特集 15周年のLOVE PSYCHEDELICO ~変わらないカッコよさ、デリコの原点を探る~
取材/文:村野弘正 公開日:
特集 15周年のLOVE PSYCHEDELICO
~変わらないカッコよさ、デリコの原点を探る~
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2000年4月にシングル「LADY MADONNA~憂欝なスパイダー~」でデビュー。以来、かつての王道ロックをルーツとする独特のポップ・ロック・サウンドで、唯一無二の個性を作り上げてきた男女2人組のロック・ユニットLOVE PSYCHEDELICO。彼らがデビュー15周年に合わせ、2枚のベスト・アルバム『LOVE PSYCHEDELICO THE BESTⅠ』『LOVE PSYCHEDELICO THE BESTⅡ』を同時リリースした。そこには時を経てもけして色褪せることのない“デリコ・サウンド”の変遷が、2枚で全32曲というボリュームでたっぷりと凝縮。「ファンと自分たちとの点と点を線に結びつけたかった」という今回のベスト・アルバムについて、メンバーであるNAOKIとKUMIに話を聞いた。
LOVE PSYCHEDELICOのルーツは50年代から70年代って言われるけど
案外80年代の影響も強いと思う(NAOKI)
――デビュー15周年でベスト盤を制作しようという計画は以前からあったんですか?
KUMI:ありました。10年を過ぎたあたりから、そろそろベスト盤があってもいいんじゃないかという話はしてました。
――じゃあその頃から、15周年のベスト盤はこういうものにしようみたいなことはすでに考えていたんですか?
NAOKI:いや、その時点ではそこまでは(笑)。ただ、今の若い人たちが例えばエリック・クラプトンに「Tears In Heaven」っていう曲1曲から入ったりとか、ストーリーは知らないまま何かしらの切っ掛けでその1曲と繋がって、いろんなアーテイストと巡り合っていくみたいなことってりますよね。で、かつてボクらもリスナーとしてそういうことはあったし、それってとても大事なことだと思うんです。しかもこういう配信の時代になって、余計に“1曲”と出会う機会ってく増えたと思うんですよね。まあ、ボクらはそんなにシングルをリリースしていないんだけど、それでもどこかでそういう1曲と出会ってくれれば、その1曲がその人とボクらのベスト盤とを結んでくれるかもしれない…。あるいは、そこから先にボクらのライブに足を運んでくれたりとかね。そういう、いろんな意味で“点と点を線で結ぶ”っていうことにとっても興味があったんです。だから、これでボクらのすべてを知ってほしいとは思ってなくて。それよりもLOVE PSYCHEDELICOの好きな何曲かがあったら、そこからちょっと仲良くなろうよ、と言えるようなものが作れればなとは思っていたんです。
KUMI:何か新しい出会いのきっかけになってくれればなっていう感じですね。世代を超えて、若い人たちにもね。もちろん、そこからオリジナル・アルバムにさかのぼって聴いてくれる人もいるかもしれないし。
―― それにしても2枚同時リリースっていうのは豪勢ですね(笑)。
KUMI:楽曲を絞りきれなかったんですよ。理由はホントに、それだけ(笑)。2枚組にしてもよかったんだけど、出会いの切っ掛けになるにしては2枚組だとちょっとボリューム感があり過ぎちゃうから。より手に取りやすくということで、1枚ずつに分けたんです。
NAOKI:だからホントに気楽に聴いてほしいし、どっちかに自分の好きな曲が入っていたらそっちから買って聴いてくれればいいしね。
―― 点と点を線で結ぶという意図があったからだと思うのですが、当然のように『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I』も『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST II』も収録曲や曲順は時系列ではないんですよね。ただ逆に、そのへんはけっこう練られたのではないかなと思うんですが。
NAOKI:曲順は考えたよね。
KUMI:そうね。ホントに1枚ずつの作品として流れが良いというか、聴きやすいものっていうのは意識して並べていきました。
―― 例えば“THE BEST I”の1曲目は「Freedom」ですが。1枚目の1曲目というのは、やはり特にこだわったのではないかなと思うのですが。
KUMI:そこは暗黙の了解で「Freedom」でしたね。何も迷わなかったよね。
NAOKI:この曲を作った2007年当時は新しい事をやろうっていうタイミングで、サウンドも当時の自分たちにとっては挑戦だったから、それまでのものとはちょっと異質だったんだけど。今こうやって聴くと、なんていうか自分たちの器を広げてくれた、ある意味ターニングポイントだったんですよね。でも、それでいて…。まあ、これは「Freedom」だけじゃないけど、特にこの曲は風化してないんですよ。けっしてスタンダードな曲じゃないんだけども、ロックとしての不変性をすごく自分たちとしても感じられるんです。
