出産する前、よく「赤ちゃんが生まれたら自分の時間なんて一切なくなるよ」と言われていた。いろんなことに対して「今しかできないから今のうちにやっておきなね」と。一般的にも「赤ちゃんを育てるのは大変」「ワンオペ育児は大変」「自分の時間が持てない」というのはよく言われていることだと思う。
だけど私の場合、まず2カ月目の時点ではまったく大変じゃなかった。
そして先日、赤ちゃんを育て始めて半年たったのだが、やっぱり今のところは子育てについて「大変」と思ったこともなければ、「自分の時間が取れない」と感じたこともない。
なんで私はこんなに楽勝なのだろうか
仕事がある日の旦那さんは仕事で体力を使い果たしてしまっていて使い物にならないから、育児に関しては基本的に24時間ワンオペでやっているし、家事についても主に私がやっているけれど(彼は家事全般が苦手で、やってくれてもヘタクソなため)、それでも自分の時間は取れている。
どのくらい時間があるかというと、普通に、妊娠する前と変わらない量の原稿を書くことができている。
週に2日ある旦那さんの休日は自分も休日にしながら(一文字も書かない)、 月に25本ほどある締め切り原稿をこなして、毎月だいたい書籍1冊分くらいの文章を残している。そのくらいの時間は取れている。
だから、世のお母さんたちがいう「赤ちゃんを育てるのは大変」「ワンオペ育児大変」「自分の時間が持てない」が、全然わからない。子どもが2人以上いるのならば状況がまるで違ってくるからわかるけれど、1人しかいないのであれば「何が?」「なんでそんなに大変なの?」「家事・育児の何に、そんなに時間を取られてるの?」と、ただただ不思議に思う。
それで「逆になんで私はこんなに楽勝なのだろうか」と考えてみた。
おそらく私は、育児を快適にすることや生活を便利にすることに、かなり力を注いで生きているからなのではないか、と思った。
洗濯のハードルを下げるためにしたこと
例えば、洗濯問題。赤ちゃんを育てていると、とにかく洗濯物が増える。着替えさせた瞬間にウンチが漏れることなど日常茶飯事だし、オムツの作りと身体のサイズとおしっこの量とウンチの硬さの兼ね合いなどで、どう気をつけても毎日漏れまくる時期などもある。それに生まれてからしばらくは胃の形が未熟だから、体を傾けただけで吐いてしまったりする。起きている間中よだれを垂らしているから、よだれかけやらこちらの服やら、すぐにビショビショになる 。
シーツやタオルや洋服が、本当にひっきりなしに次々と汚れていく。どんどん洗濯をしないと間に合わない。
だから私は、出産前に全自動の洗濯機に買い換えた。それまでは干していたけれど、それだと干す余裕があるタイミングでしか洗濯ができないから不便だし 、たまたま洗い上がりのタイミングで育児が立て込んでしまったら中途半端に生乾きになって洗い直しなんてことにもなりかねない。
そんな風に、干す必要があると洗濯をするハードルが上がるし、そもそも、干すのってかなり面倒くさい。洗濯が面倒くさいことだと、「洗濯しなきゃ」と 思うたびにストレスを感じることになるから困る。
だって、洗濯をすることがストレスになってしまうと、赤ちゃんが洗濯物を増やすたびに「うわ」「また」「面倒なことを」と感じてしまいかねない。
赤ちゃんは何も悪くないのに、そんな母親になりたくない。(そもそも赤ちゃんが汚れ物を出す時、赤ちゃん本人は何もできないことが大前提の存在である以上、何が起きてもそれは赤ちゃんのミスや失敗などではなく、必ず親の不手際)
それに、洗濯が面倒なことだと、定期的に「私は、もう今日は疲れた。あなたがやって」と言いたくなり、おそらく夫婦喧嘩の原因にもなる。
だから、洗濯をすることのハードルを下げるために、全自動にした。そうすれば洗濯は、洗剤を入れてボタンを押すだけの作業になる。赤ちゃんにまつわる洗濯物はどれもシワや傷みを気にしなくていいようなものだから乾燥機で全く問題がない。
だから私は完全母乳にこだわった
