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  3. 年収の上がるデザイナーは肩書を捨てる。大切なのはデザイン「以外」の視点と情報発信

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海外のトレンドを始め、IT・Webの技術やデザインに関する情報を自身のブログで積極的に発信している小島芳樹氏。都内のアプリ開発会社で企画やマーケティングの仕事に携わる傍ら、有志で新しいWebサービスの開発に勤しんでいるそうだ。

もはやひとつの肩書に収まらない活躍を魅せる小島氏に、新しいWebサービスの開発意図についてや、ずっと考えているという「これからのデザイナーの働き方」について話を聞いた。

小島芳樹
ソーシャルゲームやUIデザインの会社にてWebデザイナー・フロントエンドエンジニア・ディレクターを経て、現在は都内のアプリ開発会社で企画やマーケティングを担当。2016年より「エンジニア」+「デザイナー」=「テクニカルクリエイター」のためのブログ「TECHNICAL CREATOR」を立ち上げ、IT・Web技術やデザインについての最新トレンドを発信している。

パソコンスクールでWeb業界デビューのスキルを学んだ

―今日はよろしくお願いします。まずは小島さんのキャリアの変遷についてお聞かせください。

小島: 25歳くらいまではぶらぶらしてたんですが、手に職をつけたいと思って通い始めたパソコンスクールでHTMLやCSS、あとPhotoshopとIllustratorの使い方を学びました。その後、転職活動をしたんですが、業務未経験だったのでWebデザイナーでは面接にさえ辿り着かなくて、パソコンが使えればいいというくらいのところに派遣社員として働きながら、ひとりでいろいろ作ったりしていましたね。

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―生粋のデザイナーというわけではなかったのですね!そこからどうやって今の仕事にたどり着いたのでしょうか?

勉強会で知り合った人に紹介されたソーシャルゲームをつくっていた企業に、Webデザイナーとして採用されたのがデザイナーとしてのキャリアのスタートでしょうか。当時はソーシャルゲームが盛り上がり始めたころで、とにかく人手が不足していたので、未経験でもスキルがあれば採用してもらえたんですよ。

あと、その会社でのデザイナーの仕事ってグラフィック寄りで、紙の業界から転職してきた人も多かったんですね。そんな中で「HTML書けます」「CSSでアニメーションつくれます」って人は少なくて、わりと重宝されました。

―ゲームがお好きなんですか?

小島: いえ、そんなに(笑) それから社内の開発体制がWebアプリからネイティブアプリに移行していくうちに、これはちょっと自分のやりたいことじゃないなという気持ちになって。アサインされているプロジェクトではUI/UXの部分を担当していたこともあって、だんだんそっちに興味が移っていたんですね。

そんなときにGoodpatchという会社を知って、転職しました。受託開発の事業部に入ったんですが、人手が不足していたこともあってWebデザイナーではなくディレクターの肩書にジョブチェンジをして、クライアント先に行ってもろもろ調整したり、他の会社と新規事業を立ち上げることになった際はプロデューサー的なこともしました。

今は都内のアプリ開発会社で働いていて、新規事業の立ち上げをやったり、Webマスターとしてサイトの運用・保守を担当しています。

―手広く仕事をされているんですね!

小島: そうなんです。だから今はデザイナーという肩書じゃないので、ぼくにデザイナードラフトの取材依頼がきたのにはびっくりしました(笑)

デザインの知を共有する「siori.design」の開発

―多忙だと思うんですが、そんな中で会社での仕事とは別に新しいWebサービスをリリースされたと伺っています。

小島: はい、デザインに関する記事やWebサイトに、コメントを付けて投稿したり共有できる「siori.design」というサービスを、この2月26日にリリースしました。平日の夜とか休日を使い、2週間かけて3人でつくりました。

―たった3人で!どういったメンバーなのでしょうか。

小島: デザイナーの吉竹さん、バックエンドエンジニアの熊田さん、あとはぼくが企画とフロントエンドを担当しました。吉竹さんとは彼自身のポートフォリオサイトづくりをお手伝いしたり、熊田さんとは前に一緒にWebサービスを作ったことがあって、お互い阿吽の呼吸でやりとりできるから、この3人だったら早くものづくりができるなと思ったんです。

