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「いちばんやさしいグロースハック教本」を読んで「グロースハック」を理解した

グロースハックチームの立ち上げに関わることになったので、そもそも「グロースハック」とは何か、を知りたかった。

最初に読むには「いちばんやさしいグロースハック教本」がよいと評判だったので読むことにした。半日あれば読めるような分量で、グロースハックの概念やフレームワークを理解するには丁度良い内容だった。

学んだことを以下にまとめてみる。

グロースハックとは

「プロダクトの中に自発的に成長する仕組みを組み込んで、その結果をデータで判断し改善していくこと」である。

製品開発とマーケティングの間に位置し、両方の要素が必要なものである。いかにして成長の仕組みをプロダクトの中に組み込んでいけるかがグロースハックの肝。

なぜならプロダクトの「成長」を判断できるものは数値しかないから。

マーケティングとの違い

従来のマーケティングが製品を“定数”として取り扱ってきたのに対して、グロースハックはそれすらも“変数”として施策を行う。

従来のマーケティングの概念では、 「4P」のプロダクトだけはすでに決まっていて、マーケターが変えることができるのは、それ以外の3つのP( Price、Promotion、Place )のみだった。例えばP&Gで洗剤を担当しているマーケターであれば洗剤という製品自体を変えることは基本的にできなかった。

しかしインターネットの普及によってプロダクトの主力がソフトウェアやWebサービスに移ってくると、プロダクトも容易に変更可能になり、プロダクト自体を改善していくことで事業を成長させることが求められるようになった。こうして生まれた概念がグロースハックである。

したがって、広告宣伝も含めた4つのPを総合的に改善していくことが、本来グロースハッカーに求められているもの。

マキャベリの『君主論』には、「国家が危機に陥った場合、政治家は(国家存続の)目的のために有効ならば、手段を選ぶべきではない」という言葉がある。ここから、“目的達成至上主義”的な考え方を持つ人を「マキャベリスト」と呼ぶようになった。

私はこの考えがグロースハッカーの心構えとして最も大切なことだと考えている。「成長」というただ唯一の目的のためにできうるすべてを行動に移す、それがグロースハッカーにとって最も大事な心構えである。
(本書より)

基本の「AARRR」モデル とその欠点

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[from http://growiz.us/real-framework-of-growthhack/]

サービス全体をユーザーの行動に合わせた5段階のステージに分け、各段階の離脱率をファネル(ろうと)の形で整理したもの。

「AARRR」 とは
  1. Acquisition:ユーザーを獲得
  2. Activation:ユーザーにサービスの価値を感じさせる
  3. Retention:繰り返しサービスを使ってもらう
  4. Referral:友人紹介
  5. Revenue:課金をしてもらう

という5つの段階でユーザーの流れを整理し、改善箇所を発見するためのフレームワーク。

AARRRモデルには2つの欠点がある。

  1. AARRRモデルは施策を行うべき順番にはなっていないから。顧客が継続しないサービスや、収益を生まないサービスでいかにユーザーを獲得してもサービスは成長しない。
  2. AARRRモデルでは離脱率に力点が置かれているため、「ユーザー体験の最大化」という本来最も重視すべき概念が抜けてしまっている。

よくある間違いは、ユーザー体験の最大化から目をそむけ、細かいABテストなどで部分最適化ばかりをやってしまうこと。
大きなサービスでは小さな部分最適化でも売上などの絶対値は大きく伸びるが、小さなスタートアップではこうした細かい部分最適化は害でしかない。

参考:まずは根性、そして「ユーザー体験の最大化」を考えろ!iQONの投稿数を40倍に急成長させたグロースハックの考え方-VASILYセミナー前編 | アプリマーケティング研究所

ABテストなどによる細かい最適化は間違いなく重要だが、それよりも先に最適化する母数を大きくするようなグロースハックをすることが大事である。A/Bテストは全体の母数を大きくすることにはつながらない。

「ARRRA」モデル

「ARRRA」モデルはアクティベーションの概念を拡張し、「ユーザー体験の最大化」という最も重要なテーマを盛り込んでいる。

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[from http://growiz.us/real-framework-of-growthhack/]

プロモーション思考でユーザーを投入・傾向するのではなく、ユーザーのアクティビティそのものがアクイジションに繋がらなければいけないので、継続性を最重要視している。

スタートアップの失敗における半分弱が「そもそも市場需要がなかった」ため。継続性がない場合は、まず満たすべきニーズがあるのか考える。あるのなら、自社のプロダクトがそれを適切に満たしているか考える。

