ロック・ソングでありながらも物語性の高いメロディと深みのある歌詞が心に沁み込んでいく「Wildflower」や、NHKサッカーテーマソングとして広く知られることとなった王道的なロックナンバー「タマシイレボリューション」。これらオリジナルの新曲4曲に洋楽カヴァー15曲を合わせた10thシングルが、Superflyの『Wildflower&Cover Songs:Complete Best’TRACK3’』。2枚組で全19曲という贅沢な盤だ。ここではSuperflyのルーツとも言える洋楽カヴァーのほうをフィーチャーして語ってもらった。
-- 今まで発表してきたカヴァー曲が、こうして1枚のディスクにまとめられて、どんな気持ち?
いや~、オリジナル曲でもこんなふうにズラズラっと並べてみたことがないので、まず“こんなに録ったのかぁ”っていうのが率直な感想ですね。あと、並べて聴いてみると、声の変化がすごく表れてると思う。
-- あ、それはすごく感じた。
ね。だから、それが自分でも面白いです。
-- (1stシングルのカップリングだった)「Hot’N’Nasty」とか、改めて今聴くと、「若っ!」っていう(笑)
若いですよね~。ピチピチですよね(笑) それでもまだ3~4年前ですから。5年後の私の声はどうなるんだろって思いますよ。
-- そうした声の変化と進化が感じとれるのも、このディスクのいいところだなと。それともうひとつ。洋楽の普遍的な名曲を若い人たちにも広められるというのも、すごく意義のあることだと思う。
ありがとうございます。ただ私としては、自分が好きだった曲とか憧れていた曲を、歌いたかったから歌ってただけで。広めたいとか、そういう気持ちでやってるところはそんなにないんですよね。本来はそういう姿勢でやったほうがいいんでしょうけど。でも、デビュー前に私がバンドをやれていたら、こういう好きな曲はそこでやってて、今のこういう形ではやってなかったかもしれない。そういう機会がデビュー前になかったからこそ楽しんでやれてるってところもありますね。
-- なるほど。因みに10代とかの若いリスナーの反応は、どうです?
意外とBBSなんかにも若い子が「カヴァー、楽しみにしてます」とか書いてくれたり。そういう反応もあったりしますよ。予想以上にいい反応をもらってる感じでうれしいですね。
-- それはいいですね。選ばれているのはほとんど70年代の曲だけど、それは意識的に?
そうではないんですけど、不思議と70年代の曲が集合してきましたね。やっぱりその時代のサウンドが好きみたいで。60年代も好きなんですけど、でも64年くらいからのサイケな感じとかのほうがいい。64年くらいから75、76年あたりの音楽が一番好きみたいですね。
-- 80年代の曲はやらない、っていうわけではない?
そういうわけではないんですけど、でも80年代の洋楽って、あんまり聴いてないんですよ。好きな曲があればやりたいですけどね。
-- この盤には、これまで配信ではリリースされていたけど盤に収められるのは初めてという曲もあります。例えばニール・ヤングの「Heart of Gold」は、盤に入るのは今回初めてですよね。
そうですね。懐かしい、これ。日の目を見てよかったです(笑)
-- 2007年6月に渋谷Apple Storeで行なわれたアコースティック・ライヴからの1曲で。あのライヴは僕も観に行ったけど、会場の雰囲気とか、よく覚えてますよ。
私も鮮明に覚えてるんですよ。まだSuperflyが全然知られてなかったときだけど、お客さんがパンパンで、すごく嬉しかった。このときの選曲は元メンバーの多保くんと一緒に考えたんですよね。みんなが聴いたことのある曲を選ぼうってことで「Heart of Gold」を選んだり、あと、ライヴ映えする曲もってことで「Bad,Bad Leroy Brown」を選んだりして。
-- 懐かしいですね。で、そうした3年前の曲がある一方、今年の新録曲も3曲あって。まずエルヴィン・ビショップの「Fooled Around and Fell In Love」。これ、最高!
