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「僕らにオーガニックなコミュ力はいらない」―エンジニアによるエンジニア採用の世界観―セゾン情報システムズ 小野和俊さん

2018/03/30 06:00

「成長したい」と思う気持ちの罠

小野 あとね、エンジニアによる採用ということで、経営者とかマネージャーとか、営業やマーケとかと明らかに違うことがあります。営業やマーケの面接官って、自分の下に就くこと前提で人を見ることが多いんですよ。部長が出てきて、うちの部署に君は向いているのかどうか、とか。エンジニアは、立場や役職じゃなくて、技術について見ているから、自分より上の人をとりたいっていう人が多いんだよね。それは、自分のマネージャーになってくれる人っていう意味ではなくて、その人が入ることで自分がもっといろんな刺激を受けて成長しそうとかだと、自分より上の人を望んだりするんですよね。そこがエンジニアの特性のひとつかもしれないですね。

小泉 たしかに。井上さんも自分の想像の範囲を超える人をとりたいと言っていました。

小野 それは僕もありますね。絶対これ自分にはできないなっていう人をとりたい。

小泉 小野さんを超える人とか望み出したら難しいのではないでしょうか……。

小野 いや、そんなことはなくて、レーダーチャートでいえばいろいろある。プログラマーだけとってもいろいろなタイプがある。僕、風林火山ってよく言っているんですけど、風みたいにすごく速い人と、火みたいに燃え盛る情熱で新しい技術をばんばん持ってくる人、山は落ち着いていて、この人がテストしたらバグが一個も漏らさずに見つかるっていう人もいるし、林っていうのは、どっちかっていうと、トラブる時ってみんな心おだやかではいられないわけですよね。その時に、「まず、みんな俺をみてくれ……」みたいな感じで(笑)、静けさを取り戻してくれるような林のエンジニアもいるんですよ。たまに風と火が混ざって山火事になったりするんだけど(笑)。

小泉 風林火山にたとえると小野さんは……

小野 僕は風のエンジニアなんです。でも、風のエンジニアとして俺とどっちが上か?とかいう話じゃなくて、むしろ火のエンジニアで僕より優秀な人と一緒に仕事したいし、風のエンジニアでも僕より速い人がいれば絶対とりたいし。これは、エンジニアのひとつの特徴らしいですね。自分より優秀な人をとりたいっていう。

小泉 なるほど。

小野 で、その、エンジニアは基本的に自分より優秀な人をとりたいという考え方の背景に何があるかと言うと、成長したいっていう気持ちがあるんですね。でも、成長したいっていうのは本当に、エンジニアの心の持ちようとしていいんだっけ? っていう考え方もあって。

小泉 お前の成長のために仕事があるんじゃない、と。

小野 要はすごく自分本位じゃないですか。自分が成長するかどうかをまっすぐに見ていますよね。だけど本当は身近なところで困っている人を助けてあげたいとか、これで日本の産業が困っているからなんとかしたいとか、かつて自分が携わった業務ですごくそこで効率が悪いと思って、そこをなんとかしたいとか、なんかその、世の中の役に立つっていうことを置いてきちゃっている感じがする場合があるんですね。時々、CTOが辞めると雪崩のように会社を辞めてしまうっていう事象が起こることがあるんですよ。それはなんでかっていうと、技術のもっとも刺激を与えてくれるであろう人が、転職した。そしたら、ドドドドドーって、2番目以降、順番にやめていくっていう現象があるんですね。それはそのなんていうか、それは、成長を大事にしすぎたことの結果なのかな、と思うこともあって。そういう意味で、先ほどのどういう人を見るかっていうことだと、成長する向上心は大事だし、否定しないし、大歓迎なんだけども、ただ、本当に大事なのって、その結果として、どんどん成長して、成長した結果、何かに寄与するから大事なんであって、成長そのものがあまり前面に出ているのはどうなの? って思うし、面談の時に話すことはありますね。その人を批判するとかじゃなくて、最近ちょっと思うところがあって、成長って大事だけどゴールではないよね? みたいな。他の職種で言うと、年収が上がっていくことに喜びを感じる人がいたとして、でも年収が上がっていくことはいいかもしれないけど、それだけを重視している人って悲しいじゃないですか。というのに近いかもしれない。エンジニアって、報酬よりも、成長報酬みたいな、そっちが多いので。よく「やりがい」と言っているのも、「成長するやりがい」みたいな。エンジニアの成長に対する見方みたいなことは、その面談がどーのこーのというよりは、エンジニアの世界、ITの世界全般の話として、ちょっと考えなきゃいけないよねっていうのは思います。

 (終わり)



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