(cache)ワシントン・ポストの女性社主が小型ヘリに乗り、戦場を視察した | カルチャー | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

最新記事

米メディア

ワシントン・ポストの女性社主が小型ヘリに乗り、戦場を視察した

2018年3月30日(金)16時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

写真はイメージです Mumemories-iStock.

<スピルバーグ監督作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、ベトナム戦争期のワシントン・ポスト社主キャサリン・グラハムと編集主幹ベン・ブラッドレーを描く物語。その前日譚ともいえる「ブラッドレー起用」までの経緯をグラハムの自伝から抜粋(第2回)>

3月30日公開のスティーブン・スピルバーグ監督作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、リズ・ハンナが脚本/製作を担当。彼女が本作の脚本を書くきっかけは、ワシントン・ポスト社の社主キャサリン・グラハムの自伝『キャサリン・グラハム わが人生』(97年刊行、小野善邦訳、CCCメディアハウス)を読んだことだった。

ベトナム戦争の「暗部」にまつわる機密文書をワシントン・ポストがどう報じ、米政府と戦っていったのか。スピルバーグの映画では、主役の2人、キャサリン・グラハムをメリル・ストリープが、編集主幹ベン・ブラッドレーをトム・ハンクスが演じる。

ここでは、自伝を再構成した新刊『ペンタゴン・ペーパーズ――「キャサリン・グラハム わが人生」より』(小野善邦訳、CCCメディアハウス)の第2章から、キャサリンが社主となった直後に日本やベトナムに外遊し、ブラッドレーを起用するところまでを3回に分けて抜粋する。今回が第2回。

※第1回:天皇と謁見した女性経営者グラハム(ペンタゴン・ペーパーズ前日譚)

◇ ◇ ◇

アジアを旅している間中、議論の中心となったのがベトナム問題であった。そこで、香港を訪問した後、私たちはベトナムへ飛び、その後の一〇年間というもの世界中の人びとの耳目を集めた国の実態を直接見聞することになった。私たちの着陸した空港は、サイゴンにあったが、敷地が等分に仕切られて、民間航空機と、軍用ヘリコプターおよび戦闘機が別々に使用しているようだった。それは、平和と戦争との異様な混合だった。サイゴンは当時ベトコンによって完全に包囲されており、市内に出入りする道路の中で「安全」とされたものはほとんどなかった。ベトコンは時に空港の内部にも侵入することがあり、また私たちの到着した数週間前には、カラヴェル・ホテルの五階で爆弾が破裂していた。このホテルには米国のジャーナリストが多く投宿しており、もちろん私たちも泊まったのである。私の部屋が四階にあることを、多少の慰めと考えるほかなかった。

この訪問は一九六五年の二月のことで、この頃は米国の軍事顧問の数は増加していたものの、総数はまだ比較的少なかった。米国はまだ直接介入していなかったが、ニューズウィークは二人ないし三人の特派員を派遣しており、ポストも一人を送り込んでいた。到着の翌日、担当士官から説明を受けた後で、私たちはウェストモーランド将軍夫妻と昼食をともにする機会を得た。この旅行の間中、私は家族への手紙を書くことで観察や経験をまとめることにしていた。ウェストモーランド将軍について、次のように記している。「彼は無口な軍人タイプの典型のようです。もし非常に明敏な面があるとしたら、それは技術屋としてでしょう。なぜなら、彼は会話によって意志を明らかにすることをしませんし、堅苦しく、不安げで、むしろ怯えているようにも見えました」

オズと私、ボブ・マッケーブ、そしてニューズウィークのビル・トゥーイの四人は、昼食の後、そろって小さなヘリコプターに乗り込み、二五マイルほど離れた基地に向けて飛び立つことになった。この基地は、カンボジア国境地帯に近い「ブラック・レディ山」の頂上にあり、ベトコンによって完全支配された地域の外縁部に位置していたが、上空を飛行する軍用航空機との無線連絡のため、米軍によって使用が続けられていたのである。

 

ニュース速報

ビジネス

日銀マイナス金利、国民経済的な副作用の検証必要=藤

ビジネス

独VW、米国で買い戻したディーゼル車の保管台数が約

ビジネス

焦点:米中貿易ポーカー、投資家が賭けるトランプの「

ワールド

中国、原油輸入の人民元決済を年内にも試験着手へ=関

.

MAGAZINE

特集:コロンビア大学特別講義 歴史への責任

2018-4・ 3号(3/27発売)

なぜ今、第2次世界大戦の「記憶」について学ぶのか── 米コロンビア大学教授が学生たちと導き出した未来への教訓

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    金正恩が習近平の前で大人しくなった...「必死のメモ」と強ばった笑顔

  • 2

    ポルノ女優がトランプとの不倫を暴露──脅されながらも「正義」の鉄槌

  • 3

    トランプが金正恩と会ってはならない3つの理由

  • 4

    ヒトの器官で最大の器官が新たに発見される

  • 5

    就職氷河期世代「ロスジェネ」が日本の人口動態に与…

  • 6

    整形で「デザイナー・ヴァギナ」を求める女性が急増

  • 7

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 8

    史上最悪の「スーパー淋病」にイギリス人男性が初感…

  • 9

    「金正恩を倒せ!」落書き事件続発に北朝鮮が大慌て

  • 10

    「コーヒーには、発がん性のある化学物質が含まれて…

日本再発見 シーズン2
加谷珪一が考える『ポスト新産業革命』
デジタル/プリントメディア広告セールス部員募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

SPECIAL ISSUE 丸ごと1冊 プーチン

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年3月
  • 2018年2月
  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
blank
blank
blank