彼女は本当に「プラスサイズ」モデルなのか?

スティーン・マッキントッシュ、エンターテインメント担当記者

Charli Howard Image copyright OVALS PONTON

チャーリー・ハワードさんは、サイズ6(イギリスにおけるXXS~XSサイズ相当)よりも少し大柄なぐらいの体格だ。

「モデルがモデルであることには、それなりの理由があります」と26歳のハワードさんはBBCニュースに語った。「皆が同じやり方で写真を撮るわけではないから」

これはファッション業界の仕組みに関する痛快で率直な評価だ。もしかすると、さまざまな生き方を受け入れることを擁護する「ボディ・ポジティビティ」ムーブメントの一員としては、珍しい意見かもしれない。

「誰も雑誌『ヴォーグ』であなたの友達のジャネットをみたくはないですよね。こんな風になりたいと思える人をみたいでしょう。私の考えでは、人は自分自身より少し魅力的な生き方をしている人を探したいと望んでいるんです」

モデルはあまり普通の見た目をしているべきではない、とハワードさんは考えているけれど(ごめんね、ジャネット)、彼女はこうも言っている。憧れられる美しさが「ある1つの体型に関連付けられているべきではない」のが大事だ、と。

「アシュリー・グレアムのようなサイズ16(イギリスにおけるXLサイズ相当)ぐらいのモデルをみても、アシュリー・グレアムになりたいなと思います。だって彼女は最高にクールだから」とハワードさんは言う。

「女性は必ずしも体型に魅力を感じる必要はないと思います。重要なのは、雑誌に現れる人格や、何を代表しているかです」

アシュリー・グレアムは、もっとも有名なプラスサイズモデルの1人だ Image copyright Getty Images
Image caption アシュリー・グレアムは、もっとも有名なプラスサイズモデルの1人だ

ハワードさんは、自らが抱えていた摂食障害や心の問題にどう対処してきたかを包み隠さず書いた初の著作「ミスフィット」を出版したばかりだ。

彼女は、不安に悩まされ、彼女を取り巻くものごとから逃げ出す手段としてモデルになることに強く惹かれた学生時代は、周りに溶け込むのにもがいていたと語る。

「どんな仕事をしたいか自分で分かっていなかった。それから、スカウトが何度もあって、『モデルをやってみるべきだ』と言われました」と彼女は説明する。

「まったくの孤独だ、と感じながらウェールズのど真ん中にある全寮制の学校で暮らしていたような人間にとって、モデルになることはとてもかっこいい逃げ口のようなものでした」

「この本は、頭の中がすこし不安定な人についての本です。私がどんな風に、いつか理想の体重に近づけたら、あるいはモデル界の選ばれた人になれたら幸せになれるのに、という考えを追い求めたかの本です」

Presentational white space

ハワードさんは、彼女が受けてきた多くのオーディションについて暴露している。彼女はそこで、どんなに徹底的に食事を変えても、彼女はオーディションのクライアント企業や対象キャンペーンに対して体が大きすぎる、と言われ続けた。

あるオーディションに落選したとき、彼女はそのことをフェイスブックに投稿した。投稿はあっという間に拡散し、ファッション業界からの需要を呼び起こした。

「私は自分が、おかしな、どうしたって到達できない美の基準にそぐわないことに、毎日のように恥ずかしく感じたりうろたえたりするのを拒否する」とハワードさんは書いた。

皮肉なことに、この投稿への注目が、米国のモデルエージェンシーからの関心を呼び起こした。ハワードさんがその会社について調べてみると、そこに「ふくよかな人部門」を発見したのだった。

それから数日もたたないうちに、ハワードさんはモデルエージェンシーを訪ねて渡米し、契約した。彼女はいま米国に住み、専従モデルとして働いている。 プラスサイズモデルという分類ではあるけれど。

「私はDカップの胸を持っています。ふくよかなお尻も。『とても痩せている』部門になることは、絶対にないでしょう」と彼女は言う。「業界の基準に照らせば、私は『ふくよかな人市場』にしか合いません」

「この部門が私にぴったりなわけではありません。この業界にはサイズ10からサイズ12(イギリスにおけるMサイズからLサイズ相当)を代表する人はいなくて、ここにいるにはそれよりすごく痩せているか、すごく大きい必要があるのです」

