[終]越路吹雪物語 #59[解][字] 2018.03.30
あーあ…。
本当なら今頃はシャンゼリゼ通りで買い物してたのになあ。
長野の別荘だって素敵じゃないの。
贅沢言うんじゃないの。
まあそうね。
病室に閉じ込められてた日々を思えば天国よね。
和ちゃんにゴルフ教えてあげる約束もしてたしね!はい!あらそうなの?いいわね。
前からね約束してたのよね。
運動音痴のお時さんより筋が良さそうだし。
はいはい。
どうせ私は…。
和ちゃんこの人がむちゃしないようにちゃんと見張っておいてね。
はい。
ちょっと和ちゃんあんたどっちの味方なのよ?
(和子)いやいやいや…。
(時子と美保子の笑い声)あっ!そろそろコーヒータイムかな?
(内藤法美)コーヒー淹れてもらえるかな?おお〜ジャスト!奥様すごいですね。
いつもああやって当てちゃう。
この翌日から静養を兼ねて長野の別荘へと出かけたコーちゃんでしたが1カ月ほど経った頃胃の痛みを訴えるようになり癒着の恐れもあるため帰京して再入院となりました
あーあ…。
また籠の鳥か…。
でもね癒着じゃなくてよかったじゃない。
お薬で痛みが取れたらすぐに帰れるわよ。
そうしたらもうすぐロングリサイタルの準備が始まるからのんびり出来るのは今のうちよ。
嘘…。
えっ?私…嘘つきたくない。
…なんの事?去年のクリスマスディナーショーでの最後のあいさつ。
ああ…あれね。
来年のクリスマスもまたここでお会いしましょうって…。
(ため息)嘘つきにならないように早く治さないとね。
ええ。
そうね。
お客様もスタッフのみんなも待ってくれてるわよ。
うん。
これまでの常識を覆すような新しい越路吹雪を見せたいの。
今までにない曲の運びで…。
例えば…。
痛みがなくなり調子の良い日にはコーちゃんの希望でリサイタルの打ち合わせが行われました
あの曲ならストリングスで思いっきり盛り上がりますよ。
長年の友となっていた浅利も本当の病気を知る数少ない人の一人でした
立たせてやりたいね…舞台。
ええ。
お時さんは大丈夫?ええ。
大丈夫です。
コーちゃんの大変さに比べたら私なんて…。
それより内藤さんが心配で。
あの人ずっと病院に泊まり込んでて…。
ちゃんと眠れてるのかどうかって…。
内藤さんもコーちゃんも離れたくないんだろうな…。
あっ!あっ!
(ため息)また…。
だって打ち合わせしたらなんか興奮しちゃって…。
鎮静剤。
その1本だけだよ。
はい。
それからしばらくしてコーちゃんは退院しましたが家で過ごせた時間はあまり長くはありませんでした
今はマシ…。
(ため息)また入院になっちゃって…お金かかるね。
コーちゃんはそんな事心配しなくていいの。
お時さん…。
ん?私フルスピードで走りすぎたかな?でもたくさん恋もしたし好きな外国にも何回も行ったし…。
やりたい事はみーんなやってきたからこの世になんの悔いも残らないわ。
行こうか。
うん。
ああ…いいよ。
さあ…。
ありがとう。
ゆっくり。
うん。
先に行っててください。
私お花を持ってあとから…。
(内藤)さあ…。
さあ今日はあなたの好きなコスモスを…。
(泣き声)「ふたりの恋は終ったのね」「許してさえ」お時さん。
はい?たばこちょうだい。
駄目です。
うーん…。
お願い!1本だけでいいから。
駄目。
ケチ!法美さんはちゃんとくれたのに。
「許してさえくれないあなた」お願いだから甘やかさないで!たばこが体に良くない事くらい…。
もちろんわかってます!でもそれで気持ちが落ち着くならそのほうがいい。
命を縮めても?僕は美保子さんが望む事は全てしてあげたい。
それが間違ってたとしても?はい。
美保子さんが自分の代わりに死ねと言うのなら…。
僕は喜んで死にます。
それが出来たらどんなにいいか…。
数日後コーちゃんの心臓はひどく弱ってきました
痛みを和らげるための点滴やたまった腹水を抜くための針の痕も痛々しくほとんど喋る事もなくなっていたある日…
あらいらっしゃい。
(阿部純一)お邪魔してます。
何してるの?
