ヤンデレな彼女を何とか治したい。 作:かおるーん
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何から書けばいいのでしょうか。
とりあえず挨拶から…改めましてどうも。かおるーんという者です。
今回はエッセイと言うよりかは実録談―のようなものです。どちらも似たようなものですが、そこの所はあまり気にせず気楽にお読みになってくれると嬉しい限りです。
アンチの方々や、理論性もない批判で誰かを責めるのが生きがいな哀れな人達からの無差別攻撃を避けるため、敢えてこうして「設定集」と題しておりますが―今回はあくまでも上記の内容となっております。
本編をお楽しみいただけている、そしてこれからもお読み下さる優しいファンの方達への感謝を込めて、筆をとる所存です。もっとも単なる電子入力ですが…。
都合よく言い換えるならば、「本作の沿革」をまとめたものであり、事実しか記載しないために話が延々と続くだけで、やや面白みに欠けるかと思われます。
しかし、頭のおかしい私の師匠こと、アウター・ドッペルの中身と頭の構造を気になっているとか、本作が出来るまでのスタッフたちのお話を聞きたいとか、そういった方が一定数いらっしゃったので、私がかおるーんとして、ここに書き記しておこうと思います。
◇
原作はアウター・ドッペルが企画し、私が執筆した『ヤンデレな花陽との日常。』です。
彼女の元スタッフ達のヤンデレ監修の元、1話と2話が出来上がりました。今も残っているお話で、内容としては皆様もご存知の通り、主人公とヤンデレ花陽の会話のみという簡素なものでした。
しかし、彼女はこの完成度で満足する人物ではありませんでした。
「ヤンデレなヒロインと主人公が悶々と話してるだけって、一体何の意味があるのだろうか。これこそラブライブ!でやる必要がまるでない、やっぱりスクールアイドルが登場してこそ。」
「ラブライブ!は社会派作品。まずは政治と情勢を正しく理解した上で、少子化とその対策について学んでいこう。」
彼女から支給された政治や軍事、教育関連の本が、オタクなスタッフ達のやる気を削いだのは言うまでもありません。この方向転換から、第3話以降のカオスなお話が次々と作られていきました。また、彼女の本格的な参加により、タイトルは改正され現在に至ります。
よし、以下は彼女を『変人』と書き記すことにしましょう。
一度と言わず何度もスタッフ総出で変人に抗議したことが記憶に新しいものです。
「どうしてラブライブに少子化とか日本政治とかが出るの?」
この質問、集まった日で聞かなかったことが多分ありませんでした。そして、変人も決まって答えるのです。
「ラブライブ!の世界にだって昔には世界大戦もあったし、今でも穂乃果ちゃんたちがライブをする裏側では、アフリカや中東で紛争のせいで子供が銃を手にしているじゃん。」
そして、こう付け足すのです。
「日本だけでも介護、労働問題、少子高齢化。空き家に孤独死、未婚に晩婚化。保育士減少、合計特殊出生率の低迷に自殺者数増加。ライブなんてやってる場合じゃないのね、今の日本は。はいはい、可愛い子がかっこいい主人公とお喋りしたり、ヤンデレしたりで最後は仲良くハッピーエンドで幕引きなのがお前らも読者も書きたいし読みたいんでしょ?でもそれじゃ、あまりに薄っぺらいとは思わない?」
これを聞くと私含めて皆、黙ってしまいます。無論、言い聞かされたとかではなく、「別にそれでいい」という一般的かつ純粋な回答からなる沈黙です。
しかし、変人から言わせればその純粋な回答すら既に駄目らしいのでした。
「政治的無関心は今の日本人らしいけど、それただの現実逃避じゃん。臭いものに蓋をして、見えないフリをしてるだけ。お先真っ暗よ。だからせめて、穂乃果ちゃんたちがライブをする―スクールアイドルの必要と意味に、設定が欲しいと思う。」
西木野真姫の言葉を借りるとするなら、ナニソレイミワカンナイが適切かつ妥当でしょう。
何故スクールアイドルにそんな設定を求めるのか、以前私の友人が聞いたことがありました。するとまたも変人は答えるのです。
