 同じく多いのは、教本や奥義書を読んだり、特定のアイテムに触れる事で開放される「物品触発型」。
 一部に限られるのは、指定された行動をクリアする事で習得条件が開放される物…ま、有り体に言うと「イベント習得型」。
これは特定の共闘者と親交を深める事でイベントが発生するケースもある。

 これらの条件を満たして開放されたら、要求されるステータスの条件さえ満たしていれば、訓練ミッションなどで手に入る
「熟練度」を支払う事でいよいよスキルが習得できる。物によっては同じく熟練度をつぎ込む事で成長させる事も可能だ。熟
練度でスキルの購入とバージョンアップをする…といったイメージでいてくれればいい。

 なお、種族限定などもあるので全てのスキルを同時に網羅する事は不可能だ。また、共闘者それぞれが持つ固有スキルなど
も習得できない。逆に、お前にしか習得できないスキルもいくつか存在する。

「パーソナルアナライザー」
 思念波同調範囲内…つまり念話可能域であれば、お前が入手した正体不明のアイテムや仕掛けの類を鑑定したり、相対して
いる存在の特徴や弱点を解析してやれる可能性が高い。汎用スキルにある「鑑定」「観察眼」の複合版だが、これらと効果を
重複させれば精度はさらに上がるだろう。

「早期警戒」
 お前が念話可能域に居る限りは、周辺の状況をある程度私もチェックできる。これにより注意がし難いトラップや仕掛けに
も気付き易くなり、相手からの先制攻撃も受け難くなるだろう。汎用スキルの「発見」「先制攻撃」の複合版だが、これらと
あわせればそれぞれの効果はさらに上がる。

・リミテッドスキル
 SPなどを消費しない代わりに、一度の出撃につき一度しか使用できない特殊なスキルだ。私の所に帰還すれば再使用可能
になる。リミテッドスキルはひとり一種類しかセットできないが、習得済みの物は出撃前であれば自由に入れ替えできる。仲
間と共闘する場合などは、相性やコンビネーションを踏まえてセットする事を勧める。なお、熟練度を消費して習得するのは
通常のスキルと同じだが、多くのリミテッドスキルの習得は、そのタイプのリミテッドスキルを習得している人物との深い親
交が必要だ。…朱に交われば…というヤツだな。

 なお、以上のステータス内容は後述する「共闘者」も同一だ。





―待て―

 一つ一つドアを開け、中を確認しながらホテルの廊下を進む最中で、ミーミルの声が頭に届く。警告の響きを孕んで。

―たぶん何か居る。その丁字路の右手側、曲がった先だ―

 唐突に通路の向こうから吹いた風が、異臭を運んできた。

 血臭。ミーミルが告げた位置が正確ならば、ここまで届くのは…。

―ひとではない。戦闘準備を整えておけ―

 慎重に、音を立てないように、身構えながら壁に寄って通路の向こうを覗き見れば…。

―マンティスだ。…「お食事中」だな…―

 蟷螂の腹部を取り除き、胴体を人間のそれに似せたような異形の生物が、鎌を備える前脚で、床に散らばった何かの残骸を

口元へ運んでいる。

 じっとり染まった絨毯の赤と、突き当りの割られた窓で揺れるレースのカーテンの白さが、冒涜的なコントラストを描いて

眩しい。

―悪いが放置してゆく事は出来ない。排除しなければ上階に宿泊中の学生達も餌食になるだろう。そう、朝のバイキングでお

前と相席した、あの柔道部員達がな―

 蟷螂が顔を上げる。こちらを見て血塗れの鎌を擦り合わせる。食事の邪魔が入って気分を害したのか。それともお代わりが

来て喜んでいるのか。いずれにせよ戦闘は避けられそうになかった。

―アントの類より手強いぞ。油断はするなよ?―

 

2.戦闘手順

 戦闘はターン制で、お互いに決まった手順でフェイズを進行させて進めます。
 戦闘キャラクターの顔ぶれと配置、大まかな状態は「イコンカード」で表示され、相手側からも確認可能です。ミーミルが
面倒くさがりながらもさらっと説明してくれます。

イコンカードについて

 戦闘は、お前と共闘者の位置を示す「イコンカード」をバトルフィールドに配置して行なう。
 イコンカードは自分と、セットしている共闘者、フレンドが設定している助っ人の、最大三枚まで配置できる。このカード
の状態が、互いの位置関係や行動可能か否かの状態を表示するわけだ。

 また、イコンカードには共闘者の姿と名前と所属が表示される。うん?お前と私の所属?…気の利いた名前でも考えてくれ。

1・イコンカード配置フェイズ
 このタイミングで陣形を変えられる。前列後列の配置換えなどだな。
 カードは前列と後列に配置できる。後列に配置したカードには、相手の近接攻撃が届かない。銃や弓矢、能力などによる長
射程攻撃だけが届く。逆にこちらの後列に配置したキャラクターからも近接攻撃は届かない。肉弾戦が得意な者は前列に配置、
遠距離攻撃やサポートが仕事なら後列に配置、というのが定石だな。 また、前列に誰も居ない状態では後列に配置する事が
できない…間合いを詰められてしまうわけだ。また、前列に配置していた者が全て「戦闘不能」になった場合も、後列に配置
した者が前へ引っ張り出されてしまう。ただし、前列に障害物などを配置できるスキルがあれば、配置後に下がれるし、それ
が取り除かれるまで後列に居られる。要約すると、ボッチは常に最前線送りだ。世界は残酷だな。

 配置は戦闘開始時だけでなく、毎ターンの配置フェイズでも変更可能だ。

2・アイテムフェイズ
 手持ちの通常アイテムを使用する。レーションを口に放り込むなり、傷にスプレーを振るなり、手早く支度しろ。ちなみに
「攻撃用アイテム」の表記がある、使用時に「行動終了表示」になってしまう物はこのフェイズでは使えない。あくまでも攻
撃なので、次の手順であるアタックフェイズでしか使用できない事には注意するように。

3・アタックフェイズ
 スキルの使用や攻撃アイテムの使用、直接攻撃などを行なう。行動した者はイコンカードが横向きの状態…「行動終了表示」
になる。自陣全てのメンバーが行動終了になるか、行動可能状態でもアタック終了を選択すれば次のフェイズに移る。

4・エンドフェイズ
 アタックフェイズ終了時に切れるスキル効果などをクリーンナップしたら、ここでターンが終わり、相手の番になる。が、
状況を見てカットインスキルなどを使用する事が可能だ。

※カットインスキルについて
 自分が行動終了している状態や、敵側のターンでも任意のタイミングで使用できる「割り込み」スキルだ。相手の行動を阻
害したりできるが、「カットインへのカットイン」も可能な事は忘れるなよ?阻害行動を阻害される事もある。フレンドとの
模擬戦などでは、カットインをいかに使うか、使って来るかを、スキルの構成を見ながら推測する読み合いも大切になるぞ。

5・相手ターン終了
 相手がエンドフェイズを終えたら、またターン交代だ。

6・スタンダップフェイズ
 行動終了表示になっているイコンカードを一段階戻す。横向きであれば縦向きの状態…「行動可能表示」に、後述のスタン
状態であれば横向きの「行動終了表示」に戻す。90度しか戻らないと覚えておけばいい。

※スタン状態について
 強烈な攻撃などで大きく体勢が崩れ、すぐには動けない状態などだ。激痛に呻いて立ち上がれなかったり壁にめり込んだり
瓦礫に埋まったりコンタクトレンズにゴミが入ったりやる気が無くなったり、だな。これは「行動終了表示」よりも先の状態
で、イコンカードが上下逆さまになる。こうなってしまうとスタンダップフェイズでも「行動可能表示」まで戻らない。ただ
し、他のメンバーが助け起こして「行動終了表示」になるなら、代わりに戦線復帰が可能だ。

 イコンカードの表示については、
行動可能 > イコンカードが縦向き。
行動終了 > イコンカードが横向き。
スタン  > イコンカードが逆向き。
 と覚えておけばいい。

7・イコンカード配置フェイズ
 ここからは手順の最初に戻り、配置フェイズから繰り返しだ。

 …とはいえ、戦闘だけがミッションのメインではない。探索、手掛かりや証拠集め、予想に推理と、手先や頭を働かせて調
査を進めることになる。何より重要なのは「不要な戦闘を避ける」ことだ。体力も根気も物資も無限ではない。全部と闘って
全部に勝とう、などというのは無謀極まりない。本当に避けて通れない戦闘のために、どれだけ力を温存しておけるか…、戦
士にはそんな判断力も大切だ。