―― そういう意味では、LOVE PSYCHEDELICOの楽曲はすべてがそうですよね。もちろんサウンドの変遷はリアルタイムで聴いて感じてましたけど、今回のベスト盤2枚を聴いて、例えば王道ロックをやろうが、エレクトロ的なものを導入してリズムを組んでいこうが、全曲どれもが全然風化していない。しかも、どの曲もが今に繋がってる。言い換えると、LOVE PSYCHEDELICOって実はけっして悪い意味ではなく、変わってはきてるんだけど変わってないんだっていうことを改めて痛感しました。
KUMI:自分たちでも15年前の作品を改めて聴いて、“ああ、変わってないね”って思うところあるよね(笑)。自分たちなりには毎回毎回、ホントにとっても新しいことに挑戦したり変化してるつもりでやってるんだけど、ああ、なんかホントに核となる部分は、結局相変わらずなのかなって(笑)。自分たちでも感じてました。
NAOKI:あと、そういうバンドが好きだよね。ローリング・ストーンズとか、ヴァン・ヘイレンとか。80年代にシンセ入れても、結局ヴァン・ヘイレンみたいなさ(笑)。あの頃のストーンズも新しいことをすごいやってたけど、でも思い返すと、“ああ、あれもストーンズだったなって”なるもんね。もしかしたら、ボクらが「Freedom」作った時も似たような心境だったのかもしれない。
―― そのLOVE PSYCHEDELICOの核というか、何をやっても自分たちだねって思えるものって、しいて言葉で言うと何なんでしょう? よく言われるのはNAOKIさんの楽曲だったりリフだったり、KUMIさんのヴォーカルだったり、英語詞と日本語詞の合わさった世界観だとかって言われますが…。ご自身たちとしては?
NAOKI:う~ん、絶対何かあるんだよな…。何かは(笑)。
KUMI:うん、感じてはいるよね、自分たちでも。感覚として何かあるよね。質感としてね。
NAOKI:言葉では上手く説明できないけど、例えばこの曲にドラムを入れるんだったら、こうあるべきとかさ。ひとつひとつのアンサンブルの哲学みたいなものは、あまり変わってないんじゃないかな。
―― そのベースになっているものは、やっぱり50年代、60年代、70年代の王道のロックであったりポップスであったり…。
KUMI:それは大きいと思いますね。
NAOKI:ただ、ボクらがラッキーなのは80年代、90年代を1番多感な時期に味わえたことなんですよ。しかも90年代は70年代のリミックスのような時代だったし。なので、そういう音楽の楽しみ方も自然に体に入ってる。だから、きっとそういう意味ではLOVE PSYCHEDELICOのルーツは50年代から70年代って言われるけど、案外80年代の影響も強いと思う。実は今日もちょうど移動中にダイアー・ストレイツの「マネー・フォー・ナッシング」が流れてきて「これなんだよ!」ってクルマの中で話していたんです(笑)。
―― かといって、かつてのものを踏襲するとか、単にベースにしているだけではないから、そこに新しさも生まれる…。以前、ある狂言師の方が「伝統は壊すものでも乗り越えるものでもなく、活かすものだ」というようなことを言われてましたが、LOVE PSYCHEDELICOの音楽にもそれとすごく同じような感覚があるなという気がします。
KUMI:そうですね。そういう意味ではすごくルーツを信じているというか、重んじているところはありますね。そこに忠実だと思いますね、かなり。
―― しかも、そこにプラスαがある。
KUMI:うん。というか、結局最終的なアウトプットは自分たちの体を通るから、どうしてもそれは出ちゃいますよね。そんなにそこは意識してないですけど、でも今の時代に生きているという事実は自然と出てくるでしょうね。
NAOKI:でもね、結局言えるとしたら、そのプラスα? ボクらはそのプラスαくらいしかないのかもしれない。1から新しい事って、一個もやってない気がする。すべて、ボクらの大好きなルーツ…50年代から80年代まで全部がボクらのルーツなので、そういう意味ではロックが生まれた頃からロックが1番大きくなっていくまでの時代を全部ボクらは10代の頃に聴いてるんだけど。それがすべてボクらのルーツだとするなら、そこにいろんなものが詰まってると思うんですよね。で、そういう中から不変性を抜き出して、それにプラスαして楽しんでる…くらいのもので、そんなにオリジナリティーはLOVE PSYCHEDELICOにはたぶんないと思うんですよね。
―― いやー、あると思いますよ(笑)。というか、そのプラスαがLOVE PSYCHEDELICOのオリジナリティーを生んでると思うんですが。しかもそのプラスαが、その時期その時期で変わってきてる。でも15年を通して聴いても、LOVE PSYCHEDELICOが持っている匂いは変わっていない。これって、すごい事だと思います。
NAOKI:そう言っていただけるとうれしいです(笑)。
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