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プレバト!!




名人・特待生だけのタイトル戦<冬麗戦>結果発表

第1位
千賀健永(Kis-My-Ft2) 特待生2級
「雪原や星を指す大樹の骸」
[作者意図]
「雪原や」でお昼のイメージになるが、そのあとに「星」がくる。ということは夜のイメージになる。そのあとに、雪の中に「大樹」があるという2つの発想をこの写真の中に入れてみた。大樹の骸が星を指す…というのが、自分の中で「大樹が死ぬ前に星にあこがれて死んでいく」というロマンチックなイメージとなり、それを最後に持ってきた。映像を残したまま発想を転換する、ということにこだわって作った。
[講評]
「雪原や」で広い雪野原が見える。「や」は強調で、昼だと思う。そしたら「星」で夜になる。そして「指す」で星を指している人物がいるのかな?と思わせると「大樹」が出てくる。大樹が星を指すようにそそり立っているんだ…と思った瞬間に、それは枯れた骸であるということがわかる。一語一語出てくる度に光景が少しずつ動きながら、全部読み終わると蕭条(しょうじょう)とした冷たい世界の中に大樹と星とが美しい絵画のように1枚に入っていく。お見事だ。しかもこの五・五・七という調べが美しい緊張感を一句の中に編み出している。よく勉強したことを丁寧によくやった(涙)。あんたが泣くからもらい泣きしちゃった。直しなし、文句なしの優勝です。
第2位
藤本敏史(FUJIWARA) 名人6段
「船長の側にペンギン日向ぼこ」
[作者意図]
お題の写真を見て、ペンギンがいっぱい住んでいる島に観光客が船に乗って行き、その船の船長は何回も行っているからペンギンと仲良しなんじゃないのかな…という想像をした。側に寄って行ってもペンギンが逃げないぐらい仲の良いペンギンと船長が、冬のいい陽気の日に日向ぼっこしているという俳句。
[講評]
「日向ぼこ」は冬の季語。俳句の世界ではお年寄りのイメージが強い季語だが、南極に行っている船長と南極のペンギンが日向ぼっこするという発想の飛躍、これは褒めるしかない。船長という人物が出てくる、その「側に」の「に」は視線を誘導する働きも持っている。船長のそばになんだ?と思わせて、ペンギンが出てくる。そして極寒の地で「日向ぼこ」というギャップに驚く。語順もよく考えている。
第3位
梅沢富美男 名人7段
「ざくざくと空切りひらく雪下ろし」
[作者意図]
屋根の上で雪かきをする人がいる。それを下から覗いている人がいる。今まで雪が積もっていたから空があまり見えていない。雪下ろしをしているうちにだんだん空が広がっていく…という情景を詠んだ句。
[講評]
まず語順がいい。「ざくざく」って何だろう?「空を切り開く」って何だろう?謎かけをしておいて最後に「雪下ろし」という季語がでてくる。そのとたんに映像、光景が一気に広がって、その奥に冬晴れの青い空も見えてくる。しっかりと意図通りに言葉を選んで構築している。「ざくざく」は当たり前のオノマトペだが、語順・季語の効果をしっかり考えれば新しい句として成立できる、という意味での見本のような句だ。ただ、雪かきのこういう場面を詠んだ句は他にもあるわけだから、2位と3位の違いは発想力の違いといえよう。
第4位
中田喜子 特待生3級
「くら谷を震はせたるや雪の声」
[作者意図]
「くら谷」とは深い谷のこと。雪が樹木や竹に積もっていて、重さで自然に落ちるときの音を「雪の声」と表現するが、それが谷に響く、周りの木々を震わせる…という光景を詠んだ。
[講評]