 作業場に入ったところで出くわした、真っ黒い怪物のようなずんぐりした巨体が、「おかえり」と言葉と煙を吐く。

「なに、問題ない。オーブンが煤を吐き散らしただけだ」

 咳き込んだ黒い塊が、すっかり黒くなっている元白衣の袖で雑に顔を拭うと、うっすらと灰色と黒の境目が確認できて、煤

でくすんだパンダの顔になった。

「ああ。この間お前に拾ってきて貰っただろう?アレを試運転してみたが…、故障の原因は判った」

 ミーミルが肩越しに視線を向けた先には、煤で真っ黒になった作業台に乗っている、錆だらけのオーブン。

「かなり古い型だが、造り自体はシンプルで骨子もしっかりしている。手はかかるが修理可能だ。駄目になっている部分は六

割がた取り替えるがな」

 ふと、その横顔を見つめる。オーブンを眺めるミーミルの顔は煤汚れのせいで判り難いが、少し穏やかに見えた。

「シールが貼られ、そして剥がされた形跡がある。不規則な曲線から考えて、アニメキャラクターなどのシールだったのかも

しれない。おそらく小さな子供が居る家庭で働いていたんだろう。シールを貼って、親に怒られて剥がされた…、オーブンは

熱くなるから駄目だ、と…。目に浮かぶようだ」

 機嫌が良いのか、ジャイアントパンダはやや口数が多かった。家庭を持ったことがあるのか?と質問をする前に、ミーミル

はやや険しい顔になる。

「しかし、なかなか手強い。エルダーバスティオン製の幼稚な擬似レリックの方がまだ素直だぞ。なるべく原型を留めてやり

たいところだが…」

 軽く首を振ったミーミルは、「とにもかくにも、ご苦労だった」と視線を向けてきて、口の端を僅かに上げた。

「調査も打ち上げも含めて、な。あのドッカーという男、どうやらお前を気に入ったらしいな。ああも強引に誘われては断り

難い。今回は長丁場で疲れただろう?まずシャワーでも浴びてきたらどうだ?」

 ドアに向かって顎をしゃくったミーミルは、「あん?私の方がシャワーの必要がある?」と眉を顰め、次いで苦笑気味に首

を軽く左右に振った。

「私は別にいい。どうせこれからまだまだ汚れる、お前が先に済ませろ。…それとも…、仕事の労いに背中でも流せ、と?」

 冗談めかして肩を竦めるミーミルは、しかし気遣いが不快ではなかったようで、少し耳を倒していた。

 

3.拠点

 あなたとミーミルが拠点とするホームです。世界中の様々な場所に繋がるドアがあり、あなたとミーミルはこの部屋に居な
がら何処へでも旅が出来ます。また、調査などで溜めたり、不要なアイテムを変換して得られる「成果ポイント」を使用する
事で設備の強化や増設、ガチャなどができます。ここで出来る事をまたミーミルがざっくり解説してくれます。

拠点強化(レイアウト変更)
 見ての通りここにはまだ何もない。「まだ」、な。お前がフワフワしている内はここもこんな曖昧な景色のままだが…、な
に、その内に部屋としての形になるだろう。だが、できればなるべく早めに頼むぞ?私もベッドやソファーやクッションでダ
ラダラしたいからな。家具やオブジェを設置したり、設備を増設する事でこの拠点の利便性や機能は増してゆく。…ま、実際
問題お前も私もここでルームシェアするような物なのだから、快適であるに越した事はない。各設備は「成果ポイント」をつ
ぎ込む事で性能を上げてゆける。

・キッチン
 料理を作る場だ。器具類も含めた設備だが、拠点で調理を行なう際には必須となる。…ん?食いたい物?私の?……………
その内に考えておく。

・飼育設備
 糸や鱗、毛などを得られる危険生物を飼育する設備だ。飼育スキルがあっても設備が無ければどうしようもない。…放し飼
いにすればいいと?ふざけるな。クロウラーでも放し飼いにされたら落ち着いて昼寝もできないだろう?

・作業場
 工作や薬品調合などで使う作業部屋だ。私が擬似レリックを作ったりする時にも必要になる。

・シャワールーム等
 身を清める設備だ。シャワールーム、バスルーム、ジャグジー、温泉、岩風呂…、機能を拡張する事でリフレッシュ性能が
上昇する。…ん?最優先?何故だ?………は?臭う?私が?

・ミーミルの私室
 私にもプライベートは必要だ。…ま、これは半分冗談だ。ガサツでズボラな知り合いが多かったせいで、いちいちプライバ
シーを気にする細かな神経などとうに摩耗している。むしろお前のプライバシーのために私が隔離される部屋が必要だろう。
それに私室ができたら、お前が客を連れて来た時に引っ込んでおけるからな。うん?私の部屋の内装が気になる?…酔狂だな
お前は。ただの仕事場兼寝床だぞ。

 

宿星の鏡(ガチャ)
 私が所持するレリックで、共闘できそうな者との縁の手掛かりや、拾得できそうな物、修練に効果がありそうな品の在処を
映し出してやれる。ただし起動にはコストが必要で、好きなだけ使える物では無いのだがな。入手できるものは次の通りだ。

・共闘者
 共に戦ってくれるキャラクターだ。もっとも、ひととは限らない。インセクトフォームにバイオクリーチャー…、マスター
登録されていない危険生物とコネクトする事もあるが、こればかりは運だな。

 日替わりで共闘者がひとりピックアップされて遭遇率が少し高くなる他、期間限定イベントに応じた出現率変動もある。ま
た、貴重なアイテム「世界の記憶」を使用する事で、アイテムに対応した共闘者と出会い易くなる。個人の出現率を上げる物
や、特定の所属の人物達の出現率を上げる物があり、同じ記憶を複数使えば確率はさらにプラスされる。確実をきすならピッ
クアップやイベント期間を狙って確率100パーセントにするべきだな。

 なお、既に所持している共闘者を再度入手した場合は、その共闘者が大幅に強化される現象、「突破」が起こる。

・装備品
 武器や防護服などを見つけられる事もある。…実は時折レリックらしき反応も検知されているのだが、見つけられたらラッ
キーだな。ま、あまり期待しないでくれ。

・消耗品
 応急スプレーやレーション、弾丸や催涙スプレー、その他探索に便利なツールが見つかる事もある。…実際にはそういった
物の保管場所からちょろまかす訳だが。

・素材
 アイテム製造や、装備品のオーダーメイドなどで使える素材類だ。これも貴重な物ばかり見つけられるとは限らない。過度
な期待はするなよ。

・強化用アイテム
 お前や共闘者の鍛錬に効果があるアイテム類が見つかる事もある。体を鍛える鉄アレイや、精神を鍛えるサメ映画のDVD
などがな。

 

婚星の扉
 お前が外へゆく時に使用するレリックのドアだ。コネクトは私が行なう。しかし「ドアが無い場所」へは渡れない。あくま
でも「ドアと認識され、その向こうの空間とこちらの空間を遮る物」が媒介に必要となる。状況をでっち上げるにも限度があ
るのだ。

残星の箱
 世界の記憶、レリックなどを保管するトレードボックスだ。フレンドとのトレード用ショーケースと考えればいい。





―今回はこれまでと少々勝手が違う。外界から隔絶されたベースを中心に付近を調査する事になる。…ところでお前、寒いの

は苦手か?ま、どちらにせよ選択の余地はないのだがな。苦手でも嫌でも我慢して貰うしかない―

 殺風景な通路を歩きながら、首に巻いたチョーカーに触れる。通信機も兼ねるこれが今回の「身元保証」らしい。

 通路には人影が全く無い。整然とドアが並ぶ無機質な眺めに、薄暗い灯りが心寂しさを添えている。空調が完璧なのか、空

気には逆に気になるほど何の匂いも無い。風景も雰囲気も無味乾燥、そんな印象が肌寒さすら呼び起こす。

―次の曲がり角を左へ、それからすぐ右に曲がり、二つ目のドアだ―

 ミーミルの案内に従って通路を進み、目的のドアの前で立ち止まる。

―ここが先ほどの女に指示された部屋だな。無人のようだが、中で待とう―

 ドアを潜るとそこは、ある意味では通路とつり合いが取れている殺風景な会議室。手近な席に座り、ミーミルからこの座標

近辺は「北原」と呼ばれている事、ここはある非合法組織の基地の一つである事を説明されていると、前触れもなく、ドアが

開けられた。

 目を向けた先で、白い巨体が豊かな被毛を揺らし、ドアを潜る。

 雪中迷彩に身を包む、堂々たる巨躯の男がそこに居た。犬系、グレートピレニーズの獣人に見えるが…。

―この部隊の小隊長のひとりだ。しかも、特別な調整を施された高性能型…ガルムシリーズの一体―

「君が新入りか」

 白い巨漢は部屋に入ったそこで足を止めたまま話しかけてくる。

 まるで雪山のような巨漢だった。厚く、高く、幅もあり、肥満体に見えるがだらしなさは感じられない。だが逆に、眼差し

も佇まいも何処か冷え冷えとした印象があり、ユーモラスとは言い難い。

「私はハティ・ガルム。本日より君を預かる事になる、第一小隊の隊長だ」

 理知的に見える双眸に、落ち着いた声、そして感情を窺わせない無表情。何処か無機質で冷たい印象があるハティと名乗っ

た巨漢は、しばし視線を注いでから思い出したように付け加えた。

「…階級は中尉だ」

 会話し難い、気詰まりな沈黙が漂う。しかしハティはその無言を異質とも感じていないようで、またしばらく黙った後で「

まだ何か質問が?」と訊ねてきた。

―心しておけ。その男は「最強のガルム」だ。…もっともそう呼ばれたのは極めて短期間の事だったが…。判り易く言えば、

今のお前が束になっても敵わない相手だ。間違っても敵に回すなよ?―

 

4.共闘者

 ガチャなどで縁が結べ、呼び出す事ができるようになったキャラクター達は「共闘者」と呼称されます。
 劇中で活躍した戦士や暗躍した工作員ややられっぷりに定評のある蟻さん達など、多数のキャラクターが共闘可能となって
おり、ミッションに行ったり、一緒に生産したり、お出かけしたりと、共に過ごす事で「信頼度」が上昇して様々な恩恵を受
けられるようになります。

 一度にひとりしか指名できませんが、拠点でのミーティングで連れて行くキャラクターを変更できます。性能や相性で選ぶ
もよし、好みで選ぶもよしです。

 なお、お友達と一緒に集団プレイする場合にはメインキャラクターと保有共闘者の中から一名を選んでプレイする形式とな
りますので、作中の誰かになり切ってロールプレイするのも一興かと。代表的な共闘者についてミーミルが勢力分類毎にざっ
くり解説してくれます。


