提供:伊藤忠商事
昨年、紅白歌合戦に初出場を果たしたシンガーソングライター、竹原ピストル。
俳優としても活躍し、映画『永い言い訳』で「第40回日本アカデミー賞」の優秀助演男優賞を受賞した。
印象的なCMソングもあって40代で遅咲きのブレイクを果たした彼は、しかし今の状況を「全然満たされていない」と語る。
2003年にフォークデュオ「野狐禅」の一員としてメジャーデビュー。作品を重ねる中で熱烈な支持を集めるも、2009年に野狐禅は解散。
ソロ活動に転じた後は、一人で全国を旅して回り、年間250本から300本のライヴを繰り広げてきた。
2017年には「俺たちはまた旅に出た」が伊藤忠商事のCMソングに採用され、映像と楽曲が織りなす世界観が話題となった。
2018年4月には伊藤忠商事のCMソング「どーん!とやってこい、ダイスケ!」を含むニューアルバム『GOOD LUCK TRACK』がリリースされる。
6月から10月にかけては初の武道館公演を含む全国弾き語りツアーのスケジュールがぎっしりと埋まっている。
彼は自らの職業を「歌うたい」と表現する。不屈の精神を持って歌い続ける彼の仕事観を訊いた。
(取材/文・柴那典、写真・三浦咲恵)
――昨年には紅白歌合戦に初出演、今年12月には武道館公演が決まりました。活躍の場が広がっている状況をどう捉えていますか?
竹原 紅白に出たのも武道館が決まったのも、それはもちろん嬉しいですよ。応援してくれてるお客さんが喜んでくれるのがとりわけ嬉しいです。
ただ、自分としては、それでも全然満たされていない気持ちがありましたし、ちゃんと「それがどうした?」って思えました。そこが個人的には嬉しかったです。
――自分が満たされるかどうかは、実際にそういう状況を経験してみないとわからないですもんね。
竹原 まさにそうなんです。ひょっとしたら全てを成し遂げたような、やりきったような気持ちになったりするのかなって思っていたんです。
でも、近しい人から「紅白出場おめでとう」とか「受賞おめでとう」と言われても、前と同じく「まだ俺はこんなもんじゃねえから」という気持ちが色褪せずにあったんです。
ああ、こういう時に俺はこう思うんだって、いろんな自分を知ることができた。それが大きかったですね。
――竹原さんの「まだ俺はこんなもんじゃない」とか「今に見ておけ」という気持ちって、振り返るといつ頃からあるものですか?
竹原 ステージに上がるようになってから、ずっとですね。
野狐禅をやってた頃から、壁にぶつからない時期、挫折を味わない時期なんて、一度たりともなかったですから。
しくじっては「これじゃだめだぞ!」って向上心を持って「今にいいとこ見せてやる!」って思う。ずっとその連続です。
――野狐禅を解散した後、竹原さんはレコード会社も事務所も離れて、たった一人で全国をまわってライブをやっていたんですよね。その時は特にそういった思いが強かったんじゃないかと思います。
竹原 それはありましたね。野狐禅を解散して一人で改めてやり出した時は、衝動に似た、理屈では言えない推進力みたいなもので「ウオー!」って走っていた気はします。