「私はだから、自分のような自然な体型でモデルになれることを示そうと試みている、一握りの人々のひとりなのです。私たちは『とても痩せている』部門と『ふくよか』部門の中間です。でも、着飾ることはできる。ここが大事なところです」

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現在は健康な体重であっても、ハワードさんはずっと拒食症や過食症と闘ってきた。ハワードさんが話す当時の状態は、多くの人にとって想像しにくいほどだ。

ジャーナリストのジョアン・ベイクウェルさんは2016年、拒食症は西洋世界の病気だと示唆して批判を受けた

ベイクウェルさんは2016年3月の英サンデー・タイムズ紙によるインタビューで「食料が十分にない社会には、拒食症の人はいない」と語った。

「シリアの難民キャンプにいる人は、拒食症ではありません。私は拒食症といえるものは、大体がナルシシズムだと考えます」

ベイクウェルさんは後に謝罪したが、何人かのコラムニストは彼女に同意した。その中には、英テレグラフ紙のアンジェラ・エプスティーンさんや、拒食症を「主として中流階級の病気」とした英スペクテイター誌のロッド・リドルさんが含まれる。

私はハワードさんにこの点を慎重に尋ねたが、彼女はベイクウェルさんのような意見にかなりの理解を示した。

「拒食症とされる最初期の症例のひとつは、ヘンリー8世の妻のものです。彼女は超上流階級です」と彼女はヘンリー8世の王妃キャサリン・オブ・アラゴンを引き合いに言う。

「貧しい人は、拒食症にならなかったかもしれません。この人たちは食料を手に入れられなかったので、自らの意思で自身から食料を奪うことはできなかったからです」

「ですから、私は食料を入手できることが、拒食症の条件であり得るのではというようなことを考えます。食料を入手できるから、それを制限する能力もある、というわけです」

「これは階級システムです。もしお金があれば、食料を制限する権利も得られる。もしお金がなければ、食料制限もできない。これは多くの議論があることだと理解しています」

しかし、彼女はこうも付け加えた。彼女が自らの食事を最小限にした大きな理由は、「私に体重を落とせと強いプレッシャーをかけてくる社会」に押されたからからだと。

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もちろん多くの人は、ハワードさんがプラスサイズだと考えていることが全くばかばかしいと考えるだろう。ハワードさん自身が言うように、他のプラスサイズモデルたちも含めて。

「自分自身を業界用語としてのプラスサイズだとは思っていません。とても成功したプラスサイズモデルが私に『あなたはプラスサイズじゃない。すごく不快』 と言ってきたこともあります」

「ただ、私が模索したいのは、女性の統合です。女性たちが、体型によるカテゴリーに自分たちを押し込める必要がない、ひとつの船に乗っているのを見ることです」

彼女はこう認める。「私はプラスサイズモデルとしてはとても若いです、他のモデルのほとんどが30代なのですから。『正しいモデル』にいたっては、25歳でそのキャリアは終わり、30歳まで続いている人は幸運です。この意味で言えば、私は自分自身がすごく幸運だと思います」

ハワードさんによると、業界には平均サイズより大きいモデルのための仕事が「山ほど」あるという。「特にアメリカには。イギリスにはあまりありません」

そして彼女はこう付け加える。「私はこのことが理解できません。イギリスは『プラスサイズ』という言葉に、未だに疑念や奇妙な連想を抱いていると私は思います」

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ハワードさんの学生時代から続くソーシャルメディア、特にインスタグラムの隆盛は、どちらかというと、体型に関するさまざまな声を補強することで美に関するステレオタイプを強化している。

「痩せたり細くなったりすることを奨励する(ソーシャルメディア上の)アカウントでは、とんでもなく引き締まった体のモデルが見られます。これらのアカウントは、(体型が重要ではないという主張とは)明らかに異なるメッセージも発信しています。とても困難な状況です」と彼女はいう。

「今の時代にティーンエイジャーでいることは、私にはできないと思います。もし今ティーンエイジャーだったら、文字通り壊れてしまうでしょう」

「でも、それこそが、ボディ・ポジティブ・ムーブメントが必要な理由なのです」

(英語記事 Charli Howard: Is this really a 'plus-size' model?

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