 殆どの共闘者はお前と同じく汎用スキル、装備を扱えるが、それぞれが固有のスキルや固有装備を有している。例外的に、
インセクトなどの危険生物は武装したり、作業系スキルを習得できないが、荷物番としてアイテムの持ち運びはしてくれる。
 また、特別近しい者同士や、面識が無くとも「本来の歴史」において特別な関係にあった者同士は、戦闘時に同じ陣営にな
ると「魂の絆」という特殊な効果を発揮する。強力な攻撃を仕掛けるものや、有利になる効果を発揮するもの…、組み合わせ
も効果も様々だ。自分がセットしている共闘者とフレンドの助っ人の組み合わせを色々と試してみるのもいいだろう。

 それと、殆どの共闘者とは親密になると特殊なイベントが発生したりもする。轡を並べて闘うのだから嫌われるよりは好か
れた方が良いだろう。脱線し過ぎない程度に好意を得ておけ。

~調停者、ハンター~
 日本国の調停制度に基く呼称は「調停者」、国際的には「ハンター」と呼ばれる事も多い。免許制であり、警察機構の下請
けとして民間の調停依頼を請け負う他、実働戦力としての役目も担っている。日本に限って言えば機動隊の規模が小さい事も
あり、有事には同様の戦力として駆り出される事もあるようだ。実績に応じて触れられる「秘匿事項レベル」が開放されてゆ
く形態で、新米は本当に不自由なほど情報を制限されている。地域密着型で住民を守る使命感が強い者も居る一方、金を得る
手段と割り切って裏であくどい真似をする者も居る。また、彼らを監督する立場にある担当監査官のひととなりによっては、
悲惨な生活の末に悲劇的な末路を辿る者もある。一見すれば非常に強く見える「生殺与奪の権限」を与えられているが、裏を
返せばそれだけ調停者が「死に易い危険に常時晒されている」事を意味する。



「ボクの後ろに隠れておいて。大丈夫、そう簡単には死なせないからね!」
~アークエネミー~ 神代熊斗(くましろゆうと)
 一年ほど前に発生したテロ事件を期に設立された調停者チーム、「東護調停者連合のサブリーダー」だそうだ。上位調停者
であり、二つ名は「アークエネミー」。黄金を溶かし込んだような被毛を纏う大熊で、甘味の好み以外は常識人。チームを切
り盛りするサブリーダーであると同時に、チームの最大戦力でもある。身寄りの無い少女を引き取って養育しているようだ。

 徒手空拳の達人である上にエナジーコート能力者であり、頑丈さと物理的破壊力により殴り合いで無類の強さを発揮する。
カットイン型の防御スキルで自身も味方をフォローでき、前線に壁として陣取らせれば敵陣を前列から壊滅させてゆける。た
だしスキルのコストが多めなので、補給手段が少ないと消耗がネックになるだろう。その他、調理と飼育のスキルも所持して
おり、信頼度を上げ易い傾向にある。


~主なスキル~
・熊撃衝
 近接攻撃スキルだ。対象に通常攻撃を加え、さらに力場を爆破させる二段攻撃になっている。…本家は二段どころではない
そうだが…。

・雷音破
 長射程攻撃だ。力場を固定して作り出した光弾を対象に向かって撃ち出す。

・「キミの出番だ!」
 リミテッドスキル。カットイン。自分以外の対象一体のSPを全快にし、スタンを含む行動不能型の状態異常から復帰させ、
行動終了後でも再度行動可能にする。



「フォワードは任して欲しいっス!ドーンと「泥舟に乗ったつもり」で!」
~ブルーティッシュのルーキー~ 「アル」アルビオン・オールグッド
 日本国内最大最強の調停者チーム、ブルーティッシュに所属するホッキョクグマのルーキーだ。経験の不足や向こう見ずな
面、感情に駆られるなどの未熟な部分も見られるが、健全で人道的な思考を有する。

 回避性能に少々難はあるがHPも防御力も高く、カットイン型の防御スキルや戦闘中の自己回復スキル、味方をフォローす
るスキルを持つため、タンクとして最前線を支えられる。また、スキルに「レリックジャック」を持つので適正値を無視して
どんなレリックも使いこなせる。ただし、専用擬似レリックウェポン「ヴァリスタ」や通常兵装の大斧が所持アイテム枠を圧
迫するので、持ち物の整理に困る可能性もある。また、地味に工作スキル持ちでもある。


~主なスキル~
・リストレーション
 SPを任意値消費する事で同量のHPを回復する、コンバートタイプの回復手段だ。

・ニブルリュストゥング
 カットイン。思念波を阻害する霧を纏い、思念波による判定を伴う攻撃によるダメージや状態異常付加率を9割軽減する。

・「頑張れ○○!」(○○は対象となるレリック名)
 リミテッドスキル。カットイン。自分か味方のレリックウェポンを用いた攻撃に「必中」「会心」「貫通」効果を加える。
既にスキルなどによりどちらかの効果が発動している場合はさらに「ダメージ倍増」を加える。



「え、援護します!…大丈夫、…大丈夫、…訓練では上手くやれたんだ…!」
~東護の新人調停者~ 山岸望(やまぎしのぞむ)
 それなりの人数を有する調停者チーム、東護調停者連合の新米調停者だ。丸っこく肥った、一見すると狐に見え難い少年だ。
私も狐だと気付いた時は変な声が出た。ふふ。…ファイアスターター能力者であり、幼少期から監視対象として育ち、気味悪
がった父母から敬遠されてきた経験から、自身の能力を忌まわしく感じていたようだ。

 直接攻撃の威力は見込めず、防御性能も回避性能も低いため前列に配置するのは危険が伴う一方、いずれのスキルも消費S
Pが低めで、中~後列からの援護射撃に向く。また、獣人としては珍しくレリック適正が高く、入手できるレリックによって
は化ける可能性もある。スキルに「暗視」を持つため、灯りを必要とせず夜間の斥候などをこなせる。打たれ弱さを考えれば
銃火器を使えるようにスキルを調整してやる必要があるだろうな。


~主なスキル~
・発火の視線
 長射程攻撃だ。凝視する事で思念波の導火線を形成し、見つめた点で発火させる。実は、発火危惧が無い場合や、火を起こ
しにくい環境下などでも重宝される能力だ。

・爆破の視線
 長射程攻撃。発火点順は前者と同じだが、こちらは燃焼範囲が桁違いに大きい。

・「誘爆させればっ!」
 リミテッドスキル。カットイン。指定した爆破を伴う攻撃や爆弾系アイテムに「必中」効果を加え、効果対象を「敵全体」
に拡大し、高熱属性ダメージを上乗せする。なお、誘爆させられる物は火薬とは限らない。…粉塵爆発は知っているか?



他の共闘者

「よう!どうだ、そろそろ慣れたか?そうかそうかそりゃあ良かった。じゃあ付き合え。何処
にって?カチコミだよ。得物担いで駐車場集合だ。五分後な」

~デスチェイン~ ダウド・グラハルト

 

「どうやら敵さんは立て篭もりを決めたようであります。が、下策であります。袋の鼠とも言
い換えられましょう」

~自称衛生兵、他称拠点制圧兵~ エイル・ヴェカティーニ

 

「さぁて、一丁派手に行こうかお若いの!お?ちっと不安かよ?大丈夫大丈夫!どうにかする
けぇ心配無用じゃ!」

~東護調停者連合リーダー~ 「ドッカー」洞河安慈(どうかあんじ)





~ラグナロク~
 世界に仇なす史上最大最悪の非合法組織だ。目的は現在の世界…、国家、社会の破壊とも言われている。単純な軍事力で言
うならば、今現在こいつらに勝てる軍隊を単独で抱える国家は一つもない。もっとも、いま戦争を起こせば消耗も激しいせい
か、それとも他に目的があるのか、本格的な武力侵攻は日本でお試しレベルに行なった程度だ。構成員の殆どはまっとうなヒ
トではなく、大半がクローンや人為的に手を加えられた存在…つまり現在の国際基準では人権を持たない者達。それ以外は、
戦争犯罪者や亡国の軍人など、日のあたる場所では罪を問われたり拘束されたりするような立場の者達だ。もっとも、先進国
連合のボンクラ共は、彼らの撲滅に本腰を入れないどころか、情報公開すらしない。何か都合の悪い事でもあるんだろう。



「…これは…、先住民の居住痕のようだな。よく見つけた。君の手柄だ」
~ドレッドノート~ ハティ・ガルム
 「墓場」と揶揄される、ラグナロク内でも特に過酷で困難で危険な任務に就かされる末端の部隊、「グレイブ隊」に属する
小隊長だ。グレートピレニーズの獣人であり、極めて高性能なエインフェリア、ガルムシリーズのひとり。初期型ゆえにあま
り感情が豊かではないが、ある疑問を抱え続けている影響で、極力対象の殺害を避ける傾向があるようだ。

 高攻撃力、高防御力を兼ね備え、遠近問わず攻撃スキルを習得でき、探査向きのスキルも習得している。およそ戦士と探索
者として欠点らしい欠点が無い。加えて仲間までカバーする防御スキルも備え、オーバードライブまで可能だが、SPが低い
という欠点がある。


~主なスキル~
・環境適応
 狩猟、採取、隠密スキルと同様の効果を持ち、炎熱、極寒などの極端な環境下でも影響を全く受けず、飲まず食わずで一週
間以上保ち、短時間の休息で完全回復するサバイバルスキルだ。もはやひとの範疇に無いタフさだな。

・ショックフィールド
 カットイン。対象へ「ダメージ半減」を付与する。このスキルはSPコストが支払える限り任意数の対象へ使用できる。

・「君、死にたもう事なかれ」
 リミテッドスキル。カットイン。味方が受けるダメージを肩代わりして引き受け、カットインに限らず任意のスキルか攻撃
を実行。さらに庇われた側のHPを全快させる。



