30歳貧困男性がアニメ制作会社で見た深い闇

中国に動画制作を依頼する「海外動仕」とは?

ジュンジさんは、中国や韓国などに動画制作や仕上げ作業を依頼する会社で働いていた(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

出勤初日、おかしいと思った

「アニメ・マンガが好き」「未経験から飛び込んできてください!」「今が人を育てるチャンス」――。インターネットの求人サイトにはこんな誘い文句が並んでいた。また、雇用条件には「6:00~16:00、10:00~20:00、20:00~翌6:00の3交代」「残業1日1~2時間」「月給17万円、残業手当込」「交通費支給、雇用労災保険あり」ともあった。

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悪くない――。3年前、ジュンジさん(30歳、仮名)はそう思い、埼玉県内のあるアニメ制作会社への転職を決めた。しかし、期待は出勤初日に裏切られる。

「社長から“よろしく”と言われただけで、なんの説明もなく、現場に放り込まれたんです。入ったその日に、おかしいと思いました」

案の定、募集広告は詐欺同然だった。働き始めてまもなく、実際の勤務時間は11:00~23:00で、最初の2カ月は試用期間なので月給は13万円だと告げられた。その後、雇用、労災保険どころか健康保険も厚生年金にも加入していないことが判明。交通費は支給分では足りず、毎月およそ2万円を自分で負担した。

タイムカードもないというので、スマートフォンに出退勤時刻を記録。それによると、退勤時刻が「29:10」「27:40」「27:50」という日もあった。昼前に出社して翌日の明け方近くまで働き続けたことになる。一方でどんなに残業しても、月給は変わらなかったので、実際の賃金は時給換算すると、最低賃金をはるかに下回った。

ジュンジさんが入ったのは、主に「海外動仕」といわれる、中国や韓国など海外にあるスタジオに動画制作や仕上げ作業を依頼する会社だった。社員は社長を含めて十数人。

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  • NO NAME2fcb3c70c79c
    アニメ業界の下請けの状況は悲惨なものだが、この男性も何か一貫性がない。アニメ制作会社辞めて元の会社に復職したらすぐ辞めて、バイトの農業を本格的にやりたがったり教師の補助を兼業するとかブレすぎる。若い内は色々夢があるから仕方ないが、バイトから農業始めるて無謀だと気付かないのか。
    今後は配信によって収入の流れも変わるかもしれない。配信限定の作品も増えたし、日本が頂点の文化だと思っていたらガラパゴス化していつのまにか世界に置いていかれるような事もあるかもしれない。アニメ制作会社だけでなくTV業界も「手塚治虫ガー」といつまでも言わずに変革しないとせっかく生まれた新しい文化も他国に盗られてしまうだろう。
    up31
    down8
    2018/3/28 07:29
  • no nameef97cc9a29ae
    我慢せず辞めたらいいじゃない!
    up14
    down0
    2018/3/28 10:37
  • NO NAMEbcd248ac20de
    万策つきたー
    up10
    down4
    2018/3/28 07:39
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