世界の学校の風景を、Appleが変えていく。のかな?
今日のApple(アップル)のイベントは米国シカゴにある高校を会場にしていて、全体的に学校や先生に向けたメッセージがメインでした。我々としては新しいiPhoneとかMacBookとか出るんじゃないかって期待してたし、たしかに新しいiPadも発表されたんですが、Appleが強調してたのはとにかく「学校でAppleのハードウェアとかソフトウェアを使ってね」ってことでした。じゃ、それって具体的に何なんでしょうか?
教育向けに発表されたものをハードウェア系とソフトウェア系に分けると、前者は新しいiPad、後者は先生向けアプリやカリキュラム、それに対応したAPIなどです。ハードウェアの話はわかりやすいんですが、アプリに関しては自分で使うもの以外ちょっとイメージしにくいと思うので、以下そのへんをまとめていきますね。
先生向けアプリをさらに充実
今回新たに発表された先生向けのアプリは「Schoolwork」なるもので、これを使うと生徒に宿題を出したり生徒ごとの進捗管理をしたり、課題の締切を設定したりできるそうです。Schoolworkと連携したアプリを開発できるAPIの「ClassKit」も発表されました。
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Appleの先生用アプリとしては以前から「クラスルーム」というアプリがあり、こちらは授業中に先生のiPadから生徒のiPad上のアプリを一斉に開いたり、個々の生徒の進捗状況をチェックしたりを可能にするものです。これまではiPadアプリのみでしたが、今日のキーノートではクラスルームアプリのMac版(β)が今年6月にリリースされることが発表されました。
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また今回iPadでApple Pencilが使えるようになったことを受けて、PagesやNumbersといったiWorkアプリのアップデートも発表されました。iWorkもApple Pencilに対応して、たとえば先生が生徒の提出したPagesファイルにApple Pencilでメモを入れる、なんてこともできるそうです。
あらゆる科目を楽しくする「Everyone Can Create」
さらにAppleはこれらのツールや既存のアプリなどを総動員して「Everyone Can Create」というコンセプトを発表しました。「Everyone Can Create」とは、Appleによれば「先生が絵や音楽、映像制作や写真などをどんな授業にも、トピックにも、宿題にも簡単に織り込めるようにするためのさまざまな無料の学習リソース・教育ガイド」です。
Appleでは「Everyone Can Create」のことを「カリキュラム」と呼んでいます。でもイメージ的には科目がひとつ増えるというよりも、国語でも算数でも理科でも社会でも、授業や学習の中に音楽や映像といったクリエイティブな要素を簡単に取り入れて、より楽しく勉強できるようにするためのツールという感じです。以下の動画がわかりやすいと思います。
この動画の子どもたちは、「重力」というもやっとしたテーマの宿題を「つまんない」と言いつつ、iPadを使って楽しげにまとめています。Appleが提供するいろんなハードやソフトを使うことで、どんな科目でも受け身じゃなくワクワクしながら勉強できるようになるよ、っていうイメージですね。
そもそもなんで教育?
それにしても今、どうして教育なんでしょうか? 答えは多分ですが、若い内にApple製品を刷り込んでおけば長く使ってもらえるからです。Appleは以前からMacにも学生割引を導入するなど、学生の取り込みには積極的でした。
でも今、特に米国の学校で一番普及している端末はGoogleのChromebookなんです。New York Timesによれば、米国の教育機関向けに販売された端末の半分以上がChromebookだそうです。小中学生はChromebookを通じてGoogle DocsとかGmailといったサービスを使い、ハード・ソフトともにGoogleの世界に取り込まれていきます。
上のNew York Timesの記事では、Chromebookが「2012年から2017年にかけて急速に普及していった」と書かれていますが、2012年といえばAppleが前回教育テーマのイベントを開いたタイミング。Appleがなんでかうかうかしている間に、Googleが学校に入り込んじゃったみたいですね…。なのでAppleとしては今、そこまで差が付かないうちにそれを縮めて、あわよくば逆転したい、ってことなんでしょうね。
Image: Apple
Source: Apple, New York Times
(福田ミホ)