他の共闘者

「補充要員?この時期に?って、あなた明日からの任務内容を教えられてないの!?…まった
く、何考えてんのよ上は!…ああゴメン気にしないで。あなたに怒ってる訳じゃあないから」

~紫紺の憧憬~ ベヒーモス

 

「お前がシノブの敵にならないなら、お前がシノブの邪魔をしないのなら、請け負おう。守る
背中の一つや二つ、増えた所で何でもない」
~白銀の守護者~
 フェンリル

 

「…あなたが新しい護衛さんなのね。…忠告を一つ。私はどうとでもなりますから、あなたは
自身の命を守りなさい。…あなたが配属された本当の理由は「護衛」ではなく、「囮」なの」
~紫紺の諦観~
 レヴィアタン

 

「こう、考えた事は無いか?「解体」には効率が重要だと。では始めよう、優秀な助手が居て
くれて助かる」
~黄昏の楽師~
 ウル・ガルム

 

「グフフフフ!こっそり派手に根こそぎ頂くぜェ。準備はいいなァ!」
~老支配者の右腕~ シャチ・ウェイブスナッチャー

 

「ああ、子供ではありません。こう見えてひとの寿命を越えるほど前からこの姿です。趣味?
いいえ、残念ながら実用性の問題です。例えば、今のあなたのような反応が見られますから」
~魔人~
 ロキ

 

「あらあらあら援軍?わたしに?あらあらまあまあ、スルトかしら?レヴィアちゃんかしら?
間違っても先生じゃあないわねぇ。ふふふ…!」
~灰髪の魔女~
 ヘル

 

「仕事熱心なのはいーけど邪魔はすんなよ?何の邪魔って?決まってんだろ、楽しい潰し合い
のだよ!」
~魔女の忠実なる凶刃~
 ヘイムダル

 

「君は、この世界を奇妙だと感じた事は無いか?」
~黄昏の盟主~ スルト



~アンダーグラウンズ~
 非合法組織や、節度を守って秘匿技術を扱う者、国家機関ではないが秘匿事項に触れている者達の総称だ。財閥の私兵など
もここに含まれる。

他の共闘者

「………………………………………………葬(はぶ)る」
~インバネスコートの巨熊~
 神壊嵐爪(くまがいらんぞう)

 

「ど~も~!よろしゅう新入りは~ん!…ふむ…、ふむふむ…、ふむ~…!ええお顔にええお
体してらっしゃいますなぁ~、にゅふふふふ…!」
~怪しい三毛猫~
 「モチャ」餅屋丹波(もちやたんば)

 

「ああ、あなたがガイゼが推薦した…。あなたに行って貰うのは、烏丸財閥として我らが所有
している島の保養施設です。そこで管理人の手伝いを…あら?不満?」
~オブシダンクロウ総帥~
 烏丸巴(からすまともえ)

 

「俺はアイツを総帥にする。お前がお頭の命令に逆らえねーってのは判るが、…邪魔だけはす
るんじゃねーぞ…?」
~鼓谷の番犬~
 羽取金示(はとりきんじ)

 

「拙者、運び屋。名をマーナ・ガルムと言う。…時に…、アニメはお好きか!?特に和製アニ
メーションなど!」
~運び屋タンブルウィード~
 マーナ・ガルム

 

「あんたはちょっと黙ってな!悪いね、コイツ腕は立つんだけど趣味の方ではどうにも空気を
読まずに脱線しがちでさ…」
~運び屋タンブルウィード~
 シノ・ガルム



~はぐれ危険生物~
 中にはマスター登録がされていないまま彷徨っているインセクトフォームや、野良化したリザードマンなど、お前が主人に
なれる可能性があるモノと出会えるかもしれない。
基本的には駆除、捕獲される対象だが、中には腕利きのハンター複数名で
もてこずる、アックスヘッドのような強力な危険生物も居る。技能系スキルが習得できないという弱みもあるが、戦闘に関し
てはその特殊な体を活かした固有スキルで活躍できるだろう。

アント系
 代表的な蟻型インセクトフォームだ。こいつをベースに発展させた強力な物も多い。基本的には数頼みの物量攻撃に用いら
れる生物兵器なので、性能そのものは低めだ。

マンティス系
 蟷螂型インセクトフォームだ。鋭い鎌を持ち、戦闘能力が高い。多くのタイプが飛行能力を持つのも強みだな。

ホッパー系
 飛蝗型インセクトフォームだ。機動力があり、脚力を活かした格闘能力も高い。こちらも多くのタイプが飛行能力を持つ。

アックスヘッド
 インセクトフォームの最高峰とも言える、甲虫型の一体だ。カブト虫がベースで、剛力、強靭、知能も高い、と欠点が無い
上に、超音波による攻撃も可能だ。並の調停者では手も足も出ないが、コストが馬鹿高いので個体数自体が少ない。

フレンドビー
 メロンほどのサイズのクマバチ…インセクトファミリアに分類される生物兵器だ。名称は「フレンドリー」にかけてある。
兵器とはいっても基本的にサポート用で、高い知能と飛行能力を活かしてドローンのように周辺を偵察できるので、広大な国
土を持っている国などのハンター達にはメジャーなパートナーだ。武器は尻の針と、ザイルぐらいは頑張れば噛み千切れる顎
だ。体内で様々な成分を混ぜ合わせ、猛毒や非致死性麻酔を作り出し針で注入できる。人懐っこい習性で、見た目も可愛いと
感じる者が相当数居るらしく、インセクトのベストセラーとも言われるが…作った当時はまさかこんなにヒットするとは思っ
てもいなかっ…ゴホン!ちなみに、調停者でなくとも危険生物取扱い資格を満たしてあれば自宅で飼える。なお、普通の昆虫
類と同程度の耐寒能力しかない点には注意しろ。…つまり雪が降っているような環境では動けない。

ガーディアンドッグ系
 一見すると普通の犬にも見える生物兵器で、忠実に主人を守る。ポメラニアン風のカーシー、ヨークシャーテリア風のヘア
リージャックなどが人気だな。…やはり見た目か…。なお、特殊な力は持っていないが、機敏で強靭、しかも従順で勇敢、小
型ではあるが戦闘能力は虎並みだ。



 さらにその他にも…。

「リッターとは少し勝手が違うかもしれませんが、みんないいひとなのできっとすぐに慣れま
すよ。ナハトイェーガー本部へようこそ!あ、そしてヨロシクですね!ミオ・アイアンハート
です!」

「ミオから聞いたが、釣りが好きだそうだな?今度暇な時にでも少し話を聞きたい。…騎士殿
なんて堅苦しい呼び方は止めてくれ、ギュンターで良い」

「少尉殿と坊ちゃんの御友人でらっしゃいますな?ミューラーです、お見知りおきを…。(な
かなかの美形!…はっ!イカンイカン、ワシには坊ちゃんと少尉が…!)」

「潜入用の衣服ですかぁ~?ん~…、調達に少し時間がかかりますけど良いですかねぇ?ああ
いえいえ~、三十分ぐらいあれば準備できますぅ~」

「この世の中には、二種類の男が居る…。ミオにちょっかいかけるヤツと、かけないヤツだ。
…お前どっち?前者だったら速やかにここから叩き出して…ぶぱしっ!?」

「…残念だ…。お耳汚しな断末魔、失礼を。いま潰した残念な害虫の事はお気になさらず。わ
たくしはイズン・ヴェカティーニ。大佐よりベース内の案内を仰せつかっております」

「当代当主、神代勇羆と申します。帝の親衛隊よりの派遣と窺いましたが、さて、この直轄領
に何か問題でも…、いや、お聞き致しますまい。御役目の際に手が必要であれば、どうぞ遠慮
なく」

「本日より身の回りのお世話をさせて頂く犬沢と申します。どうぞご自宅にいらっしゃるおつ
もりで、ゆっくりお寛ぎ下さい。………これは失礼を。腕利きとお伺いしておりましたので…」

「遠路遥々、ようこそお越し下さいました。当主のコセイです。…それと…、もうお会いして
いたそうですね?アクゴロウ様とは…」

「やっほ~!ごぶさた~!ん?ボクがおる理由?実はねぇ、ココだけの話やけども……………
たまたま遊びに来てた、DA!KE!あっはっはっ!」

「アンタどっから来たんだ?…へー!そこの話、前にカナデ先生から聞いた事あったぞ!な、
アンチャン?」

「うん」

「他でもない烏丸の頭の頼み、無下にできん。が…、この里の事は他言無用だ。ヌシはワシと
も他の者とも会っとらん。…そういう話にできんなら修行はつけちゃあやれんぜ。…ワシか。
ワシの事はヒコザと呼べ」

 他のキャラクターも続々実装予定!





