POSITIVES

便利なデータベース機能
自由度の高い編成と育成要素
組み合わせ豊富なアーティファクト

世界と自分に秘められた謎を追うストーリー

 ロストと呼ばれる現象によって、人や物質が白い霧となって消えていく世界。記憶の力でロストを修復できる主人公が、仲間たちと旅をして、世界や自分に秘められた謎を追い求めます。様々なキャラクターとの出会いと別れ、壮大になっていく物語など見どころが多く、話し合えばすむところをすれ違いで強引に展開を進める場面も目立ちましたが、基本的には王道な展開を楽しめるストーリーです。

 マップが地味に広く、次に進むべき場所が分かりにくい場面も多いのですが、パーティートークを行うことで、自然な風に誘導してくれる点も好感触でした。なお、「Project SETSUNA 第2弾タイトル」であり、ゲームシステムの中にも「セツナ」というキーワードが使用されていますが、第1弾タイトル「いけにえと雪のセツナ」と世界観のつながりはありません。こちらからプレイしても大丈夫です。

ATB2.0に移動要素を加えて進化したバトルシステム

 シンボルエンカウントからシームレスで展開する戦闘は、敵味方がリアルタイムで行動するATB(アクティブ・タイム・バトル)システムが採用されています。さらに、本作では行動時にキャラクターの場所を自由に移動できるため、立ち回り次第で、より戦略的な戦闘が楽しめるようになっていました。

 移動が可能になったことで、効率良く戦うには位置取りがかなり重要です。しかし、プレイヤーが操作中も敵は行動しつづけるため、ゆっくり時間を掛けることができず、的確な判断と素早い操作が要求されました。忙しすぎる戦闘が苦手という方は、操作中は敵の行動が停止するATB設定「セミアクティブ」を選ぶことで、じっくり考えながらプレイすることも可能です。

 戦闘の難易度は全体的に高く、特にキャラクターやスキルがそろっていない前半は苦戦する場面が多かったです。ある程度、ゲームにも慣れてくると安定はするものの、即死攻撃や複数の状態異常、自爆による相打ちなど、油断していると、簡単に全滅してタイトルに戻されてしまうバランスでした。

プレイスタイルが個性につながっていく育成要素

 プレイヤーは、8人のキャラクターから最大4人のパーティーを編成することが可能です。キャラクターごとにバランス型や近距離攻撃・魔法攻撃特化といった特徴が用意されており、機装搭乗時の専用スキル「パラダイムドライブ」も大きく異なります。好みや性能で編成しても良いですし、バトル中でもメンバーチェンジが可能なので、状況に応じて入れ替えながら戦うといったことも可能です。

 各キャラクターはレベルアップや装備変更の以外に、記憶と交換で手に入る法石による強化が可能です。法石には、コマンドとして使用する「スキル法石」、条件が整うと自動的に発動する「カウンター法石」、スキル法石やカウンター法石と組み合わせて使用する「セツナ法石」の3種類が存在。セットする法石によって、同じキャラクターでも違った立ち回りが選べる点は好印象でした。

 さらに、「セツナ法石」をセットしたスキル・カウンター法石を使いつづけると、昇華効果によって法石が強化されていきます。付与される効果は、セットしている「セツナ法石」に影響されるため、個性がより強くなる仕様です。たとえ同じパーティー編成でも、プレイスタイルの差が大きく出る育成要素となっていました。主人公をパーティーから外すことも可能で、編成に自由度はかなり高いです。

ゲーム内に大きな影響を与えるアーティファクト要素

 主人公がワールドマップのロストを再生する際、アーティファクトと呼ばれる遺物を作成することが可能です。アーティファクトごとに異なる効果が用意されており、ミニマップや敵のHP表示といった基本的な機能追加から、スキル使用時のMP軽減など、戦闘に役立つ物まで様々です。中にはメリットとデメリットが混在や、一部地域しか機能しないアーティファクトも存在します。

 作成可能なポイントは、ストーリーが進むにつれて増えていき、最終的には30箇所まで増加します。それに対して、建造できるアーティファクトは重複を含めると100個以上存在。組み合わせによって戦闘が大きく変化するため、プレイスタイルに合わせて試行錯誤する面白さがありました。