「だってそりゃ…学校入る人が少ない、学校の宣伝のためにアイドルやろうってのがまずおかしい。なら何故少子化等の背景を緻密に描かないんだろう。アニメとかでもさ、スクールアイドル反対派の教育委員会の要人との対決とかも描いてほしかったね。」
その時、「そんな馬鹿げたこと真面目に考えてるのアンタだけだよ」と失言した友人が、次の会合の時にスタッフから外されたのは…申し訳ないですが結構笑ってしまいました。
さて、ことあるごとにイミワカンナイ発言をする変人ですが、設定の考案にはかなり時間を要し、真剣に向き合っています。今回、本作に登場している「親衛隊」の設定も、中々の考察具合でした。
「やっぱりさ、アイドルにはファンがいるんだよ。それも格別に気持ち悪いのが。実際さぁ、ヤンデレなんていたら気味悪いし怖いじゃん?でも、あくまで作品だからオブラートに包まれて、ヤンデレというジャンル名として出される。なら、どこで読み手を不快にさせるか。それはもう、作中のアイドルのファン、つまりラブライバーをキモく描くしかないって訳よ。」
「なんで不快感をわざわざ与えるんですかねぇ…?」
この質問は自分がしたものです。今思えばここでクビになっていたかも知れません。一応、私が投稿者なのですが…その時は、きっと純粋なヤンデレ作品になっていたのでしょう。
「本当に私の作品が不快なら、わざわざ読まないでしょ?ある程度、読み手に考えさせたり拒絶させたりする要素がある方が続きが気になって読んでもらえるもんだよ。嫌よ嫌よも好きのうちってね。」
深いようで分からないことを言うのが得意なのが、変人です。設定力だけでは誰にも負けないと思うのですが、如何せん変人の趣向が本当に独特です。
「親衛隊は…元はスクールアイドルを持つ学校がアイドルを支援するために設立した生徒達の自発的なファンクラブが母体となっている組織だよ。ラブライブ大会運営に気に入られて、大会運営と学校などから認可されたファンクラブは一部公式グッズの取り扱いやライブでの観客誘導を出来るようになったり…という設定。」
二次創作物としては非常に優れた設定だなぁ、というのが初めて聞いた時の感想でした。
「んで、親衛隊同士は日々お互い睨みをきかせてる。ある時は抗争だって勃発し、警察や自衛隊が出動するのが相次ぐ。これで、世間からはラブライバーとスクールアイドル自体が白目で見られる。それがまた軋轢を生み、ついにはラブライバーたちの政府への武装蜂起が始まる―なんて考えると書くのが楽しいよね。」
ただ、変人はひとつの設定を練るよりも、生み出した設定に幾つもの負の感情や政治、経済とリンクした―一見すると全く関係のない物をぺたぺたと貼り付けていく作業が好きです。そしてそれらの縫合技術は卓越しています(悪い方向で)。
「μ'sも親衛隊はいるけども非公式にしておこう。その方が、認められない俺たちは可哀想だー…って、さっき言ったみたいにラブライバーが暴走しそうで面白そう。という訳でどこかで、認められないμ's親衛隊と理事長との論争回を入れよう。」
その結果が第8話です。現に、あの回はセリフが殆ど変人によって制作されたものでした。南理事長が饒舌で凄かったですね。
そして次に、理事長と対決した「新谷」というキャラクターについても語っています。
「コイツは…うん、嫌いだ。考えてて一番気持ち悪かった。」
あの時はスタッフ一同大爆笑しました。新谷は、変人自身が考えた人物だったからです。
そして彼には下の名前が本作においては設定的、概念的のみではありますが存在します。
その名を章、と言います。
お察しの方も多少なりともいるかと思われますが、この「新谷 章」という人物は変人の代表作『ヤンデレに愛されちゃったオタクくん。』の主人公とパラレルワールド上での同一人物です。
上記作では苗字の設定は元々存在せず、また、中濱 暮人も同様で、彼には下の名前自体が作中では一切登場していませんでした。
