ロシアのショッピングセンター火災、出口が「封鎖されていた」
ロシア・西シベリアの都市ケメロボで25日に発生し、少なくとも64人が死亡した大型ショッピングモール火災について、ロシアの調査担当者と目撃者が、現場では火災を知らせるアラームが鳴らず、出口は封鎖されていたと話している。
現場を訪れたロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、「犯罪的な怠慢」が火災の原因だと語った。
炭鉱都市として知られるケメロボで発生した火災の犠牲になった人の多くは、子供だった。
ロシア連邦捜査委員会は、現場となった複合施設「ウィンター・チェリー」について、出口が封鎖されていたなど「深刻な違反」があったと話した。
火災は25日、建物の上階で発生した。当時、施設内の店舗や映画館、ボウリング場は大変混雑していた。
ソーシャルメディアに投稿された動画では、人々が逃げるために窓から飛び出している様子が見られる。
現場で献花したプーチン大統領は、「戦闘行為でも、坑道でメタンガスがふいに爆発したのでもない。人々、子供たちはリラックスするために来ていた。人口統計的なレベルで、余りの多くの人の命が失われた。それはなぜか。理由は犯罪的な怠慢だ。だらしなさだ」と語った。
捜査委員会によると、施設で火災安全を担当する技術者が、火災を通知された後に「報知器システムのスイッチを切った」という。同委員会は刑事捜査が開始されたと述べた。
報知器システムを止めたとされる担当者を含む5人が逮捕された。
ケモロボを地元とする政治家、アントン・ゴレルキン氏はフェイスブックへの投稿(ロシア語)で、「火災用の非常出口は封鎖されており、複合施設を閉鎖空間にしていた」「組織的な避難行動はなかった」と語った。
ゴレルキン氏はまた、初期出火時に使われるべきだった消火器が動作しなかったともした。
ケメロボ州のウラジーミル・チェルノフ副知事は「なぜドアが封鎖されていたのか? それが疑問だ」と語った。
露メディアは、施設の屋上はほとんど崩壊したと伝えた。炎は施設4階にあった子供用のトランポリンがある部屋と映画館を飲み込んだという。
出火原因はいまだ不明だ。
消防士によると、建物は1日たった後も、煙を吐き出し、崩壊の恐れがある構造物を残したまま、炎を出さずにくすぶり続けているという。
現在までに分かっていること
火災は26日の現地時間夕方5時ごろ発生した。緊急退院約660人ほどが救助のため現場に派遣された。
一部報道によると、チェルノフ副知事は、おそらく子供用のトランポリンがある部屋から出火したのだろうと話している。
「ある子供が煙草用ライターを持っており、それがトランポリンがある部屋の気泡ゴムに火を点け、それが火薬のごとく爆発したというのが、今のところ疑われていることだ」とチェルノフ副知事は語った。
しかし、国営テレビのロシア24は、ロシアで過去に発生し死亡者を出したほかの火災と同じく、電気故障が最も疑わしい原因だと報じた。
露大統領子どもの人権全権代表を務めるアンナ・クズネツォワ氏は、施設の怠慢を非難し、出火した施設と類似するエンターテインメント複合施設に緊急の安全確認を求めた。
2人の目撃者はBBCロシア語版に、4階のトランポリンがある部屋から日が上がったのを見たが、火災を知らせるアラームは聞かなかったと話した。
一方、目撃者のアナ・ザレクネワ氏は露RBCニュースに、「女性が上映中の映画館に飛び込んできて、『火事だ! 火事だ!』と叫んだので、私たちは外へと駆け出した」と語った。
「脱出を助けるためにそこにあった電灯は点かなかった。私たちはフロアの明かりを頼りに外に出た。しかしそこでは、何のアラームも鳴っていなかった。1階にたどり着いたとき初めて、アラームの音を聞いた」
2階にあった店舗で働いていた店員の娘は、「アラームは鳴らず、(中略)母は彼女の前を走り去る男性から火事のことを教えてもらった。従業員による助けは何もなかった」と語った。
施設の警備員が、階段を下りて逃げようとする子供たちを妨害したという未確認の報道もある。
ケメロボ州は3日間喪に服すことを宣言した。地元の人たちは、複合施設近くに急遽(きゅうきょ)作られた仮の追悼台に花や可愛いおもちゃを手向けている。
ケメロボ州の公式インスタグラムアカウントが投稿した写真には、クリニックで献血するのを待つ人たちの大きな列が写っている。
犠牲者はどんな人だったのか
現在までに見つかった遺体のうち少なくとも9体は子供のものだ。
亡くなった人のほか、11人が煙を吸入して病院で手当を受けている。
もっとも重症な患者は、両親ときょうだいを火災でなくした11歳の少年だと、ベロニカ・スクボルツォワ保健相は明かした。報道によると、少年は4階から落下し、複数の怪我を負って集中治療室にいるという。
当局によると、遺体56体が収容され、21体について遺族に埋葬許可が下りた。
ケメロボ市はモスクワの約3600キロ東に位置する。
2万3000平方メートルの敷地を持つショッピングセンターは、2013年に営業開始した。敷地内には動物と触れ合える動物園があったが、報道によると中にいた動物は全て死んだという。
ケモロボ州緊急対策部のエフゲニー・デジューキン副部長は、炎症面積は1500平方メートルほどだと説明した。
「ショッピングセンターは、非常に複雑な構造だ」とデジューキン氏は語った。「可燃性の物がたくさんあった」。
死者が出たロシアの大規模火災
1999年 ロシア南部の都市サマラにある警察本部で火災が発生、57人が亡くなった。公式には煙草の吸殻が原因とされているが、放火の疑いも除外されていない。
2003年 モスクワのロシア諸民族友好大学にある宿泊所で火災が発生、44人が亡くなった。建物が安全基準を満たしていなかったことが原因。
2006年 モスクワにある薬物依存専門病院で火災が発生、46人が亡くなった。放火が原因。
2007年 ロシア南部のクラスノダール州にある古い民家で火災が発生、63人が亡くなった。煙草の吸殻が原因。
2009年 ウラル州ペルミのナイトクラブで火災が発生、156人が亡くなった。ロシアでここ数年起こった火災の中で最悪の事態とされる。花火が原因で、施設に出口が少なかったことが被害を拡大した。
出展:インタファクス通信
(英語記事 Russia Kemerovo fire: Shopping centre exits 'were blocked')