それとか例えば、授乳問題。生まれてからしばらくは授乳回数が多いし、哺乳瓶はいちいち消毒をする必要があって手間がかかる。
だから私は完全母乳にこだわった。ミルクって大変そうだよな、と思ったから 、母乳だけで育てられるように産む前から準備をしていた。
ミルクの何が大変って、一番は、徒労感があるところだと思う。
夜間授乳では、赤ちゃんが泣くたびに、睡魔をどうにか振り払って起き上がりミルクを作りにいくわけだけど、そこまでしたのに泣いている理由がミルクではないパターンなどよくあるだろうし、作っている間に寝ちゃってて結局飲まないパターンなどもあるだろう。
作ったミルクは保存がきかないから捨てるしかない。 けたたましいほどの泣き声を聞きながらのミルク作りは焦るし、大急ぎで作ったのに結局そのまま捨てるようなことが続くと、きっと振り回されている気分になる。
それは心が疲れてしまうし、そうなると赤ちゃんに泣かれること自体がストレスになりかねない。私は息子が泣くことを歓迎できる母親でありたいから、それは困る。
だから産む前に、どうすれば母乳育児で苦労しないで済むのかを、めちゃくちゃリサーチした。何冊も本を読んでは「うーん」「この理屈はどうなんだろう」と、どんどん却下して、やっと「これだ! このやり方でうまくいくなら理想的だし、この本の理屈は腑に落ちるし、好き!」という一冊を見つけた。そして産院の指導をそこそこにスルーして、主に本に書いてあることを実践したところ、初日からとくに苦労なく完全母乳で育児をすることができた。
母乳の良さは、とにかくこちらが楽なところだと思う。何泣きなのか分からない段階で念のために飲むかどうか分からないミルクを作り、結局ほとんど捨てることになる徒労を避けられるのは、かなり大きなメリット。 大変だと言われがちな夜間授乳にしても、母乳で添い乳だと、もはやしたのかどうか覚えていないほど、ほぼ起きないままでサクッと完了できるから少しも大変じゃない。
疲れるのは、笑いの取り方が中途半端だから
それとか例えば、赤ちゃんが泣きやまない、寝かしつけが大変、という問題に関しては前回の記事「赤ちゃんが泣きやまなくて困ったことなんて一度もない」に書いた通り。
あとは、赤ちゃんが夜に起きるから寝られないという問題に関しても、以前に書いた通り。
あとは、何だろう。そういえば先日「赤ちゃんと遊ぶのが疲れる」と言っているイクメンがいた。それに関して私が思うのは、笑いの取り方が中途半端なのでは、ということ。
私は息子と遊ぶのがすごく楽しい。だって、こんなに打てば響く相手っていない。かまった分だけ喜んでくれる。大人相手だと「だる絡み」「うざ絡み」と言われるようなことをしても、息子はとても嬉しそうにする。とくに、息が止まりそうなほどの爆笑をしてもらえた時には、脳に幸せホルモンが放出している実感さえある。
爆笑をとるにあたっては、ツボに当てる必要があるけれど、そこに高度なギャグセンスのようなものは全く必要ない。おそらくこれは息子に限ったことではなく赤ちゃん全般がそうなのだと思うのだけど、赤ちゃんは基本、ザ・茶番な小芝居で爆笑する。それから、天丼(※お笑い用語で同じボケを何度も繰り返すこと)が大好き。一度笑ったら、あとはもう同じことを繰返すだけで、いつまでも笑ってくれる。ぜんぜん白けない。
こんなに盛り上がってくれる相手はそう見つからないから、赤ちゃんと遊ぶのは楽しい。大したことをしていないのに狂喜乱舞してくれるから面白い。
ロールキャベツとか巻いてると大変
あとは「育児をしていると自分や旦那さんの食事の支度が大変」という話もよく聞くように思う。
これについては、下ごしらえがほぼ必要ない料理を選べば解決する。ロールキャベツとか巻いてると大変だけれど、世の中には全然手間がかからなくてロールキャベツより栄養価が高くて男ウケのいいレシピが山ほどある。
家庭料理において、手間暇と美味しさは比例しないことの方が多いし、とくに男ウケの良さに関していえば手間暇というのは全く反映されない。巻いたり、 じっくり炒めたり、コトコト煮込んだりするよりも、ニンニクと醤油とみりんと鶏ガラスープの素あたりをしっかり使ってサッと炒めた方が、はるかに喜ばれる。
