英国のEU離脱まであと1年 メイ首相が国内各地を訪問
英国が欧州連合(EU)を離脱する2019年3月29日まで残り1年となった。英国各地を訪問しているテリーザ・メイ首相は、欧州連合(EU)離脱後も英国を「力強く、結束した」状態に保つと強調している。
29日のメイ首相の予定には、スコットランド南西部エアーシャーの繊維工場訪問、ウェールズ・ニューキャッスルの乳幼児を持つ親の団体との会合、英領北アイルランド・ベルファストでの農業従事者との昼食会、ウェールズ南部バリーで企業との会議が組み込まれている。
同首相は出発前、「我々の法律と国境、資金」を自分たちの手に取り戻し、英国が「離脱に賛成したか反対したかに関わらず、全ての人々のための力強く、結束した国として繁栄」することを約束した。
また、「英国全体の統合を守る」と約束。北アイルランドを単一市場と関税同盟内に残すというEUの提案への反対姿勢をあらためて示した。
「(EU提案に反対するのは)国内の共通市場に新たな境界線を設けず、将来的に英国が国際社会との約束が守れるからだ」
「どんな首相だって成り行きにまかせるようなことはできない。その国の将来にとって絶対的に大事なことだからだ」
一方、スコットランドとウェールズの自治政府は、EUから移管される権限のうち、これら自治政府が関係するものを中央政府が保持する計画をめぐってメイ首相を批判している。
メイ首相は自治政府の「決定権は拡大」されるとし、中央政府は今後も権限移譲に「全面的に取り組んでいく」との意向を示している。
英国がEUとの将来的な関係を定める協定で合意するには、あと数カ月しか残されていない。
昨年6月の正式な交渉開始以降、離脱条件をめぐる合意には至ったものの、重要課題とされる通商関係の交渉はまとまっていない。
2019年3月29日の離脱後には21カ月の移行期間が始まるが、メイ首相はまず、今年10月に予定される英議会の採決で、合意内容の承認を得る必要がある。
<解説>ジョン・ピエナー政治担当副編集長
メイ首相はイングランド、スコットランド、ウェールズ、英領北アイルランドを1日で回る。その意味するものは明らかだ――英国はEUを1つの国家として離脱する。
メイ首相のメッセージもそれに相応しく上がり調子で、弾丸旅行の直前、「我々の未来は明るいものだと思う」と述べた。同首相は連合王国の英国を(おそらく意図的に)「世界で最も成功した連合」と呼び、EU離脱前に英国の一致が必要だと訴えている。
それでもなお、関連省庁は各自治政府がEU離脱で損をしないと納得させるために昼夜を問わずに働いている。
メイ首相はまた、国内経済の発展や、欧州内外の友好国との自由貿易を通じた対外影響力についてもビジョンを提示している。
英国のEU離脱の出口は、アイルランドとの国境問題といった障害や、これから始まる厳しい通商交渉、最後の難関である議会での承認などを鑑みると、多くの面で、今回のメイ首相の弾丸旅行ほど、予測しやく綿密な企画が立てられているようには思えない。