マツダのエンジンを他社がまねできない理由
「ロータリー」はトヨタの次世代EVに採用決定
2012年に生産が終了したマツダのロータリーエンジンが再び脚光を浴びている。今年1月、トヨタ自動車が発表した次世代の電気自動車(EV)「e-Palette Concept(イー・パレット・コンセプト)」に、ロータリーエンジンがレンジエクステンダーとして搭載されることになったからだ。
この装置はいわば発電用エンジン。ガソリンを使って発電し、バッテリーを充電することで、EVの弱点である航続距離を伸ばす。マツダとトヨタは2017年に資本提携し、EVの共同開発を進める。マツダの魂、ロータリーエンジンが誕生から半世紀を経て、電動車両の心臓部として復活することになる。
マツダだけが量産できたロータリーエンジン
「一隅(いちぐう)を照らす、此則ち(これすなわち)国宝なり」と書かれた色紙が、マツダの社長室に引き継がれているという。「それぞれの立場で努力をすることは、何物にも代えがたい国の宝」という意味があり、日本天台宗の開祖・最澄の言葉だ。1950~1960年代に、3輪トラックから乗用車への事業拡大を成し遂げた3代目社長、松田恒次氏が座右の銘としていた。「これがマツダだと思います」と、小飼雅道社長も語る。
この言葉を実際に体現したのが、昨年12月に95歳で亡くなった山本健一元社長だ。ロータリーエンジンの開発を指揮し、1967年に量産化を成功させた立役者で、「ロータリーエンジンの父」と呼ばれる。このエンジンは、おにぎり型のローターの回転運動だけで、パワーを生み出す。薄くてコンパクトだが、出力が高く、まるでモーターのような感覚で滑らかなパワーを出すことができる。ただ、耐久性や燃費など課題が多く、世界中の自動車メーカーの中で大規模な量産ができたのはマツダだけだ。