あなたの部屋、もしかして、見えるところだけキレイにしていませんか?
目につく場所は掃除するものの、ソファやベッドの下、壁際などはホコリまみれ。見た目はキレイでも、ハウスダストやダニ、カビが発生することもあり課題が残ります。
でもこれ、部屋の整理・収納についても同じことが言えます。
押し入れや家具の中にものを入れておけば、見た目は片付いた気分になりますが、どこに何があるのかわからず、探しものに時間がかかったり、見つけられずに無駄な買い物が増えたり、ものが増え続けたりと、多くのデメリットがあるのです。
そこで、部屋をスッキリさせつつ、快適な暮らしと家計を助ける方法を、編集部・開發(かいほつ)の自宅部屋を事例に、整理収納アドバイザーのスズキナオコさんに手順を追って教えてもらいました。
そして、わかったことは、用途に合わせた選別、要・不要の選別、置く場所の選別など、ものを見極め、選別していく、言ってみれば「オーディション」を繰り返すことでした。
スズキナオコ (整理収納アドバイザー/カタヅク・カラクリ研究家)
整理収納アドバイザー歴10年。訪問実績延べ600件以上。家庭やオフィスでの片付けのサポートサービスを中心に、セミナー講師としても活動。豊富な経験に基づいた、すぐに実践できるリアルな収納術が好評。ファイリングデザイナー、電子ファイリングの資格を持ち、書類整理も得意にしている。片付けきれいサポート
雑多なものは、用途と使用頻度で選別・処分して、新陳代謝をよくする
開發の自宅は1ルーム。収納場所は、3段に分かれた半間の押し入れと、キッチン下の収納スペースのみ。まず、スズキさんに押し入れの中身を見てもらい、課題と改善策を教えてしてもらいました。
スズキさん:1ルームは収納スペースが限定され、1カ所に多くのものを入れなくてはいけないので、ものが溢れがちになります。そこでまずやるべきなのが、要・不要を見極めること。
ものを選別するための2つの目線
- 増え続けないように、不要なものは処分する。
- 必要なものは、用途と使用頻度で選別する。
押し入れを見たスズキさんは、「雑多なものが多く、整理されていないので、不要なものがあれば処分しましょう」と指摘がありました。そこで、スズキさんのサポートを受けながら、押し入れに入れていた3段式の収納ボックスの中身を「用途」「いる・いらない」で、開發自身が選別しました。
すると、入れたままだったものや使用頻度が極端に少ないものなどは処分が決定。「趣味」「重要」「思い出」「日用品」「家具や家電のパーツ」など、用途別に分類して、それぞれをボックスに収納することで、かなりスッキリさせることができました。
開發が処分を決めた、スズキさんの一言
- 迷ったら、使っている場面を想像して、イメージできなければ処分する。
- 使っていないものには、使いづらい何らかの理由があるはず。
- 取扱説明書などの紙類は、メーカーのウェブサイトからダウンロードして、データとして保存しておく。
- 余ったケーブル類は、1年間保存して使用頻度が低ければ処分する。
- 空き袋は、用途を考えて一定量だけにする。
スズキさん:ものには思い出や愛着があるので、何でも処分すればよいというものではありません。しかし、もしかしたら使うかもしれない、まだ使える、というものがある場合は、1年後、5年後、10年後に自分で使っている場面を想像してください。本当に使うか、使用頻度がどの程度かを考えて、優先順位の低いものは処分・交換するようにしましょう。収納の基本は、必要なものを、必要な量だけ持ち、増え続けないようにすること。自分にとっての価値判断を見つけ、ものを新陳代謝させることが大切です。
また、用途別にボックス収納することで、何をどこに入れたのかがわかりやすくなり、使っていくなかで使用頻度の低いモノは処分・交換しやすくなります。
Tシャツやソックスなどは、立てて並べ、中身を見やすくする
雑多なもので溢れていた3段式の収納ボックスが空いたので、使用頻度が高い、Tシャツやソックス、ハンカチなどを収納することにしました。
スズキさん:Tシャツやソックスを平らに積み重ねて収納すると、柄や色が見えづらく、いつも上に積まれたものだけ使うようになります。そこで、中身が透けて見える収納用品を活用して、折りたたんだ衣類などを立てて並べて収納します。手前から使い、洗濯したものは奥に入れるようにして、すべてのものをしっかり使うように循環させるのがポイントです。
ただ、Tシャツは気に入って買ったものや衝動買いしたもの、プレゼントされたものなど、数が増えてしまいがちです。そんなときは、上の写真のように縦に立てて並べるとたくさん収納することができます。逆に、横に立てて並べ、ブックエンドで、これから着るものと、洗濯したものを仕切ると1週間に必要な枚数を計ることができます。その際、洗濯したものを手前に入れると、お気に入りのTシャツの使用頻度が増え、着ていないTシャツは奥に追いやられるので、処分するかしないかの目安にもなります。
また、下着やソックス、ハンカチ・タオルは、1日の使用頻度と1週間の洗濯回数で必要枚数を計算してください。たとえば、開發さんの場合は、いずれも毎日1つ使い、1週間に2回洗濯をしているので、最低限必要な数は各3.5。天候や仕事の都合で洗濯ができない場合もあるので、5着・5足・5枚からはじめて、前述のとおり循環させて使うことで、本当に必要な枚数がわかります。もし、数が増えてきたら、傷んだものから交換して、増えすぎを予防します。
