ライトノベル(少女小説)と私とラノベブログのはなし(晴れたら読書を)
最近他の方が書いているラノベサイト今昔語りや自分の読んだ本の嗜好を興味深く読みました。自分は読者としては90年代後半に一度ラノベから離れた人なので、ゼロ年代の作品は興味があるものは遡って読みましたが基本的には空白時期という感覚です。ではそんな自分が90年代にどんなものを読んでいたのか、それをざっくりと書いてみようと思いました。
まず当時の時代背景的なものを書くと、スニーカー文庫やファンタジア文庫、電撃文庫といった今も続く代表的なライトノベルレーベルが創刊されていましたが、当時はまだ刊行点数も少なくて、そこまで多様化が進んでいなかった印象です。またインターネットの普及が進むのは90年代後半以降で、特に恵まれていたわけでもなかった地方在住だった身で入手できる情報はごくごく限定的なものだったと言えます。
ただ一方で刊行点数の少なさや当時の図書館の予算が今に比べると潤沢なこともあったと思いますが、ライトノベルはわりと図書館で借りて読むことができたという意味では恵まれた時代でもありました。意識して確認してみたことはないですが、おそらく同年代の人の中にはその頃図書館で読んだことがきっかけでライトノベルに目覚めたという人も多かったのではないかと思います。
そういった状況で当時の刊行点数から考えるとわりと多くの作品を読んでいた方だと思いますが、その中で今の自分のルーツにダイレクトに繋がっていると思った、今でも色あせない印象に残る作品を13作品挙げてみようと思います。ちなみにデータは今でも入手可能そうなKindle版や他レーベルから最近出たものを中心に選択したので、その点は予めご了承いただければと。
当時はこの手の本を読んでいる人なら誰でも通る道というか普通に読んでました。説明不要の有名作品ですね(苦笑)
フォーチュン・クエスト―世にも幸せな冒険者たち (角川文庫―スニーカー文庫)
- 作者: 深沢美潮,迎夏生
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1989/11
- メディア: 文庫
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冒険者パステルによる一人称で書かれた冒険ファンタジー。RPG的な世界観が印象的で、89年にシリーズがスタート、電撃文庫に移籍してシリーズ名を変えつつまだ続いているという驚異的なシリーズですね。自分は電撃文庫に移籍するまでは読んでました。
「破妖の剣」の前田珠子さんによるファンタジーということで印象に残っていたシリーズ。〈魔物の子供〉という烙印を押され、シュレンシーノ神が自らの右掌を犠性にして創造り出された双鬼睡へ追放されたシュラジータ家の長子カーデューアが美しき兄妹と出会うヒロイックファンタジーです。全6巻。
竹河聖さんによる冒険ファンタジー。超古代の動乱の大陸アトランティスを舞台に宿命の糸に結ばれた3人が巡り逢い、大陸の命運をかけ旅をするアドリエ王国編・太陽帝国編・ローダビア公国編の3編からなる大河ロマン。本編全28巻、外伝7巻。数百年後の世界が描かれた「新風の大陸」2011年に刊行されています。
巡検使カルナー サスカティウ編I 星神の歌人 〈風の大陸・銀の時代〉 (角川文庫)
- 作者: 竹河聖
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2016/01/15
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風の大陸と世界観を同じくする、大陸の強国アステ・カイデ共和国の巡検使カルナーが他国を歴訪し行く先々で様々なトラブルに巻き込まれ、その才知で切り抜けてゆくてゆく魔術と精霊に彩られたファンタジー。全8巻。個人的にはこちらの方が好きでした。
古代飛鳥を舞台に頭部に角を持ちながらこの世に生を受け、年を経るにつれ“宇宙皇子”と呼ばれるようになった少年の数奇な一生が描かれる古代ファンタジーですね。いのまたむつみさんのイラストが印象的でアニメにもなりましたが、ふと調べてみたら自分が読んでいた頃からとんでもない巻数になっていましたΣ(゚Д゚)
またスニーカー文庫やファンタジア文庫ではアニメやそのサイドストーリー的なノベライズも出ていてそれも結構読んでいましたね。
機動警察パトレイバー TOKYO WAR (前編) (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 押井守,末弥純
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 1994/04
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ちなみに その時期電撃文庫も創刊してそれなりに読んでいたはずですが、個人的には印象に残るほどインパクトがあった作品はあまりなかったです。
あと印象に残るのは鉄板ですが茅田砂胡さんの「デルフィニア戦記」や田中芳樹さんの「 銀河英雄伝説」「アルスラーン戦記」「マヴァール年代記」あたりですね。
今振り返ると特に個性的でもなくビックリするくらいベタなチョイスが並んでいますが、当時はインターネットも黎明期で情報も少ない地方在住という状況から考えると、こんなものなのかなとも思っています。でも印象に残ったシリーズを挙げていくと、このあたりの時期に読んだ本がその後の好みに大きな影響を与えているのがよく分かりますね。当時の作品はどれもやたら巻数が多くて、時代の変化もあるのだろうとは思いますが、今の感覚からするといろいろ違うのを実感します。
その後90年台後半には東京に出てきて、書店で働くようになったことで目にする本の情報も飛躍的に増えていきますが、その頃ライトノベル作品の傾向が少しずつ変わりつつあったこと、読む本の選択肢が飛躍的に増えたこともあって、ライトノベル以外に目が行くことに繋がっていったのは皮肉な話です。
そのため仕事は変わっても長らく文庫担当は続けていて「ブギーポップは笑わない」「フルメタル・パニック!」「魔術士オーフェンはぐれ旅」といった転換期にあたる作品や、以降のゼロ年代の作品群には強烈なインパクトこそ感じたものの、そこから十数年ほどはほぼラノベを読まない時期が続いていました。
一度読まなくなるとそのままの人も多いライトノベルですが、そんな状況から2013年に文庫の担当を外れたことがきっかけで、ふと「文学少女シリーズ」でも読んでみようかと思ったのは単なる気紛れで、何が転換期になるのか本当に分からないですね。そんなこんなでそこからまたライトノベルを読むようになって今に至ります。
ちなみに90年代に読んだ本というと、もうひとつ姉の影響から読み始めたコバルト文庫やX文庫なども大きなインパクトがありましたが、ひとつにまとめるとえらく長くなりそうな気がしたので今回はライトノベルのみで書きました。そちらも機会があったらまた書いてみたいと思います。