「くら谷」とは万葉集ぐらいの時代から使われている言葉。よく調べました。そして、樹木や竹などに積もった雪がすっと落ちる音を表す「雪の声」という季語。「震はせたるや」でいったい何が震わせた?と思わせて最後に「雪の声」が出てくる。語順もよく考えている。作者は、完了の意味を強める助動詞「たる」を用いて、音の余韻はあるけれども今一瞬の静寂がある、というニュアンスを表現した。次々に落ちて続いていくなら「震はせゆくや」、今「雪の声」が聞こえたのなら「今震はすや」という形になる。
[添削例]
「くら谷を震はせゆくや雪の声」
第5位
村上健志(フルーツポンチ) 名人初段
「春永やサイドミラーの透ける空」
[作者意図]
新年の、のどやかな空気みたいなものを表す「春永」という季語を使って、車のサイドミラーに空が映っていて、「お正月のめでたい気分や美しさというものはサイドミラーにまで宿るんだ」ということを表現した。
[講評]
「春永」がここで出てくるとは思わなかった。新春のお祝いの気持ちを込めた季語で、映像を持たないが、作者は「サイドミラー」や「空」をしっかり入れ込み映像化している。弱点が一つだけあって、車が動いているのか、止まっているのか、「透ける」ではちょっとあいまい。例えば、「サイドミラーの小さき空」とすれば目にした一瞬が、完全な映像になる。動きを出したかったら「サイドミラーを弾く空」「サイドミラーを走る空」など。より細やかな表現で映像化することができる。
[添削例]
「春永やサイドミラーの小さき空」
第6位
石田明(NON STYLE) 特待生2級
「冬青空吉のおみくじの余白」
[作者意図]
冬青空が広がっている中でおみくじを引いたときの話。「吉」のおみくじは、ほかの「大吉」や「大凶」とかに比べて余白がすごく多い。書かれていることもあまり話題にならない。でも見た目の清廉さとか奇麗な感じが、雪青空の風景に重なると感じ、それを俳句にした。
[講評]
まず「冬青空」と出てきて最後に「余白」とあり、色の対比をさりげなくやっている。六・八・三の破調という調べは一つの挑戦だが、この句はある程度五・七・五の定型に入れたほうが内容と調べが似合ってくる。添削例なら作者の意図がまっすぐに伝わる。
[添削例]
「冬青空吉のみくじにある余白」
第7位
横尾渉(Kis-My-Ft2) 名人2段
「産ぶ声や皆の顔が冬暖か」
[作者意図]
新年を迎えるということで、「寒い」ではなく、何か「暖かい」イメージを出したいなと考えた。子どもが生まれたときの温かみ、皆の顔が笑顔になって暖かくなる…という情景を説明した。
[講評]
暖かい句にしたいという発想は悪くない。この句は後半に季語を含むフレーズが来る、言葉の質量のバランスをとるのがなかなか難しい型なのだが、頭に「産声や」とやるだけで場面がぱっと浮かび、音も聞こえてくる。もったいないのは中七だ。「皆の顔が」だとやはり文脈が説明になってくる。生まれたばかりの赤ちゃんをみんなが取り囲んで見ている映像。これだけで良い。
[添削例]
「産声や冬暖かき顔々かお」
第8位
千原ジュニア 特待生5級
「新雪に放物線の飛ばし合い」
[作者意図]
こういうきれいな景色を見せられるとすごく汚したくなる。うちの実家は京都の田舎で、雪が積もった時だけ立ちションをして良いような気がして、兄のせいじといつもそうしていた。奇麗な物を詠まないといけないのが俳句なのかもしれないが、でも自分に嘘がつけなかった。
[講評]
「尿」と書いて「しと」と読む。芭蕉の句に「蚤虱馬の尿する枕もと」とあるぐらいだから、俳句でやっていけないことは何もない。ただし、この句の十七音の中に詩情らしきものがあるかというと、ない。それなのに、この開き直りの態度はいかがなものか。降格させたいぐらいだ。表現も「雪合戦」を連想させるなど、不十分。せめて「尿(しと)」くらいの言葉は上品におさえてほしいものだ。
[添削例]
「新雪に交わす放物線の尿(しと)」

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