岩田正美『貧困の戦後史』
これは自買本です。昨年末に出たのを見て気にかかっていたのですが、この週末に一気に読みました。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016591/
敗戦直後の貧困は「食べるものすらない」という「かたち」で現れた。こうした中で、戦争により生み出された浮浪者や浮浪児の一部は炭鉱へと送られた。そこで生まれ育った若者の多くは集団就職で都会へと出ていき、その一部は「寄せ場」の労働者となった。高度経済成長により実現した大衆消費社会は多重債務問題をもたらし、バブル崩壊はホームレスを生んだ―。戦後日本の貧困の「かたち」がいかに変容したかを描き出し、今日における貧困問題の核心を衝く。
やはり戦後期の貧困調査の生々しい記録に基づく前半部の記述が興味深いです。氏原正治郎さんらの東大社研の調査は労使関係が多いのですが、とりわけ初めのころのには貧困調査的なのも多く、その流れは切れてしまっているんですが、こうやって骨太の文脈の中に位置づけられると、あらためて興味がわきます。
窮乏する濠舎生活者とか、浮浪児・浮浪者の「かりこみ」とか、仮小屋生活とか、蟻の街とか、葵部落とか、バタヤ部落とか、その後の社会政策の問題関心につながっていかなかった世界が広がっていきます。
読みながら思い出したのが、小学生のころ学校の図書館で読んだ記憶のある山中恒の『サムライの子』という児童文学で、そのころはまだバタヤ部落といった世界がごく普通に意識される状態であったことがわかります。
真ん中の一億総中流社会の時期のトピックはサラ金による多重債務者の増大ですが、後半の主力はやはり失われた20年の貧困で、これは湯浅誠といった名前とともになお鮮烈な時代です。
第1章 敗戦と貧困
第2章 復興と貧困
第3章 経済成長と貧困
第4章 「一億総中流社会」と貧困
第5章 「失われた二〇年」と貧困
おわりに 戦後日本の貧困を考える
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