衣類などの収納と必要枚数を計算する方法
- 色や柄、枚数がわかるように透けて見える収納用品を活用する。
- Tシャツは収納優先なら、縦に立てて並べる。
- Tシャツの必要枚数の計算、増やさないためには、横に立てて並べる。
- 毎日、着替える・使うものは、1週間の洗濯回数で必要枚数を計算する。
- 傷んだものから交換して新陳代謝を促進。枚数の増加予防をする。
押し入れは、使用頻度と使い勝手で置く場所を分ける
不要なものを処分して、用途別の収納が終わったので、最後は3段ある押し入れの、どこに何を置くかだけになりました。
スズキさん:開發さんは背が高いので、中段に使用頻度が高くて取り出しやすいものを、下段には中段よりは使用頻度の低いものを、上段は最も使用頻度の低いものを入れます。また、今回は、奥行きのある押し入れなので、使用頻度の高いものを手前に、低いものを奥に置くようにしてみました。
上段
ゲスト用のかけ布団や毛布、枕などを2つに分けて収納。取り出して使うことが少ない、用途別でボックスに分けた、思い出の品や趣味で集めているものを置きました。
中段
これまで縦に置いていたハンガーラックを取り出しやすいように横に設置。手前には、左から、ゴミ袋や折りたたみバッグとして日常的に使う空き袋をまとめたボックス、帰宅後に着替えた衣類を一時的に置く衣類収納、外出時や入浴の際に使うタオル類の収納かごを置きました。手前と奥で置くものに高低差をつけることで使い勝手もよくしています。
下段
空間を最大限に活用するために、左右幅の長さを調節できる簡易棚を設置。上の隙間にゲスト用の敷き布団を置き、下の奥にはカラーボックス、手前に使用頻度の高いミネラルウォーターのストック、衣類ケースを設置。
左奥のカラーボックスの中には、使う機会が少ない家具や家電のパーツ、ケーブル類に選別したボックスを入れ、その上に重要なものや日用品などのボックスを置きました。
引出式の衣類ケースは、使用頻度は高いものの、上から見たほうが中身を確かめやすいので下段に置いてあります。
スズキさん:今回は、収納がしやすい四角いボックスを、見た目にもスッキリさせるために同じメーカーのもので揃えました。それぞれのボックスには、用途別のラベルを貼りましたが、これは何がどこにあるか探しやすいだけでなく、何をどこに仕舞うか、どれだけの数を持ってるのかをしっかり把握する意味もあります。
自分の目で確かめて、オーディションを突破した大事なものばかりなので、中身をしっかり記憶して、使ってあげる努力も怠らないようにしてあげてください。
キッチン収納のポイントは、配水管スペースに何を置くか
整理・収納術の最後は、キッチン下収納です。「棚を有効に活用してちゃんと整理して収納している」と、スズキさんからお褒めの言葉をもらった開發ですが、収納できなかったお米や調味料を押し入れに置いていたこともあり、改善点はまだまだありました。
スズキさん:キッチン収納は、細々としたものが多く、お店で「あれば使うかも」とつい買ってしまった食器や調理器具で溢れがちです。そこで棚やボックスを活用してスッキリ収納したいですね。
ポイントは、押し入れの収納と同じように、用途別と使用頻度で選別すること。湿気の多い配水管があるスペースには、食器や食品、調味料を置かないことです。
今回は、棚の1番上に、調理する際に取り出しやすい調理器具を置き、2段目に使用頻度の高い食器類、3段目に押し入れにあったお米を収納する米びつとボックス収納した調味料、食器を収納。
配水管があるスペースには、洗剤やスポンジ、ふきんやタオルのストックをたたんでボックスに入れて収納しました。
ふきんやタオルは湿気が溜まりやすいのでは?と思うかもしれませんが、日々交換して使うものなので、必要枚数であれば、そこまで気にすることはありません。
また、1人暮らしの場合は、大容量の調味料はかさばり、使い切れないこともあります。限られた収納スペースを有効活用する意味でも、少量タイプを購入して、使い切ったら交換すれば無駄な買い物にならないと思います。
衣類も同じですが、自分が何をどれだけ持っているかをしっかり把握して、使っている場面をイメージしながら、新しいものの購入や要・不要を決めましょう。ものが増えて収納する場所がなくなったり、整理できずに散らかってしまうと、1日で1番長くいることになる部屋が不快な場所になってしまいますからね。
「本当に必要なものか?」「必要なものは用途と使用頻度で分ける」。
ものを増やさず、家計の無駄を省きながら、見た目にも、機能的にも、スッキリと収納する。実際に開發の部屋の収納がどんどん変化していく様子を見ていましたが、言われてはじめて気づくことが多かった反面、これならすぐに自分でもできるかもと感じました。
新生活がもうすぐやってきます。改めて部屋の収納を見つめ直して、スッキリした新鮮な気分で新しい季節をスタートさせてみてはいかがですか?
Photo: ヨコヤマコム
取材協力:一般社団法人 ハウスキーピング協会
香川博人