膨大な種類の記憶と便利なデータベース機能

 法石の交換やアーティファクトの作成には、特定の記憶が必要となります。記憶はフィールドや魔物からのドロップで入手できますが、軽く100種類以上あって、管理が少し困難でした。特に、序盤は行動できる範囲も限られているため、必要な記憶が手元にない場面も多かったです。しかし、船や飛空艇を入手して、自由に移動できるようになると、収集する楽しさが感じられる要素でした。

 交換や作成に必要な記憶の情報は、作成画面から素材情報として確認できる点も嬉しかったです。表示されるのは、ドロップする魔物の名前までですが、それを元に「月の記憶」というデータベースで、出現場所や見た目を確認できます。欲を言えば、作成画面からデータベースに直接飛べると良かったのですが、100種類以上の記憶から目当ての物を探す必要がないだけでも、かなり助かりました。

良くも悪くも手堅く作り込まれたRPG

 全体的にクオリティは高いものの、作品を代表するような特徴的要素が少なく、地味な印象を最後まで拭えませんでした。ストーリーやキャラクターの設定も無難なため、人によっては物足りなさを感じるかもしれません。落ち着いた雰囲気も魅力の1つなので一概に否定はできませんが、いつまでも記憶に残るようなユニークさが存在すれば、更に評価は高かったと思います。

さいごに

 奇抜な要素が少ない分、万人受けしやすいと感じる作品です。プレイできる範囲は少ないですが、雰囲気を感じ取るには十分な体験版が配信されています。公式サイトやトレーラームービーの視聴と併せて、興味を引かれたなら購入をおすすめしたい作品でした。

LOST SPHEAR 公式サイト


FULL REVIEW

 コンパイルハートがおくるDRPG革命DRPG塔亰Clanpool(トウキョウクランプール)」をクリアしました。

 各種育成システムから難解なダンジョン探索まで、膨大な数のゲームシステムが詰め込まれている本作。ゲーム慣れしているかどうかで難易度が大きく変わるため、余りDPRGや複雑な育成RPGを遊ばないという人には、少しすすめにくいです。その反面、効率良く育成すれば爽快な戦闘が楽しめることや、複雑なギミック・トラップが満載のダンジョンに面白さを見いだせる人には、おすすめの作品でした。

フルボイスで描かれる少女たちのストーリー

 トウキョウ上空に出現した逆さ都市群から魔物が襲来する世界。対抗するために組織された「電脳戦術内閣」の少女たちが、逆さ都市群とつながる「黒界議事塔」を攻略するストーリーです。設定だけを読むとかなり奇抜な内容ですが、実際に遊んでみると意外に筋の通ったストーリーとなっています。

 敵味方を併せて20人ほどのキャラクターが登場。イベントは全てフルボイスで展開されます。残念ながらメインストーリー以外の個別イベントは少なく、1人につき1~2種類程度しかありません。同様にイベントCGも公式サイトに掲載されている物でほぼ全てです。代わりに、挿絵付きの前日譚「電撃PS連載小説」が公式で公開されているため、不足分はそちらで補完している印象でした。

 なお、プレイし始めて、公式サイトに掲載されているストーリーとゲーム内のストーリーに差違がある点が少し気になりました。前者が「黒界議事塔」出現後に「電脳戦術内閣」が結成されているのに対して、後者は「電脳戦術内閣」結成後に「黒界議事塔」が出現しています。同様に「電撃PS連載小説」とゲーム内イベントも話が食い違っており、コンテンツ同士の調整が不十分だと感じました。

ハクスラから合成まで多種多様な育成システム

 キャラクターの育成には様々なシステムが用意されています。ハクスラ要素を備えた武器・防具。タイプごとに能力補正やスキルが大きく変化するデジスキン。最大5体まで装備できる電脳精霊ガジェッティア。エーテル感応によって得られる政痕など、項目を挙げていくだけでも盛りだくさんです。

 全てのシステムに能力補正やスキルがひも付いているので、しっかりと把握して活用できれば、どんどんキャラクターが強化されていきます。しかし、要素・項目がゴチャゴチャしている状態のため、複雑でインフレの激しい育成システムに慣れていない人は、使いこなせるまでに苦労するかもしれません。

