特集 Superfly 5th Album『WHITE』Special Interview
取材/文:内本順一 公開日:
特集 Superfly
5th Album『WHITE』Special Interview
(ページ:1/5)
Superflyが約3年ぶりに完成させた5枚目のオリジナル・アルバム『WHITE』は、多彩で、遊び心に溢れていて、開放的で、感動的。なによりとてもフレッシュなアルバムだ。フレッシュであることはポップ・ミュージックにおいて何より大事なことだが、志帆自身、それをわかっていたし、それを求めていたのだろう。故にこれまでとは制作の仕方と陣容を大きく変え、それによって新しい扉をバーンと開くことに成功している。デビュー8年目にして生まれ変わった感があるのだ。大跳躍作にしてキャリア最高傑作。そう明言してもいいこのアルバムの全曲(14曲+初回制作限定盤収録の邦楽カヴァー5曲)について話を聞いた。志帆自身による『WHITE』全曲紹介。ロングだが最後まで読んでいただきたい。
―では1曲ずつ、お話を聞いていきますね。まずは「White Light」。
これは最初から1曲目にするって決めてました。
―ザッ・ザッ・ザッっていう足音からして始まり感がある。
はい。決意表明曲です。この曲を1曲目にして、「いつか私は歌をうたう」を最後にもってくるってことだけは、私のなかでハッキリしていたんですよ。でも、その間の順番をどうするかは、自分では考えないでおこうと思って。気づいたらスタッフのみんなが考えてくれてました(笑)
―珍しいですね。志帆さん、曲順を考えるのが好きなのに。
好きなんですけど、今回はあえてやめてみようと思ったんです。いろんなひとのカラーに染まりたいというのが今回のテーマだったので、初めて曲順もゆだねてみようと。
―すごく流れのいい順番だと思いますよ。力強く始まって、美しく展開して、遊び心のある曲がきて、ライブの後半戦にもってこいのロック曲があって、バラードをじっくり聴かせて、みんなで楽しく盛り上がれる感じになって、最後の曲はアンコールに相応しい。この曲順のままライブができそう。
あ、ほんとだ。できますね。これでやろうかな(笑)
―十分ドラマチックなライブになりうる曲順だと思う。
これ、並べ方を間違えると、まとまりのないアルバムになりそうだなって思ってたんです。曲があっちこっち行ってる感じなので。でも、結果的には意外とまとまったぞって思いましたね。
―「White Light」はRPG『テイルズ オブ ゼスティリア』のテーマ曲でしたよね。
作品のテーマや内容をお聞きして、重厚感のある強い曲にしたいと思ったんですよ。私なりのテーマは“受け入れる強さ”。それを色で表したのが白なんです。
―それがそのまま『WHITE』というアルバム自体のコンセプトになった。
はい。“白ってすごく強い色だな”って思って。そのまま染まらないでもいられる曲だけど、何色にも染まることができる。そんなことを考えたときに、“ああ、私も白になりたい。白くありたい”という思いが湧いてきた。自分はこうだからって主張して外からの意見や考えをはねのけるんじゃなくて、受け入れたり、染まったりすることも強さなんだなって思ったんです。
―続いて2曲目の「Beautiful」。いやぁ、素晴らしいですよ、これは。大名曲!
やったぁ~~~~~! わぁ~、よかったぁ~~~。
―このアルバムを代表する1曲だし、スタンダードになりうる曲だと思う。
う、れ、し、い……。
―Superfly第1章の代表曲が「愛をこめて花束を」だったとしたら、現在のSuperflyの代表曲はこの「Beautiful」じゃないかってくらい。僕的にはそのくらい気持ちの温度が高いんですけど。
いや、私もこれは盛り上がってますし、蔦谷(好位置)さんも盛り上がってますし、みんなもきっと盛り上がってくれてる曲だと思いますね。作曲に関しては、このアルバムのなかで最後にできたんですよ。あるとき蔦谷さんに“ツアーで「White Light」を1曲目にやらないとしたら、志帆ちゃんはどれを1曲目に持ってくるの?”って聞かれて、考えてみたんですけど、その段階では相応しい曲がなかったんですね。ということは、このアルバムを象徴する曲がまだないんだなって思って。「A・HA・HA」みたいに新鮮さから目立つ曲はいくつかあるけど、誰もが“これだ!”って思えて熱くなれる曲がほしかったんですよ。
―なるほど。さすがですね、蔦谷さんのフリ。
そう。蔦谷さんにそう言われて、悔しかったんですね、私は。アルバムの柱になるような曲が確かにないなって思って。そんなときに「ドラマの主題歌を……」っていう話があって、私がまずパーツを弾き語りで作って。もちろんそのときにはストリングスとかそういう装飾楽器はない状態だったんですけど、スタッフのみんなは私のやりたいことを感じ取ってくれて、そこに蔦谷さんがメロディを足してくれたりして、こういう形になったんです。久々に熱くなりましたね。
―どの段階で熱くなったんですか?