私は、日々の旦那さんのごはんに関しては、とにかく調理工程が楽なものを選ぶようにしている。美味しいものを食べて幸せを感じることは大切だから、味の良さは大事にしたいと考えているけれど、育児と並行している今、エンターテイメント性まで出す必要はないと思う。
そもそも、働く男の人は結構疲れて帰ってくるから、「わ!お肉が溶けてるビーフシチューだ!」みたいに声に出して喜んだりするほどの体力が残っていなくて、食事中に大したリアクションをしない。せいぜい心の中で「あー、うめーなー」と思いながら、無言でお代わりをするだけ。
だから、気合を入れて作ったりしてしまうと「頑張って作ったのに何そのリアクション」みたいな不満が生まれたりして、そうなると逆に夫婦仲の毒になる 。
栄養は詰め込むけれど、品数は少なくていいと思うし、それに出来立てである必要もないと思っている。
出来立てを食べさせることにこだわると、帰ってくるまで食事の支度が終わらないし、仕事をしている人に対しての「今日何時に帰ってくるの?」という質問は不毛だと思うけれど、いつ帰ってくるのかわからない相手をスタンバイする暮らしって疲れる。
私は、体力があるうちに主な家事を終わらせてしまいたいと思っているから、 食事の支度を残したまま深夜を迎えて、眠くなった頃にご飯を作らされるのはストレスになる。それで真顔で食べられたら、もはやムカつく。
だから、何時に帰ってくるのかが分からない日(大概そう)のごはんに関しては、レンジで温め直しても味がほとんど落ちない献立にする、と決めている。 揚げ物のような、出来立てじゃないと台無しになるようなメニューは作らない 。
家事に対して無理をすることは夫婦喧嘩の元になる。きっと男の人は、揚げたてのトンカツが出てくることよりも、何時に帰ってもため息をついたり文句を言ったりせずにニコニコとご飯を出してもらえる状況の方が嬉しいと思う。
世の中にはマニアックな商品がたくさんある
私は、生活する中で感じた小さなストレスを放置しないと決めていて、常に「もうちょっと何とかなんないのかな」「省く方法はないのかな」ということを考え続けている。
それでよく、便利アイテムを購入するのだけど、これも育児が楽勝になっている秘訣だと思う。
例えば、赤ちゃんの寝かしつけに苦戦するのが日常だったとしたら「もっと赤ちゃんがよく眠れるベッド的なものは存在しないのだろうか?」と考える。体力が余ってるから眠れないのかも、などと仮説を立てては「じゃあ、赤ちゃん が体力を使えるような遊具は存在しないのかな?」と探し始める。
「こういうものがあったら便利なのに」と思ったら、あるのかどうか調べる。 調べてみると大概見つかる。世の中には本当にマニアックな商品がたくさんあるなぁと、いつも感心している。
そして見つけたら迷わず買う。一時的にしか使えないようものだったとしても、それを買うことで1週間だったり1ヶ月だったりの快適な暮らしが手に入るのなら買う。
最近だと、2ヶ月くらいしか使えない赤ちゃん用の特殊な寝床を買った。すぐに身長が伸びてしまい、あっという間に使えなくなったけれど、2ヶ月の快適を買えたのだから良い買い物だった。
それから、歩けるようになったら使えなくなる遊具も買った。これもすぐ使えなくなるだろうけれど、歩けるようになるまでの体力の発散になるから、それでいい。
すぐに使えなくなるようなものにお金をかけるのはもったいない、という考えは私の中にはない。
私はいつも、育児や家事に疲れないでいられるようにすることを重要視している。なぜなら、明るくて優しくて常に機嫌のいいお母さんや奥さんでいたいから。慢性的な不機嫌は人生を壊すし、家庭崩壊に繋がると思う。
だから、そこに一役買うのであれば、迷わず買うことにするし、それはすごく価値のあるお金の使い方だと思っている。すぐに捨てることになっても、いい買い物だった、と思って満足している。