 個人的な印象としては、いろいろと詰め込まれた雑多な感じは嫌いではなかったです。むしろ、使いこなしてサクサクと攻略することに楽しみを覚えました。長大なダンジョン攻略で戦闘回数も多いため、育成システムを有効に使えるかどうかで難易度や面白さが大きく変わる作品となっています。

高速戦闘が快適なEP制コマンドバトル

 コマンドバトル形式の戦闘は、毎ターン回復するEPの範囲内で複数個のスキルを発動できる仕様となっています。少ない消費のスキルを複数回発動させて1人コンボを発動させたり、消費の大きな強力スキルを発動させて他のキャラクターと連携したりと、かなり選択肢の多い戦闘です。

 各キャラクターが1ターンに発動するスキルは登録制となっており、変更がなければRボタンだけで戦闘が始まる仕様はとても良かったです。しっかりと育成した状態で戦闘速度を最大にすれば、雑魚相手にエンカウントから戦闘終了まで1-2秒しか掛かりません。リザルト画面の方が長いくらいでした。このサクサクとした高速戦闘がなければ、総プレイ時間が倍になっていたのではないかと思います。

多彩なギミックと高エンカウントのダンジョン探索

 本作のダンジョン探索では「電脳アプリ」と呼ばれる様々なツールが使用可能です。特定の壁を掘り進める「トンネル掘り」、落とし穴やダメージ床を無視できる「空中浮遊」、水中マップを探索できる「水中移動」といった便利ツールから、ダンジョンを脱出する「エスケープ」やモンスターを呼び出す「エネミーサーチ」など多種多様です。しかし、どのツールも使用するにはバッテリーを消費します。

 各種便利ツールは、使用することでダンジョン探索を楽に進められるのですが、そもそも使用しなければ進めない場面も多く存在しました。また、ツールを使用する前提でかなり複雑に作られた階層も多く、常にバッテリー残量を気にしながらのダンジョン探索となります。幸いにも、しっかり探索すればバッテリー回復アイテムが手に入りやすいため、バッテリー管理のストレスは控えめでした。

 他にも特徴として挙げられるのが、異常に高いエンカウント率です。敵と出会わずに10数歩も進めれば運が良い方。運が悪いと、戦闘終了後の1歩目でエンカウントする場合があります。前述した育成システムと高速戦闘を活用すれば一瞬で終わるとはいえ、かなり極端な印象でした。エンカウント率を低下させるアプリも存在しますが、バッテリーを消費するため活用する機会はほとんどなかったです。

後半になるほど大ざっぱになっていくゲームバランス

 ゲームシステムに慣れてくると楽しい前半に対して、後半は延々と続くダンジョン探索に飽きてしまいました。効率良く育成を続けると、雑魚どころかボスでも瞬殺できるため、戦闘が作業になってしまうことが要因の1つです。途中から難易度を上げたものの、難易度があがると経験値入手量も増えてキャラクターが強化されるため、相対的な難しさは全く変化しません。

 更に、経験値の多い高難易度でプレイし続けると、クリアするよりも先にステータスがカンストし始めます。設定ミスかと疑うような経験値の敵が登場するためレベリングも容易で、全キャラ全ステータスカンストが当たり前になってしまい、育成システムが形骸化していました。

 キャラクターの育成が成熟して、戦闘が常時1ターンキルになると、残るのはダンジョンのギミックだけです。しかしながら、終盤は踏破してきた階層のギミック使い回しが多く、目新しさがありません。構造だけはアリの巣のように入り組んでいるため、煩雑な探索が延々と続きます。結果的に長く遊ぶほどに評価を落とす内容になっており、とても残念でした。

さいごに

 体験版を遊んだ時点では、育成システムや快適な戦闘が好感触で、ダンジョン探索に不安を感じていたのですが、蓋を開けてみると評価を落とした要因はゲームバランスでした。目立つ不具合も何点か見かけており、もう少し丁寧に作り込まれていれば良作になりそうだったと惜しく思います。

