科学技術振興機構(JST)は30日、スーパーコンピューター開発会社「ExaScaler」(エクサスケーラー、東京・千代田)に対し融資した52億円を返還するよう請求したと発表した。
同社はスパコン開発を巡る国の助成金詐取事件で、東京地検特捜部に詐欺罪などで起訴された「PEZY Computing」(ペジーコンピューティング、同)前社長の斉藤元章被告が代表取締役を務めていた。2017年12月に事件が表面化した後、JSTがエクサ社へのヒアリングを進めていた。
エクサ社によるスパコン開発は17年1月時点の当初計画に比べて大幅に遅れており、JSTは開発事業を中止し、融資を引き揚げることを決めた。
エクサ社の大規模国産スパコン開発計画は、リスクが高い開発事業にJSTが無利子で融資する「産学共同実用化開発事業」に採択された。融資総額60億円のうち52億円が支払われたが、ヒアリングの結果、計画の遅れに加えて、性能も目標に大きく届かないことがわかったという。
JSTによると、同事業は成功すれば融資を全額返済する一方、失敗の場合は1割の返済で済む。13年以降計30件が採択され、同社以外でも数件が事業を中止している。JSTは「融資は外部評価委員の審査など公正な手続きで決めた。判断に問題があったとは考えていない」としている。エクサ社は「担当者が不在のため、対応できない」としている。