「どんな具合だ?」

 手渡されたばかりの新たな得物をしげしげと眺めていると、反応が少し気になったのか、椅子の背もたれに背を預ける格好

で上体を反らしたミーミルが、椅子を軋ませながら振り返る。

「お前専用に調整した。思念波同調は完璧のはずだが…手の馴染みが悪いならグリップの調整をしてやろう」

 作業台の上には、余った精霊銀の小さな欠片や、削り出された金属粉がそのままになっている。ミーミルが向かうデスクの

コンソールには、様々な数字やグラフが目まぐるしく表れては消えてゆく。念のための再チェック、との事だが…。

「あん?…別に疲れてはいない」

 ブスッとつっけんどんに応じるミーミルの目は、寝不足のようで真っ赤に充血していた。本来ならばかなり大掛かりな機材

とコンピューター、労力が必要になる擬似レリックの作製とマッチングを、ろくな設備も無いここで、たった一晩で、しかも

ひとりでこなすのは、並大抵の事ではない。

「礼はいらん。が、大事に使え」

 コンソールへ向き直ったミーミルは、

「この世でたった一つの、お前だけの擬似レリックウェポンだ」

 反応に気を良くしたのか、口調とは裏腹に、満足そうに耳を倒していた。

 

5.アイテム類

 あなたの冒険を助けてくれる品々です。ワゴンセールで買えるフードだったり、名工の手による一振りの刀だったり、英雄
の伝承に登場するような品だったりします。特別な時間を共有した相手との思い出の品や、人生のピンチに大活躍するような
物、人生について考えさせられるようなDVDなどもここに入ります。なお、ミーミルが面倒だと説明を拒否し始めました。
たぶん面倒なのではなく、触れ難い品があるからでしょう。
以下、アイテムの種類毎に少し触れてゆきます。

 

~通常アイテム~
 現行技術で作られた品で、刀剣、銃器、防護服…戦闘に直接使用する物にはいずれも耐久力が設定されています。戦闘時に
攻撃に使える「攻撃用アイテム」などもだいたいここに入ります。不要な物を処分すれば「成果ポイント」にできます。

・ジルコンブレード
 頑強な剣身に、切れ味鋭いジルコニウム合金の刃を備えた剣。安価ではないが、その信頼性の高さから組織所属を問わず一
流所には好んで使用されている。

・セラミックダガー
 小ぶりな刃物で、切れ味鋭く錆びずに長持ちする。携帯性に優れ、投擲にも向いた重量バランスを備え、衛生的な問題点を
クリアできればセラミック包丁代わりにもなるベストセラー。

・ブルーティッシュ製大斧
 ブルーティッシュ製の大戦斧類。柄の中にワイヤーが通された折り畳み式の長得物で、アタッシュケースなどに入れて持ち
運べる。また、緊急時には柄の中のワイヤーを開放する事でリーチを大きく伸ばして振り回せたりするが、推奨された使い方
ではないので当たり前に傷む。

・グリフォンスナイプ
 ブルーティッシュ開発のボルトアクション式アンチマテリアルライフル。重さも長さもあるので、その長銃身を活かして殴
りつけるなどバイオレンスな使い方も時折されるが、勿論普通に壊れる。

・鼓谷製防弾防刃ジャケット
 クロウラー類が吐く強靭な糸を惜しげもなく使用した、非常に丈夫な防具。安心安全な老舗のブランド品という事もあり、
高価だが人気がある。

・カロリーレーション
 消費アイテム。「ひとを選ぶ」と評判の、味はともかく咀嚼が容易で栄養価も高い携帯食料。HPを少量回復する。手っ取
り早くカロリーを摂取したい状況で重宝するが、食べ過ぎには注意。戦闘中使用可能。

・高カロリーレーション
 消費アイテム。「ひとを試す」と評判の、味はともかく咀嚼が容易で栄養価も非常に高い携帯食料で、HPを回復させる。
寝坊して遅刻しそうな朝などの状況でも重宝するが、過剰摂取には注意。戦闘中使用可能。

・神代式超高密度圧縮おにぎり
 消費アイテム。鬼のような握力と愛情を込めて握り固められた、食べても食べても減らない米の塊。HPを大回復する。海
苔は食べる直前に巻く形式で、疲れを癒す優しい塩味が効いているが、何合分の米なのかは怖くて聞けない。食べ終えるのに
おにぎりらしからぬ時間を要するため、戦闘中の使用は不可能。

・応急スプレー
 調停者御用達の応急処置アイテム。傷口を覆って止血する泡は、そのまま簡易保護材も兼ねる。使用するとHPを回復させ、
火傷などの一部の状態異常も治療できる。戦闘中使用可能。

・グミキャンディ
 消費アイテム。戦士に憩いの一時を提供するフルーツ味のグミキャンディ。携帯性に優れ、SPを少量回復させる効果があ
る。戦闘中使用可能。

・投擲式催涙ガス弾「チリペッパーグレイト3.0」
 消耗品の攻撃アイテムで、リップクリームに偽装せしめた手の平サイズの投擲型催涙爆弾であります。使用すれば鬼軍曹で
も落涙を免れない無慈悲なる刺激臭が辺り一面に立ち込め、敵味方問わずスタンを誘発するでありましょう。最新モデルのチ
リビーンズ風味であります。

・ラグナロク製強制活性剤
 消費アイテム。五臓六腑に極度の負担をかける諸刃の劇薬。使用するとHPとSPが全回復するものの、代償として数分後
に「猛毒」「昏倒」の状態異常になってしまう。戦闘中使用可能。

 

~レリック~
 遥か昔に存在していた、現行人類のそれを遥かに上回る技術や文化を持った文明により生み出された、オーパーツめいた物
です。能力にも似た効果を引き起こす機能を持ち、持ち主の思念波に応えてその真の性能を発揮します。永久不滅とも評され
るほど丈夫だったり、自己修復能力を備えていたりするので、耐久力は「無限」です。もっとも、破壊された例が皆無という
訳ではありませんが、(実際折れたのを使ってるオッサンも居ますが)レアケースなので気にしなくても平気です。

 物によっては思念波のマッチング…つまり使用者の登録や同期のような作業が必要になりますが、これはミーミルが行なっ
てくれます。出撃中に運良く入手できた場合は、念話可能域内であれば即座にマッチングして貰えます。レア具合で言えば殆
どが国宝級の貴重品なので、そうそう入手できる物ではありませんが…。

 なお、機能を開放するには品毎に異なるレリック適正が要求されます。適正が足りていなければ「ひたすらに頑丈なだけが
取り得の品」止まりで少し哀しいです。また、人間系専用の物も存在しますが、種族縛りについてはミーミルの方でもどうし
ようもありません。…こういった物の常で、自分には使えない物が手に入り易いという残念な法則が働いたりするかもしれま
せん。

・ライトクリスタル
 所有者の意思を感知し、反重力で自律浮遊する照明器具。以前は非常に貴重な品だったが、東洋の島国である調停者が大量
の密輸品を摘発し、大量に市場へ流れ込んだ事で大変お求め安くなった。また、これを素材にして作れる物もあるとかないと
か噂が…。

・精霊銀
 素材として重宝される、思念波を蓄積する性質を持った特殊金属。多くの擬似レリックにはこれを使用した合金が使われて
いる。また、大量の成果ポイントに変換する事も可能。

・神鉄
 素材として重宝される、精霊銀とは逆に思念波を拡散する性質がある金属。多くの擬似レリックにはこれを使用した合金が
使われる。また、大量の成果ポイントに変換する事もできる。

・ラインゴルド、オリハルコン、ヒヒイロカネ
 様々な名で伝説に登場する超希少金属。これを用いて作られた擬似レリックウェポンは、もはや本家のレリックと遜色ない
無限の耐久性を備える。レリック大量の成果ポイントに変換できるが、そもそも入手が困難。

 

~疑似レリック~
 オリジナルのレリックとは違い、現行技術により模倣、製造された品が「疑似レリック」です。適正や種による使用制限、
マッチング諸々についてはオリジナルのレリックと同じですが、こちらには耐久値設定があり、破損の可能性もあります。た
だし、通常の武具類と違って耐久力が尽きても使用不能になるだけで消滅はしません。耐久力が尽きた擬似レリックは、拠点
に戻ればミーミルが修復してくれます。また、ミーミルは共闘者が持つ固定装備のレリックを模した装備も作ってくれるので、
素材は狙いを定めて積極的に集めて行きたいところです。

・ヴァイスリッター式振動剣「旧」
 独国の白騎士団が採用している高速振動機能を備えた諸刃の直剣。あるレリックの入手を境にバージョンアップが行なわれ
ており、さらに高性能になった後期生産品は「新」と呼称される。

・鼓谷製インドラ
 放電能力者の力を参考に鼓谷財閥が開発した格闘用グローブ。帯電させて殴り、スタンガンのように感電させる他、電気を
吸収する性質により感電耐性もつく。

・鼓谷製アグニ
 発火能力者の力を参考に鼓谷財閥が開発した格闘用グローブ。それ自体が高熱を発する他、火炎放射、火炎弾発射機能など
も持っている。

・鼓谷製ヴァーユ
 衝撃操作能力者の力を参考に鼓谷財閥が開発した格闘用グローブ。衝撃波を撃ち出す機能を持つ。実は鼓谷内で最も早く完
成した品だが、「不可視の攻撃による痕跡を残さない殺傷が可能」という面から悪用が危険視され、極々少数の完成をもって
生産ラインが凍結された。

 