(阿部)うん…。
こうやってね体さすってあげると気持ちいいのよ。
昔母がそう言ってたのを思い出してね。
ああ…それはあるかもしれないわね。
コーちゃんも気持ちがいいでしょう。
はりあと…きをつけて…。
…ん?奥様なんて…?
(阿部)「ありがとう和ちゃん」。
「ありがとう」って。
「ありがとう」じゃない!「針痕に気をつけて」って言ったの。
(一同の笑い声)もうやだ!針痕だって!もう!全然違うじゃないですか!純ちゃんらしいね。
フフフフ…!もう!フフッ…。
それが時子が聞いたコーちゃんの最後の笑い声でした
そして11月7日
(泣き声)岩谷さん!奥様が…奥様が…!
(泣き声)
(ノック)ご家族以外の方はご遠慮ください。
でも…。
(内藤)家族です!その人は妻の家族です。
岩谷さん中へ。
コーちゃん…。
美保子さん岩谷さんが来てくれたよ。
お時さん…?うんそうよ。
ありがとう…。
お時さんは…いい子…。
コーちゃんもいい子よ。
ありがとう。
法美さん…。
なあに?コーヒーを…。
コーヒー淹れなきゃ。
(拍手)「あなたの燃える手で」「あたしを抱きしめて」「ただ二人だけで生きていたいの」「ただ命の限りあたしは愛したい」「命の限りにあなたを愛するの」「頬と頬よせ」「燃えるくちづけ交わすよろこび」「あなたと二人で暮せるものなら」「なんにもいらない」「なんにもいらない」「あなたと二人生きて行くのよ」「あたしの願いはただそれだけよ」「あなたと二人」「固く抱き合い燃える指に髪を」「からませながらいとしみながら」「くちづけを交すの」「愛こそ燃える火よ」「あたしを燃やす火」「心とかす恋よ」
(内藤の泣き声)
(泣き声)
1980年11月7日
コーちゃんはその56年の生涯に幕を下ろしました
それでもコーちゃんが残した歌声はたくさんの人々の耳にそして心に残り…
これほどの長い時が流れても繰り返し繰り返し愛され続けています
そう今でもまだ越路吹雪は生きているのです
2018/03/30(金) 12:30〜12:50
ABCテレビ1
[終]越路吹雪物語 #59[解][字]
名曲「愛の讃歌」を世に送り出した戦後の大スター・越路吹雪と作詞家で越路吹雪の生涯のマネージャー・岩谷時子。昭和の時代を背景に偉大な2人の友情と波乱の人生を描く。
詳細情報
◇番組内容
美保子(大地真央)は、久々に時子(市毛良枝)の母・秋子(原日出子)に会いに行く。ある時、美保子は「今までの越路吹雪を卒業して本格的な演技に挑戦したい」と希望し、演劇界の重鎮・宇野重吉(山本學)が演出する舞台に立つ。しかし千秋楽の日、猛烈な胃痛に襲われ、胃と十二指腸の間のあたりに影が見つかり入院する。闘病が続く中、美保子は突然「やりたいことはみんなやってきたから、この世に悔いはない」と時子に告げる。
◇出演者
大地真央、市毛良枝
近江谷太朗、三倉佳奈
吉田栄作
◇ナレーション
真矢ミキ
◇脚本
龍居由佳里
◇演出
藤田明二(テレビ朝日)
◇主題歌
大地真央『愛の讃歌』(ユニバーサル ミュージック)
◇スタッフ
【チーフプロデューサー】五十嵐文郎(テレビ朝日)
【プロデューサー】藤本一彦(テレビ朝日)、布施等(MMJ)
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/koshiji/
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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