ディテールに凝る割には、人物像は薄くしているのが変人の作品の特徴です。上記作のWikipediaの制作を私は過去に担当していましたが、あの時書いた人物設定郡は全て私の想像で―変人からは「好きにしろ」と言われただけでした。
これも変人に質問したことがあります。
「オリジナルキャラクターに力を入れましょうよ。」
「え、だってさ…オリキャラ多いから、ひとりひとりの設定は薄味のが読みやすいでしょ。」
「いや、でも読み手はオリ主に感情移入できなきゃつまらないですしおすし…。」
「なんならA、Bって表記でもいいんだけどね私は。まず、主人公に感情移入しようってのが間違い。これはラブライブ!の二次創作物なんだ。彼女達と、彼女達が暮らす世界観を濃縮した日記みたいなモンなんだよ。」
「……あ〜そっすねぇ。」
原作世界観ぶち壊しのアンタがよく言いますね、との本音は喉の奥に押し込めました。
以下は蛇足かと思われますが、この後の会話も中々考えさせられる話がいくつも挙がりましたので記しておきます。
「実を言うとさぁ、オリ主って考えが嫌いなんだよね。タグがハーメルンに存在するのも忌々しい。誰だよあんなの考えたのは…。」
「えっそうなんですか?でも師匠もバンバン使ってますよね?」
「あんなの客寄せだよ。女の子だけの花園に野郎を突っ込むってのがちょっとだけ気に食わない。あと、当たり前のように共学化しているのも。ま、それは私の『ヤンオタくん。』もだけど。うーん、読み手がオタクな男性方が多数だから如何せんオリ主とかご都合主義の設定を使うハメになるんだよね〜…。でも本当に作りたいものって、事情が絡んで中々作れんのよこれが。」
共学化―ハーメルンではかなり多くの方が使っている手法です。男の主人公とμ'sまたはAqoursの日常的な接点をなるべく増やすため、学園アニメなのを変えないため、タグなどやあらすじで元々作品における前提条件として表記しているのが一般的です。
ただ、それだと変人の考える日本の未来―つまり、日本の人口減少と新規生徒絶対数の確保争奪戦の嵐の中には必要ない、らしいのです。
「共学化してるなら入学生徒数確保、余裕で出来るでしょ。よってスクールアイドル必要なし。要約するにラブライブ!でやる必要なーし。」
今これをお読みになっている方の中で、書き手の方がいらっしゃいましたら、この変人の事を嫌いになっている方が決して少なくないでしょう。しかし、この変人の意見にも無視出来ない点がある事もお忘れなきを。
「いやいや、共学化しても生徒が集まらないってだけでは?」
「教育機関と法律舐めすぎ…そんなクソみたいに魅力のない学校を、スクールアイドルだけで何とか出来るとでも思ってるの?」
「そんな状況から形勢逆転するのがスクールアイドルの役目なのでは?『みんなで叶える物語』っていうのは、そういう奇跡を起こそうって感じの意味を込めてるんだと思ってましたけど。」
これを聞くなり変人は腹を抱えて笑いました。私はこの時、少しだけ憤りを覚えました。
「いや、かおるんの意見は日本人としてはあながち間違ってないんだよ、あははは。でもごめん、笑えちゃって…ははははっ。本当に…実に日本人らしいよ。」
そんなダメ少年を叱る青いネコ型ロボットみたいな口調で言われても…。
「かおるん、関ヶ原の戦いは知ってる?」
「はい。1600年のアレですよね。天下分け目の決戦の…。」
「うん。日本人はそれくらいの時から―戦う、ということに対してある種の妄想を抱くようになるの。まぁその前からもだけど…。」
政治や戦争を語る時、民族、国民性抜きでは語れないというのが変人の考えです。
「日本人は古来より『決戦』や『英雄』を求める傾向にあった。これは武士道精神に基く云々というよりも、島国だったから外からの本当の脅威の存在を知らなかったの。証拠としては、戦国時代では大将同士の一騎打ちで勝敗を決したり、不良マンガとかでもグループのリーダー同士の殴り合いで終わってしまう描写が多い。これは、日本人が戦争に向いていない人種であることを裏付けるには外せない要素よ。日本人は『ひとつの大きな戦いで物事が決する』のを本能的に欲している。故に、大将同士の争いで決することから、日本史には大虐殺が少ない。市民を殺さないから。でも、ヨーロッパでは違う。負けた軍は、皆殺しが当たり前。民間人だって多く死んだ……日本の戦場は根本的に違っていた…良くも悪くも。勝ち負けを決めるためだけに争っていたんだ。」
