いわばプログラマーやシステムエンジニアなどと言ったIT系の技術者において、多重派遣がまかり通っていることはご存じでしょうか?

法律で見れば、労働者派遣法においては、二重派遣は禁止されています。
しかし、業務の下請け、委託という方法で法の網をくぐり抜け、二重どころか多重派遣を実現させているのが現状です。

下請け、委託とは

ある会社がとあるシステムの開発を請け負った際に、 自社の社員だけでは実現しない箇所に対して、別の業者に委託を行う場合があります。
このとき、委託元を元請け、委託先を下請けと言います。

さらに下請けされた業者がさらに一部を別業者に委託することも可能で、その際には、最初の下請けを二次請け、その次を三次請けと呼びます。

つまり、人材を派遣するのではなく、あくまでも会社自体が請負契約を結んで業務の下請けを行う、その際に現場で作業する形に持って行っているのです。
この方法については、法律では何の制約もなく、隠れ多重派遣がまかり通っているのです。

しかも、顧客に対しては元請けがどういう下請けを使うかを明示する義務はなく、隠れ多重派遣をチェックする機能を内包することも出来ません。

私が経験した中で最も階層が深かったのは5重で、最初の会社の担当者と話をした上で、名刺を出さずにその会社の社員という形で上の層の会社の人たちと面接、そこで問題ないと判断されれば、さらにその会社の社員として上の層の会社との面接、と繰り返すことになります。

もちろん採用されたならば、自社の名刺を使うことは出来ず、元請けの1層下の下請け会社から名刺をもらえれば幸いで、最悪は名刺を持っていない謎の社員を装わないといけません。
派遣された側も生活のために働いて給料をもらわなければならないので、それら下請けたちとともに「詐欺行為」を行っているのです。

どうすればいいのか

法律によって、孫請け以降を禁止した上で、顧客に請負の状況を明示する、さらには請負契約の際の所属などを明示する形で労働基準監督署に報告する義務を負わせる必要が出てくるでしょう。

そうなると、そもそも信用がない中小の派遣会社は軒並み潰れるでしょうし、下請け会社が人材を自ら確保する必要が出ますし、システム開発にかかるコストも高騰するでしょう。

これはIT業界だけではなく、放送など他の業界にも影響を与えるでしょう。

しかしながら、労働者により安定した雇用環境を得る上では重要な対策になるでしょうし、中長期的な人材育成による企業能力の向上にもつながっていくでしょう。

隠れ多重派遣は焼き畑農業のようなもので、ただの姑息な手段でしかないと思います。