おおっ。私もこれ、大好きなんですよ~~。この曲は私、ロッド・スチュワートのカヴァー・アルバムで初めて聴いて。-- 『グレイト・ロック・クラシックス』に入ってましたね。
そう、あのアルバム自体、すごくいいですよね!! で、それで初めて聴いて、なんていい曲なんだろって思って何回も聴き返して。本家のエルヴィンさんのほうはそのあとで聴いたんですけど、やっぱりこの曲が一番好きでした。
-- 以前から思ってたことだけど、こういったソウルのテイストを持った曲がすごく声に合っている。
嬉しいです。ここまでソウルよりの曲は初めてですけど、リズムもテンポ感も大好きだし、やっぱりいいですよね~、こういう曲は。
-- それからストーンズの「Bitch」も新録で、(The Birthdayの)クハラさんや、SOIL&PIMP SESSIONSのおふたり(タブゾンビと元晴)が参加してますね。この人たちとやりたいから、この曲を選んだ?
いや、曲が先ですね。で、「Bitch」だけにワイルドに荒々しく録りたいと思って。いやもう、あっ晴れでしたね、みなさん。最近私は一発録りが大好きになってるんですけど、これもそうなんです。私が歌ってる後ろのブースでSOILのふたりが吹いてくれてたんですけど、なんか後ろからすごい押されてる感じがして、最後はもう暴れちゃおう!ってなって。
-- ものすごいハイトーンで歌ってますよね。
死にそうでした(笑) キーを落とすと重い感じになってしまうので、私が頑張るしかないなと。ライヴで歌うとヘトヘトになりそうですけど(苦笑) ティナ・ターナーとかってやっぱりすごいなぁって思いながら歌ってましたね。
-- 数あるストーンズ楽曲のなかで「Bitch」を選んだ理由は?
好きなんですよ。一番好きって言ってもいいくらい。もちろん「Jumpin’ Jack Flash」とかもかっこいいけど、より私のツボなのはこっちなんですよね。ホーンのフレーズがまた、たまらなくかっこよくて。
-- そういえばSuperflyも最近、ホーンをフィーチャーした曲が多くなってる。
多くなってきてますね。ブームです(笑)
-- 新曲といえば、最後に収められたカーラ・ボノフの「The Water is Wide」も。これも前から好きだった曲ですか?
もう、前々からすっごく好きで、寝る前によく聴く曲だったんです。こういうタイプの曲がすごく好きなんですよ、私。自分の名前でソロ・アルバムを出すことがあったら、こういう曲しか入らないと思う(笑)
-- 弾き語りで、しっとり歌う感じ。「Last Love Song」とか「Perfect Lie」とかの世界観に通じるものですね。
そうですそうです。歌いながら気持ちが入っちゃいますね。この曲も一発録りです。
-- これは、アレンジも歌い方も、ほぼ原曲に近い。
一番近いと思います。こういうふうにしか歌えないなって思って。そのまま歌うんじゃなくて、オリジナリティを強く出すことを意識する曲もあるんですけど、これはこの歌い方以外考えられないから。本当に好きな曲ですね。心が癒されるって、こういうことだなって思う。
-- いつまでも浸っていたくなる。
そうですね。酷いときは泣きながら聴いてますから、私。
-- 志帆ちゃんの歌には普段、70年代のリンダ・ロンシュタットのようなロック姉さん的なイメージもあるけど、一方でまさしくカーラ・ボノフ的な清楚で透明なところもあって、そっちはまだそんなに出していないし、それほど広く知られてもいないような気がする。
ああ、そうかも。
-- なので、そっちも徐々に出していってほしいですね。
出してみます、これから。ささやいて歌ってみますね(笑) 私としてはそういうのも大好きなので。
-- カヴァーだけでもいろんな側面、いろんな表情を出せている。意義のある1枚ですね、本当に。
カヴァーはいろんなことを試せる場でもあるし、例えば「Rock And Roll Hoochie Koo」で初めてゴリゴリのサウンドで歌うことを試せたからこそ、今回オリジナルの「Free Planet」を歌うことができた。そういうふうに、カヴァーで得た手触りがオリジナル曲に返ってくることも多いんですよ。たぶん、ルーツっていうのはそういうことなんだろなって思ってて。だから、これからもまたやりたい曲が出てきたらやりたいですね。まあ、必ずカヴァーを入れなくちゃって縛られるのはなんか違うと思うので、もっとゆっくり、もっと気ままに、やりたい曲がでてきたらまたやる、っていうスタンスで。
<インタビュー/文:内本順一>
2008.5.13公開