私の弾き語りのバージョンを聴いた段階から、蔦谷さんにはいまのこの形にしたほうがいいというアイディアがあったらしいんですけど、少しの間、提案できないでいたみたいで。
―蔦谷さんが? 珍しいですね。
珍しいんですけど、やりすぎかなって思っていたらしくて。で、なんだったか別の曲の仮歌を録ったときに蔦谷さんもいて、「あの曲、こういうメロディの進行にしたらいいんじゃないかと思ってるんだけど…」って言って、その場でピアノを弾いてくれたんですよ。サビの部分だったんですけど、それはまさしく私が表現したかったことだったんですね。自分の頭のなかにはあったんだけど、コードがわからなくてモヤモヤしてたところを全部ピアノでやってくれた。弾き語りで作ったときから私の頭のなかにはストリングスも鳴ってたし、リズムもタッタカタッタカって駆け上がるようなものだったし、AメロからBメロにかけての落差をつけたいというのも頭のなかにあったんですけど、それを蔦谷さんがピアノで全部表現してくれたんですよ。で、“ああ、私たち、完全に同じ方向を向けてるな。私たち、サイコー!!”って熱くなって。
―まさに名曲誕生の瞬間だったわけですね。
そう。それはもう本当に感動的な瞬間だったんです。それから2~3日で蔦谷さんが全部形にしてくれて。
―この曲のリズムはタッタカタッタカじゃないと成り立たなかっただろうし、ストリングスも入ってなきゃダメだっただろうし。そういう絶対に必要なリズムや装飾の音がその瞬間にハッキリと形になった。
そう。蔦谷さんと私には同じものが見えていたんです。ここまでハッキリと同じ方向が見えていたことって珍しいんですよ。今回は初めて一緒にやった方がたくさんいて、そういうひとと突発的に起きた化学反応もたくさんありましたけど、蔦谷さんとは長く一緒にやってきたからこそ同じ景色を見ることができたんだなって思いましたね。
―ふたりでこれまでやってきたことの、ひとつの大きな成果ですね。
はい。この1年ちょっと、蔦谷さんとはいろいろ話しましたから。うまくいかずに中途半端で終わった曲もいくつもあって、お互いに悔しい思いを抱えていて、それをどっかで爆発させたかったんですけど、そのエネルギーがちゃんとこの曲に注がれた。これはやっぱり濃厚な関係があったからこそだなって思いましたね。
―で、リズムもピアノもストリングスも全部素晴らしいんですけど、やっぱり何より志帆さんのヴォーカルがこの曲は素晴らしいと思うんですよ。
わぁ。やったー。なんか、歌いながら懐かしい気もしてました。
―歌詞はどうだったんですか? スラスラっと書けたんですか?
2日くらいでまるまる書けたんですよ。このアルバムのなかでは初めてでしたね。最初は自分で歌詞を書かないほうがいいかなとも思ってたんですけど、やっぱりこのメロディの熱を一番体感しているのは私だと思ったので、その勢いのまま自分で書いたほうがいいだろうと。スラスラって書けました。
―歌詞に込めているメッセージの核の部分は「Live」と一緒ですよね。世界にひとりだけなんだから生きている意味があるんだ、という。
あ、ほんとだ。ただ、「Live」はひとに向けて「あなたは世界にひとりしかいないんだよ」ってことを言ってて、「Beautiful」はそれを私自身に向けて言っている。同じことを、やっと自分にも言えたんだなって、いま思いました(笑)
―本当に入魂の1曲ですね。
いろんなひとのメロディを歌って、最後にこれが出てきたので、その時点で自分の特徴もわかってた……っていうのもよかったんでしょうね。“ここだ!”っていうときに出すエネルギーが私はすごいんだなって思いました(笑)。たぶん、全部の曲を自分で作っていたら、そのエネルギーが分散しちゃってよくなかったと思うんですけど、最後にこの曲に全て注ぎこむことができたから。
―やっぱり火事場の馬鹿力体質なんですよ、志帆さんは。
あははは。本当はいつも頑張りたいのになぁ(笑)
前のページ (ページ:1/5) 次のページ