~世界の記憶~
 ガチャでの共闘者の出現率をアップさせるアイテムです。フレンドともトレードできます。

・夜明けの為の咆哮
 かつて叫ばれ、世界に刻まれた咆哮の残響。雄々しくも哀切な、誰にも届かぬ誰かの声。

・擦り切れた柔道着
 かつて強い男と試合した思い出。確かに抱いた敬意と、友情の始まりの記憶。誰かが護りたいと願った世界の象徴。

・化け物と言った声
 喧嘩する両親が漏らした本心からの言葉。望まぬ力を宿した子供の、根源にある心傷風景。

・折れ飛んだ剣の先
 半ばから折れて切っ先側だけが残った剣。半身を求めるかのように、寂しげに輝いている。

・古い熊の縫い包み
 長く誰かと連れ添ったのだろう色褪せた熊の縫い包み。大事にされていたのかフカフカのまま。

・トンファーの破片
 氷と雪に覆われて凍てついた破片。冷たいはずなのに、手に取れば優しい温もりが感じられる。

・小さな十徳ナイフ
 よく見かけるタイプの多目的ツール。氷が付着してすっかり凍てつき、開くことができない。

・白騎士の叙勲証書
 正式に騎士となった事を証明すると共に、騎士道への邁進を促す書状。現実となった夢の残骸。

・古びた瓶のワイン
 剥げだらけになったラベルに聞いた事もない生産地が記されたワイン。二度と戻らない故郷の品。

・ボロボロのベスト
 かつての着用者の激戦を物語る、見る影も無く破れたベスト。背中に「X2U」の文字がある。

・石と貝殻の首飾り
 ある少年が幼馴染に贈った、島伝統の素朴な首飾り。耳に近付けると波音が聞こえる気がする。

・異邦人のフィルム
 かつて誰かが誰かへ贈ったフィルム缶。破壊するには惜しい、美しい世界が切り取られている。

・唯一度のさよなら
 全てを愛した相棒に向けた、最初で最後の別れの言葉。世界は残酷なまでに愛で満ちている。

・言えなかった言葉
 愛おしいが故に自らの手では育てられなかった我が子への想い。身勝手で滑稽で哀しい愛情。

・調停者ドックタグ
 調停者が首にかける認識票。公的な身分証明であり、死体となった時の身元証明でもある。

・狩人のライセンス
 ハンターが持つライセンス。触れられる情報の範囲や制約事項などが細かく記されている。

・黄昏を見据える瞳
 昼の終わりを待ち、黄昏の幕を引く者達の眼差し。光に焼かれた瞳にこそ、夜は優しく映る。

・新しい事務所の鍵
 やっとできあがった事務所の鍵。元はばらばらだった調停者達が持つ、チームの一員の印。

・本部用カードキー
 ブルーティッシュ本部で使われる磁気カードキー。尻ポケットに入れている白熊が時々折る。

・黒色のチョーカー
 通信機を内蔵した首輪。異なる勢力に属する二つの部隊で用いられる隊の誇り。

・命一つを込めし武
 屍山を築き、血河を渡り、命一つを武に込めて、摘みし命に指染めて、矢尽き刃の折れるまで。

・木々が奏でた潮騒
 皆が居た頃の隠れ里の記憶。二度と戻らぬ日々の傷跡。海の音にも似た樹海の歌声。

 

~プレゼントアイテム~

 共闘者との仲を深められる、贈り物用のアイテムです。好みや趣味趣向は各々異なるため、喜ばれる物を考えてプレゼント
するのが落とすコツです。

・東護町商店街くじ引き券
 東護町滞在者に渡すと好感度が少し上がる。ちなみに賞品はハイクラス温泉施設宿泊券や高性能デジタルビデオカメラなど
かなり奮発してあり、商店街の心意気と危機感が伝わって来る。

・海産物詰め合わせ
 新鮮な海の幸詰め合わせ。山奥で暮らしているととても嬉しいプレゼント。季節毎に旬の物が選ばれる贈り物の王様。

・火国馬刺
 桜肉の刺身。脂身が少なく赤味にも癖が無い、好きな者には堪らない味わい。特に、ある人物にとっては故郷の味。

・イベント限定プラモデル
 プラモデルやロボが好きな少年達に喜ばれるレア品。ネット通販ではやオークションでは情け容赦ないプレ値がついている。

・プレミアムロール(ショコラ)
 数量限定、毎日行列ができる人気パティシエのロールケーキ。ビター&スウィート、上品な味わいは女性客に特に人気があ
るが、何でも食べる手合いも多いに喜ぶ。

・プレミアムロール(フルーツ)
 数量限定、毎日行列ができる人気パティシエのロールケーキ。フレッシュ&ヘルシー(?)、繊細な味わいは女性客に特に
人気があるが、何でも食べる手合いも多いに喜ぶ。

・黒トリュフマヨネーズ
 どんな戦場(皿上)でも活躍できる無限のレパートリーとポテンシャルを秘めた世界を一繋ぎにし得る至高の調味料。ビバ
エマルジョン。要約すると世界で宇宙。…らしい。

・シェリルのCD初回限定版
 調停者にも黄昏にも人気がある、世界の歌姫、シェリル・ウォーカーのCD限定ジャケット版。誰でも喜ぶ。

・ハウルのサイン色紙
 調停者にも黄昏にも人気がある、伝説のロッカー、ハウル・ダスティワーカーの貴重なサイン。誰でも大喜びする。

・河祖下印のヘチマスポンジ
 魂の洗濯シャワータイムをより充実した時間にしてくれるオーガニックスポンジ。身なりにだらしない同居人などに渡すと
変わった行動が見られるかもしれない。



~フレンドリーアイテム~

 条件を満たすと共闘者からプレゼントが貰えます。消耗品の他、装備品が貰える事も…。

・ユウト特製ハンバーグ
 調理者の愛がこもった、焦げ目も美しい絶品ハンバーグ。チーズイン、和風おろしソースなどレパートリーも豊富。冷めて
も美味いが出来立てが一番おいしい。食べれば即座にHPを全回復させる、疲れも吹っ飛ぶ特効薬。「好みがあったら教えて
よ、今度はそれに合わせるから!」

・危険な気配が漂うアップルパイ
 一目見たミーミルが警告を発するほど名状し難い危ない甘味を宿した食べ物(?)、その一つ。選ばれた者以外が食せばた
ちどころに味覚を破壊されるであろう凶器。そこそこの成果ポイントに変換できる。「甘さ控えめだよ!」

・危険な香りが漂うバタークッキー
 香りを嗅いだミーミルが警告を発するほど名状し難い危ない甘味を宿した食べ物(?)、その一つ。選ばれた者以外が食せ
ばたちどころに味覚を破壊されるであろう凶器。そこそこの成果ポイントに変換できる。「おいしいよ!」

・危険な雰囲気が漂う大学芋
 分析したミーミルが警告を発するほど名状し難い危ない甘味を宿した食べ物(?)、その一つ。選ばれた者以外が食せばた
ちどころに味覚を破壊されるであろう凶器。そこそこの成果ポイントに変換できる。「さあ、めしあがれ!」

・危険な湯気が漂うミルクセーキ
 部屋に持ち込んだ途端ミーミルが警告を発するほど名状し難い危ない甘味を宿した食べ物(?)、その一つ。選ばれた者以
外が食せばたちどころに味覚を破壊されるであろう凶器。そこそこの成果ポイントに変換できる。「体の芯から暖まるよ!」

・もはや危険な気配しかないホールケーキ
 持って帰ったらミーミルが激怒するほど名状し難い危ない甘味を宿した食べ物(?)、その極限体の一つ。選ばれた者以外
はケーキがトラウマになるであろう危険物。かなりの成果ポイントに変換できる。「自信作なんだ!」

・エイルのビーフカレー
 刺激が強い濃厚辛口カレー。絶妙なスパイスの調合による健康的な辛さは、汗は止まらなくなるが癖になる。頭も体も活性
化されるので、ミッション出撃前に食べれば取得熟練度がアップする。「「甘口」であります」

・エイルの殺人カレー
 強烈な刺激を伴う超激辛カレー。催涙兵器用の材料をブレンドした殺人的辛さは近付いただけで涙が止まらなくなり口にす
れば口内炎は免れない。作った本人も「食用ではなく尋問用」と述べる一皿。何故カレーにした。そこそこの成果ポイントに
変換できる。「タベラレマセンであります」

・アルが仕上げたプラモデル
 アルビオンがコツコツと何日もかけて造り上げた親愛の証。整面、塗装、マーキングの研ぎ出し、全てが丁寧に仕上げられ
た世界に一つだけのメカ。自立不可能な重武装のためスタンド必須。自室に置いておくと内職時の成功率が小アップ。「興味
無かったら悪いっスけど…!」

・カムタの手編み籠
 小物入れにも果物皿にも使える、自然物だけで編まれた素朴な籠。飾り気の無さが清々しく、眺めていると南の島での思い
出が蘇る。自室に置いておくと内職時の成功率が小アップ。「一個やるよ、あんまりオシャレじゃねぇけどさ!」

・シャチ愛用のスキットル
 非常に頑丈な作りの飲料容器。好きな飲み物を携帯して歩ける。少しだけ防御力を高める他、一出撃に一度だけ使用でき、
SPを少量回復する。「映画とかであるだろォ?「これのおかげで銃弾が止まった!」とかなァ」

・鼓谷私設部隊専用防弾スーツ
 一見普通のスーツ上下だが、危険生物由来の繊維が編み込まれた戦闘服。キャッチコピーは「クールな着こなし、さりげな
く防弾」。「キンちゃんがあなたの事を気にしてるみたいだったから…。これからも仲良くしてあげてね?」

・神代の戦装束
 動き易さを重視して作られた胴着。軽装でありながら防弾武装顔負けの性能を誇る、再会を願う奥羽の闘神からの心づけ。
着用時は命中と回避の判定に10%のボーナスを得られる。「君に合わせて仕立させた品だ。どうか受け取って欲しい」

・隠神の黒作務衣
 鵺の毛が編み込まれた夜に溶け込む黒装束。厳しく愛想の無い大狸が用意した、死地へ赴く弟子への無骨な餞。属性を伴う
ダメージを半減する強靱な防具。疑似レリック。「死なん以上の勝ちなんぞない。…判ったら必ず帰って来い」

・ミーミルの手作りドリア
 不慣れなミーミルが素材まで拘り抜いて作った手料理。指の火傷は名誉の負傷、不精な彼が失敗を重ねて完成させた熱々の
ドリアは、労いたい相手がこの世のどんなものより例外中の例外である証。胸が一杯になってやる気が湧いてくる。食べると
熟練度を獲得。「…冷める前に食え」





