米中の経済の深い結び付きについては、これまでにも書いてきた。今や原油生産高世界一の米国であるが、その輸出先の1位は中国なのである。その時点で両国経済の関係は極めて緊密といえる。
その中国に対し、米国のトランプ大統領は、大幅な貿易赤字の改善を進めようとしている。
トランプ大統領は先日、まず鉄鋼・アルミの輸入関税導入を決めた。
第2次世界大戦後、貿易は基本的に自由化の流れに向かっている。まだ記憶に新しいところだが、貿易問題を扱う国際機関として戦後、発足したGATT(貿易の一般協定)は、WTO(世界貿易機関)と進み、さらに自由化が進展した。
WTOに加盟している国は現在164カ国ある。世界の国は国連加盟国が193あるが、そのほとんどが参加している形となっている。
そのWTOでは、一方的な関税は禁止されている。しかし、例外規定がある。それは安全保障に対するものであれば可能なのである。たとえば、トランプ大統領の措置に対し、日本の対応は「同盟国」ということを前面に出している。もっとも、現在でも課税対象から外されていないが。
実際に「仮想敵国」として想定されているのは中国である。そして、今回の関税導入でピッツバーグに本社のある製造業の雄、USスティール(アンドリュー・カーネギーが創業)は休止高炉に火を入れ、500人を再雇用することを決定した。
さらに、知的財産権についても、特に先端技術を中心として技術移転を強制したとして制裁を検討している。
トランプ政権は、今年11月に中間選挙を迎える。政治家にとって最も大事なことは選挙での得票と党の中の支持である。
先の大統領選挙でトランプが勝利したポイントは、「白人工場労働者」の大量の支持を民主党から奪ったことにある。その点が共和党内から高く評価されているのである。
そのため、トランプ大統領は米国全般の支持率が低くても気にしない。彼の政権の基盤である「白人工場労働者」の支持を固めていることが重要なのである。かれらの支持が堅固である限り、大統領の地位もまた堅固なのである。
そのため、今回、3月13日に行われたペンシルバニアの補欠選は非常に重要な意味を持っていた。
白人も多く、州内にピッツバーグを持つ製造業が主要産業となっている。もともと、共和党が強い州であった。しかし、スキャンダルにより共和党議員が辞職し、補欠選挙となった。通常であれば、共和党が楽勝というところであったが、スキャンダルということもあり、苦戦していた。
そのため、この補欠選挙のためといってもいいと判断できるが、この鉄鋼・アルミの保護関税が導入されたのである。
米国の選挙集計は悠長で正式な結果は、まだ出ていない。最終的な集計は4月になるともいわれている。状況的には、共和党は苦戦し、もしかしたら、民主党候補が勝利したのかもしれない。
もし、共和党が負けたとすれば、それは、大統領選挙以来の「トランプ・ブーム」の挫折であり、大統領にとって、脆弱な政治基盤が揺らぐことを意味する。
もし、この選挙の敗北が確定するとすれば、トランプ大統領は、今回の保護関税のような、製造業寄りの政策を、強化する可能性が高いのである。