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だらだらダイアリー。心を解き放て

アニメ『宇宙よりも遠い場所』感想

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今期最高、というか青春ドラマを描いたアニメ作品の中では最高峰なんじゃないか!いしづかあつこ監督に、脚本構成が花田十輝。『宇宙よりも遠い場所』、素晴らしかった。これずっと「うちゅうよりも」だと思って「お前ら!うちゅうよりも遠い場所みろ!やばいから」って布教してたのが恥ずかしい。ただ、最終話まで見て「やばい」のは間違っていなかったので安心している僕です。

さて、〈完全新作〉のオリジナルアニメということで、回を重ねるごとに脚本の安定感であったり、OP・ED・挿入歌の素晴らしさがひしひしと強調されてきた本作。12話のタイトルが作品タイトル同様、宇宙よりも遠い場所、であっただけに「最終話ラストが微妙」なんてコメントをしている未来人を見かけたけれど、僕のみた最終話はそんなのじゃなかったぞ!と声を大にしていいたい。僕が見たのは、「本気で聞いてる」「本気で応えてる」の最終話だ!涙が止まらない!

 

以下、あらすじ。ネタバレだらけですので視聴してない方は今すぐアマプラで見るように。

youtu.be

そこは、宇宙よりも遠い場所──。

何かを始めたいと思いながら、
中々一歩を踏み出すことのできないまま
高校2年生になってしまった少女・玉木マリたまき・まりことキマリは、
とあることをきっかけに
南極を目指す少女・小淵沢報瀬こぶちざわ・しらせと出会う。
高校生が南極になんて行けるわけがないと言われても、
絶対にあきらめようとしない報瀬の姿に心を動かされたキマリは、
報瀬と共に南極を目指すことを誓うのだが……。

STORY|TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」公式サイト

 

思春期。何かでかいことしてやりて〜〜、そうやって皆が手当たり次第、様々な挑戦をする。そうすると、ちょっと周りとはスケールが一回り違うな、という人物が現れてくるもの。主人公の玉木マリにとって、南極を目指す小淵沢報瀬はまさにそういった人物であり、自分の「何かやりたかったんだけど、何もしないまま高校2年になってしまった」というモヤモヤを吹き飛ばしてくれる強烈な存在である。

ただし、報瀬には自分が南極へ行かなくてはいけない、明確な目的があって、それをアイデンティティとして生きてきただけあって気を張っているため、どこか人を寄せ付けないところがある。そこをドカンと突き破るのが、純粋すぎる主人公キマリというわけです。そこから始まる物語。

 

南極到着に関しては案外あっさりしていて、そこにツッコミを入れる視聴者も少なくない。本来なら難しいところを、たまたま現れたタレントのコネでいけることになったのですから指摘自体は強ち間違っていないかな〜と思うんですが、でも、やっぱりそれでこそ日常だと思うのです。〈女子高生4人が南極を目指す〉という本作の軸はあくまで非日常的であるけれど、ーー視聴済みの方ならわかってもらえるだろうがーーどこまでも日常のなかに落とし込まれてる。彼女たちの言動が常に等身大でリアリティーがあるだけに、青春時代の「何かがしたくて、一緒にいる友人と心を通わせながら、青春の終末へ駆り立てられていく様」が見事に描かれていると思うのです。

 

同時に。その過程で自然と現れてくるそれぞれのコンプレックスであったり、歪んだアイデンテティであったり、ここが緻密に描かれていることが、今作の最大の魅力だと思ってて。それこそ5話における、10話の日向、11話の報瀬クローズアップは、完全に泣かしにかかってきてるけれどまんまと泣かされた。嗚咽に近いかもしれない。ていうか泣かないやついないだろあれ…。

 

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10話、「パーシャル友情」は“友達の定義”なんかがテーマで、終盤のワンシーンがものすごく印象的だった。

絶交を告げられてからのめぐっちゃんとのメッセージ、「返事あまりないですね」っていう結月にキマリが言ったセリフ。

でもなんとなくわかる。

画面を見てるとね、ピッて読んだよーってサインがついたり、何か帰ってきたり、すぐだったり、ちょっと時間がありたり、半日後だったり。それを見る度になんとなくわかるんだー。あぁ、今学校なんだなとか、寝てたんだなとか、返事しようかとちょっと迷ったなとか。

わかるんだよ、どんな顔してるか。変だよね。私にとって友達って多分、そんな感じ。

全然はっきりしてないんだけどさ、でも多分、そんな感じ!