多くのサービスやスタートアップが失敗する理由はただ1つ、顧客に求められないサービスを作ってしまうこと。すべてのサービスは「誰の・どんな課題を・どうやって解決するか」、つまり「顧客・課題・解決法」という3つの要素から成り立っている。

目標設定

明確なゴールがなければ正しい施策は行えない。日々追うべき指標が見えないと、データの海におぼれてしまう。

KPIとは、それらのKGIを上げるためのアクションを行いやすくするために設定する指標である。KGIを設定してゴールを明確化することで、初めてKPI設定を正しく行える。

ゴール達成の可否を决定している特定のパターン、すなわち先行指標(その指標を動かすとゴールの指標が大きく動くもの)を探す。マジックナンバーとは「ユーザーがある行動を特定の回数以上行うと、継続率や収益などの重要な指標が途端に向上する数字のこと」である。例えば海外の主要サービスのマジックナンバーとしては、Facebookの「14人以上と友だちになる」、Twitterの「5人以上フォロー」、Dropboxの「ファイルを1つ以上アップロードする」などが有名。

アクティベーション

ユーザー体験を最大化させる「アクティベーション」を正しく導くために、「PSF」と「ユーザーオンボーディング」の2つの側面に注目する。

アクティベーションとは、ユーザーがサービスに価値を感じることを指す。
したがってアクティベーションは、

  1. そもそもサービスに価値があるのか(PSF)
  2. その価値をサービスの初回利用時にユーザーにしっかりと伝えられているか(ユーザーオンボーディング)

という2つのフェーズに分けられる。多くの人がグロースハックはサービス利用の最適化作業だと考えているが、ユーザーが最初にあなたのサービスに触れるときには、「最高の体験」を提供しなければならない。このプロセスを「ユーザーオンボーディング」と呼ぶ。

参考:いちばんやさしいグロースハックの教本を要約した!~ Activation編 ~ - Qiita

リテンション

リテンションを高めるということは、継続購買期間を高めることと同義なので、結果的にLTVの向上につながる。

理想的なリテンションカーブ = ゆるやかに止まるリテンションカーブ
最も重要なのは、利用開始翌日の継続利用率。利用開始の翌日にアクセスしない状態というのは、利用開始日にユーザーに便益を提供できていない可能性が極めて高い。

参考:いちばんやさしいグロースハックの教本を要約した!~ Retension編 ~ - Qiita

フックモデル

リテンションを獲得するために有効なフレームワーク。スタンフォード経営大学院で教鞭をとっているコンサルタント、ニール・イヤール氏が提唱。

フックモデルでは、プロダクトをユーザーの習慣の一部とすることにより愛着を持たせ、継続利用を獲得する、つまり、リテンションさせていくことを可能にしていく。フックモデルでは習慣化につながる道筋を下図の4つのステップに分けて捉える。このサイクルを意識してユーザー体験を設計すると、強力なリテンションを獲得できるようになる。


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参考:サービス利用を習慣づける『Hooked ハマるしかけ』の威力――iQONの金山裕樹さんが語るその反響:MarkeZine(マーケジン)

リファラル

リファラルは、ARRRAのほかの4ステップと異なり必要不可欠なものではない。何回かトライしてもリファラルを起こすことができない場合は、潔く諦めて次のレベニュー(収益化)のステージに進むことも必要。

リファラルの定量化には以下の2つの指標がよく用いられる

一つ目はネットプロモータースコア(NPS)である。NPSとは全ユーザーのうち推奨者(プロモーター)の割合を示すもので、ユーザーのロイヤルティを最も手軽に測れる指標。

二つ目はバイラル係数と呼ばれるものだ。これは既存ユーザーが平均して何人の新規ユーザーを呼び込むかという指標。計算方法は「1ユーザーあたりの招待アクション回数」×「そこからの登録コンバージョン率」バイラル係数が1を超えると、ユーザーは指数関数的に増加していく。




グロースハックとは何か、を体系的に素早く理解するにはとてもよい本でした。
その他、レベニューや集客についての考え方もまとめられておりますので、詳しくは書籍にて!

こちらも参考にしました:ほとんどの人が勘違いしているグロースハックにおける最適なフレームワーク | Growiz.us

読んでいて一番印象に残っているのは
「君が神でもデータをもってきてくれ」
ですね。

データによる意思決定をしていることが端的に現れている一言です。

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