「近代史になると、日露戦争の日本海海戦がいい例ね。これは日本の艦隊が現ロシアのバルチック艦隊に打ち勝ったという戦い。ここでも、この大きな戦い後に無事に終戦となった。そこで日本人は過去の歴史も含めて、とある勘違いをする。『決戦がすべてを決める』と―。そして第二次世界大戦ではその教訓を生かせず大敗し、憎むべき敵国の核の傘に守られ、隣国からは挑発され、列国に頭を下げながら問題を抱えに抱え、のうのうと生きている。スイスを見るとよく分かるよ。日本がどれだけ甘えた戦争をしていたのかが―。」
変人と討論をする時、話が脱線しかけることがしばしばあります。
今これをお読みの皆さん、あくまでこれは変人による「スクールアイドルが必ずしも学校にとっての切り札ではない」という自分の主張を根拠づけるための解説です。
「あれ、スイスって戦争国でしたっけ?」
「ううん。今も昔も永世中立国。200年は戦争をしていない…でも軍備は世界最強クラス。第二次世界大戦では…『領空に入った航空機は連合国、枢軸国側問わず全て叩き落としてやる』と宣言し、それを実行した。周りが困っていても助けない代わりに、自分も助けを求めない。しかもスイスは万が一、敵に占領されるような事があったら、街中のインフラ施設を爆薬によって破壊して、占領国には何も与えないという焦土戦術を21世紀に至る現在でも国際世論に宣言している。」
「へー凄い…。」
「陸続きの国は他国からの侵略があるから、ひとつの戦いでは雌雄を決するようなことはまずなかった。だから、同じように私はこのスクールアイドルが絶対的な武器とは思えないのよ。核だって無敵ではない。同じくらいの軍備を持つ国がもって初めて成立するのが核抑止論というものよ。それは東西冷戦が終わりを告げて確実なものとなった。」
「え、えと…つまり?」
「スクールアイドルはあくまで数多くある中のひとつの判断材料であって、学校を選ぶ側からすればおまけに過ぎないってこと。だから、本来主役になんてしてはいけないとも言い換えられる。もちろん、スクールアイドルしか魅力がないとなれば話は別だけど。」
「分かりませんねぇ…。師匠が。」
制作陣の中で最もラブライブ!が好きで、それと同時に最も嫌っているのがこの変人です。
本来、小説や漫画、アニメなどは読み手に注目させる要点が大きく分けて三つ存在し、それぞれに優先順位が存在します。
一般的には登場人物、物語、世界観という優先順位があります。しかし変人の政策方針は真逆です。世界観を維持するための物語と人物を求めている傾向にあり、人々の心情などはあまり気にしていないみたいです。
また、無駄に他作品からの引用のセリフや、伏線でもない無関係の人間の描写を挟む癖があります。
ウケを狙った作品を書くのか、自分の書きたい作品を書くのか。
これはハーメルンユーザーにとっては永遠のテーマだと私は思います。変人は新作品を皆様に提供する時、敢えて前者のフリをしますが、どんどんと話が進むにつれて後者の本性が剥き出しになっていきます。
変人は自身の代表作すら「失敗作」と発言しており、本当にやりたいだけで詰め込むと、大して読みもせず批評する馬鹿しか湧かないからやるにやれないとも愚痴をこぼしていました。
変人にとってはもしかしたらヤンデレそのものも客寄せの一種なのかもしれません。
そして、ヤンデレとオリ主を目当てに来た読み手たちに何か「ラブライブの見方」について影響を与えるのが目的なのかも知れません(本当にただの想像ですが)。
私と変人が共同制作することによって、肯定的かつ正当な化学変化は発生するのかと問われたら、恐らく私は首を横に振るでしょう。
ですが、もう暫くは変人の元でラブライブと小説を学びたいものです。
とは言ったものの、いい加減独立しないと師匠と同じ変人扱いを皆様からされてしまいますのだ。