それぞれ得意分野があって、それがちょうどいい感じで重なり合っていたって感じでしょうか。それにぼくが真ん中にちょうど収まったのもよくて。デザインのこともだいたい分かるし、バックエンドで何をやっているかもだいたい分かる。

siori.designはRailsでつくっているんですが、それもちょっとは分かる。デザイナーとサーバーサイドのエンジニアだけだと会話が難しいところを繋ぐことができたし、その繋いだ部分は自分が実装しているのでそんなにブレないというメリットもありました。

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―なるほど、それにしても2週間でローンチとはすごいスピード感ですね…。

小島: 構想から入れるとさすがにもうちょっと長いですよ(笑) 初期の構想はだいたい去年の末くらいにありました。どうしようかと3人でアイデアを持ち寄って、いざキックオフしたのが2月頭。それから2週間後にはあらかたできていて、1週間試運転してみて問題なさそうだったのでリリースしちゃった、というところでしょうか。

まだ付けられていない機能もたくさんあるので、それは今ガンガンつくっているところですね。

まだ運用がどうのっていうフェーズではないですが、運用・保守がしやすいようにブームになりつつあるデザインシステムを取り入れたいと思っています。デザイナーの吉竹さんも興味があるみたいなので。

―デザインの観点で小島さんが気をつけられたことはありますか?

小島: 一枚絵を意識するというよりは、コンポーネントベースでグラフィックを起こしてもらっていますし、ぼくもそのつもりでコードを書いています。今後その運用がもっと複雑になってくるときにはSketchなどのデザインツールを連携してオートメーション化できればいいなと思いますね。

想像できないUIをつくるために、デザインはプログラマティックに

―デザインツールなどで、次はこういう流れが来るんじゃないかと予測していることはありますか?

小島: 完全に二極化していくと思っています。例えば『Adobe』や『InVision』は一気通貫のツールにしようとしていて、垂直統合であるべきだと思っているんだなぁというのを感じますね。だからこそInVisionは『InVision Studio』や『InVision Design System Manager』をつくっているんだと思います。

それに対して、『Sketch』はどっちかというとオープン化の流れに乗っています。いろんなツールとの組み合わせも好きにやっていいいし、プラグインも勝手につくればいいって感じですよね。どっちが正しいのかはまだわからないですが。

また、AIの『Adobe Sensei』じゃないですけど、自動生成されていくデザインみたいなものには注目しないといけないなと思います。PCやスマートフォン以外にもデバイスが増えて、それぞれのデバイスやシーンに合わせたUIを作らなければならなくなったら、自動生成しないと追いつかないですよね。

あの、マーベルの映画とか好きですか?

―大好きです(笑)

アイアンマンのヘッドアップディスプレイの中にジャービスっていうAIがいて、質問すると答えてくれるんです。ビルに敵を落として倒そうとするシーンがあるんですけど、そのビルを見た瞬間に「あのビルを買えるか?」ってジャービスに聞くと、すぐにいくらで買えるか画面に表示してくれるんですよ。

でも、ビルを買う前提でUIってつくってないですよね、絶対。となると、自動生成するしかないかなと思っていて。今後AIがもっと進化して、人間と会話のようなコミュニケーションをしながら入出力情報を提示するようになっていくとしたら、事前に想像できないUIを表示しないといけなくなる。そうなるとやっぱり、デザインってプログラマティックになっていくのかなって気はしています。

デザイナーの肩書にこだわらなければ年収は上がる

―ところで、正直なところデザイナーの年収ってどう思いますか?

小島: ドラフトらしい質問がきましたね(笑) うーん、やっぱりもうちょっと年収上がってもいいんじゃないかという話はよくしています。デザイナーってWeb業界ではこれだけ大事だとか人が足りないとか言われているわりに年収は上がっていないですよね。

エンジニアだとCTOっていう役職もありますけど、デザイナーでそういった役職がどんどん生まれているというわけではないですし、まだ時間がかかるかなという気はしています。ぼく自身、普通にデザイナーという職種で続けていたら年収はそんなに上がらなかったと思うんですよ。デザインのことを理解しつつ、事業開発・マーケティングの仕事をしているから今の評価がもらえているという感じです。

―デザイン以外に仕事を広げていくということでしょうか。

小島: そうですね、デザイナーという肩書にこだわらないで、違う職種からデザインの力でアプローチするというのもありかなと思います。その方が、まわりの人はわかりやすいと思うんですよ。とはいえ、それもなかなか難しいので、やはりデザイナーという職種全体が上がると良いですよね。最近は年収を上げたい人はいくつもの会社やプロジェクトを掛け持ち出来るフリーランスになる人が多い気がします。

―最近ではCDOやCXOといった役割の人も出始めましたよね。ブログで海外の情報を多く取り扱っている小島さんから見て、この流れは加速していくと思いますか?