 とはいえ、これまでに遊んだコンパイルハートのDRPGに比べるとクオリティは高く、積み重ねや評価に対するフィードバックはしっかり反映されていると感じました。過去のコンパイルハート作品を遊んだことのある人や購入を迷っている人に対しては、十分おすすめできる作品です。

塔亰Clanpool 公式サイト

NEGATIVES

茶番劇のような魔女裁判
中途半端なコメディ要素
粗雑さが目立つテキスト

RATING
POINT

[ジャンル:ファンタジー世界で魔女っ娘を助ける脱衣裁判推理ADV]
[ストーリー分岐] [マルチエンディング]
[フルボイス] [体験版]

C-
GRADE
FULL REVIEW

 ファンタジー世界で魔女っ娘を助ける脱衣裁判推理ADV星降る夜のファルネーゼ」をクリアしました。

 「infinityシリーズ」や「ルートダブル」を手がけた中澤工氏がプロデューサーを務める本作。18禁のPCゲームで普段は手を出さない系統の作品ですが、スタッフや一風変わったジャンルに興味を持っての購入になります。魔法あり脱衣ありの裁判など、突っ込みどころ満載の世界観は刺激的だったものの、シリアスとコメディが中途半端に混在したテキストが茶番劇のようで、冴えない感じの作品でした。

ペナルティとして脱衣していく魔女裁判

 星の力が宿った魔女が存在する世界。占星弁護士である主人公は、殺人事件で魔女として疑いを掛けられた被告人を救うため裁判に挑みます。体に魔女の星があれば魔女確定という設定から、被告人に不利な証言や証拠に反論できなければ、衣服を脱いで身の潔白を証明しなければならない脱衣裁判です。

 主人公側も告訴して容疑者が複数人いる場合は、反論に失敗すると弁護側の被告人が脱衣。鋭い指摘で相手を追い詰めると、告訴相手が脱衣する展開に突入します。相手は全裸になっても魔女の星が見つからなければ無罪なのに対して、こちらの被告人は全裸になると負けを認めてゲームオーバーです。

 そもそも魔女の星があるかどうかで有罪無罪が決まるなら、わざわざ裁判で順番に脱衣する必要はありません。全裸になった相手の星を確認する行為は、告訴した相手も弁護している相手も全て主人公がチェックすることになるなど、突っ込みどころが満載の18禁ゲームらしい裁判が繰り広げられます。

まるで茶番を見ているかのような推理劇

 魔法という超常現象が存在する時点で、まともな推理やトリックで収まらないのは予想していましたが、余りにも荒唐無稽な展開の連続に付いていけない場面が多かったです。ストーリーとしてはシリアスな裁判のはずなのに、キャラクターの発言はコメディ要素が強く、茶番劇を見せられている気分でした。時間稼ぎに告訴したり、行き当たりばったりで告訴したりと、主人公の行動も支離滅裂です。

 真相に辿り着くまでの推理も、基本的には用意された筋書きをなぞっていくだけでした。裁判中の選択肢は常に2択となっており、ほとんどの選択は考えるまでもなく正解がわかる物ばかりで、ゲーム要素は乏しかったと感じます。手軽に全ての推理を自動で行うモードも用意されているのですが、淡々と読み進めるだけではテキストの粗雑さがより目立ってしまい、どちらにしても楽しめませんでした。

終盤に近づくほど形だけになる推理と裁判

 各話の内容は茶番劇ですが、全体のストーリーや伏線回収はギリギリ及第点でした。ただし、終盤になるにつれて推理や裁判が形だけの物になってしまい、ゲームの作りに一貫性が感じられません。最終話に至ってはまともな選択肢すらなく、読み進めるだけになっているため、盛り上がりに欠けています。裁判推理ADVなのに、どちらも行わないクライマックスに最後まで冴えない印象です。

さいごに

 私のレビューは酷評となりましたが、第1話が最後まで遊べる体験版が公開されているので、実際に遊んでみるのが確実かと思います。1話の最後が少し気になる幕引きにはなっているものの、基本的には体験版のノリとクオリティが続くため、製品版で化けるといったことはなかったです。大きな期待はしていなかったとはいえ、もう少しゲームとして楽しませてほしかったと、残念に思える作品でした。

星降る夜のファルネーゼ 公式

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