「…この私が、「英雄」と似たようなモノを放つ羽目になるとは、何とも皮肉だな…」

 ミーミルはふと視線を上げ、「ああ、独り言だ。気にするな」と、追い払うように手を振る。

 向き合って挟んだローテーブルの上、ノートパソコンを開いているミーミルの顔はモニターの光で下から照らされているが、

その顔はどういう訳か、不機嫌そうにも、疲労しているようにも見えた。

「疲れてなどいない。休息は充分に取っている。そもそもお前と違って体も動かしてはいない。…あん?精神的な疲労?…構

うな。問題ない」

 話を打ち切ろうとするミーミルは、否定になっていないと指摘させるなり、いよいよ本当に不機嫌な顔となった。

「お前こそ疲労は癒えているのか?下らない話をしている暇があったら心身を休めろ。実働役は私ではなくお前なんだからな」

 つっけんどんな声と言葉にも、しかし僅かに気遣いが窺える事が、最近は少し判って来た。突き放すような言い方や無愛想

な物言いは、話を切り上げようとしているだけで、大体の場合、本当は怒ってもいないし不機嫌でもない。

 ただ、きっと、おそらく、ミーミルは人付き合いが得意ではないのだろうという気がする。

「…あん?まだ何か用が…、外出する?ああ、何処にでも行って来い。…何?私が見たい景色や場所だと?」

 胡乱げに眉根を寄せたミーミルは、ため息混じりに僅かな苦笑を浮かべ、耳を倒した。

 その顔は何処か、聞き分けの無い子供に対する親や、言う事を聞かない弟に対する兄が、言い分に折れて降参している時の

物のようにも思えて…。

「…別に何処でも良い。ここで視ているから、足が疲れない所にでも行ってこい…」

 

6.ミッション

 世界を消滅に向かわせる歪みを調査する、あなたとミーミルの仕事が「メインミッション」。その他に、訓練や腕試し、素
材集めができる「フリーミッション」、共闘者と親交を深める事で発生する「フレンドリーミッション」があります。時には
期間限定でイベントミッションが開催される事も…。

 また、フリーミッションには「修行・隠神の里」「探索・河祖中村跡地」「探索・北原南部」のようにストーリーを進めな
いと出現しない物もあります。

※多人数プレイについて
 お友達と協力してフリーミッションをこなす事もできます。この場合は共闘者セットはできず、一人につき一体プレイヤー
キャラクターか、所持している共闘者でプレイする事になります。

 俗な話になりますが、多人数専用ミッションは基本的にクリア報酬が多く、通常のフリーミッションにおいても、探索中の
アイテム入手判定などを参加人数分行なえるので判定成功率が高く、ひとりでも判定に成功すれば全員のアイテム入手枠が増
えるので稼ぎが良いです。



「臨時求人に申し込んでくれたの、まさかキミだったなんてねぇ。あの晩に会ったのも何かの縁かな?…とにかくようこそ!
ボクはサブリーダーの神代熊斗、今日からキミの分もご飯作るから、食べられない物があったら教えてよね?じゃ、早速キミ
の部屋に案内するよ!」

「見学のひとっス?ここ居住区域っスよ?え?違う?…へ?臨時隊員なんス!?部屋は…、ここ!?むっはー!お隣さんっス
ね!…あ。オレ、アルビオン・オールグッドっス!よろしく握手!本部には慣れたっスか?…だったら、荷物下ろしたら施設
の案内するっスよ!オレ結構詳しいんス!」

「え?事務所ならここですけど…。あ!もしかしてサブリーダーが言っていた求人申し込みのひと…ですか…?失礼しました、
サブリーダーのところにご案内します!…あの、ぼく、山岸望って言います。一番下っ端なんですけど…、判らない事があっ
たら何でも訊いて下さいね…!」

「お前さん鰻は嫌いじゃあなかとね?ほうかほうか、そりゃあ上々!東護に来たばっかりじゃあ店も良く知らんじゃろうし、
行きつけの店で歓迎祝いに奢っちゃろ!迎百年以上やっとる老舗じゃけぇ、味はお墨付きじゃ!」

「タゴサクさんの探知技能には全幅の信頼を寄せる所でありまして、作業終了まで大安心で休息を取らせて頂くであります」
「下の名前で呼ぶな。探知サボるぞ」
「失礼。そう呼んで良いのはチエコさんだけでありましたか」
「…今日のお前なんか機嫌悪くねー?当たりキツくねー?」

「おかえり。あん?何だ、猫を拾ってきたのか?まさかここで飼うつもり………………。おい。お前「気付いて」連れて来た
のか?…何て事だ、こいつただの猫じゃないぞ…」

「ニャーオ」

「ランゾウはんに任しとけばすぐ片付きます~。なんせ「絶対葬るマン」やさかい」
「………………」(ネーミングが不服)

「手伝わせちゃってゴメンねー、でもキミが会計得意なひとで助かったよ。ドッカーさんは兄さんと同じでデジタルが苦手な
人種だし、トウヤさんは出張長引いてるし…」
―そのレシートも高熱水費だ、そのまま経費に含めて良い。入力したらシートを変えて交際費の欄に焼肉の領収書の金額を打
ち込め。…おい、そのコンビニ払い込みの控えは何だ?食玩セット?誰かの私用の可能性もある、確認してみろ。面倒な…。
なぜ私がこんな事を…。そもそもお前が安請け合いなどするから…―

「あァ?補充要員?そうか補充かァ、ついてねェなァ、今投入されてんのは消耗品扱いの兵力だぜェ?それでおめェは死にた

くねェヤツか?それとも死にてェヤツか?どっちの方だァ?…そうかそうか、そいつは結構だァ、グフフフフ!ところでよォ、
……………………………………………………………………………………………………………おめェ、ラグナロクじゃねェなァ」



―そう…。あなたは「世界と契約した存在」ね?それにしても不思議、何故「半分」なのかし
ら?…ああ、なるほどそうか、そういう事…。半分ずつの契約なのね。契約による権利はあな
たに、契約の代償は別の誰かに、そして契約の履行はふたりで行なうと…―



「ノゾム君、ちょ~っと自信が足りてないトコあるからね。アル君に引っ張り回して貰えれば助かるなぁって思ってるんだけ
ど…。え?リーダー?うん、賛成してくれてるよ。「天下のブルーティッシュに武者修行となったら自信も箔もつく」って」

「僕達は前に、あの霧と似たような物と遭遇した事があって…」
「そん時はどうだったんス?被害とか…」
「町一つが地図から消えました~」
「…最悪っス…!」

「このひとがボクの自慢の母さん!美人でしょ?全然似てないって言われるんだ。あはは…!」
「はじめまして。フレイア・ゴルド…北原のハンターさ。あなたの話はよく聞かされてるよ。無茶ばっかりするんだって?ユ
ウトが言うくらいなんだからきっと相当だね、ふふ…!」

「君が北原に赴任とは…、何か不興を被るような事でもしたのかね?」
「レヴィアタンのご命令に従っての事だ。真偽の程は判らないが、英国のサーが内密で三名こちらへ赴いているらしい」
「初耳だが、それが事実であれば国際協定違反だな。ユニバーサルステージ級二名の時点で、一国に許可されている駐屯戦力
ギリギリだろう」

「こう、考えられはしないか?協定を破ってでも成さねばならない事ができた、とは…」

「ハイメ…?」
「あ?誰だソレ?」
「…え?あ、いや、何でじゃろ?お前さんの顔見たら、ふ~っと思い浮かんで…」
「…アンタ誰だオッサン?初めて見た気がしねー…。もしかして、何処かで会った…か?」

「残念ながら例の銀狼は格が違い過ぎます。私では逃げに徹して数分持ちこたえるのが関の山で、大した時間稼ぎにもならな
いでしょうね。おそらく旦那さんでなければ太刀打ちできません」

「話が判らない男には見えなかったが、こうなったら仕方ない…。ルディオさんには悪いが、やっこさんの足止めをして貰っ
ている間に、僕達で船を叩くしかないだろう」

「じゃあオラが船出して、連中の船につける!アンチャン、大丈夫か?」
「ん。やるしかないんだろうしなぁ」

「ぼくは、ガルム。…失敗作だから、固有名は貰えなかったんだ。だから、識別は製造コードそのままで「ガルムシリーズ・
ナンバーエイト」…。君を護るように命令されている。ランデブーポイントまで確実に護送しろ、そのためなら機能停止も顧
みるな、って」