 

ぶわわああああああん。なんと純粋な。で、誕生日を祝ってもらって号泣する結月と、それを経て「友達って多分、ひらがな一文字だ!」という気づきを得るキマリ。素敵すぎるだろ…。(11話の「手だけでいい」と言いつつも自ら報瀬に抱きつく日向ちゃんもヤバかったです)

 

12話「宇宙よりも遠い場所」は咽び泣く以外に、こちらのリアクションが用意されてない。以上。

 

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以下、最終話の話。

淀んだ水が溜まっている

それが一気に流れていくのが好きだった

決壊し、解放され、走り出す

淀みの中で蓄えた力が爆発して

全てが、動き出す

1話の冒頭、5話の終盤でも用いられたこのセリフの通り。

全13話を通して描かれていたのは、〈解放〉だったのだと思う。母親が南極で死んで、母に想いを寄せつつもいまいち母の想いに接続できずに悶々としていた状態から、「南極に行く」と決意し、バイトで貯めた100万円。ばかにしてくる人間に敵意を向けながら、亡き母へ宛ててメールを送り続けることで自我を保っていた報瀬が、100万円も南極で発見した母のPCも、笑顔で南極へ置いていけるようになったという。まさに解放ではないすか!登場人物一人一人の持つ、こういった過去のしがらみであったり抱えているコンプレックスだったりを全て、南極で解き放つ様を僕らは見ていたのです。

 

小渕沢報瀬の終着点、このアニメの終着点は、「何もかもがむき出しの環境で、一緒に乗り越えていける仲間たちができた」というところ。最大の喜びであり、最大のカタルシスだ。何が嬉しいって、「母にも同じような仲間がいた」ということを自身が一番よくわかっていて、自分もそこに辿り着けたのだという、確かな達成感が残っているということ。母のアドレスから送られてきた写真のオーロラよりはるかに綺麗な本物を、確かに、自分の仲間たちと見れている、これこそが宇宙よりも遠い場所で得た最大の宝なのだと思う。

 

そしてラストシーンのめぐっちゃん!絶交して以降の彼女の心情変化を想像するだけで、もう1クールは間違いなく楽しめる!

賛否両論あった5話で、「ここじゃないところに向かわなきゃいけないのは私なんだよ!」と言い捨てためぐっちゃんが、まさかの北極に行っていたのです。なんと単純な、と思ったけれど、一度絶交を申し出たほどに不器用な人間なのだし、一周回って納得してる。ふと思ったのだけど、人物の、強がりから滲み出る〈弱さ〉の描写で花田先生の右に出るものはいないんじゃないか。めぐっちゃんの嫉みからくる悪行と、それを告白し、絶交を告げる回。何で、何でと繰り返し尋ねるキマリに、「知らねえよ!」と叫ぶシーン、わかる。“何かやりたい気持ち”と共に、“何もない”のを共有していた友人が、他の人間と一緒に何かを成し遂げようとしている、どこか遠くへ行ってしまいそうなひりひりとした寂寞、わかる。

自分に何もなかったから、キマリにも何も持たせたくなかったんだ

 

わ、わかる〜

でもそういうのってうまく言葉にできないから、嫌がらせであったり絶交という分かりやすい形でしか表現できないのが青春というものなのかもしれない。

 

でも彼女が北極へたどり着けたのは、キマリの「ぜっこうむこう」があったからであって…と考えると、呆れるほどに純粋なキマリなしでは物語が進まなかっただろうな、と感慨深くなってしまう。悔しい…。人物の設定なんかもよくできすぎてる…。 

 

結局、青春なんてものは、本人らにとっては歪でなんだかダサく中途半端であるように思えても、こうして第三者の目線で俯瞰してみると、「それでいいの、それがいいの。うぁああん」のシーンの連続なんだろうな。

最後に、これほどの作品に出会えたことを嬉しく思います。涙が止まらね〜〜

 

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