自衛隊の任務を広げた安全保障関連法が施行して29日で2年となる。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍備増強など東アジアの安全保障環境は厳しさを増し、自衛隊は米艦の防護など安保法に基づく新任務の実績を着実に積み重ねてきた。一方、自民党が憲法改正論議を進めるなか、安保法で認めた集団的自衛権の可否を巡る憲法論争が再燃しつつある。
安保法は2015年9月に成立、16年3月に施行した。平時から有事まで米軍との協力を深める内容で、平時に認めた任務は実践段階にある。
防衛省は今年2月、17年に安保法に基づいて米軍艦船と航空機の防護をそれぞれ1件ずつ実施したと公表した。時期や場所を明らかにしていないが、17年5月に房総半島沖で海上自衛隊の護衛艦「いずも」が米海軍の補給艦を防護したことが判明。航空自衛隊の戦闘機も訓練の際に米軍の爆撃機を防護したもようだ。
小野寺五典防衛相は27日の記者会見で「日米同盟はかつてないほど強固になり抑止力も向上している点は強調したい」と安保法の意義を訴えた。
国際貢献では国連平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊部隊に、国連職員らを助ける新任務「駆けつけ警護」を付与した。南スーダンで展開した陸自のPKO部隊は訓練を積んだが、実施せず17年5月に撤収した。
ただ安保法成立前から続いてきた集団的自衛権が違憲か合憲かを巡る議論は収まらない。市民団体などが集団訴訟を提起。現職自衛官が安保法に基づく防衛出動に従う義務はないとの理由で訴訟を起こした事例もある。
自民党の憲法改正案も火種になりそうだ。9条1項、2項を維持した上で新たに「9条の2」を設け、自衛隊を明記する案だが、野党からは集団的自衛権の行使拡大を懸念する声があがる。