―君は、この世界を奇妙だと感じた事は無いか?―



「基本的に世界…歴史なり時の流れなりも内包したものは、あるべき形に戻る復元力を持つ。ところが、打ち込まれた異物と、

この復元力との間で生じる負荷が、世界に損傷を与えている」

 食べかけのサンドイッチを片手に、ミーミルはサラサラとボードに図を描き始めた。

「ま、薄いゴム製の帯でも想像してもらえれば良い。斜めに立てられた板の上に乗った、密度のむらもあり、所々歪んでデコ

ボコなゴム帯…その上を「時」という名の水が流れている。それが私がイメージする「世界」のしくみだ」

 ジャイアントパンダが記した図は、絵心がないのが一目で判る微妙なラインの簡素な図形で、口頭説明が無ければ何の図な

のか全く判らないレベルである。

「板の上に置いてあるゴム帯は、所々に虫ピンが刺されている。細いピンだから穴は小さく、水に晒され続けていつかは朽ち

る物なのだが…、今、その虫ピンは大量に刺されている。それもゴム帯を引っ張った上で刺している所が多く、ゴム帯は歪に

あちこちを伸ばされた状態で板へ釘付けにされている訳だ。ゴム帯は戻ろうとするがピンは抜けず、穴はおのずと広がる。水

はピンを朽ちさせるどころか、広がった穴から零れ落ちてゆく。そして、ゴム帯は裂けて徐々に穴を広げている。…この裂け

目がゴム帯を分断するほど広がった時…、それが「世界の消滅」だ」

 ミーミルがシャッと、乱暴に横線を引いて図を断った。

 シンプルなだけに、その世界の終焉を意味する線は薄ら寒さを感じさせる。

「私達がやっているのは、このピンを一本一本抜いてゆく作業だ。全部は無理だとしても、致命的な負荷をかけているピンは

確実に除去しなければならない。…絵では判り難くとも話は判ったな?」

 自分でも幾分気になっているのか、ミーミルは最後にボソリと付け加えていた。





 目を焼くような白光が収まると、光の粒子が乱舞する向こうに、信じ難い光景が広がっていた。

 リザードマンの群れの、真正面にあたる部分が跡形も無く「消滅」している。少なくとも二十や三十ではきかない頭数が、

一瞬で。光爆に全身を飲まれなかった者達も浴びた部位をごっそり焼き払われており、光爆に上を通過された地面は、半筒状

に大きく抉れている。

 刀身が割れてツインタワーのようになった大剣をライフルのように構えていたホッキョクグマは、「やっぱブランクありや

がるっスか…。イマイチ力が入んねぇっス」と不満げに呟くと、直立姿勢に戻ってソレを一振りする。割れていた刀身はスッ

と閉じて剣の形に戻り、合わされた中央部には僅かな割れ目も見えなくなる。

 ミーミルの声がため息混じりに告げた。

―理解できたか?その男は、アルビオン・オールグッドではない。お前が知っているかどうかは判らないが…、かつて、その

当時の「世界」から敵と見なされ、「白き災厄」と呼ばれた男だ―

 ホッキョクグマの大男は太い笑みを浮かべ、分厚く巨大な白い剣を肩に担ぎ上げた。

「事情は判ったものの、気に食わねぇっスねぇ…。…が、こうなりゃ見て見ねぇふりって訳にもいかねぇっス…」

 その鷹揚な背中はどこまでも頼もしい一方で、構えもしない無造作な立ち姿からは強烈な威圧感が漂ってくる。

 「白き災厄」。

 この男がそう呼ばれる理由が判った気がした。

 それはもはや「戦士」とも「猛獣」とも言えない。ひとの身では抗いようもない「大災害」が、威力も規模もそのままに、

スケールだけひとのサイズまで落とし込まれたかのような存在…。

 金色の瞳がヒタと据えられた先で、リザードマンの大群が、凍りついたように動きを止めた。

「さてと…、仕方ねぇから「また」世界を救ってみるっスか…!」





「キミを…、知ってるような気がする…!」

 紫紺の光が薄れてゆく、冷たく感じられるほど整った顔立ちの青年の目を見つめて、ユウトは困惑混じりに言葉を紡いだ。

「会った事はない…、見た事もたぶん…、でも…、ああ、どうしてなんだろう?ボクはキミを…、キミの事を…、よく知って

るような…?」

 青年はユウトの声に応じず、足元に倒れ伏しているリザードマンの強化個体を見下ろすと、その背に突き立っている刀を掴

んで引き抜き、素早く一振りして返り血を飛ばす。

 相当な手練だという事は、危険生物五体を数秒で完全に絶命せしめる手腕と、その隙の無い身ごなしで判る。だが、ユウト

はらしくもなく、所属も正体も判らない超戦士を前に、眠っているアリスを抱えている状態でありながら、構えも取らず完全

に無防備だった。

 長身痩躯の青年はしばし無言でこちらを見つめていたが、唐突に身を翻す。

 機関室でまた爆発が起こったのだろう、振動といっしょくたになった音が足元から駆け上り、船体が大きく傾いた。

 床が斜めになった不安定な状態でも、黒ずくめの青年はふらつきもせず歩み去る。

「待って!」

 アリスを落とさないよう抱えているせいで、満足に動けないユウトが、青年の背へ呼びかける。

「キミは…!キミは誰!?」

「…誰でもない」

 振り向きもせず青年が発したその声は、世界の果てから届くように遠い。

「…お前は、俺と関わるべきではない…」

 去り際に青年が発した呟きは轟音に掻き消され、誰の耳にも届かなかったが…。

―今の男…、神代熊斗の事も、その娘の事も知っているかのようだった。神代熊斗は何か感じながらも思い出せないのに、だ。

…まさか、「本来の歴史」の記憶を保持しているのか?―

 ミーミルの声は思案するように抑えて響いた。

―もしも私と同じ「メモリーホルダー」だったとしたら…―

 もう一度タンカーが大揺れすると、ミーミルは逡巡するような気配を消し去り、きっぱりと指示を出す。

―いや、今はあの男を追っている余裕は無いな。脱出を優先しろ。沈没まであまり時間はないはずだ。神代熊斗は泳げないの

だろう?―





 室内を満たす黒煙。整然と並んでいた椅子もデスクもパソコンも跡形もなく吹き飛び、残骸が異臭と炎を上げ、密閉空間で

荒れ狂った炎と爆風の凄まじさを物語る。天井も崩落して構造材が剥き出しになり、スプリンクラーさえも作動せず、ビシャ

ビシャと配管が水を吐き出している。

 ガスマスクを着用し、アサルトライフルを構えた警備兵達は、もはや侵入者が生きていない事を確信しつつ、その死体を探

しに部屋へ踏み込む。

「どのみちヤツは手負いだった。ここから逃走する事も不可能、手こずらされたが片付いたな」

 警備兵長が呟いた。が、その次の瞬間、兵達は一斉に銃を構える。

「隊長!生きています!」

 馬鹿な、と出掛かった声は、しかし音にならなかった。

 もうもうと立ち込める煙の向こう、確かに、動く影がある。兵達は輪郭も不確かなソレを銃撃する事ができず、隊長も命令

を下さない。

 生きているはずがないこの状況でなおも生きている。不思議で、不気味で、理解不能で、確かめたくもなるし、飲まれても

いる。だが…。

「派手にやったな。道具はもう少し丁寧に大事に使ってやる物だ」

 パチパチと爆ぜる火の音と、パシャパシャ跳ねる水の音、スパークを散らす切れたコードの音に、そのしゃがれ気味の声が

重なった。

(…さっきのヤツでは…ない…?)

 有り得ない事が起きていた。

 侵入者以外に誰も居ない、追い詰めたこの部屋。そもそも誰であろうと生きているはずのない爆発。にも拘わらず、ソレは

確かに立っており、確かに喋っていた。

 そして、煙を押し退けるようにソレが姿を現す。のっそりと、億劫そうに、ペタンと足を踏み出して。

 瓦礫を踏みしめるのは、踵を潰したスニーカー。熱風に翻るのは白衣。兵達を見回すのは不機嫌そうな仏頂面。

 向けられている無数の銃口に臆する事も無く、むしろ面倒くさそうな目をしている、咥え煙草の男は…、だらしない身なり

のジャイアントパンダだった。

(誰だ?何処から侵入した?…い、いやどうでもいい!排除しなければ!)

 何処から紛れ込んだのか、そもそも先ほどの侵入者はどうなったのか、判らない事だらけだが、この施設に侵入された以上

は生かしておけない。

「撃て!」

 隊長の号令が走り、兵達が一斉にトリガーを引き絞る。

 連続する銃声は室内で反響し、耳が痛いほどの大合唱となったが…、

「…何だ…!?」

 隊長は呆然とその光景に見入った。

 棒立ちのジャイアントパンダは、前方に右腕を伸ばし、掌を広げて手翳ししている。防御体勢とも呼べない姿勢だが、撃ち

込まれる無数の銃弾は、その悉くが空中で消失している。

 漂う煙が空気を把握し易くしているので、よく見れば銃弾が、空中に薄く波紋のような物を残して消えているのが判る。ま

るで、垂直に切り立った水面に突っ込んで消えているかのように…。

 異常に気付き、命令も下っていないのに射撃を中止する兵達。耳が痛くなるほどの銃声の重なりに顔を顰めていたミーミル

に、思わず、隊長は質問していた。

「き、貴様は…何だ…!?何処から入った?さっきのヤツは…」

 顔にも声にも怯えが見えた。理解不能な何かと接してしまった時にひとが見せる怯えが。

「銃撃を加えた後に質問とは、合理性に欠けるな」

 咥えた煙草を上下させながら、ミーミルは首を解すように軽く回す。

「お陰様でアイツも怪我をしてな、少しばかり休憩させて、私が代理だ。…理解できるように説明するのも面倒だが…、ま、

どうでもいいだろう。そんな事は」

 直後、ミーミルの白衣が風を捕まえたように両脇で翻り、膨らんだ。

 次いで、内ポケットから落下したかの如く、翻った白衣の下へ…ミーミルの両腕と胴の間へズルリと伸びたのは、四角柱の

大型火器。明らかに白衣の内に忍ばせられる質量ではないそれを、袖の下に潜ませた仕込み拳銃のようにスムーズに軽々と両

手に握る。

 M202A1…四連装ロケットランチャー二丁。本来肩に担いで使用するはずのこれを、ミーミルは両脇に抱えるように保

持する。

「アイツが世話になったな。…今日の私は優しくないぞ」





Vigilante The voice of a beast crying in The wilderness

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                イラストレーター ののさん

~南の島の少年~ カムタ・パエニウ
 両親を亡くしながらも逞しく生きる、快活で人懐っこい少年漁師。作製、収集系のスキルを最初から多数所持し、冒険をサ
ポートしてくれるぞ!

保持スキル
調理Lv 工作Lv 飼育Lv 狩猟Lv 採取Lv 操船Lv 中型船まで操船できる。

野生の直感Lv 狩猟、採取と同様の効果に加え、戦闘時まで含むあらゆる成功判定に10%の補正がかかる。

「おーい!オラはここだぞ!」
 リミテッドスキル。カットイン。そのターンに使用される全ての攻撃行動のターゲットを強制的に自分に向け、回避、抵抗
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