私は数年前まで編集の仕事に携わっていたが、その中でも文書や資料の校正作業だけは得意だと胸を張れる技能かもしれないと思う。小学生の頃から国語辞典や漢和辞典、地図帳を眺めるのが好きで、読んでいた本や教科書などに誤字脱字を見つけると、訂正の書き込みをするのが癖になっていたほどだ。その部分に関してだけは我ながらなぜか細かく、執拗なほどだった。
校正を覚えるための学校や通信教育も存在するが、自分は仕事の中での見よう見まねと編集者用の参考書(校正のやり方、赤字の入れ方や校正記号等が書いてある)などで覚えた。これまでこの校正作業についてあまり体系的に振り返ったことがないので、少し書いてみる。
4つの校正作業
文字や文章のチェック作業に関しては「校正」「校閲」「推敲」「査読」などいくつか種類があり、それぞれ意味合いが微妙に異なっている。
「校正」は、誤字・脱字や文法など、文章の表面上の間違いを正すこと。
「校閲」は、文字・文章の意味を読み込み事実確認をし、文脈まで読んで正誤を検討すること。
「推敲」は、読者にとって読みやすく洗練されたものにするため、文章を何度か読んで書き直す作業だ。編集における”校正作業”とは、校正と校閲に推敲を加えたものを指すことが多い。
「査読」は、論文などに対し専門性を持った人が審査する、いわゆる”レビュー”のことだ。研究者や専門家が行うもので、校正ではあまりここまで踏み込むことはない。エンジニア同士でソースコードを読み合って検査を行うことも査読にあたる。
文章校正の手順
そして、これまでの自分の校正作業を振り返ってみると単純な方針と手順があったので、以下にそれをまとめてみた。
1.一つ一つを精査する
当たり前のことだが、まず校正対象のすべての文字・文章に目を通す。ただ人間には集中力の問題があるので、自信がない箇所は部分的に二度、三度と読み返す。そうして違和感を感じたところや引っかかった箇所については検索したり、辞書やハンドブックで調べたりしておかしなところがないかを探して解消していく。
2.全体での表記や整合性を統一する
1が終わったら全ページを通して表記統一されているか、全体を俯瞰しながらチェックする必要がある。そのため全体の中の一部分を校正するだけだと表記統一チェックを完全なものにすることは難しい。
また1の作業を行っている段階で「ん?これは…」と気になった文字・文章に対しては、赤字で都度印をつけたりメモに控えたりしておくと良い。表記はあとで変わることもあるので、これをしておくと修正漏れが防ぎやすくなる。
この流れをまとめると、「虫の目」ですべてを細かく見たあと、全体を再度「鳥の目」で見渡すイメージで行うことが校正のコツといえる。
注意して見ておくべき簡単なポイント
以上のような流れを意識した上で、では具体的にどういったことに注意すべきかを簡単にまとめてみた。
誤字・誤変換
現在はPCなどでキーボードを用いて文字入力をすることが多く、便利な反面単純な打ち間違いによる誤字・誤変換などが起きやすい。誤字・誤変換は常にあるという前提で目を通す。
漢字の閉じ開き
日本語ならではだと思うが、同じ意味の語句を漢字で表すか(閉じる)、ひらがなで表すか(開く)が異なる「表記ゆれ」がよく発生するので全体でどちらかに統一する。
送り仮名
「×行なう→○行う」「×現われる→○現れる」など、漢字の閉じ開きと同じく送り仮名でも表記ゆれは起きやすいので注意して見る。
同音異義語や何となく似た熟語
例)
同音異義語:「以外 / 意外」「製作 / 制作」「添付 / 貼付」など
見た目や使われ方が何となく似ている熟語:「適応 / 適用」「査収 / 査証」など
誤変換でも起きやすいが、語句の意味や認識を間違えて使用してしまうことも多い。本当に意味が合っているかを逐一辞書などで調べ、正せるようにしておく。
他にも「敬語の使い方」や「読みにくい長文を短く整理してまとめる」などさまざまなポイントがあるが、上記のような基本的な要領を理解した上で、Wordなどの文書作成ソフトの校正機能や自動校正ツールなどを併用すると効果的だろう。
最後に
間違いのないしっかりとした文章や資料を作成できることはユーザーやクライアントからの信頼や評価にも関わってくる。webコンテンツ制作においても、こうした文字チェックや表記統一の観点は必要なので、考え方やテクニックを社内でもできるだけ伝えていきたい。