北朝鮮の金正恩氏、タカ派起用のトランプ米大統領に強力なメッセージ

  • 中朝関係改善は北朝鮮に対する制裁措置の効果を損ねる公算
  • 米国、ボルトン氏起用で軍事オプションが再び俎上に

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が米朝首脳会談に先立ち、トランプ米大統領に強力なメッセージを送った。中国は北朝鮮の味方だということだ。

  北朝鮮の最高指導者となった2011年以降で初の外遊先として訪れた中国で、金委員長は暖かい歓迎を受けた。中国は28日、金委員長の訪中を確認。4日間の中国訪問には李雪主夫人も同行し、金委員長は中国の習近平国家主席との会談で中国は「戦略的選択肢」として北朝鮮と引き続き友情を分かち合っていくとの言質を得た。

中朝首脳(ソウルでのテレビ放送)

撮影者:チョン・ソンジュン/ゲッティイメージズ

  想定外の中朝首脳会談について、ホワイトハウスは米国による圧力が機能していると主張している。だが、中朝関係改善は北朝鮮に対する制裁措置の効果を損ね、米国が軍事オプションをとった場合のコストはさらに大きくなる可能性がある。

  米ハーバード大学ケネディスクールの朝鮮問題作業部会でディレクターを務めるジョン・パク氏は「トランプ政権のホワイトハウスは今、強い不安を感じているはずだ。最大限の圧力が、また1つ首脳会談を実現させたというのがホワイトハウスの公式見解だが、現実は最大限の圧力から圧力を抜く巨大なバルブに主要な焦点がシフトした」と述べた。
 

ジョン・ボルトン氏

写真家:Andrew Harrer / Bloomberg

  北朝鮮の国営メディアは、非核化や米朝首脳会談について触れず、北京で金夫妻が盛大な歓迎を受けたとの報道に焦点を絞っている。

  トランプ大統領は国家安全保障担当の大統領補佐官としてマクマスター氏を更迭し、ジョン・ボルトン元国連大使の起用を決めたばかり。

  タカ派で知られるボルトン氏は2月、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に「北朝鮮先制攻撃の法的根拠」と題する文章を寄稿。「北朝鮮の核兵器が突き付ける現在の『必要性』に対し、米国が先制攻撃で対応するのは完全に正当」だとし、「北朝鮮の情報を米国が入手するまでのギャップを考慮すれば、ぎりぎりまで待つべきではない」と論じた。

  ドイツ外交問題評議会のベルント・ベルガー上級研究員(アジア担当)は「こうした軍事オプションが再び俎上(そじょう)に上がった。北朝鮮は全体的な交渉プロセスにおいて、より強力な中国を必要としている」と指摘した。

原題:Kim Gets Big Brother China Back, Sending Message to Trump Hawks(抜粋)

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