小島: 現在シリコンバレーでようやく形になってきたところで、向こうでも人が足りないって言ってるような状態です。ようやく「いないとダメだ」という考え方が当たり前になってきたくらいなので、日本はまだまだ根付くのに時間がかかりそうな気がしています。

―デザイナーの受難は続くのでしょうか…。

小島: とはいえ日本でもいい兆しはあって、去年の10月にTHE GUILDの深津さんがピースオブケイクのCXOに就任されましたよね。そこから深津さんがnoteでの投稿を促してくれたおかげで、積極的に情報発信するデザイナーがずいぶん増えました。デザインの制作過程はこれまであまり表に出されていませんでしたが、「みんなで制作プロセスを公開しよう」という流れに大きく変わりつつあります。これは本当によかったですね。noteに限らず、デザイナーが発信している情報をもっと流通させるにはどうしたらいいか?と考えて生まれたのがsiori.designなんです。

―おお、siori.designにつながりました(笑)

小島: ぼくが運営している「TECHNICAL CREATOR」というブログでは海外の情報をよく紹介しています。ここではもっとたくさんの海外情報を紹介したいのですが、僕一人では書ける記事数に限界があります。

海外のデザイン記事や、日本語で書かれたnote・ブログなどを一箇所にまとめて見れるようにしたいと思ってつくったのがデザインに特化したブックマークのsiori.designです。サービス開始からもうすぐ1カ月ですが、投稿されている内容はどれも前向きなものばかりで、コメントからもワクワク感が伝わってきます。これからさらにデザインは面白くなっていきそうだし、デザイナーが活躍する場面は増えていくんじゃないかと思っています。

半年間の主夫ライフで、これからの働き方を考える

―最後に小島さんの今後について教えていただきたいです。

小島: じつは今後半年間、育児休暇を取らせてもらうことになりまして。

―えっ、ということはお子さまが?おめでとうございます!

小島: ありがとうございます(笑) 奥さんの方が事情あって早めに仕事に復帰しないといけないこともあるんですが、今は子どもを預ける場所を探すのも大変なので、なるべくぼくが面倒を見ながら仕事をしたいと思ってまして。その体制を整えるために、会社は半年行かないことにしました。

―ということは主夫になられるんですね。

小島: 半年となるとインパクトもありますよね。育休後もぼくが昼間は子どもを見ながら仕事をしたいと思っているんですが、奥さんよりぼくの方が職種的に自由が効きそうだからということもあります。これまでぼくがやってきた事業開発とかマーケティングの仕事は時短やリモートでは難しいかなと思うんですが、Webデザイナーとしてつくる側なら割と時間や場所に自由が効く働き方が選べるんじゃないかと考えています。

ぼくはスタートアップを転々としていたということもあって、もし会社が潰れたとしても、明日から仕事がもらえるように、最低限のスキルを備えておくというのを常に意識していました。そんなときに手っ取り早いのって、Webサイト制作をデザインから構築まで1人でやれますみたいな能力じゃないですか。デザインツールの基本的な使い方、HTML・CSS・JavaScript、WordPressの構築、のようなWebデザイナーとしてのスキルは、ディレクターや事業開発・マーケティングの仕事をやるようになってからも忘れないように定期的にキャッチアップし直していました。

―ひょっとして「siori design」をリリースされたのも、その一環なんでしょうか?

小島: siori.designはメンバーの3人がほとんど顔を合わせることなくつくれてしまったので、リモートでものづくりができる可能性を感じたことができたプロジェクトでした。この後どうなっていくかはわかりませんが、siori.design単体でも売上を立てていけたらと考えていますし、この3人のチームがとてもいい感じで動けるので、何かお仕事をもらえたら嬉しいですね。ゼロイチで企画から運用するところまでできると思っているので。

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