2018-03-26 11:06:24

上海市に新規則「国外定住者は戸籍を抹消」…批判と疑問の声が噴出、当局が「見送り」発表

テーマ:社会
 
上海市公安局は25日、改正「上海市常住戸口管理規定(常住戸籍管理規定)」中の「国外定住者は市の戸籍を抹消する」の部分の適用を当面見送ると発表した。同部分には多くの批判や疑問の声が集中していた。13日付で発表してから、2週間も経過しないうちの、事実上の撤回となった。

中国の「公安」は日本の警察に相当する組織だが、戸籍管理も業務としている。上海市公安局は13日付で発表した改正「上海市常住戸口管理規定」第46条で、「国外で定住、または外国国籍を取得した者は、本人が戸籍所在地の公安派出所に出向いて、戸籍登記を抹消せねばならない。抹消手続きをしない場合、公安派出所は速やかに本人、親族、戸主、集団戸籍の管理者に通知し、戸籍抹消を拒否または通知から1カ月以内に戸籍登記を抹消しない場合には、公安派出所が抹消できる」とした。

これまでの「上海市常住戸口管理規定」でも香港、マカオ、台湾を含む国外に定住した場合にも上海市戸籍を抹消すべきとしていたが、公安が強制的に抹消するとの定めはなかった。

同規定の目的は不明だが、重点は二重国籍禁止の厳格化であり、「二重国籍が腐敗官僚を保護し、反腐敗活動を困難にしている」との見方も出ている。

一方で、中国では戸籍が教育や医療保険、年金などのサービスを受ける際に不可欠だ。上海などの大都市の戸籍は特に「貴重」とされている。海外に長期滞在している上海市戸籍保持者が「定住」と見なされて同市戸籍を抹消されれば、改めて上海市に戻ろうと希望した場合、ハードルの高い上海市戸籍を再取得せねばならないことになる。

上海市公安局は25日になり、SNSを通じて「第46条については、出国して定住した人に対して、派出所が強制的に戸籍を抹消することは可能なのか」との疑問が出たと説明。

さらに、第46条は「中華人民共和国出境入境管理法」の精神と同法の実施細則、公安部の関連規則に基づいて定めたが、同法実施細則には「出国定住」が明確に定義されていないとして、公安局は現段階において出国定住した人の戸籍の抹消は行わないと説明した。
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◆解説◆
今回の「海外定住」と戸籍を巡る混乱は上海市公安局にとって、どう考えても失態だ。戸籍や海外長期滞在を知る職員ならば、上記第46条を定めればどのような事態が発生するか、予測できて当然だからだ。しかも、法律で「出国定住」が明確に定められていないことにだれも気づかなかったというのは極めて不自然だ。

中国では時おり、役所が実態からかけ離れた方針を打ち出して社会に混乱が生じることがある。多くの場合、実情をよく理解しない共産党上層部の指示が原因とされる。

中国では、企業も役所も「トップダウン」で意思が決定される傾向が強い。そのため上層部の考えに異議や意見を提出することが困難な雰囲気が発生しやすい。また、配下の者が上部の考えを「下手に忖度」したために問題が発生することも多いとされる。(編集担当:如月隼人)


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