クルーグマン:金融緩和を継続せよ

ポール・クルーグマン教授が金融政策の方向性についての議論を蒸し返している。
教授はいつか、この議論で宿敵トランプ大統領と意気投合するかもしれない。


クルーグマン教授は基本的な3つの質問を提起している:

1. FRBは失業率がどこまで下がりうるか知っているか?

クルーグマン教授の答はNoだ.
現状の失業率は歴史的に見ても相当に低い。
しかし、教授によれば、完全雇用についての過去の推定値よりはまだかなり上にあるのだという。
さらに、インフレはまだ低い。
「インフレを昂進させることなく失業率を3.5%まで低下させられるか?
正直に言ってわからない。」

2. FRBはインフレがいまだ低いにもかかわらず、今金融を引き締めるべきか?

もちろんクルーグマン教授の答はNoだ。
理由を3つ挙げている:

  • 失業率はどこまで下げられるかわからず、やってみなければわからない。
  • 間違えた時のリスクが非対称: 引き締めが早すぎると流動性の罠に逆戻りするリスクが増える。
  • 2%目標は低すぎる: ゼロ金利制約を脱するのに2%で十分というのは経験から言って誤り。

3. 失業率とインフレの間には関係があるのか?

クルーグマン教授は足元でこの関係が緩んでいることを認めつつ、Yesという答えを滲ましている。
フィリップス曲線が成立していないとして(かつての日本の宰相のように)貨幣の需給でインフレが決まるとのマネタリズムが息を吹き返しつつある点を牽制している。
経済は人間の営みが作り上げるものと指摘した上で、理由を挙げている:

  • 生産者も消費者も貯蓄・投資バランスなど気にかけない。
  • 賃金・価格の設定者は貨幣需要など気にしていない。

足元では失業率とインフレの間の逆相関が崩れているように見えるが、長期的な関係は明らかだとして、スペインの事例を紹介している。

ここからクルーグマン教授の結論は一般人にはつまらない方向に向かう。
このコラムの結論は、マクロ経済の議論におけるミクロ的動機付けの重要さであるらしい。
単純に最大化を目指すミクロ的基礎だけでなく、制限を付した最大化、そしてミクロ的な動機付け・目的付けがカギになると論じている。

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